歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
妹一筋と思いきや、溢れる情けで損を引き受け、鯔背に悪徳の街を駆けるシスコン探偵。
その名をルーシー・モーンスタン。
その懐に忍ばせた、札束二つで買えるもの。
塾の年会費、妹の笑顔、白星、化粧廻し。薔薇の刺繍のきれいなおべべに、複雑怪奇な人生と来ます。
そんな感じの、ルー姉さん個別エピである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
情報の圧縮率と見せ方が異常に巧いのが、ミステリを扱う上での長所になっているこのアニメ。
冒頭一分で姉妹のオリジンを見せきってしまう手際は、まさに流石の一言である。
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明るい家族の肖像、貧困と孤独が燃える青森、そこから抜け出した瞬間の光、歌舞伎町のピンクのネオン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
明暗をスパスパと行き来する、幼い姉妹の未来。『頬に大きな黒子のある父親は、確実に再登場するのだろうなぁ…』などとメタを読みつつ、侠気に溢れた姐さんの気っ風が気持ちいい。
この世のゴミ溜め、悪徳が行き着くイーストは行き場のない者にとっては救いでもあり、また弱者が食い物にされるジャングルでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
そこで触れ合った関取の人情を、支えに姐さんは性悪妹に取り憑かれても健気に、真っ直ぐに生きてきた。気持ちのいい女(ひと)である。
さて、もしかすると探偵長屋で一番真っ直ぐな姐さんは、人の不幸を見過ごせない。モリアーティーが娯楽のように楽しむ飛び降りの、腰を掴んで引っぱり上げ、事情を聞いて二百万ポンと出した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
デカい荷物抱えて、高校生何をしてたのか。覗き部屋からも解らない。
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それは後の伏線として、文丸が二人を下敷きに河津掛けの形になって、土が付いていないのは(偶然かもだが)面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
200万の命金は、巡る巡って彼の化粧廻しになる。姉さんは憧れの人にそれを預けることで、かつて守られた綺麗な夢を守ることになる。文丸の将来もまた、土付かずで守られる。
ポンとくれてやった200万に、追加でさらに札束二つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
バンスがズッシリ肩に食い込むが、姉さんは我利我利亡者に汲々とはせず、近江山の訴えにどっしり耳を傾けることになる。
恩人を疑いすらしない善人の隣で、変人探偵が酒と肴を一緒に啜る。
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盗み聞きで大体の絵図を書いちまって、あっという間に事件を整理してしまうのはさすがの名探偵、格が違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
しかし犯人が判ることが、姐さんにとっての事件解決ではない。今回はルー姐さんにクローズアップすることで、探偵長屋それぞれに”事件”がどういう意味を持つのか、掘り下げるお話でもある。
こうして五話も付き合うと、トンチキな変人にも捨て去った哀しみがあり、くすぶる夢があることは判ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
事件の筋を追えば、好きな落語にしがみつける。不気味な笑いは、シャーロックが抱え込んだ人間性の軋みなのかも知れない。
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真っ当なあり方じゃあ、到底高座には立てないヘボ噺家。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
事件を肴に一席ぶつことだけが、シャーロックが夢に浸れる唯一の方法であるのならば、イーストは似合いの席だ。
貧困に追い立てられ、姉妹二人”そこ”に流れ着くしかなかった姐さんの、けして阿婆擦れぬ善良さもまた、この街を居場所にしている。
饅頭一つ見ただけで、サゲも聞かずに話を読み解く辺りは、流石に探偵長屋の住人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
己の思い出をぶつかり稽古、ひたすらに真っ直ぐぶち当たる姿は、さっぱりと命金を渡してしまう侠気に通じるものがある。
花から流れる血潮は、赤心を写して紅である。
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かつて自分を守ってくれた近江山は、やっぱり真っ直ぐにしか生きれない男だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
星を買うのに魔が差して、並ぶ黒星が真実の証。どうにも使い切れなかった二百万を、姐さんは思い出料としてさっぱり預け、桃色の闇に消える覚悟を決める。
薄汚れた街に、爽やかな風が吹いた。
貸し付けた親分も、娘っ子の股油で金庫を潤す外道ではなくて、夢を売る夜の蝶としてルーをデビューさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
女の装いに身を包んだ男と、男の格好で輝く女。いかにもイーストらしい転倒のなかで、200万のおべべがイタズラに舌を出す。
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枕事を持ちかけられたらまた厄介そうだが、その拗れもまたイーストの風か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
流れ着いてこの世の果て、ドタバタしつつも人情は消えず、よく似塗れつつも妙に爽やかに、ルー姐さんの人情芝居は転がっていく。
願わくば、超新星ホスト・ルーの未来が明るいことを。気っ風が良いからモテるだろ。
つまらんつまらんと近江山を腐していたギャンプル探偵も、悪態の奥で”なにか”を期待していたのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
その性根が腐りきっているか否かは、彼の個別回を待たなければいけない。
今はとりあえず、新しく昇る文丸に期待を込めて、200万の錦絵、腰に巻いていただこう
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幕下に落ちて引退を決意した近江山が、姉さんの心意気を文丸に預け、門出を祝う化粧廻しに二百万。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
非常にキレイなサゲである。妹が勝手に薔薇のドレスに変えたのと同じく、自分の惚れた相手に”服”を買う形になっているのが、鯔背で良い。汚れた白星買うよりも、よっぽどさっぱりした使いみちだ。
姉さんのニンが見える非常に良いエピソードなのだが、ミステリが一つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
近江山への慕情は、幼い日の恩義の焦げ付きと判った。歌舞伎町に流されて男装を覚えたというわけでもなし、姉さんはなぜ、男の装いをしているのか?
謎は深まるばかりである。
『そんなもの、ジロジロ覗き込んで答えを出すもんじゃないよ』と言うつもりで、姐さんのセクシュアリティに答えを出さないのであれば、これは誠に上品で良い切り返しだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
もう少し引っ張りたいからか、そこは特に理由なしでいいからか。まだまだ見守りたいところである。
しかしシャーロックも余計な聞き耳立てて、近江山の胸板に姐さんの赤心を届ける道を整えた辺り、存外シスコン探偵を難からず思っているのか。ただただ、目の前の謎をネタに一席ぶちたいだけなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
ここも、なかなか後を引く謎である。ワトスンくんの果たされない依頼もね。
というわけで、ルー姐さんの気っ風、ゴミ溜めにもどっこい生きてる人情を見せつつ、そこかしこに今後のネタを仕込んだリッチなエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
ここ迄無情な殺人ばかりが続いたので、姐さん大損ながら心意気が守られた今回の事件、変わり味ながら非常に爽やかで、面白い味わいでした。
探偵が駆け回るイーストも変態と業突く張りだけでなく、寄る辺なき者たち最後のアジールとしての”風”を見せてくれて、魅力が深まったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月9日
業と情とが渦を巻く、東の果ての桃花源。次回、見る夢は桃色か、血の色か。なかなか来週が楽しみになる、豊かなエピソードでした。