どろろ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
運命という怒涛は、全てを押し流して狂奔する。流れ行く定めは新たな出会いを生み出し、全てが炸裂する瞬間へと繋がっていく。
戦迫る醍醐に、鬼神が迫る。竜巻く怒りが命を奪い、どろろは母なる存在に抱かれ、流されていく。そして新たな決断と犠牲が、新たな鬼神を生む。
という感じの残り三話、アニメどろろである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
妹は渦巻き、兄は竜巻。縁で結ばれた兄妹は己を超えたものに押し流され、戦争と平和を駆け抜けていく。
どろろの祈りはいかにも儚く、甘っちょろい夢を呟く裏側で兄貴が大虐殺している絵面、そこにもう一人の兄弟が鬼に落ちて向き合う展開は極めて残酷だ。
自分の体と身内、非嫡子としてのプライドをズタズタに刻まれ、その損失を鬼神との約定、百鬼丸の身体を略奪することで埋め合わせる。綺麗なお坊ちゃんはようやく、地獄流しにされた兄と同じ立場に立った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
こうなるしかなかったとも言えるし、こうなってしまうのかとも言える、運命の衝突点。
人であることではなく、鬼になることでしか向き合えない兄弟の悲惨。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
国のため、主のために己を捧げる決断すら許してくれない、あまりの無残。
ツンデレ村、遥かなり。旅路の中で繋いだもの、見つけた手触りが全て嘘だったかのような極悪な結末は、しかし全てのピースがパチっとハマる気持ちよさを持つ
そこに悦楽を見出すべきか、嘆き悲しむべきか、怒り狂うべきか。感情のもって行きどころがいまいち解らぬが、多分それは豊かなことなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
どちらにしても、運命は転がっていく。逆流に流され、あるいは抗いようのない激しさに押し込まれつつ、もう、行くべき所まで行くしかないのだ。
お話の流れは巧妙に、人々を分断しつなぎ合わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
炎の馬と百鬼丸、多宝丸と陸奥・兵庫、母とどろろと琵琶丸。全ての運命が交錯するクライマックスまで、三組の”家族”(不在の醍醐も加えれば”四”か)は対面しない。
それぞれがそれぞれのルールを抱え、地獄までまっしぐら走り続ける。
鵺を殺し、どろろを奪われた百鬼丸は命を掴めない自分の腕に、強い怒りを覚えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
まともな腕を返せ、誰かを助ける資格をくれ。
そう吠えながらむき出しの刃を構える彼は、同じく裸馬に戻ったミドロ号と一体になる。
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誰かに押し付けられた馬具など、もういらない。他人を殺すための道具になりきって、炎の竜巻として全てを燃やし尽くしたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
百鬼丸は、赤いオーラをまとう鬼神と化す。それは問答無用で切り頃サラなければならない、彼の敵そのものだ。これまでの退魔行が、百鬼丸自身の死を約束してしまっている。
鬼のままでは死ぬしかない。深い悲しみの中で、人は鬼になるしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
乱世のルールそのものと一体化した百鬼丸は、子を奪われ兵器に使われたミドロ号と、深くシンクロする。
アヤカシになってしまう弱い人間、今まで彼が切り捨ててきたものに取り込まれていく。
それは立ち止まることのない嵐で、見下ろす国は憎悪の対象でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
オレから奪ったもので栄えるのであれば、どんな幸せがあろうと死ね。高いところから見下ろす視線は、これまで描かれた為政者の義務の、ちょうど反対側を暗く照らす。
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それを押し止めんとするのが、多宝丸とその一党である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
手足を斬られ、病に倒れることで彼らは、”奪われる弱者”に近づく。
慈愛と責務で接近しつつも、けして同質化出来なかった報われぬ民草。身内が病に倒れることで、彼らは百鬼丸やどろろと同じ地平に立つ
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瘟避けに隔たれた、陸奥の病室。『お前…女だったのか…』とか定番のレス返してる場合じゃない、ガチ疫病に苦しみつつ、陸奥は自分を捧げ国を守ろうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
それは百鬼丸に押し付けられた強制的剥奪ではなく、苦しい決断の果てに合意された契約…になるはずだった。
城の中では突破できなかった壁を乗り越え、多宝丸はリスクと公益を共有する。病が感染する危険、命を捧げる苦しみ。それを共に受け止めてこそ、真実”家族”だと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
しかしその決意は、鬼神の奇妙な厳密性で跳ね除けられる。『お前は長男ではない、正当な世継ぎではない』と。
ここで武家を縛り付ける血の理、多宝丸のブラザーコンプレックスを刺激してくるのは、ホント悪魔的だなと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
未来の領主とおだてられ、しかし母の愛を不在の兄に独占され続けてきた多宝丸。欠落を埋めるように”正しく”生きていた結末、郎党の命を捧げ国を守ろうとした願いも、跳ね除けられてしまう
父も母も悪魔も、オレを正しい世継ぎと認めぬのならば。疎まれつつ求められる兄と同じ、呪いと祝福のサイボーグになるしかないではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
多宝丸は捧げられた身体を奪い、郎党は最後の鬼神となる。血の通った弟殺せば、人間に戻れるわけだ。
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多宝丸は顔を覆っていた布を外し、鬼神の瞳を晒して百鬼丸と向き合う。もう、取り繕った正義はいらない。優しさも痛みもかなぐり捨てて、奪われたものを奪い返し、繋ぎ合わせて生きていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
(再生する瞳がちょっと女性器めいていて、良いエロティックだと思う)
五体満足だった多宝丸は兄に斬られ、嫡子としての正当性、贄としての資質も奪われ、バラバラに引き裂かれた。どん底に落ちることで、ようやく兄弟は対等になったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
鬼の理が全てを支配する、嵐の乱世。その困窮がこの兄弟相克、奪い奪われる修羅の巷であろう。き、キツい…納得できるがキツい。
ミオ相手のときはなんだかポジティブに聞こえた『奪われた分、うばいかえしてやるんだから!』が、多宝丸を鬼神に落とし、百鬼丸を殺戮者に変えた今となっては、おぞましく響く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
略奪に略奪を跳ね返すシンプルなルールは、元々そういう色合いなのだろう。シンプルであるが故に、否定し得ぬ強さがある
これを否定したいのが母妹同盟であり、尊卑入り交じる彼らの道のりは、奇縁で揺られていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
母の決意で地下牢から出されたどろろは、やはり最初母の身勝手を否定する。『お前にそんな資格はない』という、正しさで距離を開ける。
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しかしその暖かな衣に包まれ、”おっかちゃん”の母体に回帰することで、どろろは母が人であり、言葉が通じる存在であることを理解してしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
そのコミュニケーション可能性こそが、どろろの強さであり、主人公としての唯一性でもある。百鬼丸が義肢で掴みかけて、ぶち壊しに仕掛けているものだ。
微かな灯火に手を引かれ、暗闇を抜けていく。扉を開け、閉じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
あのときと同じように水辺に漕ぎ出す時、母は決意を固めて緑の衣を脱ぐ。それは醍醐領主としての”正しさ”よりも、子を思う母としての温もりに身を投げた現れだ。髪の毛の感じも、心なし柔らかいか
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何かを脱ぎ捨てる。顕にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
これまでも印象的に使われてきた演出だが、今回子供たちがむき出しの暴力性、どうにもならない運命の困窮を見せるのに対し、母の脱いだ衣は譲歩や対話を意味するように思える。
両極的な”人間らしさ”が顕になる中で、物語はどちらを選ぶのか。気になるところだ。
運命は激流に流され、しかし悲惨は(まだ)女たちの命を奪いはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
今まさに兄貴を背に乗せ、殺戮の大嵐となったミドロ号など知らぬまま、その子はどろろと邂逅を果たす。琵琶丸もまた、運命の舞台に顔を見せる。その背後を流れる”河”の清らかさ、抗えぬ勢い
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清水に心を照らしつつ、奥方様は手を水に濡らす。祈りだけを抱えて部屋に引っ込んでいた過去と決別し、自分の足で走り抜ける道を選ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
それは病で死ぬよりも、国の礎にならんと願った陸奥と同じ、”人間らしい”行いなのだろう。そして、それが実を結ぶとも限らないのが乱世である。
情が徒花、咲かずに散るか。あまりにも無力で、あまりにも真実な母と子の祈りが、どこかに届きうるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
激流に押し流された分、人情チームは到着が遅れた。その間に兄弟は引き返せぬ際を乗り越え、たっぷり殺し、さんざん奪った。
その生々しさを前に、祈りがどれだけ力を持ちうるか。
話をこの方向に引っ張っていくと、もう全てが丸く収まるハッピーエンドは望めないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
誰が死んでもおかしくはないし、何が起こっても不思議ではない。
そう思わないと、あまりに人間的だった兄弟の末路を、受け止めきれない気もしている。ある種の諦めを、自分の中に準備しておく、というか。
鬼神は殺す。ずっと貫かれてきたルールは、殺戮者になってしまった百鬼丸を殺すだろう。鬼神になってしまった多宝丸を殺すだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
そこに何らか、例外を生みうるのか。鬼神の力に頼らない可能性、刃を収める”鞘”たる義手を、祈りとエゴを超えて捧げた寿海もまた、運命の結節点に顔を見せている。
となると、もう一人の”父”…醍醐景光が不気味に控えているのは気になる。乱世の理全てが決算されるクライマックス、全ての起因となった男は一体、何を果たすのか。何を見せるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
それは今回、周到に準備”されなかった”部分である。来週こえーなマジ…。
多宝丸が百鬼丸と同じ地平に落ちていく展開が非常にスマートで、納得したくないけど納得してしまう運びでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
赤い殺戮と、白い無意味しか見れなかった百鬼丸の視界に、鬼神の肉体(≒百鬼丸の奪われた身体)を獲得することでようやく、弟は入ることが出来た。なんて悲しい宿願の成就なんだ…。
このまま『あー…どうにもなんねぇな…』と冷たい納得に押し流され、全てが赤く染まるのか。それとも微かな祈りが力となって、不条理を動かしうるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年6月11日
残り二話、今まで紡いできた物語が全て問われる展開となりそうです。沢山の悲惨と、微かな灯火を同居させていたお話がどう終わるか。楽しみです。