スター☆トゥインクルプリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
全宇宙の命運を背負う正義の戦士とて、日常はある。
星を焼かれ、一人流れ着いた異邦に少女が望んだのは、学びの機会。
高度に発達した文明、異質な文化。
断絶と責務に焦る親友を、星奈ひかるが、新たな友が受け止めていく。
地上の星は、そこにある。
そんな感じの、エイリアン・ミーツ・スクール! なお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
異質な文明圏からやってきたララに、必然的に生まれる断絶。学校という社会を舞台に彼女の異邦人性を浮き上がらせつつ、なにを助けに異質な存在は社会に居場所を見つけるのか、社会の構成員はどう受け止めるかを、丁寧に掘るSFとなった。
SF。そう、SFである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
AIグローブに寄る補助で、社会的にふさわしい振る舞いを教授されるララの社会は、携帯電話とGoogleを肌身離さず隣に置く僕らの世界の、半歩先にある。
情報インフラへのアクセスがより容易になれば、世界はララの方向へ(もっと)加速していくだろう。
僕自身こうやってキーボードで文章を打っていて、手で漢字を書く能力は確実に衰えている。ララが背負う遠い星の未来は、今僕らの周辺にある(そしてプリキュアを見ている子供の先にある)現実に強く繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
だから、ララの悩みは物語的想像力を通じて、僕らの問題に繋がりうるのだ。
異質で楽しいワクワクを大事にしつつも、夢を現実と地繋ぎに、想像力を込めて体重を与える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
SFを”空想(”妄想”ではなく)科学物語”たらしめる大事なアプローチが、今回のお話にはたっぷりと満ちていた。とても立派なことであるし、凄く楽しかった。すげーなスタプリ…。
テクノロジーの可能性を思索し、想像力を広げていく楽しさだけではなく、児童が持っている内面世界、それが複数寄り集まってできる外的社会(今回なら”学校”)がどう関わるか、よく考え、キャラ個別の戸惑いや勇気や優しさをしっかり込めた、力強いドラマも展開された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
その熱量が、思弁に血を通す。
物語開始時、ララは過剰に”大人”であろうとした。あの子のいた星では、それが当たり前だったから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
しかし巨大な暴力により社会は崩壊し、サマーン星の”当たり前”は消えてなくなってしまった。ララは異質な地球の”当たり前”に寄り添う形で、生き延びていくしか道がない。亡命者、あるいは戦災孤児。
幾度かの衝突と融和を経て、ララは”子供”として遇される自分を肯定しだした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
地球ではそういうものであるし、まだ自分にそういう部分がある事実を、弱く脆い子供の自分を仲間が(特にひかるが)受け止めてくれる信頼が、闘いと日常の中で育まれた結果だ。
だから学校にいきたいと、ララは言う。そこは楽しそうだったし、地球で生きるしかないのなら、しっかり学んでより善い市民になりたいと願ったから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
もうこの時点で、ルンちゃんの健気さと真摯さにオッサンの涙腺はズクズクうずくわけよ。故郷を焼け出されてこの発想…立派な子よ…。
AIが人のあるべき形を決定する、サマーン星の”当たり前”。それに頼らない素裸の能力は、当然衰えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
様々な技術が発達し”便利”になったとは言え、生身でやらなきゃいけないことも多い地球の現状において、ララは早く来すぎたスーパーマンであり、異物でしかない。
当たり前の掃除のやり方が判らなくて、でも自分なりちゃんとしなくてはと考えて、モップの水をぶちまけてしまったララの姿は、笑い飛ばせるものではなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
あの子はすごく必死で、断絶と居心地の悪さを強く感じていて、でもそれを埋めようとして水をぶちまけたのだ。アレはあの子の涙なのだ。
地球と学校に生まれたときから包まれ、エキセントリックなりに”社会”との向き合い方を学び取っているひかるは、二桁の計算もできるし常識もわきまえている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
それは彼女なり、個性を抑えて社会と手をつなぐべく学び取ったサバイバル・スキルだ。
ひかるがぶっ飛んでいるようで空気を凄く読んで、他人の顔色を見ている描写はこれまでも濃かった。宇宙人の面倒をよく見て、ララのフォローをたくさんする今回のひかるは、その延長線上にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
彼女も水をぶちまけて、社会に溶け込めない自分を痛く、辛く感じた時があったのだろう。
描かれないそんな過去を踏まえて、今回の結構社交的な、友達もちゃんといるひかるがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
だから、ひかるにはララの気持ちが判る。でも、いつでもひかるが側にいてあげられるわけではない。社会から切れずに生き続けるには、個人が対処法を学ぶ必要性が、絶対にある。
それが完璧な答えである必要はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
水が溢れたら吹けばいいし、やり方がわからないならAIグローブに補佐してもらえばいい。友達だって、変な言葉遣いを『いいね』と受け入れてくれるかもしれない。
失敗の可能性と、それを受け取る可塑性が両立して初めて『優しい世界』になりうるのだ。
ララのトンチキな活動、それが生み出す気まずい空気をちゃんと描いたのは、僕は凄い偉いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
世界は同質な他者ではなく、異質なエイリアンで満ちている。何でもかんでも受け入れてもらえる『優しい世界』を夢見ても、それはすごく大事な前提を蹴り飛ばした妄想に過ぎない。
そしてだからこそ、生まれる軋轢を許容範囲に収め、お互いの意思疎通させて断絶を乗り越えることで、ちったぁマシな関係や社会が生まれうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
相手がどんな人なのか、ちゃんと見る。”ノリ”で生まれてしまった摩擦を、自分の落ち度と受け止めて改めて行く。
性格的にも立場的にもララに親しいひかるだけでなく、今回はじめて顔を見せたカルノリくんが、ララにしっかり接近してくれたのは、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
何でもかんでも見通せる完璧人間じゃなくても、断絶を受け止め手を差し伸べることは出来る。仲良くなれる。
それは理想を込めたお伽噺であり、いつか世界がこうなるといいという空想であり、こうしていくほうが善いのだという希望に満ちた宣言でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
そういうものを児童(と、かつて児童であった全ての人間)に向けてちゃんと紡いでいるのは、本当に凄いことだと常々思っている。
プリキュアがメインターゲットに取っている未就学児童にとって、”学校”は見知らぬ異郷であり、不安な未来でもある。実はひかるよりもララのほうが、お友達にはシンパシーが湧くかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ララが一歩ずつ、挫折や苦しさも込みで”学校”に馴染んでいく様子は、いうつか”あなた”が体験する物語なのだ
ララは自分が恥をかくより、友達になったひかるやエレナ、まどかが蔑されることを気にかける。彼女は彼女なり”社会”の中にいるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ここら辺の社会圧に説得力を出すべく、学園の太陽と月を巡る生々しい視線、ひそひそ話を序盤に織り込んでおくのは、逞しい物語展開だと言える。
『自分らしくいればいいじゃん』というのは、正しい言葉だ。でもそこには個人の痛みや苦しさ…社会と繋がっているがゆえの申し訳無さや気恥ずかしさが、必ず付きまとう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ひかるは多分、そういう社会的な存在たる自分を、よく解っている。その断絶にすごく苦労してきたし、苦労しているのだと思う。
それでもなお『自分らしくいればいいじゃん』と、いろいろ大変そうな共に言えるひかるの強さを思うと、彼女は凄いなぁ、と思う。尊敬できる主人公がいるのは、物語を読む上でとても幸福なことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ほんと星奈ひかる、人間が太い。自分で見つけた正しさに引かず、その真実に溺れて他人を傷つけない。
彼女は星が大好きな自分を、透明な嵐の中でも諦めない。想像力が及ばない領域を前にしても、それでも好きと胸を張る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
先々週カッパードさんに強く引きずり込まれた、薄暗い想像力の淵。無力さの鎖に、プリキュアならざる星奈ひかるは何度も取り込まれてきたのだろう。
それでも、私は私。好きなものが好きで、好きなものを大事にしたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ひかるは幾度も自分を鼓舞して、星を見る探検に自分を漕ぎ出し、傷ついた己を立ち上がらせてきた。
そういうバックボーンが垣間見れる、今回の描写であった。傷つき、バカにされてきたからこそ、優しい正しさを持ってるのね…。
AIに補助してもらい、自分を殺して社会に溶け込もうとするララ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
一度は素肌の手でつかもうとした社会は、あまりに自分の”当たり前”とかけ離れていた。
だから、AIに教えてもらう。恥をかかないよう、かかせないよう、自分を作り直していこう。
その意志の全てを、ひかる(も、『ルンちゃんって呼び方がいいよ!』と歩み寄ってくれた学友も)は否定しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
恥ずかしい、辛い、マトモになりたい。その気持は自分の中にも当然あって、でもそこから離れて自分の思うまま、イマジネーションを広げていくことは豊かで楽しい。
だから、戦乱に背中を押されたどり着いた”学校”が、ただ規範を詰め込むのではなく、ララの体からあふれる魂を受け止めてくれる場所だということを、しっかり伝えようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
真夜中ベッドで思い悩み、エレナとまどかに連絡を入れるひかるの実務能力。ホント、ただのバカじゃないのよ。
ララを守ってくれる人と、一緒に日直をする。”学校”という社会の成員が果たすべき義務を、恐れることなく完遂して、自尊と帰属意識を獲得する手助けをしてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
Aiグローブでなぞった”羽衣ララ(そして”星奈ひかる”)”は、そんな”学校”への、そこに身を置く人々への信頼と期待を、少女に生み出す。
高飛車な態度取りつつ、高野城さんがすげーララに優しく、親切にしてくれるのが最高だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
プリキュアに優しいのは、プリキュアだけじゃない。変身する力を持たなくても、社会という場、より善い感情を共有するためにこちらを見て、場所を開けてくれる人がいる。
”学校”という児童のシェルターであり、教育機関であり、小さな社会でもある場所を舞台にすることで、お話の奥行きがグーッと広がった感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
特別な戦士のスペシャルな戦いを描きつつも、背負う世界の広さ、そこにある人々の尊厳を見落とさない筆は、とても良い。
過剰に社会に適合し、自分を殺す必要も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
社会と他者を蔑ろにして、変化しない”アナタ”であり続けることも。
どちらもしなくていいし、ワタシとアナタと誰かで構成される世界は、そんなワガママを許してくれる。許せるように、私は生きていく。
ひかるは休日の学校で、ララにそのことを教える。
あまりに星奈ひかるの”人間”が分厚すぎて、オッサンの弱った目には危険であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ただただ正しいことをぶん回すわけでもなく、むしろアウトサイダー側なんだけども、人が人として為すべき、為したい善に対して目が空きすぎてる…だけでなく、自分の足で出来る範囲をしっかり踏みしめ、行動に移す。
『こんな事されたら…一生星奈ひかるのことを忘れられなくなっちまうよ!』って感じだが、ララちゃんとは運命のマブなのでそれでいいんだろう。何しろ”羽衣”という名前をくれた、ゴッドマザーだしな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ひかるはホント『分け与える』というキャラクター性を、丁寧に積み上げていると思う。
いい塩梅に人生教室が収まった頃合いを見計らい、カッパードさんが今週もスタイリッシュに登場。早期退場を危ぶんでいたが、新見錦謹製の超絶バンク貰った以上、使い潰すまでは死なねぇだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
キメキメにキマリきった動きなんだけど、ハゲ一個でいい具合に強張りが抜けてんの、強いよなぁ…。
『学校にどんな意味がある?』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
激しい暴力と一緒に投げかけられた問に、ララは迷って見つけた輝きを返す。
そこには知らないことが沢山あるから。
楽しいことが待っているから。
まだ、日直をやってないから。
看板だけの正しさではなく、陰りも含めた体温のある答えだ。
『日直をやってないルン!』はマジヤバで、中学生らしい身近さと、そこを超えて掴むべき人間の尊厳が同居したパンチラインだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
ノットレイダーがかつて焼き、今踏みにじろうとしているものは要するにそういうものなのだ。ララはそういう”当たり前”からはじき出されて、今ここにいるのだ。
その焼け焦げた景色を見据えた上で、それでも道は続いていると、差し伸べられた手を掴むことは出来ると、静かに見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
今度は、グローブを外した手で。ララはひかると手を繋いで”学校”に行く。間違いも摩擦も込みでOKと言ってくれる、同じく完璧じゃない学友のいる場所へ。
エイリアンが初めて”学校”とコンタクトする話として、非常に良く出来ていたし、濃厚なヒューマニティへの信頼、薄暗さも見据える真摯な世界認識がしっかり焼き付いたエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
そういうかっちりした骨組みを持ちつつ、児童文学に必要なワクワク感、キラキラな楽しさが色あせないところが凄い
もっとこー、説教臭くなってもおかしくないと思うのですよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
借り物の正しさで終わらず、キャラが抱える個性とバックボーンを考え抜いて、間違えと訂正を繰り返しながら、自分なりの言葉で答えを彫り込んでいく。
そういう手間のかかるお話づくりに向き合ってくれてるのは、本当にありがたいです。
ララがAIグローブという、自分なりの”当たり前”に頼る描写が入ること、それ自体を誰も否定しないところが好きです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
異質な文化に放り出されて、すげー居心地悪くて恥ずかしくて、その時頼れるのは、たとえ失われてしまったとしても、自分の背骨になってる文化なわけで。
そこにしがみついて”大人っぽく”振る舞おうとするララの、もろく弱い”子供”を正しさで蹴っ飛ばしても、傷つくだけで哀しいばかりじゃないですか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
だからひかるは、もしそれを手放してもわたし(と誰か)が支えるし、誰も嘲笑わないよと、手を繋いで教えるわけです。やっぱ人間が太てーわ子の女…。
エイリアンの笑顔と戸惑い、それを突き放しまた受け止める社会と他者。特別な誰かに手を引かれて、新しい”当たり前”を掴んでいこうとする逞しさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
沢山のものが豊かに描かれた、珠玉のエピソードだったと思います。
異邦に一人立てるほど、強い人はいない。だけど、あなたがいるから。
そんな豊かさの奥に、次回エレナのエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月28日
個別エピ二週目に入ってきて、さらなる加速を見せているキラプリが、太陽をどう書くのか。何かとパーフェックとに描かれているので、ちっとは陰りの部分が見たい気もするけど…”sonrisa”なんで、笑顔のお話にはなりそうですね。楽しみです。