どろろ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
百鬼丸から離れ、彷徨うどろろに追いついたのは過去の因業だった。
憧れの武士階級からはじき出され、泥に塗れつつ逆転を狙う野伏。人生をもう一度ひっくり返す種銭を求め、奇妙な旅は不知火の岬へ行き着く。
家族のためなら、血肉も惜しくはねぇ。海は、血を求める。
そんな感じの戦国サメ映画、どろろ&イタチ編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
百鬼丸とみっしり癒着した道行きを、一旦引き剥がして過去に向かわせる。
そんなどろろの旅路、同行者は身内であり敵であり、母の墓を暴いた忘八者でもあるイタチ。野心を抱えて一旗揚げようという、戦国社会に強くコネクトした存在だ。
どろろちゃんは聖人、百鬼丸はアウトサイダー。共に社会の中で一旗揚げる…つまり火袋の遺産を求める理由がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
対してイタチは武家社会に潜り込み、侍という社会的強者にのし上がる強い意志を持っている。銭金は何より大事なのだ。
彼を同行とすることで、百鬼丸では掘れない物語が展開していく。
イタチは火袋を裏切り、醍醐に取り入って、成り上がりゆえに見捨てられる。身分の差は乱世と言えど大きく、それをひっくり返すのが多額の銭だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
裏切られ、見捨てられ、それでも諦めきれない。
墓を暴き、騙して殺し、それでもどこかに善の気配がある。
イタチは善悪の彼岸を行ったり来たりする、面白いキャラクターだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
『こんなことなら、御前の母ちゃんの墓、暴くんじゃなかったぜ』
野心に動かされて死体を辱め、女児の服を剥ぐ。他人の家族を血みどろに引きずって、丘に引っ張り上げる。
さんざん悪事を働きつつ、改悛を口にする口は、妙に爽やかだ
この生臭い感じは、生まれた時から醍醐の家(つまり醍醐の国)からはじき出され、心身をもぎ取られた百鬼丸では出てこない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
彼はサイボーグとして、魔狩人として生きることしか許されなかった。侍が農民を支配し、虐げる当たり前の定住社会、その心証や価値観からは遠い存在だ。
どろろも父母を失い、宿無しとして彷徨うアウトサイダーである。しかしその辛さに音を上げたり、他人を踏みつける生き方を、どうしても選べなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
汚れず、蔑せず。母が命を賭して証明した人の生き方は、鎖としてどろろを縛り、鎧として守り続けている。
『母の墓を暴く』というイタチの行いは、つまりどろろの信念を汚す、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
縛り付けられ、モノのように運ばれる。我欲のため、自分の大事なものを汚される。今週のどろろちゃんはマジ散々である。
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どろろが裸に剥かれるのも、赤剥けにされた因幡の白兎モチーフ…なのかなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
人でなしの人喰い、鮫野郎なのはしらぬいだけでなく、イタチも同じ、と。
蒲の穂で傷を癒やしてくれるオオナムチとは、一旦道が違えている。どろろちゃんは独力で頑張んないといけないのね。https://t.co/sgC7gns3CZ
しかしイタチはどろろの縄を解き、どろろはイタチの傷…赤い血を流す命の証明に、海水をぶっかける。文字通り『水に流す』のだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
母の清廉と正反対の、ミオの生き様を受け入れた時のように。イタチの我欲と裏切りも、ひとまず飲み込む。器のデカさは父譲りか。
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イタチは『頭』と言われていても、侍の裏切りに気付けず、イタチの異常性にも鼻が利かない。どろろは『なんかやべぇ』と感づいているのに、だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
火袋を裏切り手に入れた『頭』の座。しかしトップの立ち位置はイタチの特性と噛み合っておらず、その不適合は苛烈な方向へと彼を運ぶ。
青い牢獄に閉じ込められ、生存を諦めかけたイタチの前に、リーダーの血を継ぐ少女が言葉をかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
その一言、己を投げ捨てる献身に、一味は息を吹き返し命を繋ぐ。
百鬼丸の背中に隠れていては、なかなか表に出ないどろろの資質。イタチを触媒に、将才が顔を見せる。
とは言っても、イタチを惑わす夢は簡単には消えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
しらぬいをぶっ殺すのは(百鬼丸にそうしたような)どろろの働きかけで辞めるが、裸に剥いて地図をあぶり出し、縛り付けて親の銭を盗む。
裏切り、裏切られ、道に戻ると思いきやまた裏切る。フラフラと揺れ続けるイタチの姿は、人の戯画だ。
配下の下卑た態度、情け容赦のない全裸描写。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
今回のどろろちゃんの扱いはなかなかに生々しい児童虐待で、見ているのはキツかった。イタチが性暴力を振るうたぐいの男ではないと解っているから、ぎりぎり耐えれたが…。
でもそういう暴虐が、簡単に迫る世界でもあんのよね。はー…(デカいため息)
さておき、そんな人間一行に向き合う異形の兄弟。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
しらぬい、次郎丸、三郎丸。
腕を失い、髪を後ろにまとめた姿はどこか百鬼丸に似てもいる。どろろの代わりに八尋鰐を兄弟に据えた、隻腕の野人。あり得たかもしれないシャドウ。
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腕を咥えた兄弟に『後でもらうよ』と返している辺り、しらぬいも人の味を既に知っている。人でなしになってしまったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
どろろが同行しなければ、百鬼丸もまたそうなっていただろう。ミオが殺された境内、醍醐国境の家族の地獄。鬼に墜ちる機会はいくらでもあった。だがその度に、せき止めた。
騙して海に引きずり込み、騙されて丘に引っ張り上げられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
稲羽の白兎と洒落るには、イタチの顔も性も擦れっ枯らしに過ぎるが、人も人でなしも騙し、殺す。身内の命を取られたら、皆殺しで答え返す乱世のルールに、素直に従う。血も水も、他人の命より重い。
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イタチは存外身内の扱いがしっかりしていて、しらぬいをボコす時にも『仲間の半分が殺られた』と執念を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
縁で寄り集まった身内を大事にするということは、その外側にいる存在をゴミ扱いする、ということだ。しらぬいもまた、兄弟の血に塗れ、復讐を叫ぶ。修羅、また修羅である。
一つ面白いのは、その境界線は(少なくともイタチにとって)揺らぐ、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
お自夜はかつて、頭の妻であり身内だった。
裏切ったあと零落して出会い直し、熱い粥の慈悲をかけた。
それが実を結ばず儚くなって、己の野心のために死体を暴く。
それを後悔もする。
その身なり、毀誉褒貶の移り変わりと同じように、イタチの中のお自夜、その娘であるどろろの扱いはゆらゆらと揺れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
魂の本質しか見えず、余計な音を聞かない(ことで、どろろと一時離れた)百鬼丸では描けない、人の多様。それを見せるべく、海の脇道へと花死を転がすhttps://t.co/4Snu84LWJ0
そういうエピソードなのかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
お自夜が先行して演じていた、高いところからの落下。それを身なりの変わったイタチが追いかけているのは、なんとも皮肉な再演で興味深い。
驕れる者久しからず、人はみな零落し、死んでいく。
ならば、何が尊いのか。何のために食い、銭金を集めるのか。
無常と尊厳がダンスを踊る世界の中で、皆が独特の世界を持ち、己の道をフラフラ歩く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
人、人でなし、人であろうとするもの。
あるいは弱肉強食と他人を噛みちぎり、あるいはその理を超えた何かを追い求める曼荼羅の中を、物語が転がっていく。
慟哭を受け、三郎丸は、如何な鬼神に変じるか。
離れたが故の物語は、百鬼丸にも付きまとう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
どろろが過去の因縁を背負い、イタチと出会い直したように。
百鬼丸も”父”である寿海と縁が繋がる。
森の中、不格好な歩みでどろろを求めていたのは、介助者が欲しいのか、きょうだいを心配してのことか。旅は鬼子に、何を生んだのか。
運命を一時一つに分けたからこそ、描けるもの、見えるものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月1日
イタチとどろろの邂逅、鮫の理に身を落としたしらぬいとの遭遇の奥に、乱世の別の顔が見えてくるエピソードでした。
寿海と百鬼丸の因縁も気になるところ。別れた二叉路は、どう迷い、どう出会い直すか。来週も楽しみですね