どろろ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
無常岬に因縁が集う。
血に飢えた陸の鮫。
黄金に明日を夢見る野盗。
義の装置たらんとする貴種。
鏃が空を裂き、埋火が爆裂する。
欲望と血でギラギラと輝く黄金は、無慈悲な死を呼び込む。
血で血を洗う宝島、果てに見えるは情か、無情か。
百鬼丸、旅路の果てにて、運命と再開す。
そんな感じの三連作完結! 無情岬に血風舞い、潮騒が無慈悲を告げる大決戦である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
人の理を投げ捨てたしらぬい、情と欲の間で揺れるイタチ。
情を捨て義に準じる覚悟を固めた多宝丸(とその乳母子)。
様々な暴力と願いが渾然一体と化したカオスの中で、迷い別れた兄妹は再び出会い、手をつなぐ。
そろそろ最終盤が見えるこの三連作、物語とキャラクターに問いを投げ、しっかり答えさせることで深く掘り下げていくお話であったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
耳をふさぎ、世の条理と自分の気持、どろろからの呼びかけに応えなかった百鬼丸は、一人の旅路、父との再開、問答を経て、自分からその名を呼ぶようになった。
超絶ヒロイックな再登場と、その時彼が『名前を呼んだ』という事実だけで、ある意味ここまでの物語は結集を迎えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
人が人である限り逃れられない、問答の連鎖。
あなたはそこにいて、私はここにいる。あなたは誰ですか?
そんな素朴な呼び声に、耳をふさがないこと。鬼子は旅で、それを学んだ。
イタチが死にたいほど求め(た結果、結局死んじゃう)銭金は、ギラギラとは輝いていない。どこか虚しく煤けた色合いで、兄妹を照らしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
再開なった二人の海路を照らすのは、幽き叢雲。因果に囚われた浮世を導く、細い真実の光だ。
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ここでどろろちゃんが銭金に未練を残し、『当然の軍資金』を回収していくのが良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
恩人を罠にはめ、その娘を裸に剥く。銭に狂い、仇をその身で守る。
イタチが示した複雑怪奇な人間曼荼羅を、仏性を宿したどろろもまた、もっている。
当たり前の欲望、生きて死ぬ当然。皆、それを抱えて人間なのだ
負傷した兵庫の命を繋ぐため、多宝丸は”鬼神狩り”の旅路から引き返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
情は捨てた。屋根裏の鬼子母神を焼き殺し、修羅の顔でそうつぶやいた青年は、しかし兄弟の命を諦められない。
”敵”を目の前に憎悪に塗りつぶされていた百鬼丸も、爆裂に目を覚まし、どろろの名を呼ぶ。手に入れた足で、探し求める
鬼と仏の間を行ったり来たりしながら、現世に現れた…現世そのものである地獄と極楽に浮き沈みする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
為政者として、義の装置に己を追い込もうとしても、情は消えてくれない。
殺戮の鬼子として、弟の首を掻っ切ろうとしても、共に歩いてきた相棒の命のほうが気になる。
曖昧さを嫌い、一つの概念、意志のない嵐のように成り果てようと願って(あるいは追い込まれて)いても、脈を打つ人の在り方。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
この三連作は様々な人々を描きつつ、そこに共通する愛おしい揺れ、ある種の救いをしっかり見据えたエピソードだと思う。
命は、命であるがゆえにただ生きようとする。
体を砕かれた百鬼丸が、最初に抱き突き動かされた衝動。その動物的な在り方はすべての人間に共通で、しかしもう一つ、衝動がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
幸せになりたい。幸せにしたい。
その執着が不幸の源だとしても、人はより良い生活、より善い在り方を諦められない。
しらぬいは死にゆく母に、死に敗北する人の不完全を見た。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
『おっかちゃん』
どろろを縛り支え、百鬼丸に継承された情の言葉を、吐き捨てるように呟いて。しらぬいは人の在り方に背中を向け、鮫になる。
あり得た(る)かもしれない、百鬼丸もう一つの未来だ。
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彼が超越の野望を託した次郎丸は、鬼神の力を引き寄せ、それ故百鬼丸にあっさりぶっ殺される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
兄弟の情と嘯いていても、しょせんは獣。次郎丸の尻尾は”敵”たるどろろだけでなく、しらぬいも跳ね飛ばす。
鬼神という暴力は、一切の情を斟酌しないのだ。
どこか遠くに行きたい。泥のように粘りつく、どうしようもない現世を捨てたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
しらぬいの願望は、金に『どこにでも行けるチケット』を求めたイタチと、奇妙に呼応している。
イタチは金銭の先にある自由、権利、平等を求め…他人のそれを踏みにじる。優しくなんてなれるほど、俺たち強くないのさ。
イタチは心の中の鮫に素直に、ギラついた視線で銭金を求め、それを目前に火薬が爆発した時、その身でどろろを庇う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
鮫になりきれない、ずる賢いイタチ。昔馴染み、情が名残る”敵”を相手に、どろろは顔を突き合わせる。再開なった兄貴とそうするように。
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顔を見る。眼と眼を合わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
それは鮫には不可能なコミュニケーションで、ゼロ距離でのせめぎあいが人の魂を伝え、変えていく…こともある。
鍔迫りを繰り返し、兄弟の間には憎悪が積み重なっていく。鶏鳴のように鳴り響いた爆轟で、目を覚ますまで
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どろろは兄貴の手を取って、兄弟相食む修羅場から遠ざけようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
しかしするりと義肢(あるいはむき出しの暴力を包む鞘)は抜けさって、抜身の刃となった百鬼丸は”敵”に向き合う。
その刃が折れる形で、兄弟相克に一旦幕が下りたのは、”武器よさらば”の救いか。はたまた新たな残酷の予兆か。
兄弟の闘いがしらぬいの自爆で終わるのは、結構興味深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
そこで爆裂しているのは火袋が仕掛けた罠であり、銭金が正しく使われるよう仕掛けた祈り(というには暴力的だが)だ。
そんな事情を知ったことかと、しらぬいは”(自分を含めた)人間”を皆殺しにするべく、暴力を炸裂させる。
それが生み出した地すべりが、兄弟の刃を引き剥がし、兵庫を傷つける。水が入った戦場で、兄弟はそれぞれの大事な人のために、刃を収める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
そんな結末を、しらぬいは狙ったわけではない。
みんな死ね。
血を吐くような憎悪はしかし、兄弟が殺し合う修羅場を止める祈りともなった。
”人間”を皆殺しにするはずの憎悪の炸裂が、”人間”を見失っていた修羅の目を覚まさせる。本当に大事な場所へと引き返す、切っ掛けになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
悪しき欲望を跳ね除けるための埋火が、しらぬいのテロルに変換されたように。様々な人の思惑を孕んで、暴力と祈りは思わぬ場所へと漕ぎ出していく。
例えばイタチ一味を残酷に殺す飛び道具を、百鬼丸は掴んで足場に変えてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
物語に選ばれた、特別な存在は飛び道具では死なない。劇作のルールを匂わせつつも、冷たい矢衾は絡み合う至近距離の刃とは違った意味合いを、決戦に埋め込んでくる。
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百鬼丸も伊勢の一矢を背に受けるし、イタチも矢衾、弁慶の大往生である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
組織化された軍事力、為政者だけが持ちうる”正しい暴力”の象徴は、アウトサイダーたちを冷たく射抜いていく。
それに足が止まるものと、切り払い前に進むもの。残酷な差異を見据えつつ、戦場は煮え立つ。
妄執に囚われた衆生を救うべく、使わされた地蔵菩薩。それは隠し金への道のりであり、暴力を跳ね除ける不意の暴力にも変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
鉤爪のように、大地に刻まれた救済の残痕。神も仏もない乱世では、銭以外に神はいない。
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なんとも罰当たりな地蔵ミサイルだが、見方を変えれば聖人たるどろろを守るべく、神仏…あるいは父母の加護が偶然を引き寄せた、とも取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
偶然か、運命か。ちょっとコミカルな反撃は、爆裂する火薬と死者、不具者を生み出すしらぬいの地すべりと呼応する。
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足を潰された兵士は、百鬼丸のような不具者としてこの後、乱世を生きていくことになる。あるいは物言わぬ死者として、時代に押しつぶされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
鬼神が奪わなくても、人が生み出す戦は手足を奪い、自由を殺す。
鬼も仏も、いつでも人の胸の中、人と人の間にあるのだ。
どろろを庇って致命傷を受け、ようやくたどり着いた夢の黄金。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
乱世の身分制度に挟み込まれ、そこからのし上がることを夢見たイタチが見る輝きと、出世栄達に興味がないどろろが見る、色あせた黄金。
金色の熱狂よりも、今は祈りと安らぎを。
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どろろが祈りを捧げる夕暮れ、多宝丸は戦場に背を向け、兄弟の傷を癒やす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
国を脅かす鬼神よりも、そちらのほうが大事だと定める判断は、殺したはずの情の疼き。為政者としては過ち、人としては正解。どちらに進むか、海路の導きはまだ、迷い続けている。
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同じく海に漕ぎ出して、どろろと百鬼丸は暗闇を行く。見据える先には、微かな月。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
沢山の人と再開し、死に別れ、生き別れた。決別し、再び出会った。だからこそ、真実心に刻み込まれた、大切な思い。大切な名前。
二人は、闇の中同じものを見る。
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運命に流されるまま共有していたものの意味を、一旦別れ、別の存在と向き合わせることで確認していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
再び出会った時、その手でなぞった時、己を人間にとどめてくれる”兄弟”の意味は、より輝きを増している。
そういう話だったと思います。行きて帰りし物語、ってやつだね。
思えば物語の開始時、百鬼丸は船に一人流されるままだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
そこから始まった物語が、船に二人乗っている意味を噛み締めながら、一つの角を曲がる。
様々な人との出会い、別れが織りなす人生曼荼羅を丁寧に編み上げた結果、二つの航路の間にある振幅、百鬼丸が手に入れたものの意味は太く、強く迫る。
『人間の体を取り戻して、それで何が手に入る?』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
ニヒリズムと人間嫌悪(己が人でしかない以上、それは自己嫌悪でもある)に焼かれたしらぬいの問いに、百鬼丸はこれまで通り答えない。
だが問答を無視しているのではない。言葉ではなく生き様、音ではなく指
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かつて寿海と別れた時、あるいは再開した時。ミオをその手に抱いた時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
盲た百鬼丸は常に、その機会の指で愛おしさを、惜別の苦しみを確かめることで、己と己を取り巻く世界を認識してきた。
そこに、『どろろ』という呼びかけ/応答が加わったこと。
それが、もうひとりの鬼子、末期の呪いへの答えだ
迷い、別れたからこそ踏み出せた一歩。出会い、別れたからこそ見つけた輝き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月14日
それを胸に、さらなる無惨に物語は漕ぎ出していく。導きの月は微笑むか、血に濡れるか。
先のことは解らない。だが、見届けたい。
そういう思いが強くなる、良いエピソード、三連作でした。来週も楽しみ。