鬼滅の刃を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
異形は夜闇に潜む。藤に囲まれた深山、あるいは都会の裏通り。
官憲すら認識していないどす黒い闇が、牙を剥いて運命に噛み付く時。
芳香とともに、新たな出会いが訪れる。
珠世。艶やかな椿、人食わぬ鬼。禰豆子を人に戻す希望。
だが夜闇は、邂逅を大人しく見逃してなどくれぬ…。
そんな感じの、浅草超決戦中編である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
関声の根性ドブゲロ悪鬼を取り逃したと思ったら、まあや声の良い鬼が出てきて状況好転! って思ってたら、超ろくでもないオーラムンムンの二鬼組が襲来してきて来週バトルだよ~って所まで。
シリアスとギャグが矢継ぎ早に襲いかかってきて、能が疲れた。楽しい
炭治郎は仇敵を取り逃すこととなるが、それは彼が冷静さを取り戻し、人の在り方に立ち戻ったからでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
憎悪に押し流され、無惨を追うことが人の在り方か。
目の前の犠牲者を無視して、意にそぐわぬ殺戮を暴れ回らせるのが、鬼滅の刃か。
当然違うので、炭治郎は切るのではなく守る道を選ぶ。
炭治郎が素性を隠す羽織を脱ぎ捨て、素顔を晒して(そして折りたたんだ羽織は、犠牲者が新たな犠牲者を産まぬよう牙に突き立てて)事件に挑むのに対し、無惨は白々しく帽子で素性を隠したままだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
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自分が巻き起こした惨劇を『見てはいけないよ』と、白々しく遠ざける無惨。騒動の渦中に飛び込んで、官憲に威圧されながらも人を守ろうとする炭治郎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
主人公とラスボスがどのような人格を背負い、何を争って作品が動いていくのか、アクションの中で良く見える。
無惨は己を開き直った巨悪と言うよりは、人間のみみっちい悪徳を肥大化させ、過剰すぎる暴力を詰め込んだ怪物に思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
卑劣で、小心で、残酷で嘘つき。"悪"に塗りつぶされたある種の爽快さから距離を取った造形は、なんとなく"ジョジョの奇妙な冒険"を思わせる。
炭治郎が誰かを助けるために隠蔽を剥がしたことで、耳元の札は無惨の目にさらされ、主人公はラスボスに付け狙われる立場に滑り込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
もし、ホッカムリをかぶったまま惨劇を無視できていたら。
炭治郎の心根を鑑みれば無意味な過程であるが、しかし主役の秘められた特別さが、いつかは衝突を生んだか。
ここら辺の因縁をどう活かすかは今後の楽しみとして、主役とラスボスの邂逅は水入りで終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
偽りの家族を連れ、人波に消えていく悪鬼。譲れない持ち場に縛り付けられ、人間を守る戦士。スポットライトが印象的だ。
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ここまでの物語から解っていたことであるが、炭治郎は人間であることを捨てられない。目の前の命か、絶対の仇かという選択で、必ず人の命と尊厳を掴む主役だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
それはときに足踏みを生み、弱さになるのだろうけども、作品と炭治郎を信頼する大事な足場でもある。だからこの決断は正しかったと思う。
官憲は目の前で繰り広げられている超常の戦い、その意味を理解しないまま、炭治郎を抑圧する。鬼殺隊はその過酷な任務に反して、社会に認められた存在ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
鬼の犠牲者と、それを人に止めようとする戦士の懸命は、光溢れる社会にはなかなか理解されない。
むしろその意味を解ってくれるのは、鬼の血を受けつつ人間であろうとする、炭治郎の同類。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
珠世の異能の表現は非常に鮮明で、妖しくも美しいものだった。ホント和テイストを盛り込んだエフェクトの美麗さは、このアニメの強み。
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炭治郎が羽織を脱ぎ捨て、自分の特別な出自を無惨に知られたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
鬼の中の人を見据え、どうにか救う道はないかと探る赤心もまた、珠代を呼び寄せる。全てが、無惨の思うがままというわけでは当然ない。
主役が負けブックを飲まされ、禰豆子回復ルートが潰れたと思いきや、道はまだ繋がる。
ここら辺の起伏がなかなかワクワクさせるが、まずは宿命の邂逅が終わって一段落、明るく楽しいコメディパートである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
先週蔑ろにしてしまった、うどんと妹。本来炭治郎が抱えてしかるべき日常と家族を、まずは取り戻しに行く。https://t.co/H7OxumMjYG
生活感あふれるこの異能力バトルアニメに置いて、『食べる』『着る』『住む』という行為は、色濃く人間の有様を写す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
明るい場所を取り戻し、うどんを二杯食う。飯食えぬ妹の代わりに、口枷を取らせまいと二杯食う。
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ハイテンション日常コメディがなんともおかしいところであるし、マトモなメシを笑い混じりに啜れるように一旦落ち着いたことが、嬉しくもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
普通の美味そうな飯を、普通に食べる幸福。炭治郎が捨ててはいけないもの。
やっぱ、"衛宮ごはん"の経験値が生きてる気がするなぁ…。
一方悪鬼は日常を箱の中に閉じ込め、血の饗宴に身を沈める。家族の交流こそ偽り、暴力と殺戮こそ鬼の日常。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
うどん屋でのほっこりコメディと、裏通りでの惨劇を同列に配置することで、炭治郎と無惨を対比する筆は更に強さを増す。ホントろくでもねーなクソ鬼…。
鬼になるにも資質がいる。普通人は無惨の血に耐えられぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
そういう描写があったことで、禰豆子の特別さもより強調された気がする。
やっぱ主役サイドはどっかが特別で、同時に普遍的な価値を蹴飛ばすことのない、むしろ率先して普通を守るべく体を張るようなバランスが、ワクワクして良いと思う。
無惨は哀れな犠牲者に、生白い吸血鬼の肌を完璧と誇る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
わざわざそれを口にしなければいけないのは、只人をぶっ殺さないと気が済まないのは、当然完璧ではないことの証明でもある。
永遠に生きる。全てを奪えるほどに強くなる。人の中に蠢くどす黒い感情に、超常のパワーを貼り付けた浅ましさが吠えた
無惨が背負う『あんま凄そうじゃない感じ』は、キャラの体温を伝える上でも、炭治郎が背負う『あんますごそうじゃない感じ』と対比する意味でも、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
人の悪い部分を加速させたラスボスと、人の善い部分を煮詰めた主人公。二人の日常が描かれる中、対比がよく見えた。
赤い花に導かれ、兄妹はもう一人の『人を食わぬ鬼』に出会う。赤い花がなんとも艶かしくて、良いフェティッシュである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
禰豆子ちゃんのスーパーリラックスが微笑ましいが、畳の作画がマジ凄い。縁の細工までしっかり見える。眼福である
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無惨から辿る道は途絶えた、禰豆子の人間復帰。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
吸血鬼という病の根絶を、珠世はささやく。あまりに渡りに船、裏を勘ぐりたくなるが、炭治郎の鼻は善悪を見分ける。
彼が『裏なし!』と判断したのだから、珠世さんは信頼してもよいのだろう。声もまあやだし。
人食い鬼だろうとコメディするし、残酷と爆笑は同居できてしまう。このお話の乱高下するテンションは、パッと見の印象を素朴に信じさせてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
どんだけ人間っぽく見えても、その奥にどんな闇を隠しているか。そんな疑心もまた、退けるべき鬼なのかもしれないが。
炭治郎にとっては盲亀の浮木優曇華の花、可愛い可愛い妹を助けられる唯一の希望であるし、共闘も納得である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
アイツ、ほんと妹好きすぎ。妹が可愛いのはあまりに当然だから『醜女』言われて飲み込むまで時間かかる所とか、シスコンの鑑だと思う。
ウンウン判る、禰豆子ちゃん可愛いからねぇ…。
光の中の希望をかき消すように、隠蔽を暴いて襲い来る手の目の鬼、鞠の鬼。世界が鬼の領域に飲み込まれたことを顕すように、フッと暗闇に包まれる演出が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
この無明を、鬼滅の刃と人食わぬ鬼は手を携え、打ち破らなければいけない。
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手の目が見据える異形の感覚も、非常に良いエフェクトでおどろおどろしく活写されていた。キモいよー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
炭治郎の鼻、珠世の香気。世界の裏側で戦う戦士が見据える、異質な感覚を"絵"に落とし込み表現する技法は、多彩で見事だ。
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『異質化した感覚』は結構大事にされてる印象だからが、今後聴覚とか触覚とかが異常発達したキャラも出てくんのかなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
センスと思案で、作品を貫通する背骨をぶっとくおっ立ててる作品なんで、見て取ったテーマが今後どう生きるか、色々考えてしまうね。豊かなことだ。
遊具であるはずの"鞠"が家屋を破壊する、怪物からのご挨拶。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
同盟締結寸前で水が入った形だが、炭治郎はどう戦うか。珠世と愈史郎の実力やいかに。次回も楽しみ。
愈史郎、合気っぽい投げ使ってたけども、この頃合気創生期なはずなんで、柔術の技法なんかね…見た目通りの年じゃないだろうしね。
追記 作品世界の境界線は、あくまで創作者が引くしかない。その鮮明さが作品の輪郭線となり、多彩さが奥行きになっていくのだ。
鬼滅追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
『シャレにならない状況に、シャレをぶっこんでくる』スタイルは同時に、『シャレにならない絶望を相手に、シャレを諦めなくても良い』ということでもある。
どんな地獄に投げ出されても、人は笑うし腹も減る。生きてる限り生き続け、死んでも思いは名残り続いていく。
そういう人間のタフネスを信頼しつつ、非常に厳しい試練を積み上げてくる所も、どっか"ジョジョ"っぽいなぁと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
人の可能性と暗黒、世界の優しさと残酷。両方しっかり見据えて、簡単に境界線を弾かない姿勢は凄いと思います。誠実だし知的だ。
炭治郎が惨劇からコメディに帰還したように、無惨は偽りの日常から裏通りの地獄に踏み込む。それこそが"鬼の日常"なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年5月25日
日常と惨劇、鬼と人間、笑いと悲劇。その境目は常に揺らいでいて、鬼滅の刃はそこにこそ置かれている。
無惨は炭治郎を影から照らす、良い悪役だと思う。卑近なとことか。