歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
花のお江戸は八百八町。欲と金を混ぜ合わせ、ミキサーにかけてぶちまけた不夜城、歌舞伎町ウェスト。
そこに居を構えるは、千代に八千代の海千山千、曲者だらけの探偵長屋。
壊れた味覚、異常な知覚を併せ持つ変人探偵、シャーロック・ホームズ。事件簿開陳と相成ります
という塩梅の下世話と推理、暴力と性欲をグニャグニャに混ぜ合わせたホームズ・パスティーシェ、堂々の第一話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
主成分はクイアと落語と推理。溢れるセンスと立て板に水の構成、切れ味鋭い演出とキッチュな味わい。毒々しいネオンの奥に、綺羅びやかな知性が薫る…面白いッ!
お話は肩幅デカいワトスンくんが、トンチキシティ・歌舞伎町を訪れるところから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
『世界観の説明は事件転がしながらやるわ!』と言わんばかりに、雑多で魅力的な世界がイキナリ殴りつけてきて、あれよあれよと物語はスウィングを始める。この豪腕が心地いい。
センスで殴りつけまくるようでいて、非常にクレバーな組み立てできっちり理解らせてくる。巧妙に整理されていればこそ、カオスを適度に飲み込み、訳の分からなぇ混沌を面白がることも出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
そしてその勢いが、生き場死に場の入り混じった猥雑な舞台を駆動させ、作品の魅力を引き上げてくる。
『自分たちは面白いものを作っている』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
そういう自信が、画面からにじみ出てくるようないい仕上がりであった。このぐらい背筋を伸ばしてバカをぶっこまれると、こっちも居住まいを正してゲラゲラ笑う気持ちになってくる。
パワーとテクニック、センスとクレイジー。いいバランスだ…。
何しろハドソン夫人が諏訪部声のクイアって時点で、相当なぶっ飛び加減だって言うのに、なぜかお歌とPVまで見せられるんだもん。訳わかんねぇよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
”ノー・ガンズ・ライフ”で極渋イケ諏訪部を摂取し、こっちでは面白諏訪部の過剰投与…死んじまうぜ。(歓喜)
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”童貞を殺すセーター”を髭面マダムが着こなし、”ピンクのぞうさん”がネオンシティに暴れまわる。悪趣味とセンスが仲良く同衾した、良いご挨拶だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
クイア描く時に、ファロスを想起させるアイテムを置くのは笑っちゃうからやめろってお母さん毎日言ってるでしょ!!
画面にセンスと過剰な情報を詰め込み、パワーで押し込んでくるのはこのアニメの得意技のようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
特に日本の話芸を上手く活用する技量は、トンチキなカオスに一つの目鼻と方向性を付けて、上手く食わせている。
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七五調の地口で、探偵長屋の立ち位置、システム、これから行われる探偵勝負のあらましをダーっと語ってしまうことで、視聴者は説明された感じを受けないまま、説明を飲み込むことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
ボーッと突っ立って退屈な語りを聞かされるより、異様さに殴りつけられ笑っている内に、情報が染み込む。
この巧さが、複雑怪奇な背景世界と、人数多くてキャラが濃い人物設定、情報を統御して答えを導く推理モノを退屈なく食わせる、絶妙なマジックとなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
面白いってのは最強のオブラートで、実は難しいことも笑っている内に飲み込んでしまうのだ。そして、このお話は面白い。胸焼けするほどに。
あれよあれよと始まった探偵勝負に、ワトスンくんと一緒に僕らも飲まれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
ギャンブル狂いの元警部、潔癖症のクソ童貞、うっそり表情筋が死んでる超変人。街と同じように、探偵たちも癖が強い。そのキャラ立ちも、スルスル状況が転がる中で自然と飲み込めてくる。
このキャラ立ちと語り口は、深夜アニメというよりはドラマ…”TRICK”や”ケイゾク””タイガー&ドラゴン”といった、漫画的センスを巧妙に実写に取り込んだ作品群を思い出させる(例えが古くてごめん。ジジイなの)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
ある種の先祖返りというか、猥雑な歌舞伎町のリアルな空気が、実写テイストと噛み合ったか
現場検証に聞き込み、間違った犯人指定。探偵ものの基本を着実にこなしているんだが、状況全てが狂っているので面白くてしょうがない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
生と死の欲望を飲み込む、歌舞伎町という舞台。そこに適応した海千山千の妖怪たち。その魅力が、実はスタンダードな運びに艶を与えている感じだ。
クソ童貞がまっつんを間違えて指定し、恋人たちが真実の愛を夜に吠えるシーンが好きだ。そうだ…何も間違っちゃあいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
クイアを題材にするのであれば、面白おかしくイジるだけでなく、真摯に向き合うことは大事だ。真正さを今後出せるかは…見ないと分からんね。
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同時にクイア文化が持っているキッチュな面白さ、不可思議なパワーをしっかり使いこなそうという力強さは、まっつんとのりおの抱擁でよく見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
いや爆笑しちゃったもん…露骨、あの角刈りガタイ系がネコでしょ…。キミらの愛は全く間違ってないので、今後もラブラブしておくれ。
さてトンチキな推理バトルシステムと、歌舞伎町の猥雑な空気の説明を終えて、シャーロックの真相開陳シーンがやってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
お笑いで流しているように見えて、証拠のぶっこ抜きくらいは普通にやるシリアスさがあるのが、良い落差だ。結構エグいよねクソ童貞…マキちゃんにフラレろ!
シャーロックの変人っぷりを言葉ではなく、小学校時代のアイテムをそのまま使っている描写で見せたり。異常な覚にウェっとさせて、皮膚感覚で理解らせたり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
不思議な巧さの極北に、推理落語シーンが有る。トンデモナイ魔球だが、考えるほどに理にかなってる…。
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探偵が真相をベラベラべしゃるシーンって、アニメだとかなり難しくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
役者の身体性がないので、どうしてもダレ場になっちゃう。アングルやオブジェクトで飽きを逃がそうとしても、なかなかに難しい。
『それなら、推理自体を”芸”にしちゃえばいいじゃん!』
天才の発想である。
落語を披露するまでシャーロックの表情筋が死んでたのが、ここで効いてくる。ご隠居と熊さんを見事に演じ分けつつ、事件に関わるときだけは人間の顔を見せる変人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
機能不全の探偵にとって、事件解決だけが人間機能のリハビリなのだ。
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小西克幸の芸達者にも助けられ、立て板に水の語り口で答え合わせをするシャーロックに、ワトスンくんと一緒に僕らも前のめり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
変人の面白さは、単品では非常に食べにくい。シンクロ率の高い驚き役を置くことで、エキセントリックは”芸”になるのだ。ドイルは賢いねぇ…。
話芸自体が面白いから、情報を突き合わせて確認するシーンも退屈ではなく、結構複雑な答え合わせもすっと染み込んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
コメディという形態、楽しさという武器を最大限活かして、自作を強制的に認識させる荒業が、見事に成功しているわけだ。凄いねオイ。
かくして見事真相に辿り着いたシャーロックだが、一千万の報酬はコピーキャットゆえに果たされず、事件解決の代わりにワトスンくんに轢殺されかかる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
推理は巧くても、人間として生きるのは巧くない探偵。混沌を巧く乗りこなせない助手。面白い二人だ…。
彼らが悪くないコンビであると、”尿瓶”で魅せてくるセンス。ネオン飾りのタイトル登場で、今回の第一話はお仕舞いである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
いやー、非常に面白かった。推理アニメの新しい可能性を、たっぷり堪能させてもらった感覚だ。ありがたい…。
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世界と探偵のトンチキっぷりが目立つけども、ワトスンくんが医者の目で即座に検死したり、シャーロックの推理に適切な相槌を打ったり、助手として有能なところをひっそり魅せてるとことか巧かったですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
最後に轢殺で、全部ぶっ飛ばす所含めて…キマらねぇ所が、最高にいいわけよ。
キッチュでカオスでパワフルな作品世界のご挨拶としても、大量の情報とキャラを捌く手際の証明としても、二億兆点の見事な出だしだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
情報はかなりフェアに、明瞭に提示されてて、それをまとめて活かす表現も面白い。こういう部分が強いから、ド下品コメディやりつつ、推理と知性の香りが立つ。
非常に巧いんだけども、同時に圧倒的に面白くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
クイアをフル活用した笑いの作りもそうだけど、画面に詰め込んだアイテムやセンスがいちいち尖ってて、じっと覗き込みたくなる引力があるのよね…。
この狂ったワンダーランドに、もっと滞在したい。そう思わせる第一話になったのは、ホント大成功。
結局ジャックは捕まらず、探偵事件はまだまだ巷にあふれている。流れるままに助手に収まったワトスンくんは、自分の事件を依頼すら出来ていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
本筋は始まってすらいないのに、凄くワクワクする。先を見たくてしょうがない、とってもチャーミングな出だしでした。次回も楽しみ。
しかしこうなると、ホームジアンとしての素養のなさが悔やまれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年10月12日
原作のことが身についていると、カオスの中から知性をもっと引っぱり上げて、作品とお喋りできる気がすんだよなぁ…。
まぁ無いもんは無いのでしょうがない。生兵法は大怪我の元だ。