荒ぶる季節の乙女どもよ。を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
青春はいつでも綱渡り。危うい境界線上の上を、僕らは涙目で歩いていく。
泉少年との距離感は制御不能な和沙。
心無い編集者へのリベンジを誓い、青い冒険に漕ぎ出すひと葉。
部長としての使命と、肥大した自意識の不均衡に悩む曽根崎。
みんな悩んで大きくなる!
そんな強い子元気な子のアニメ、荒乙第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
今週もバカどもが元気に大暴走しており、チャーミングでとても良かった。
作品が肌に馴染んでくると、題材のエグさや大暴走の面白さだけでなく、細やかなテクニックにも目が届き出す。そこら辺見る余裕が出てきたのも、なかなか楽しい。
このお話青春群像劇なので、色んなキャラの色んな顔が見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
バカ男子サイドを代表する泉とミロ先生が、暴走女子にぶん回されつつ彫りが深くなってきたのはなかなか面白い。
基本、モブとネームドの差が激しい劇作だからな…男ってだけで、解像度が下がりがちな所を上手く補った。
"大人"で一括りにされる、無理解で冷たい存在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
"Don't trust anyone over 30"とばかりに、少女の味方にはなってくれない冷たい世間。
ひと葉先生を嘲る編集者のヤダ味はなかなかエグくて、涙目でリベンジを計画する彼女を思わず応援してしまった。マジ酷いな製本経済ッ!!
文芸部は自意識を暴走させ、学校という共同体から浮き上がるアウトサイダー達のシェルターである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
そこに逃げ込まなければ生きていけない排他律を背負って、大概の大人は子供の事情を解ってくれない。
キッチリハメられ(あるいはハメそこなって)顧問になったミロ先生は、そこに橋を架けるのか?
最悪の出会いでシェルターに潜り込んだ"大人"がどういう仕事をするか、なかなか楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
同時にズレた位相から手を差し伸べてくれる"大人"もいて、和紗の両親はえすいばつの先にあるもの…出産と家庭の幸福をラブラブに語る。
いや正しいんだろうけど、ちょっとチゲーんだよな…。
結局の所"そこ"に間違いなく行き着くのだが、平凡で完璧な正解にたどり着くまでには、長い長い回り道を自分の足で歩かなきゃいかん。みんな悩んで大きくなったのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
そんな上から目線は、現役で青春タイトロープを綱渡りしている張本人には知ったこっちゃない。こっちは戦争中なんだ!
しかし幸せで優しいゴールが和紗の身近にあることで、作品がなんか良いところに落着してくれそうな安心感があるのは良いことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
エグい性的荒廃にクローズアップするように見えて、存外マリー脚本は人間と人間の魂の交流、その具現としての(性)交渉を大事にもする。
ちと脱線するけども、岡田さんが脚本やった"ひそねとまそたん"いうアニメがありまして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
そこで露悪的に放埒な男が主役の一人に思いを伝える時、『じゃああたしをどうしたいの?』『大事にしたい』ってやり取りをするんですよ。
あ、その時の感想は↓です。https://t.co/G1R9qrZNGT
こういう下世話と詩情の混じったパンチラインを見つけるのが岡田麿里はとにかく上手くて、第一話の"豚汁"にしても今回の"わがままフェアリー"にしても、ゲラゲラ笑うけども妙にしっくり刺さる言葉を、話の流れで自然に出せるのは本当に稀有な才能だなぁ、と思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
上手く落とし所を見つけられず、ウケ狙いが上滑りするときも当然あるけども、見つけた言葉と伝えたい思いが噛み合った時のグリップ力は凄い作家で、本作はそういう強さがいい方向に出てるかなー、と思っています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
あの花第一話の『め~んまが好きなのは~、かきたま~』とかも好き。
話が脱線してきたので元に戻すと、今回のエピソードは和紗(+泉)、曾根崎、ひと葉(+ミロ先生)の三軸で主に進んでいきます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
それぞれ別の場所、別のギリギリっぷりで性と青春に向き合う彼女たちは、いくつかのモチーフと表現を共有する。
一つはなにかに反射された曖昧な像であり、ガラス越しとか、モニタの向こう側とか、街灯広告とかに自意識とセックスを、ぼんやりと屈折させてみています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
それは虚像…ともいい切れない、蜃気楼みたいな曖昧さと綺麗さがある。
© 岡田麿里・絵本奈央・講談社/荒乙製作委員会 pic.twitter.com/SX6IK3CYfL
菅原氏も泉も、曖昧なイメージの中での"異性"を実像と重ねてみて、ギャップを修正していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
だけどそれは重なりきらず、お互いにとってのボヤケたミステリとして、謎だからこそ惹かれる存在ともなる。
格子の向こう側で手招きする、不可思議な真相。女に性欲、有りや無しや。(A:ある)
大暴走自意識を二枚重ねの袋で包んで、わがままフェアリーを目指す曾根崎パイセンも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
屈辱に涙を滲ませつつ、ネット越しのセックスを空転させるひと葉も。
よく分からない存在を直視せず、反射や屈折を介して接近していく立場にある。
そのよく分からなさと、それでも視線は通って曖昧ながら見えている事実とが、上手く彼女ら(を取り巻く彼ら)の状況を可視化していると感じました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
お互いよく分かんねぇけども、それでも隣りにいて、だんだん近づき、また離れていくモノ。そういうものばかりがそこにあるのだ。
天上にカメラを据えて、転倒した視界を切り取るカットの多さも、彼らの奇天烈な世界を上手く伝えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
それは俯瞰の物分りの良さではなく、世界を奇妙なポジションで生き抜くしか無い変人の悪戦苦闘を伝えてくる。
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そして境界線の上を、あやふやにフラフラする少女達の描写。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
ハメた先生の実像を見ようとして、アリスのように鏡の中を覗き込んだひと葉は、しかし"ミロ"の真実の意味を知ることはない。
踏み出せば墜ちるかもしれない不明瞭を前に、震えながら周囲を確かめ、それでも踏み込む季節。
ひと葉は運命の13:00を確認し、セックス領域へ一歩を踏み出す。覚悟を決めて生身の接触しようとしたら、いたのは先生。点字ブロックが、自暴自棄な初体験を危うく阻む。
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薄暗がりを駆け抜けようとして、信号機と(再び)点字ブロックに阻まれて、姉のパンツを脱がして飛び込んだファースト・コンタクトは失敗に終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
悪い顔して部の危機を救ったセカンドコンタクトは、教師と生徒の一線を越えた脅迫となる。
ではサード、あるいはフォースは? 超えるべき線はどこに?
綱渡り、あるいは予防線。少女達は危うい場所で足踏みしつつ、幸運と他人に助けられながら、青春を迷っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
複数のストーリーラインが絡み合いつつ、奇妙に共有するままならなさ、肥大した自意識、そこを埋めるセックスへの興味。曾根崎パイセンも、線の上を歩く。
わがままフェアリーへの変身ステッキを抱え、素敵男子からの魔法を反射させながら、彼女は線を踏み越える。回り込んで魔法を開いて、鏡に写った自分を見る。
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なんとも薄汚い白雪姫だが、わがままフェアリーの魔法は彼女をモテ系プリンセスに変えるか、はたまた悲惨な空回りにたどり着くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
相変わらず曾根崎パイセンは大変可愛らしく、今後も大暴走して欲しい。部長としての責任を真面目に受け取っているのが素晴らしい。あと"グッド・バイ"ね。太宰かよ。
そして和沙はパンドラの箱を明けて、また一つセックスに接触する。思い出のジブリ映画の皮を被った、溢れる獣欲の象徴。幼さと隣り合わせに、爆裂する性欲。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
まーた露骨なメタファー構図が唸るぞ! この構図の後、パパママと出産トークするのホンマ…。
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和紗は畏れて遠ざけるしか無かった性欲のメディアに、一度は触れて"泉らしさ"を見つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
痴漢バスBDを何故選び取ったか、屈折する乗り物へのインファンテリズムをしっかり理解し、性欲のモンスターではなく、泉個人を見つけて撫ですさる。
セックスはそう云うふうに、人間に繋がっているのだ。
しかし掴みかけた答えは、間の悪い泉の乱入と真っ直ぐすぎるレスポンスでグチャグチャにされ、ポタリポタリと涙が落ちる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
よく分からねぇリビドーの対象にされたくもないし、完全に眼中にないのも悲しい。どうして欲しいかと言えば,多分大事にしてほしいのだ。
しかしその"正解"はネジ曲がって遠ざかり、どっかにぶっ飛んでいく。自分でもよく分からない感情を前に、とりあえず早口言葉十回。時間稼ぎで間合いを明けて、二人の(そして二人とセックスの)距離感は再度グチャグチャである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
君らも難儀だなぁ…まぁ思春期、だいたいそんなもんだ!
完全に大迷走するわけではなく、たどり着くべき答えのヒントを触りつつ、しかしそこに至るまでの回り道をおかしく、少し悲しく、愛おしく描いてくれるこのアニメらしさが、色んな場所、色んなキャラで暴れまわるエピソードとなりました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
そう。オカズのチョイスにも色々クソ面倒くさい思い入れがね…
ボーイと元ボーイの屈折した性欲、成功なんだか失敗なんだかよく分かんねぇ異性コミュニケーションが切り取られたことで、別角度から作品が切り取られて、奥行きが出た感じもあるね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
今後もトンチキを転がしつつ、近寄っては離れ、間違っては成功し、関係が変化していくのでしょう。面白い。
菅原氏と泉のコンタクトが、お互い遠いものに手を伸ばそうとする野心と不安、異質な存在を尊重しようとする不器用さに満ちてて、なかなか良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
和紗との正面ぶつかり稽古もいいけど、菅原氏とのシニカルな掛け合いも、泉ボーイを可愛く見せてくれるよね。和紗大切にしてはいる所、グッドよ。
フニャフニャと曖昧な蜃気楼を追いかけながら、迷子のアリスは綱渡りを続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月20日
その細いラインの先に、一体何が待つのやら。線と線が交わった時、一体何が生まれるか。
青春悲喜劇はまだまだ続く。次回は『何故文芸なのか』に踏み込みそうで、非常に楽しみです。一番惹かれたポイントだからねぇ。