ギヴンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
迷いと思いが絡み合って、僕らをどこかに引っ張っていく。
空を見上げても、雪は降らない。それを知りつつ見上げてしまう。届かない光を求めてしまう。
死者の引力を引きちぎる恋が腐敗して、嫉妬の香気を醸し出す。
蓋をした秘密を、解き放つか、隠すか。
僕たちは境目に立ち続ける。
そんな感じの、亡霊と嫉妬、かたちのないものが忍び寄る(Creep)ギヴン第6話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
真冬の過去に踏み込もうとして、恐ろしくてできない。クソアマのアウティング爆弾を投げつけられた真夏の足踏みと、無言で静かに歩む真冬の歩み。
それを見守る年上達の、一見優しく、しかし強く軋む視線。
爽やか音楽群像劇に、微かな腐敗臭が心地よく漂ってきて、それぞれが胸に秘めた獣が唸りだした。良いよ…こういうのを待ってたよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
今回はセリフで言わないシーンが相当に多くて、色々考えさせられた。モノローグの詩情と同じくらい、無言の情景がよく喋ってて好きなアニメだ。
詩情は名前にもかかっていて、真冬の昔の恋人が”由紀”というのがいい。由紀はユキであり雪でもあって、冬につきものの美しい存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
静かに降り積もり、しかし恋の季節は終わってしまった。もう雪は降らないと知っていても、冬は自分を埋めてくれたものを恋しく思う。
それは死の冷たさを宿した愛おしさであり、触れ続ければ凍って死んでしまうものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
真冬は生き延びてしまった者として、雪を溶かす立夏の熱量と隣り合って生きていく業がある。
降らない雪を町続けるよりも、新しい夏に溶けていくことこそが、死人の供養となる…のか。
真冬、立夏、由紀。生者と死者の三角関係を舌の上で転がして、勝手に思ったことだから確証はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
しかしまぁ、甘やかで少し痛い、アイスクリームのような恋が二人(と、不在なもう一人)の間で転がっていくのは間違いなかろう。とんでもなく凶暴なものが暴かれる恋路に、物語は静かに進む。
世界は立夏と真冬二人で回っているわけではなく、色んな人がそこに絡んでいく。それぞれの質感と質量を込めて衝突する、心の音がハーモニーを生む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
真冬の幼馴染たちが、切実の中に優しさを宿した男たちで好感だった。
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口下手な真冬は音楽以外の言語を持ち得ず、それを与えてくれた立夏は特別な地位にいる。どれだけ相手を思っても、幼馴染たちは由紀の死を超越して、真冬の特別な存在にはなれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
少年はギブソンを背負って、光の方へと歩いていく。希望、あるいは死者が待つ天国の方へ。生者は地上に置き去りだ。
その届かなさを秘めて、鹿島くんは薄暗い視線を下に向ける。それを受け止めるように、八木くんは頭を撫でる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
幼馴染の死に傷つきつつ、そのふらつきを支えようと不器用に手を伸ばしてくれる少年ばかりで、ジジイはちょっとうっとりしてしまった。みんな優しいねぇ…。
鹿島くんは”柊”、八木くんは”玄”純と、これまた冬に関わりのある名前なのも面白い。(玄冬は五行での冬の言い回し)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
雪が溶けて終わってしまった冬に、彼らは閉じ込められている。立夏くんはそこに関わりがないからこそ、疎外もされるし突破も出来るのだなぁ…”冬”の一族ではないわけだ。
想い人が過去と触れ合うのを尻目に、立夏は秋彦の訪問を受けて、グジャグジャの心境を吐露していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
愛憎ないまぜになったラベルのつかない感情を、己の過去と照らしながら見つめていく秋彦。それは多分、恋という名前の呪いだ。
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『誰なのよそのモジャモジャヴァイオリンッ!!!』って感じだが、秋彦にもまた、運命のように出会ってしまった人と思いがいるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
それが綺麗なばっかりじゃないのも、なんとなく察せられる。こういうドロッとした部分を、春樹は知らねぇからなぁ…確実に地獄っすわ!
ここで真夏の感情を、察しつつ見守って大事にしているところはとても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
それがどういう思いなのか、似通っていても別のものだから。秋彦は真夏のプライドを尊重する。
お前の歌には、お前が言葉を見つけるしか無い。その手助けはするけど、傷も喜びもお前が受け止めるんだ。
良い兄貴分であるな。
この作品では感情の産婆役になるのが”音楽”で、グジャグジャの感情も『曲を作る』という共同作業を通じて、なんらか形になっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
顔を合わせにくい相手の目をしっかり見て、コミュニケーションの助けにもなる。
高校組と大学組、きっちり分割されたライン
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自分を被検体に、恋と欲のドス黒さにたっぷり浸ってる(浸ってそう)な秋彦は、のんきな春樹の地雷原ダッシュを諌める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
そこは、事情を知らないオッサンが踏み込んで良いところじゃない。”線”をよく見ろ。
嵐の真ん中でぶつかり合う当事者を、秋彦はよく見て尊重しているように思う。
春樹は最年長なのに、もしかすると一番ピュアで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
勝てない死人に思いを焦がす立夏とも、死人と向き合いすぎて言葉を失くしちゃった真冬とも、なんか濃いめの泥に腰まで浸かってる秋彦とも、違う身軽さがある。
その清さ、軽さが救いともなるのだが、同時に踏み込む覚悟のなさにも繋がっている。
隔離された自販機スペースの奥に、真冬は一人で入っている。境目の手前に春樹はいて、恋の難しさを安全圏から問いただす。そこに踏み込み窒息するのは(まだ)彼の領分ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
年下の真冬は感情の水底から這い出して、初心な春樹と肩を並べる
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困惑し、捩れる立ち位置。恋をする重さ、それが奪われる苦しさを、春樹は未だ知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
『良い兄ちゃん』顔していても、傷一つなく守られた幸福が幼く顔を出す。このイノセンスの強調は、秋彦絡みで地獄を見る前フリだと思う。
ネンネの甘ちゃんに、赤黒い炎を見せてやるぜー!!(BL悪鬼乱舞)
同時にこの優しさが稀有なもので、とても強いものだということもしっかり見据えているのは、バランスが良いところ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
真冬の抱えた闇から離れて、秋彦と向き合う時、彼は無邪気に後輩を思い、優しさを言葉にする。それを見上げる、秋彦の憧憬
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汚れざる無垢を、上向きの目線で見上げるのはもうそれが自分にはないからか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
喪失したものへの上向きの視線は、今回真冬の日常を追うカメラが幾度も捕まえていく。
失ってしまったもの、儚く消えるものだからこそ、あまりにも愛おしい。視線を引き寄せる重力は、過去と無垢に向いていく。
真冬と立夏は死と秘密が(その内実は不明にせよ)暴露されているので、それに伴う感情の明暗、起伏とも向き合えるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
秋彦と春樹の間には、薄くて固い大人の壁みたいのがあって、真実も感情も(まだ)遠い。だから、春樹のイノセントは保護されて、真実に(まだ)辿り着けない。
秋彦が伏せ札にしているもの、春樹のイノセンスを遠ざけて守ろうとしているものに飛び込まなきゃ、二人の関係は始まらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
だが始まれば、もう安全圏ではいられない。秋彦が大事に見上げるものが、地上に落ちて泥に塗れる。
それでも運命は、轟音を立てて転がっていくのだろう。恐ろしくも楽しみだ。
お話は後半、アンビエントなBGMとともに真冬の日常を追う。ミステリアスだからこそ踏み込みたい、美しい少年として物語に登場した彼は、過去が少しずつ顕になり、体温を持つ人間になってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
今回の長回しは、そんな彼の息吹を視聴者に見せるシーンだ。緑色のライティングが、清潔で良い。
彼の世界は奇妙な静寂に満ちている。人混みに居ても交わることはなく、孤独で静謐な歩みを重ねていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
その浮き世離れした感じが、しかし当たり前の風景と同居していること。真冬くんが生きている当然が、じわじわと染み込んでくる。
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彼は日常を歩きながら、遠くを見上げ続ける。ここではないどこか、水の向こうの死者の国、あるいは思い出。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
巨大な喪失が、生者である彼をそこにとどめている。それは少し悲しくて、とても愛おしくて、簡単には出られない檻。
ラベルのつかない感情に困っているのは、立夏だけではないのだ。
静かに空や海、光を見つめ続け、それでも何処かに歩いていく真冬くんの歩みが、なんだかリハビリテーションみたいで綺麗だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
彼はこうやって、無言の中そぞろ歩くことで、己を癒やしているのだろう。その一歩ずつの先に、立夏と音楽との出会いがあって、思いが歌になりつつある。頑張れ少年ッ…!
真冬が目を奪われるものは『ここではない何処か』以外にもう一つあって、子供をよく見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
それは過ぎ去ってしまったもの。幼馴染と無邪気に笑え会えた時代は、巨大な喪失によって壊れてしまった。
雪の降る季節には戻れないけども、それでも残滓を追う
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彼が完全に孤独な、人っ子一人いない世界(そんなものは冥府以外無いわけだが)を歩くわけではなく、触れ合わないけどすれ違う他者に満ちた現世にいることも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
柊くんから強く伸びた感情を、上手く言葉で返せないけど共有し、反射していると”幼年期”に向ける視線からわかるのも。
だんだん見えてきた真冬の”情”と個人史をしっかり補強する、良いそぞろ歩きだと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
”青春ブタ野郎”に引き続き藤沢・鎌倉周辺が舞台になって、地元民としてはなかなかに楽しい。アニメのカメラは見慣れた風景を美麗な仮想に異化してくれて、不思議な驚きがあるね。
真冬が現世に死者の気配を、サウダージに今を生きる鼓動を見つける歩みは、緑色で何処か浮き世離れしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
出会ってしまった音楽と友人は、活力に満ちた透明な色彩をして、踊り場の聖域で待ち構えている。
色味の違いが、領域の違いを切り分けて面白い。
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ここで真冬が窓から遠い側に身を置いているのは面白い。一人でそぞろ歩きしている時は、彼は常に窓から天を見上げていた。手の届かない場所に、視線を投げていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
しかし立夏と一緒にいる時は、影に身を置いて視線を下にやっている。自分の中にある死者の名残を、静かに見つめて言葉を探している。
それがある意味祈りで、死者に引き寄せられつつ引きちぎって生きようとする咆哮なのだということが、今回書かれた透明な独歩から判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
そんな静かな決意に背中を向けて、立夏は己の中の嫉妬と向き合う。
正面から挑めば、けして勝てない戦争。何しろ死人は、永遠に変わらない恋人だから。
真冬が言葉にならない思いを歌に乗せ、形を与えることで死人を乗り越えようと宣言できたのは、立夏と出会い、ギブソンを修理してもらったからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
その出会いの特別さを真冬はしっかり噛み締めていて、だから静かな言葉で、特別な相手に特別な言葉を預けている。
でも立夏は、(まだ)向き合えない。
まぁオジサンは立夏ボーイがいっとう優しい子で、自分の中の強い思いを力に変えて、大事な人、大事な気持ちに逃げず戦えるってことを知っておるわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
そういうドス黒さと向き合うのも、セイシュンにおいてはとても大事で。春樹が踏み込めない領域に、立夏は一足先に飛び込んだ、とも言えるか。
忍び寄る陰りは、愛ゆえのもの。ただ暗く腐臭を放つだけでなく、何か切実な痛みを抱えた感情を何処に運んでいくか。青春は残酷なる美麗の中で、未だ踊りを続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
そんな感じの、静かできれいなエピソードでした。情景を的確に繋げることで、真冬の心境がよく見えたのが良かった。
心が見えれば話も進むわけで、進みつ戻りつながら二人の青春は確かに光の方へと転がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
真冬が抱えた死びとの恋わずらいが、完全に彼を支配してないと判ったのは良い。
もう一つの恋は無自覚なまま、ドス黒い臭気を隠して牙を研いでいる。地獄にさかしまに落ちていくのは、来週辺りからかなぁ…
すごい静かな語り口だけど、真冬が何を抱え込んで、何に縛られ何を目指しているのは判った。語らないからこそ、真冬の静謐なキャラクターがしっかり伝わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月15日
良いエピソードでした。この歩みを受けて、物語はどう進んでいくのか。恋と歌は至る所で待ち構える。忍び寄る。
来週も楽しみです。