彼方のアストラを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
漂流の日々は続く。不和と疑念を抱え込みつつ、少年たちは力を合わせ、一歩ずつ明日へ進んでいく。共同生活の中生まれる信頼、かすかな希望。
それには形のない謀略、形ある危機が常に付きまとう。
願いをかなえるはずの流星が、船殻を貫き死をもたらす場所。宇宙に僕らはいる
そんな感じの宇宙漂流記第三話、未知の惑星以外にもヤベーピンチは沢山あるぜー! というお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
B-5の九人を殺処分するべく仕組まれた謀略という、形の見えない危機。
メテオロイドによる重力制御装置故障という、目に見える危機。
サスペンスが加速し、キャラの陰りが見えてくるエピソードである。
お話は明暗を行ったり来たりしながら進む。惑星一個踏破した程度では、チームの絆は完璧には当然ならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
キト公は相変わらずピンチにワーワー騒ぐクソアマであるが、同時にフニシアを『うちの』と大事にしたり、医療技術を活かし仲間を助けたり、アリエスにちゃんと謝ったり出来る。
惑星ヴィラヴァースでの冒険は確かに彼女を変え、母の重たい鎖から少し開放した。それは偉大な一歩だが、人格が完全に変わるわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
今まで培った個性というモジュールを、衝突のために使うか、融和と前進に使うか。キト公のヒステリックな部分に、『その舵取りが大事』というスタンスが見えた
キトリーが一歩踏み込んだ変化への歩みを、次に予約されたのはウルガーとユンファ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
『不出来な自分との関係を隠す』父と、『アナタほんとに何も出来ないのね』と枷をハメてくる母。誰もが父母…始原条件を定めてくる存在との関係に、問題を抱えているようだ。
ウルガーは銃を隠し持ち、尖った態度で"なにか"に復讐しようと企んでいる。そのために鍛えた腕前は、謎の生物を撃ち抜き、仲間の命を救う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
窓際に身を寄せていたバッドガイは、命の危機を通じ、仲間と至近距離で触れ合う。
© 篠原健太/集英社・彼方のアストラ製作委員会 pic.twitter.com/dd6ei47Ys5
あるいはユンファ。第1話で『宇宙でヘルメット被らないと死ぬ』というルールを強調しておいて、それを守れない彼女の鈍さ、縛り付ける鎖の重さを見せる運びは巧妙だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
涙の代わりに飛び交う水滴が、彼女を窒息させる。それをキトリーが救う。
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あまりにも重たく押さえつけられすぎて、彼女の涙腺は壊れてしまった。枯れ果てた涙はしかし、確かに彼女を殺す。能力を発揮できないことは、宇宙サバイバルにおいては致死的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
しかしその重しさえ取れば、彼女もまた欠落を資質に変えて、仲間を助けることが出来るかもしれない。
ウルガーはグルーガン狙撃で良いところを見せたが、ユンファは現状ダメダメである。そらー暗い部分にも沈むが、いつものようにアリエスがなんとかしてくれるよ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
いやほんとこの子、人間関係の視野が広く、適切なタイミングと強さで接触を恐れない子ね…いないとギスギスで死んでるなB-5班。
予備の発電機にアリエスが思い至る展開も、彼女の写真記憶という資質があって成立している。彼女は懐の深さと記憶力、2つの資質を最適に生かして、仲間の生存に役立てている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
キト公がウザがる"家業"が、ユンファの救命に役立ったのも良かった。トラウマと才能は使いようであるな。
全員が資質を最大限発揮しなければ、乗り越えられない大ピンチ。今回の着陸騒動も、眠っていた(あるいは眠らされていた)資質を目覚めさせ、より良い方向へと重い過去を動かし直す契機となった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
アクシデントが必ず精神と人生の変化、共同体の中でのポジション変化に繋がっているのはパワフルで良い
惑星シャムーアもまた一筋縄では攻略できず、様々な危機が襲うだろう。ウルガーが握りしめた砂糖菓子の弾丸、ユンファを縛り付ける重たい鎖が、危機を呼ぶだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
しかしそこを乗り越えて初めて、少年は親を乗り越え、自分を見つけられる。宇宙放浪はよりよい自己像という、宝を探す旅でもあるのだ。
そこで終われば漂流ジュブナイルであるが、ここに謀略サスペンスの要素が加わっているところが貪欲で、面白いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
誰が刺客か。それはどんな人物なのか。容疑者リストを洗い直し、ヒントと疑念を深めていく展開が、アクションと並列して進行していく。
B-5班にメンバーを集め、まとめて殺処分しようとする企み。フニシアの養子縁組、アリエスの転校をコントロールできるくらい大きな存在が、この事件には関わっているわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
しかし少年たちには心当たりがない。殺されるほどの秘密とは何か、それを見つけるのも大事なミステリとなるだろう。
刺客は自分の死を前提に計画を組んでいる。それでも構わないと思えるほどの虚無は、誰のどんな過去に隠れているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
厳しい環境がチームワークを求める以上、疑念より信頼軸でB-5班は進んでいくしかない。その過程で、色んなメンバーの色んな過去、色んな傷と鎖が顕になっていく。
このお話が、起点で自分を縛り付けるものを克服し、己の方向性を己で定めていくジュブナイルの構造を持つ以上、現実の問題克服は常に内面の問題克服と連動している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
そのためには伏せられた過去が顕になる必要がある。次回以降、ウルガーとユンファが、そして彼らの仲間が挑むものだ。
ハードコアな試練を前に心のヴェールを剥がし、鎖を引きちぎって前に進む。キトリーが惑星ヴィラヴァースで演じた成長劇は、今度はチームにうまく馴染めないバッドガイとゴスを射程に捉えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
そうやって物語が進む中で、最後まで過去が伏せ札な存在が、おそらく刺客だろうなぁ…。
一個一個の物語養素をしっかり連動させ、活用するのがこのお話はうまい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
アリエスのオッドアイも、それを気にかけるシャルスも、多分伏線だろう。シャルスなー…刺客検討会議の時、一人だけ積極的な発言してないんだよなぁ…。
疑いはさておき、着陸だけで命がけ、宇宙漂流はなかなか大変である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
のんきにメシ食ったり腹鳴らしたりしてた日常パートから、カナタのリーダーシップが吠える非常事態パートの落差が良い。そして日常と非日常は確かに繋がっていて、日常で培ったものが危機克服に生きてるのも良い。
カナタとアリエスはつがいに成るように描かれていると思うのだけど、『なんかあったら私に言って!』という言葉が、無意識に共有されてる所とかチャーミングでいいよね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
ゲキヤバ状況で自分を助けてくれる人に、静かに惹かれていく引力。清潔感あるロマンスもまた、貪欲に盛り込まれているね。
色んな物語のタネと、これまでの描写が生み出した花が危機で映えるエピソードでした。ルカのエンジニア能力も描写されたし、やっぱ凸凹チームがガッチリ噛み合っていく描写は良いなぁ…物語にトルクがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
撃てない少年がいつ、その銃弾を放つか。泣けない女が、いつ泣くか。
陰キャ二人の機能不全と、それが"何か"を突破していくカタルシスも危機の中でしっかり準備され、しっかり計算された物語フレーム、そこに宿る青春の熱量を感じるお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月17日
やっぱ終わりから逆算して作ってる感じだな…話の構造がミステリっぽいわぁ…面白い! 来週も楽しみですね。