彼方のアストラを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
旅の終わりを前に、顕になった亀裂。地球とアストラ、2つの故郷のズレ。
一体何が、存在するはずのない双子を生み出しているのか。誰が地球を殺したのか。
歴史規模の事件検証を保留にして、最後の惑星に降り立つクルー。そして顕になる、もう一つの決着。
というわけで風雲急のメガラッシュ! 全ての点が繋がり線となっていくミステリの醍醐味!! OPEDは当然カット!! アストラ終盤戦である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
世界規模の巨大な謎と、刺客を巡る個人規模の謎。全てが連動しつつ顕になる瞬間へと、物語は加速しながら突き進んでいく。
その勢いが唐突ではなく、光明に配置された伏線を繋いで描ける所、貪欲に盛り込んだ多様なジャンルが連動している所が、凄いトルクを生んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
ジュブナイルであり、SFであり、ミステリでもある複雑さが見事に噛み合っているからこそ、この終盤戦の盛り上がりだと思う。見事な捌きだなぁ…。
さてお話は、前回衝撃のヒキを解消していく形で進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
アストラ星人と地球人、分断された2つの常識をすり合わせることで、より強く謎は深まっていく。
ポリ姉が目覚めた時の慌てようは、隕石による地球崩壊を回避できた安心感、切迫した破滅への恐怖が裏にあったんだねー…。
切羽詰まったサバイバルで、わざわざ”歴史”の話なんてしない。常識なんてすり合わせない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
”当たり前”を逆手に取った見事な叙述トリックであるが、2つの星は確かにすれ違っている。
一回パラレルワールド仮説に接近しつつ、歴史捏造仮説に接近していく運び方がなかなかフェアだ。
状況証拠だけだと、確かに歴史分岐って思いたくもなる…んだけども、このお話ジュブナイルとして『信頼ならない大人の押し付けた初期設定から、子供たちが試練を経て飛び出していく』構造を持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
それがクローン個人で終わらず、惑星アストラの世界史、社会構造全体に敷衍できるとしたら。
物語が取りうる真相は『社会規模の巨大な隠蔽』となる。ミステリは自分たちの命を狙う刺客から、真実の歴史を改変し、社会構造を『過去より未来』に捻じ曲げた巨大な存在へと変移していくわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
惑星アストラの繁栄が、足元に秘めた地球の死体。B5班は、それを暴く歴史探偵でもあるのだね。
地球サイドの知識、多数派であるアストラ星人からの孤立。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
最初はポリ姉が一人立っていて、後に刺客事件も含めて探偵役をやる主役・カナタが一人立つ構図は、答え合わせ役の特権と孤立を上手く可視化している。
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人情派のアリエスが水を入れることで、追求しきれないアストラの真相解明は保留となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
しかし他でもない航路が、確かに存在する地球の冷たい死骸を照らしている。自分たちを殺そうとするワームホールは、アストラに方舟をたどり着かせた救済でもある
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アストラ号がサバイバルしてきた足跡は、アストラ社会が隠蔽する地球への道のりでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
一個人が必死に生きていた軌跡が、社会が付いてきた巨大な嘘を暴きもする。ウルガーの夢が”ジャーナリスト”であることが、大きな意味を持ってくる構造と言える。
ワームホールが『見慣れないもの』であった事自体が、移民の事実を秘す社会的隠蔽の証拠でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
何故、地球は葬り去られたのか。その謎は、掘り下げても個人的な生には直接繋がらない、デカすぎるミステリだ。
だがそれが、クローンとして生まれ、使い潰されようとする個人に直結するなら。
このデカい謎を無視して、無事帰還しました、とはいかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
ここを確認するように、カナタがアリエス的安寧に身を落ち着けようとした瞬間、刺客の攻撃が迫ってくる。
ワームホールを”見知らぬ凶器”にしている、歴史の隠蔽。地球殺人事件。
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それはカナタと仲間たちに、個人的、身体的に繋がっている。切迫した”死”を生み出す凶器なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
だから暴かなければ生存は掴めないし、秩序も回復されない。
個人の生と社会のあり方が密接に繋がっていて、なおかつ個人サイドから社会を動かしうる楽観が強いのは、良いジュブナイルだと思う。
のちの刺客断定でも便利に使われる、アリエスの完全記憶。アストラ史と地球史のすり合わせをこなす生体コンピューターが、一番穏健で、真実より融和を重視する優しい子なのは上手いバランスだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
これがもっとクールな…たとえばザックの能力だと便利すぎると感じるし、面白くなかったと思う
そんなアリエスのバッチコイロマンスも、合間の息抜きとして進展とかしつつ、最後の惑星の美しい夜はふけていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
やっぱ必要十分なエキゾチックと美麗が、惑星の美術にちゃんとあるのは良いなぁ…”特別な冒険”感がしっかりある。
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カナタとアリエスの恋路は静かに、しかし堅調に進んでいって微笑ましい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
ラブコメ脳でガーガー波風立てる余裕は、生存的な意味でも進行的な意味でもないんだけども、生きてる思春期の瑞々しさを、甘酸っぱく微笑ましい二人の恋路でしっかり描いたのは良かったと思う。応援したくなる二人だし。
サバイバル的な意味ではガレムはボーナスステージで、生存は順調に進む。そこはもう、話を引っ張るサスペンスたり得ないわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
問題なのは刺客。そして真実。そこを同時に掘るべく、はめるぜぇ罠行くぜぇ洞窟…。
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重苦しい疑念の空模様が、決定的証拠になるワームホールの光で照らされ、水晶の光で真実が明らかになるライトワークは、なかなか巧妙だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
シャルスが壁際に追い込まれつつ、常に逆光になる(絆に目を背けている)状況も、上手く際立っていた。
光はそこにあるが、シャルスは(まだ)向き合えない
シャルスの犯人当ては伏線拾ってっつーか、メタ構造から消去法で読んだ部分なので、自分の解放はフェアじゃないな、とは思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
でもまー、シャルスが刺客になるしかないんだよなぁ見せ方として…そこ上手く誘導していたのは、とても良かったと思う。https://t.co/ge1TAs3Lqr
しかし顕になったのは”WHO”だけであって、”WHY”の方はまだ伏せ札。唯一クローンの自覚あるクローンとして、仲間でもあり刺客でもあったシャルスの過去に、何が秘められているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
それは自分たちが生まれた意味、地球を殺した理由にも直結している。さー、全レイヤー統合の瞬間だぞ…。
お話の運び方を思い返してみると、個人的な殺人と生存から始まり、クローンという存在規定、地球隠蔽という社会的謎にスケールは拡大してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
ありふれた子供たちの特別な事件だったはずの物語は、特別な子供たちが特別な世界の真実を暴く、巨大な物語へと広がっていった。
クローンや惑星移住、歴史捏造というSF的ガジェットを活用することで、このスケール肥大を上滑りさせず活用しているのは、とても巧妙なところだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
デカい話を身近な場所から、デカいところに繋いでいく。
サバイバルの必死さは、特別な世界の特別な彼らが、ちゃんと人間だと受け取る土台になった
クローンという特殊性が顕になる前に、ありふれた家族の切実な悩みに翻弄される個性を見せて、キャラとの距離を接近させた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
そういう共感の土台を作った上で、伏線を張っておいた真実を一気に見せる。作品世界が拡大し、極小と極大が繋がる。
物語の醍醐味ともいえる、猛烈な快楽を計画的に作り出す。
その最後のシメは、シャルスが語るだろう”刺客”の真実…その背後にあるアストラ社会の構造が背負うだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
同時にそれは無味乾燥な調書ではなく、仲間を人殺しにしてしまうか、共に故郷に帰るかという人生の崖っぷちそのものでもある。
イヤマジ、ぜってぇ全員で帰るから…。
かつて行われたシャルスの告白は、他のメンバーがそうであったようなうねりに欠けていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
自分を押し殺す抑圧を吐露し、それと向き合う熱量を見せる。真実を包み隠さず吐き出して、仲間に受け止めてもらう。
”刺客”としてサスペンスを維持してきた彼には、許されなかった青春特権。
しかしサスペンスもサバイバルも終りが見えたこのタイミングなら、シャルスはすべてを語れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
自分の全て、社会の全て。アストラの全てを語ることで、保留されていた謎解きは終わり、秩序は回復される。
チームは変人の生態学者を取り戻して、全員で母性に帰還することが出来る。
そのカタルシスをシャルス一人に集約させたのは、彼個人を思えば少し酷だが、物語の盛り上がりとしては見事な結節点だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
シャルスが真相を語り、殺し殺される状況を熱い友情で突破すれば、物語の未達はすべて終わる。残りはエピローグとハッピーエンドだけだ。
こんだけ山盛り乗っけておいて、全てがきっちり収まるように幕引きを用意できる豪腕に、やはり感嘆してしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
その巧さが冷たく悪目立ちするのではなく、『俺たちはここにいる! 真実はここにある!』という普遍的な叫びとしっかり噛み合って、青春群像劇として熱く滾っているところも。
アストラ社会を運営する、身勝手で嘘つきな大人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
その犠牲という意味では、クローンたちも地球も同じなんだよなぁ…クソどもに『俺達どっこい生きてんだよ!』と、子供ら個人が叫び切るためには、ポリ姉が連れてきた新しいクルー”地球”のアイデンティティも再獲得しなきゃならねぇ。
子供たちの帰還が、惑星アストラにどんな未来を連れてきて、どんな真実と秩序を回復するか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
そういうデカい話も気になるけども、まずは目の前で闇にとらわれている仲間をどう、過去から未来へ引っ張り上げるか。
大人が押し付けたうすぎたねぇ史観でも、そのモットー自体は間違っちゃいない。
カナタが押し付けられたアスリートのフィジカルで、危機を何度も脱してきたように。過去をどう使うかは、未来に向けて走っている当事者が決められるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
そうやって掴み取った真実を、”刺客”になるしかなかなったシャルスにどう伝えるか。世界の真相は何か。
決着のアストラ、次回非常に楽しみです。
つーかポリ姉を嘘つかずにアストラ社会に順応させるためには、地球真実を公開して社会を変えるルートしかねぇんだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
クローンとして押し付けられた抑圧に反逆する子供たちが、10人目のクルーだけ『我慢しろ』と言えるわけがねぇし、真実を武器に戦うしかねぇ。そのためには、真実知るしかねぇ。
そうするために、シャルスが抱えてる情報を全部吐き出させて、旅が終わる前に物語の空白を埋めきる必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
何故、クローンとして生まれなければいけなかったのか。
何故、アストラは地球を殺したのか。
何故、シャルスが刺客なのか。
シャルスの独白、焦点全部乗っててマジ大事。やり切るだろうな
追記 特別な武器の供給は、それを手繰って不正義を糾弾し、個人的な生存権獲得を社会変革に繋ぎうるヒントでもある、と。裏腹の使い方が上手い物語は、やっぱり面白い。
アストラ追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
刺客の凶器たる”白い闇”が、地球滅亡から人類を救った救済、それを隠蔽し独占する社会とイコールと描くことで、殺人犯がアストラ社会の根っこに食い込む存在だと分かるのは上手い。
そこを切り崩せば、個人レイヤーのサスペンスも、社会レイヤーの不正義も突破できるよう集約されてる
刺客が判って、自分たちが生き残ってハイおしまい、じゃ収まらない所まで、個人と社会のリンクは強くなってる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月4日
ミステリを全て解決した後、ちっぽけな子供がデカい社会をどう変えていくか。
お話が気持ちよく終わるための地盤を、盛り上がりの中しっかり固める油断のなさ。強いなぁ。