荒ぶる季節の乙女どもよ。を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
赤い月は、魔力を込めて乙女を見下す。
それぞれの性が疾走する夜に、一人のんきにエロ下着。和紗は何も知らないまま、最後の平穏を謳歌していた。
破れる恋、蠢く性。それぞれの涙が世界を壊し、無慈悲に再構築されていく。
思春期。それは、夜の嵐にも似て。
というわけで仕込んだ地雷が連鎖爆裂! 涙の荒野と化した赤い夜、荒乙第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
それぞれ個別に走るだけでなく、バチバチ衝突して駆け抜けていく。群像劇の醍醐味がグワッとうねるエピソードだが、キッチリ積んだ伏線が生き、衝撃が上滑りすることなく物語に浸透していった。
今回のお話は、赤い月に見守られながら生っぽい人生に傷つく人たちと、そこから唯一取り残されている和紗を対比して進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
とにっかく、あらゆる局面で赤い月が見える。それは月経の赤、性の赤に染められている。
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『”グランベルム”かよ!』と思わず突っ込むほどに、魔術的な色合いの月は、荒ぶる季節に翻弄される少女と少年を見下ろし、見守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
自室でカーテン閉めてる和紗は、唯一その恩恵と呪いから逃れ、浮かれポンチのままである。露骨なティッシュ止めろ!
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赤い月ともう一つ、少女たちを繋ぐモチーフとして携帯電話がある。検索して、大人の世界を教えてくれる窓。人と人が繋がり、またすれ違うメディア。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
分断された群像は、電子の宣託を通じて言葉をかわす。お互いを切断していく。
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携帯メディアと甘酸っぱい恋愛というと”月がきれい”を思い出すけども、あっちの爽やか加減と比べると、こっちはまぁねっとり重い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
どっちが良いって話ではなく、それぞれの味があり、面白さがあるわけだが、”今”恋の話をするなら、避けて通れないフェティッシュなのだろう。https://t.co/2SHFeiT4bD
ポンチ女の浮かれっぷりって意味では、曽根崎パイセンも負けては居なくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
『私は恋愛の国のアリス。あの人は不思議な白ウサギ。一緒に不思議な世界を駆け抜けていくの!』…ってやっかましわ! お前はせいぜい偽ウミガメじゃ!
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ここで即座にアリスを想起する所、『本当に文学少女なんだなぁ…あとバカなんだなぁ…』って感じだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
単純にエプロンドレス着せるだけでなく、アリスの特徴である不条理、サイズの混乱がコンパクトに切り取られてて、良い引用だと思います。
児童文学以前にナンセンス文学なんだよなぁ…。
夢見るアリスちゃんがカラフルな夢想にふける後ろでは、菅原氏と泉が危険な接触を果たしている。彩度は落ち、生っぽい質感が画面に漂う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
電車という泉の”聖域”で、友情を裏切る誘惑ぶっこんでくる所が、ズルくていい
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泉は幼さと性を乗せた”箱”から降りて、菅原氏を置き去りにする。それは良くないことだから、正しくないからと遠ざける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
しかし勃起はしている。その裏腹を振り捨てて、泉は菅原氏のセックスから毅然と距離を取る。
しかし勃起はしている。スカートの奥を想起している。
ぐらんぐらんに揺らされていた心が、”聖域”たる列車の通過で”正気”に戻る所が面白い。その正しさが、自分の性欲を裏切る嘘でもある不可思議含めて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
目が見えない存在。非人格的なセックスの対象。確かに、お互いを使い捨てる熱量を、泉と新菜は共有した
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そこに蠢く性欲が本物でも、そこに踏み込んで傷つけるものがあまりにも大きいから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
情動に身を任せるのも、また嘘だから。
ずっと友達だった電車クンの通過でもって、泉は自分を取り戻す。(つまり、性欲に満ちた新しい自分と新菜を取りこぼす、ということでもある。決断は、いつでも裏腹だ)
点字ブロックからはみ出し、誘惑を投げ込んだ新菜。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
あくまで安全圏を維持し、恋人と友達を守ろうとした泉。
(点字ブロックを活用して、性領域の危うさ、そことの距離感を描く描写は、ミロ先と本郷ちゃんでも活用されてた)
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二人の距離は決定的に開き、新菜はずっと自分を支えてきた顔の良さ、異性が称揚する性的アピールの優越を崩される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
同性との友情を阻み、嫉心を煽ると呪っていた顔面は、同時に彼女のプライドの源泉でもあったわけだ。うーむ、複雑怪奇。
想い人が恋と性に破れる中、もーちんはスト5の画面に己のセクシュアリティを反射させ、言葉を紡ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
GAME OVER。モヤモヤと形を為さなかった自己定義が、一つの方向性を手に入れた。それに素直になろうとして、いらん水が入る。
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『返事が来ない失望 → 思いが通じた喜び → 嫌なやつだった失望』と変化する表情は、とても身勝手で人間臭い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
小さな体躯ともちょ声に、濃厚なエゴイズムを隠した元・天使。もーちんの可愛い顔して”獣(ビースト)”っぽい所、俺結構好きだよ…。
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後に杉本くんもドン引きするけど、もーちんは”ヤベェ”のだ。杉本くんの無神経なエゴイズムの被害者だけども、その応対は褒められたもんじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
でも、生きて個性があるってのは、そういうモノで。それを受け止められる器量を作るのが、荒ぶる季節の仕事なのかもしれない。
まぁ博愛主義じゃ恋は動いてなくて、誰かを選び誰かを選ばない残酷が恋を輝かせる、っていう話なのだろうが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
泉に選ばれなかった菅原氏、杉本くんを選ばなかったもーちん。
スタンダードな恋愛から大きく外れつつも、その身勝手と傷に嘘はない。そこがいい。
教え子と教師のインモラルに突っ走る”箱”の中では、本郷ちゃんが赤い妄想にふけっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
キッチリ性を握り込み、大人なアピールをキメる私。しかし現実は青信号でドンドン進み、可愛い呆け顔を晒してしまう。何事も、狙い通りには進まない。
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そんな二人を追う、おそらく作中最も幸運なカップル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
お曾根の『ヘイ! タクシー!!』で思わず爆笑してしまったが、そんな彼女の大暴走を、天城くんはしっかり繋ぎ止める。
いや、客観的に見てヤベーから俺ら。
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客観視ってのは曾根崎(筆頭に、文芸部のバカ全員)に欠けている能力で、マトモでリア充な天城くんはそういうモノを、しっかり外付けしてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
キュンキュンワードに酔っ払う以上に、根本的に足りない部分を補ってくれるパートナーと出会えたことが、パイセンの恋が幸福な理由であろう。
天城くんはホント理想の彼氏で、セックスへのプライドを潔癖で蹴り飛ばすでも、身勝手な欲望で相手を傷つけるでもなく、主観と客観のバランスを上手く取って、彼女を大事にしてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
その『絵に書いたような』トキメキと、杉本くんの『ちょ待てよ!』が正反対でなぁ…人生いろいろだなぁ…。
そんなお曾根を外において、安ホテルの夜はふける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
この期に及んでネットあんちょこに頼る、本郷ちゃんの弱い作家性。
それを冷静に読み切るミロ先の余裕を、不意打ちマウントポジションが一気に奪う。
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勢いに任せてちんぽこイジる(イジられる)カップルと、勢いをせき止めて密着を引っ剥がしたカップル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
でも勃起はしてたカップルと、どうしても勃起しないカップル。
ミロ先-本郷ちゃんと泉-菅原氏の対比が、なかなか面白い。片方が密室から出て終わって、片方密室で走り切るところもね。
『セックスしなきゃ/セックスから遠ざからなきゃ』という強迫観念を車(”箱”)に詰め込んで走ってた二人は、固くないペニスというあんまりな現実で茶番を止める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
惨めさを、どっか他人事な誘惑の熱量で押し流そうとしていた本郷ちゃんは仮面を捨て、己の貧相な身体、先読み可能な文学性に苦鳴を漏らす
そんなむき出しの文学に、ミロ先はしっかり向き合う。その手がお尻ではなくて、頭を触ってしまうからお前はミロ先なんだよ!! …マジ信頼できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
惨めでいること。選ばれない苦しみを、性を濫用することで誤魔化さないこと。
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ふにゃチンを前に、本郷ちゃんは生の実相に思い切り踏み込む。その一歩が文学だというのなら、この涙も敗北も、彼女の筆を豊かにするだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
生徒と教師だし、ちんぽこ固くならないし、全く間違えまくった恋だったけど、多分これは嘘じゃない。
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二人の抱擁がベットではなく、ソファで行われる所が好きなんですよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
ファックするだけが、人間の繋がり方じゃない。セックスさえすれば、自分の本当に出会えるわけじゃない。
でも、性欲と愛情の危ういダンスを踊らなければ、ここには辿り着けなかった。本郷ちゃんは文学と踊れなかった。
その曖昧さ、間違えきった嘘のなさが、”ソファ”というファックするには狭すぎて、抱きしめ合うには十分な空間に籠もっていて、なかなかいいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
ミロ先が本郷ちゃんを抱かなかった(抱けなかった)のは、無論フィジカルな好みの問題がデカかろう。
しかし”先生”でいることも、また大きかったと思う
先生は生徒に、真面目に向き合うものだから。大人は子供と、セックスしないものだから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
ひどくインモラルな場所に接近してるのに、二人の恋は奇妙にマトモで、マトモでいることの強さを逆光で照らしてくれたように思う。(順光で照らすのは天城くんね)
まぁお曾根が目撃しちゃってるんで、まーたひと悶着ありそうではあるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
作家のプライドを傷つけられて始まった、本郷ちゃんの大冒険は、ミロ先という読者/教師が受け止めることで、一つ落ち着きを手に入れたように思う。
いやー…”当たり”だったな変態文学教師…。
一方”ハズレ”の青年と対峙することで、もーちんは己の中の嫌悪と向き合う。巨大な柱は”男性性”への拒絶(は、杉本くん個人への拒絶と密着している)そのもののように、二人を強く分断する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
それを乗り越え、伸ばされた手。トレンディードラマみたーい
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曾根崎パイセンとは違って、『絵に書いたような』アプローチにもーちんはキュンキュンしない。それどころか、嫌悪に腕を引きちぎる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
それは天城くんと杉本くんの人格の差、パイセンともーちんのセクシュアリティ(と脳室温)の差、色んなものが絡んだ差異だ。ホントパイセンはバカだなぁ…。
パイセンでいかにもHone Works的(偏見)な恋愛類型を転がしつつ、形だけの優しさに酔っ払った勘違いIKEMENへの嫌悪感をもーちんでぶん回すのは、群像劇だなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
定番シチュに心躍るのも、それが反転してゲロ以下に感じるのも、両方本当のことなのだ。人生いろいろなのだ。
劇症の接触拒否を『ヤベー』と言われて、もーちんは意外な顔をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
塾の狭い社会性を人質に取り、無神経に突き立てられた杉本くんの刃。それは彼女の一番柔らかい場所を、無自覚故に深く抉る。
接触点を、汚物のように見下すもーちんの視線。
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もーちんのセクシュアリティが、キモ男への接触嫌悪というスゲェフィジカルなもので具象化されているのは、とても良いと思う。キラキラ点描するだけが百合じゃねぇんだよ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
欲情し、ゲロを吐くほど嫌悪する肉体。それに支えられて”ヤベー私”がいることを、もーちんは今回否応なく学ぶ。
それが個人への嫌悪なのか、”男性”という巨大な属性への嫌悪なのか、解らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
でも触られて汚れたと感じ、抱きしめて清めて欲しいと思い浮かんだのは、特別な誰かで。
その言葉を紡げば、もう友達で居られないと知りつつも、百々子は踏み込む。
だってそれは、嘘じゃないから。
赤い月とネオンに見下されながら、選ばれなかった自分にショックを受ける菅原氏。BGMはブルーハーツ、”チェインギャング”だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
『仮面を付けて生きるのは 息苦しくてしょうがない』
そう思ったから、もーちんは終わりを告げる電話をかけた。
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誘蛾灯に焼かれる虫のように、衝動に突き動かされ、ただ前へ。その背後に伸びてる線路(菅原氏の犯行現場、泉の聖域)には、もう戻れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
レールを外れて爆走する青春とセクシュアリティ。友人の告白(二重の意味で)を受けて、新菜の揺らいだアイデンティティが、更に崩れていく。
菅原新菜は、どんな顔をしていたか。もう思い出せない。再構築できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
グニャグニャに歪んで、思わずかばんを取り落しながら、新菜は混乱だけを友人に伝える。それ以外を言葉にすれば、多分嘘になるから。
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迷子のように身勝手に、今の自分を親友に叩きつけるだけの対話。お互いの事情なんぞ知ったことなく、ただ思いをぶつけ合い、返答を保留にする通話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
それが携帯電話越しに行き来するこのシーンは、凄く友情だなぁ、と思った。
その混乱を唯一伝えられる相手が、お互いだったということ。
それが恋の形になったり、セックスに結びついたりするかもしれない。しないかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
どっちも善いじゃないか、と思う。
どっちに転がるにしても、電話越しのエゴイズムと混乱は今、ここ、私たちにしかない文学であり、お互いがお互いそれを読んだのだ。
それはやっぱり、嘘ではない。
お互いの”今”だけを嘘なくぶつけ合って、親友はお互い、涙にくれて膝を抱く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
確かに、何かが終わった。それが新しい始まりになるかなんて、嵐のただ中にいる張本人には判るはずもない。
それでも心と体が蠢く方向へ、嘘なく踏み出したことに意味はある
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そう思いたくなる、嵐の通話であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
これでももーちんの性選択が一つの形を為したわけだが、とても良かったと思う。
正しくあろうがなかろうが、もーちんは自分を見つけたのだ。ミロ先と間違えまくった結果、惨めさに向き合えた本郷ちゃんと同じように。
嘘のない文学に至る道は、色々ある。恋も友情も、ヘテロもホモも、青春を打倒し自分を確立する武器として、貴賤はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
そんなものにこだわってる余裕は、荒ぶる季節にはないのだ。どう戦っても、そこは君の戦場なのだ。
そういう平等性が、もーちんを描くことで生まれた気がする。
ん、で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
仲間たちが赤い月の下、決死の青春闘争をバチバチぶつかり合わす中、主人公はのんきにエロ下着である。バカだなー。
ガラス越しの安全圏にいる和紗は、泉の複雑な陰影を見ることはない。電話越しに、性の葛藤は届かない。
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パステルカラーの子供部屋は、和紗なりの決死の戦場で、エグいパンツにワーワー言うのもまた、マジな青春ではある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
しかしそこは、泉が身を置くリアルな陰影とは、あまりにも遠い。その薄暗さに嘘なく向き合おうという意識も、和紗には薄い。
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和紗が”箱”の中で肥大化させるエロティックな自意識が、泉の実相とは程遠い影絵芝居でしかないと描いて、恋人たちの通話は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
片方にはキュンキュンロマンチック、片方には苦い嘘。
泉という”男”が、生臭く嘘のない苦悩を引き受けているのは、とても良いと思う。彼もまた、嵐の当事者なのだ。
愛おしさとは別の場所で、どうしようもなく勃起する身体。あるいは勃起しない身体。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
欲情のバロメーターはミロ先と泉の間で正反対に反応し、しかし二人は奇妙に、同じものを見つめている気がする。
『本当に人を大事にするのって、どういうことなんだろうな?』
俺もさっぱり分からねぇ。
少女たちは眦を涙と欲情に染めて、赤い月の下で彷徨う。四者四様…否、泉とミロ先も入れ六者六様の群像が、複雑怪奇にうねり倒す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
そこから、和紗は切り離されている。運命の夜、カーテンの奥に取り残されたのはデカいな…。
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それぞれ恋や友情が破れ(と思い詰め)たり、揺らぐ世界に悩んだりする中、泉のダメージが一番デカそうなのが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
裂け目の奥に開いた、赤い穴。胎から湧き上がる月(ルナティック)の力は、少女の占有物ではない。
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皆、月と青春に狂いながら、当たり前の朝を迎える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
あの時は繋がっていた手が、今は遠い。あの時は見えた光が、今は暗い。
文化祭を”クリア”した直後のピカピカを、意地悪く変奏する筆が好き。
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一方”間違えない”カップルであるパイセン組は、しっかり手を繋いで、清く正しい性と向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
泉がどーにも手を取れなかった、和紗の掌。そこに反射する自分の性欲。
天城くんはきっちり、そこに向き合い抱きしめる。つえーなこの子ホント…。
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指は掴むだけでなく、隠すことも出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
似合わないクッキーに込められた真心と、”バイバイ”の言葉。文芸部とは別の所から、衝撃がり香を揺らす。
文学とは縁遠そうに見えたギャルが、一番アナログでロマンティックなメッセージ最後にぶん回すの、上手いよね。
というわけで、群像達の一大決戦、一つの終わり一つの始まりでありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
浮かれポンチの勝ち組お曾根は横において、敗北者達は涙にくれつつ、嘘なく自分に向き合った。それを伝えるべき相手にしっかり伝えた。
そこからまた、新しい物語も転がるでしょう。何しろ、嘘じゃないんだから。
本郷ちゃんが惨めさをどう使っていくかとか、もーちんの告白を菅原氏がどう受け取るかとか、泉の愛と欲が何処に行き着くかとか、未解決の問題はまだ沢山ある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
それを残り話数でどう転がし、決着に持っていくか。
一番大事なクライマックスが、十条さんの妊娠・退学で点火された。さーどうなるか。
大クライマックスで勢いよく転がすと同時に、泥まみれの青春をしっかり見据えて、嘘のない答えを出してほしいな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
”人を愛するってことを しっかりつかまえ”て欲しいのだ。
そこさえ出来てりゃ、何も問題はない。”チェインギャング”の引用、綺麗に作品全体に効いてるなぁ…。
多分作品最後の”谷”になる今回が、荒ぶりつつも奇妙な希望に満ち、破綻しつつも”次”がありそうな戦いで終わったのは、とても良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月7日
『まぁこういう仕上がりでこのコーナー曲がるなら、多分大丈夫じゃねぇの』って感じ。
最後のストレート、どう伸びるか。来週も楽しみ。