からかい上手の高木さん2を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
体育倉庫、保健室。
二人だけの時間と空間が積み重なり、大気に熱がこもる。
夏。
挑発と震えは肌に食い込み、しかし効いてないふりの強がりで跳ね返して、お互いを誘い合う。
夏。
ひまわりの見守る帰り路を、君と行く。
そんな感じのサマーシーズン到来ッ! 女の目線に熱がこもる高木さん2第8話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
体育倉庫に保健室、二人だけの下校。陽炎のように立ち上る挑発がお互いの間を揺らめき、少し…いやかなり、えっちな雰囲気のエピソードであった。でも西片は清廉な男だからなぁ…踏み込むのは不可能ッ! 惜しいッ!
まぁ高木さんが強めにモーションかけて、西片がビミョーに気づきつつも踏み込めない構造はずーっと続いているので、ある意味通常運行とも言えるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
しかし”勝負”しやすい場所を転々とし、一生”択”をかけ続ける高木さんの姿は、いつもよりアグレッシブに見えた。夏だからだろうか…。
高木さんが西片を翻弄するであり続けることが、この作品を支えている。なので内面を言葉にすることは出来ず、しかし完全な謎だと可愛げは失せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
なので二期は、微細な感情をクローズアップで見せるカットが多い。目線、指の震え、唇。
©2019 山本崇一朗・小学館/からかい上手の高木さん2製作委員会 pic.twitter.com/lf2wR8RyPO
誘うように、探るように伸びる視線には色んな感情が宿っていて、名言はされないが確かに”何か”があることが判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
それが高木さんから冷たい完璧さを奪い、賢い主王女が背伸びし、あるいは成熟に怯えつつ憧れる姿へ共鳴させてくれる。
西片から見た視線と、それを俯瞰で見る視線の同居が上手く行ってる
いうなれば”天上からの視線”が、高木さんの身体(で表現される心理)をクローズアップで切り取り、もどかしくも愛おしい関係性を俯瞰で見せてくれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
あからさまな挑発、『あなたを信頼しています』というメッセージを載せて、高木さんは体育倉庫で寝る。
西片は臆病に真摯に、そこに手を出さない
バスケットボールを工作するのに夢中で、(当然)手を出してこないシャイボーイを誘い、あるいはルールを変えて、状況の主導権を取り続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
”天上”から見てると、高木さんは後出しで勝敗を弄って、自分の勝利を引き寄せている局面が多い。西片は(当然)それに気づかず、ムキになって高木さんに寄る
勝ち続けること、からかい勝負の構造を維持することが、西片と独占的にコミュニケーションしつつ、自分から恋を伝える…敗北することを避ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
高木さんは夏祭りへの道を作りつつ、自分から『行こう』とは言わない。言えない。
そこには無敵少女が守るべき純情とプライドが、無言で揺れている。
今回はそんな関係の輪郭を、ちょっとエロティックな挑発を込めて躍動させる話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
同時に、素直に言い出せない優しさと罪悪感のお話でもある。
じろりと横目で、ジャージに滲む血を見る目線。あくまでゲームのはずのからかい勝負で、流れ出したリアリティ。
高木さんは可愛い可愛い西片が自分だけに強い感情を向けて、遊んでくれる関係を胸いっぱい吸い込みたいだけで、傷つけたいわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
その傷を癒やしたくて保健室に誘うが、本心は言わない。”天”から俯瞰で見れば、そこに込められた感情はバレバレでも、自分では言わない。
治療にしてもゲームに変えて、『じゃれてたら傷ついちゃったし…西片が血出してるのイヤだし…』という本音を、上手く遠ざける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
言いたいけど言えない。言って欲しいけど言いたくない。自分の言葉を持たない高木さんは、西片より少し複雑な矛盾の只中で、ゲームの主導権を握る。
保健室の勝負でも、高木さんは最初想定されなかった勝ち方で『いたい』を言わせて、勝つ。勝ったという形をもぎ取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
西片はバカなので、そうやって後出しでゲームを操作されていることに気づかない。高木さんがそういうことをする人だと、あんま考えない(考えたくない)のかもしれん。
ズルさがバレれば関係は悪化すると思うが、西片はそこに思い至らないし、疑念を押し流す単純な純朴さを、高木さんは愛している。(俺も好き)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
けっこう不純なゲームを、『相手が高木さんだから』受けてくれる特別さを吸い込むとき、少女は優越と喜びに、静かに震えているのだろう。結構卑しいよね…。
そんな二人は夏の帰り道を、二人だけで歩く。前回林間学校が横幅広く世界を切り取ったのに対し、今回はとにかくクローズアップ、汗ばむ密着感のエピソードだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
河原を練り込んだ土塀の狭さが、夏祭りを話題に出した瞬間グッと広がる。
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閉塞感のある隘路が、”夏祭り”という特別な時間を言葉にした瞬間、ひまわりの輝きで一気に開けるのは、ドラマとセリフ、ヴィジュアルとストーリーがしっかり噛み合った、素晴らしい演出だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
こういう輝かしく風通しのいい場所へ、夏の二人は漕ぎ出していくのだ。詩情である。
高木さんは”誰か”とのオトナな夏を話題に出して、西片を挑発する。”天”から見ていればそれが誰かは秒で判るけども、西片はやっぱり気づかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
否。2年目の西片は気づいている。高木さんが自分を好きなことを肌では感じつつ、そこに踏み込むことに怯えて、からかい勝負の距離感を維持しようと身を引く
『ヘタレ!』と罵る言葉は、”天”から彼らのもどかしい青春を、そのもどかしさをこそ楽しませてもらっている立場からは出てこない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
西片は臆病でいいし、高木ちゃんはズルくていいし、二人の関係はこれでいい。
僕はそう頷きながら、美しい思い出の街を歩いていく二人を見つめる。
第3エピは特に美術が良くて、夏祭り一つで濃厚な駆け引きを展開し、お互いの恋を宙ぶらりんに見つめ合う二人への憧憬も込みで、良い情景だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
真っ向勝負出来るなら、からかい勝負なんて胡乱なコミュニケーションはしていないわけで。
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青から紫へグラデーションしていく、水彩の雲。非常にカッチリした構図で、言わせたいけど言えない二人を真ん中に据える街角。遠くに淡く映える緑。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
二人が身を置く時間と空間が、凄く鮮烈に切り取られた、良い情景である。キャラの強さを、美術の強さが補強できているのは素晴らしい。
本来この淡い情景は、一瞬の陽炎として消え去ってしまうものだが、不変のからかい勝負を延々続けるこの作品に追いては、青春の香気は無限にリフレインする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
同時に思い出がアルバムに閉じ込められた”後”の、籍を入れ姓が変わり子供が出来る時代まで、作品の奥行きは伸びている。
結局夏祭りは、誰と行くのか。宝くじに当たるより難しい、本心の探り合いはまだ、曖昧さを抜けない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
その不確かな関係に身を浸していることが、二人には心地よく。
その曖昧な心地よさから抜け出ることが、二人には怖い。
だが、夏は迫る。恋はもう動き出していて、二人はそれに気づいている。
蝉の声がまるでカウントダウンのように、特別な瞬間を前にした二人の足踏みと挑発、『言わないで言わせたい』恋のゲームを切り取るエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
前半匂い立っていた性の挑発が、後半気配を隠してより透明度の高い探り合いに変わっていく展開に、甘酸っぱいグラデーションがあった。
鮮烈なひまわりに見守られながら、結局二人は夏祭りに行くのだろう。何しろ好き同士なのだから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月26日
言いたいけど、言い出せない思い。それを引き出すための魔法が、からかい勝負なのだと思う。ゲームがあるから、二人は繋がっていられるのだ。
物語は続く。ゲームは終わらない。来週も楽しみ。