バビロンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
製薬会社から流れた金が、試薬評価を歪める。誰も気に留めないちっぽけな正義を、二人の猟犬が追う。
その鼻先にぶら下がった、特大の悪徳。新行政区分”新域”発足に揺れる政治に、深く突き刺さる汚職。
ズルズルと引きずり込まれた先に、待ち受ける怪物の名。それは…。
というわけで”ファンタジスタドール・イヴ”の野崎まど原作、”Infini-T Force”の鈴木監督が送る、クライムサスペンスSF…でいいのかな?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
とにかく雰囲気と迫力のある出だしで、グッと引き込まれた。今後常識が凄い勢いで崩壊していくのだろうけど、そこがグラグラ揺れる不安感が良い。
お話は東京地検特捜部の正崎善が、小さな正義に踏み込むところから始まる。名前からして『正しく、善い』とされている彼は、寡黙ながら熱血を秘めた、いかにも信頼できそうな男だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
人格の中にある”骨”を、中村悠一が見事に演じていると思う。泥臭いのも上手いなぁ、やっぱ…。
世間の注目を受けない、当たり前の正義。日常を支える地道な仕事をこなす正崎と相棒・文緒の世界は、派手さはないが実直で正当だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
その真っ直ぐさが、血みどろの”F”で揺らぐ。画面の彩度が落ち、不気味に蛍光灯が明滅する。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/pVhs1Xiq8w
ここで事件は製薬会社の汚職から、麻酔医を抱き込んだ得体のしれない陰謀へ、巨大な政治腐敗へとシフトしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
それは取っ組み合いになっても勝てない巨悪であり、もしかするとそれを遥かに超える、輪郭すら把握できない怪物かも知れない。そういうものと、善は行き合ってしまう。
その瞬間の光の切り替えがとても良くて、スッと引き込まれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
当たり前の正義を、当たり前に執行していく気持ちよさ。注目され、報われることはないけども自分の責務を果たす確かな光。
前半の堅調な描写がしっかりしていればこそ、説明なしでもキャラと世界が飲み込める確かさあればこそ。
それがぐらり、と揺らぐ最初の一発はとても不気味で、妖しく魅力的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
明滅する蛍光灯に照らされた、血みどろの”F”。清潔な正義の城には余りに不似合いな、血と髪と爪の赤。
『今後物語は、その色合いに塗られていく』
そういう挨拶を、作品がしっかり果たしてくれる。
”F”の出処である麻酔医を追って、善たちは扉の奥へ踏み込んでいく。扉越しのディストーションが、秘められたものの邪悪さを静かに語って、音響の仕事が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
その先には、恍惚の自殺者がいた。魚眼レンズで歪む世界、緑色の眩しい光。当たり前の世界が崩れていく
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/z61qxSWgRt
30時間を費やす、余りに異様な自裁。今後増えていく死者数を予見するように、”死者1”と赤信号が切り取られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
話がどのスケールで推移するかはまだ読みきれないが、ただの検察サスペンスでは終わらない危うさが、しっかり息をしている。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/XynL319Jui
得体のしれない怪物が待ち構えていて、闇の中から生暖かい吐息を頬に吹きかけてくる感触。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
それが第一話からしっかり滲んでいるのは、サスペンスとしてとても良い。
正体も輪郭も見えてしまっては、怪物は怪物たり得ない。しかし、それが”そこ”に在ることはしっかり伝えなければいけない。
細やかな描画を使いこなして、そういう不穏さをしっかり滲ませていく筆が、非常に鋭かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
事件はつまらない汚職から麻酔医の自殺、大物議員秘書へと繋がり、男たちは夜を駆けていく。紫色の、淫靡で曖昧な光に満ちた夜。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/WgxKT1E9qC
強制売春と票田買収。悪徳が踊る夜を、真っ黒に書かない所が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
そこには非人間的で不自然な、海底のような不思議な光が確かにある。人を引きつける”なにか”がのたくっている。
善は事件に絡め取られながら、今後それと向き合わなければいけない。いかな犠牲を払っても。
最初の生贄の羊となる文緒を、見守ってあげたい未来ある若者としてしっかり突き刺す所が、意地が悪くて的確だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
どうでもいい奴が死ぬより、現実の無力と理想の力をしっかり見据えて、前に進む青年が死んだほうが許せないからな…。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/x4zD9f9knj
少女を飲み込んだ塔の前で、文緒は青臭い正義を噛みしめる。善は相棒を抑えつつ、視線に鋭い怒りと決意を秘めて、”いつか”を約束する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
それに支えられ、青年は顔を上げる。闇から見上げた塔の先には、確かに輝く月がある。
遠く遠く、青白い死の場所。それでも手を伸ばしたくなる幻。
月が照らす清潔な夜は、あっという間に終わる。巨悪のしっぽを掴んだと喜んだすぐその後に、携帯に突き刺さるメッセージ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
紫と緑が踊る、バビロンの夜。駆け抜けたその先に、正義の縊死体。悪は深海のように、ねっとりと光る。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/7HiwMxKyPH
文緒の”遺書”に深刻な感じが薄く、日常の挨拶のように礼儀正しく、朗らかで、前向きに死んでいく異常さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
なにかがある。
善ならずともそう思いたくなる異常状況だが、それが”なにか”は解らない。怪物の輪郭は見えない。
見えないから、見たくなる。
©野﨑まど・講談社/ツインエンジン pic.twitter.com/GKIFj9WSK7
そういう感じの、静かで淫蕩で魅力的な、素晴らしいサスペンス第一話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
つまらない正義を腐らず執行し続ける善と文緒への好感、当たり前の世界の堅牢さをしっかり印象づけておいて、異様な自殺体で切り崩す。静かに日常を侵食する悪を、紫と緑の闇で描く。
状況はスムーズに、当たり前に転がっているのに、なにかとても異様なものが”そこ”にいる感覚を、映像が見事に語ってくれていました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
巨悪というのは常にそういうものだと思うし、サスペンスは『見えないが、いる』ことをどう魅せるかが大事なので、非常に的確な出だしだと思います。
今後どのくらい世界が揺れるかは分かんないけども、まぁ野崎まどなので陰湿かつ哲学的な、デカいスケールの話になっていくのでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
”新域”という、悪徳をぶちまけ世界を揺るがすにはうってつけのステージもあるしな…ああ、生臭い。素晴らしい。
自明党の約束された勝利に視線を引っ張ってることを考えると、横合いから意外な候補がかっさらってそいつが…っていう展開も予測できますが、それが善を襲った奇っ怪な悲劇とどう繋がるかは、まだまだ未知数。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
悪徳にまみれた奇想と、ハラワタを揺すぶるサスペンスの同居を期待したくなります。
全体的に画面がソリッドかつ綺麗で、洗練された悪趣味が滲んでいるのも良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
『胸クソ悪いものを見せてやるぜぇ!!』って意気込みが臭うと。どーも自分受け入れられないのですが、そういう熱量は丁寧に押さえて、上品にクソを投げつけてくれる信頼がある。そういうトーンが好き。
謎がくるくると状況を巻き込みながら転がり、どんどん状況がデカくなってく話運びも、静かに巧かったですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
製薬会社の汚職から死人がでて、大物議員に食い込んで…でも、多分そこで終わらない。
それはあくまで、日常の範疇にある汚濁だ。多分このお話のSF的想像力は、もっとデカい怪物を見せる。
そういう期待が高まる、良い第一話でした。不安と不快が、スーツのイケメンを静かに包囲して、足元を切り崩してくる予感が堪らねぇぜ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月8日
物語の輪郭はまだ不鮮明ですが、それは何処までも巨大になれる可能性でもあります。
来週以降、どんな怪物が見れるのか。楽しみですね。