星合の空 第5話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
家。
緑色の水槽のように、僕らを閉じ込め守るもの。
そこに満たされた家族という水は、哀しみと喜びの入り混じった色彩で、肺を満たして窒息させる。
愛されるもの。傷つくもの。
様々な色合いの青春が、窮屈そうに身動ぎする。
その多彩が入り混じって。
ほら、新しい色。
そんな感じの、試合前の群像スケッチ回である。放送の混乱に巻き込まれる形で、第六話を先に見てしまったので色々逆しまであるが、しっとりといい話であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
眞己と柊真が二人だけの秘密を共有し、巨大な影と対峙するAパート。
絹代ちゃんや布津くんの複雑さが煌めくBパート。
みんな色々あるのだ。
新コンビとしてモチベ高く、練習に励む仲間を置き去りに、眞己と柊真は緑色の水槽のような光の中で、非常にナイーブな話をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
なぜ、ラケットが壊れたのか。なぜ、金が必要なのか。
眞己はクールで大人びた表情を置き去りに、パートナーに向き合う。
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ここは眞己が今まで抱え込んだ痛みを、ようやく同年代の他人に預けることが出来るようになる大事なシーンだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
親父に殴られて、金を取られている。ラケットを壊されている。
そういう傷をさらけ出す時、眞己は非常にセンシティブな振る舞いをする。
視線を外し、机を強く握りしめる。
ただ殴られるだけの子供ではなく、堂々何かを成し遂げれるほど大人でもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
非常に複雑で繊細な、思春期というフラジャイル。
大事な友達だからこそ、その傷を見せることが出来るけども、だからこそ直視には耐えきれず、思わず背中を向けてしまう。
自分が弱い存在だと、知られたくない。
でも触れ合った運命は、そういうものをさらけ出し、預けなければ進んでいかないところまで二人を繋げている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
多分、眞己は恥ずかしくて怖かったと思う。自分がかつて弱い子供であり、今もなお、子供でしか無いことを知らせるのは。
それでも、柊真という人間、今という時間、ここという場所で。
言うべきだと思ったから、ラケットが壊れた訳を、自分が身を置く理不尽の全てを晒したのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
柊真はその歩み寄りに、ぐいと踏み込む。時に無遠慮な暴走にも思える真っ直ぐさ、直情の勢いが、今この瞬間は嬉しい。
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第1話では眞己の傷も知らず、自分のプライドが焦げ付くままに差し出されたラケットと金。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
それが今回は、情に満ちた命金に変わっていく。
俺たちはダブルスなんだ。俺はお前が大事なんだ。
殴る代わりに差し出された、とても大事なものを眞己は抱きしめる。スマン、少し泣く…。
ここで抱きしめるラケットには、かなり複雑な意味が絡み合っていると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
父によって破壊された幼年期を、見ず知らずの他人の優しさで修復しているシーンであるし、傷つき壊れたものは『取り返しがつく』という、タフな回復力への信頼を表してもいる。
眞己はとにかく不敵に笑って、泣かずに優秀であり続けたわけだが、ここでようやく泣ける。年相応に、周囲に目をやらずに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
それは殴られうずくまるだけだった幼年期に、惨めさ以外の意味を与える涙でもあると思う。信頼と親愛を預けて、心をさらけ出すことが出来る安心感。大人でいなくていい瞬間。
そういう一瞬が眞己に訪れてくれたこと、柊真がそういうものを差し出せたことは、二人の少年にとってやはり、非常に大事で善いことだと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
甘えるべき母は弱い存在で、周囲をよく見て守らなければいけない。硬い殻で自分と世界をギリギリ守っていた眞己から、溢れた雫はあまりに重い。
だがそういうものが吐き出せない生き方は、非常に苦しいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
クレバーで大人びていることは、眞己の強さだ。それは学園の恥部たるソフテニ部を変化させ、部員を強くしている。良いことだ。
でも、それだけが彼の全てじゃない。光の裏側で傷つく涙を、柊真は引き受けることにしたのだ。
ナーバスなものの共有は、二人がいない更衣室でも発生している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
飛鳥くんのクローゼットを静かに閉じたまま、その繊細な現れを妙にガサツに守ってやってる部員たちに、ジジイは思わず泣いてしまった。
”人道”である。それで良いのだ子供たち…。
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多数派の体育会男子にとっては、誉れとして見せびらかすべき筋肉美。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
しかしそれは、飛鳥くんにとっては余りにあけすけで、別種の意味合いを秘めている。
多分、仲間は彼のセクシュアリティを知らない。知らないが、尊重しようとしてくれている。中坊らしい粗雑さでもって。
ココらへんは樹の背中に刻まれた聖痕と同じ、適切な距離感覚といえる。お互い、触れられたくないものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
そこに露骨に踏み込まなくても、優しく思いやることは出来るのだ。大事なことだ。
それにつけても、凛太郎くんの陰りが濃い。終盤炸裂する爆弾に向けて、導火線を引いている感じ。
って言ってたら、来ましたよ世界の歪みがッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
やっぱりクソ親父が登場する時は、世界が傾いで不協和音に満ちる。
歪んだ”夕やけ小やけ”、一瞬の切断。描写が完全にホラーだけども、まぁそれぐらいの重力はある。悪意のブラックホールかコイツ…。
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眞己が必死にツッパリながら、涙を親友に預けながら、なんとか守りたいと願った”城”を、土足で踏みにじる無神経。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
クソ親父のクソっぷりを描写する筆は本当に元気で、マジ嫌になる。
仕草の一個一個が細やかにクソだからなぁ…中井さんの好演も、いい仕事してんだマジで。心底死んでほしくなる。
幼年期から繰り返される、血の鎖のリフレイン。虐待される幼児でしかない眞己の小ささを、新しく繋がった他人が塞ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
柊真の無神経さ、周囲を見ない強さは、父から伸びる闇を塞ぐ盾となり、殺意の剣ともなる。
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友のために金を投げつけ、殺意を言葉に変えて叩きつける強さは、一歩間違えば闇に落ちる危うさと同義だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
眞己はそこまで強い感情で自分を守る親友を、なかなか真っ直ぐは見れない。薄汚く金を拾い、下から睨めつけてくる存在と同じ場所に、友が落ちていくかも知れない恐怖を、彼の鋭い”眼”は感じ取る
殺す。殺される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
激情のまま言葉にした、むき出しの人間関係。既に人生を諦めてしまったがゆえの、堕落した強さを突きつけられて、柊真は戸惑う。しかし、引くことはない。
眞己は輝きから闇に踏み込み、殺意を言葉に変えて、父に突き刺す。
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暗い廊下で共有される、どす黒い感情。殺してでも守りたいものが、そこにあるという実感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
柊真も眞己も、お互いにそれを感じ取っている。悪意害意を通り越し、殺意にまで研ぎ澄まされた友情は、凶暴で綺麗だ。
できればそんなモノ振り回さなくても、息ができる世界なら良かったのに…。
でもまぁ、この世界にはクソ親父もいるし、虐待もある。殺す覚悟で向き合わないと、一方的に食われる搾取もある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
眞己はただ身を縮める揺り籠から出て、光と闇が共存する場所へ踏み込んだ。それは子供としての涙を抱きしめてくれる、親友に出会えたからこそだと思う。
己の名前を、震えながら叫ぶ。ただ傷つけられるだけの子供ではないと、証明するべく前に進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
ダブルスはそういう、凄く生々しい人生のステージへ踏み込んだのだ。赤べこくんはすべてを見ていた…。
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なにかが決定的に変わったカタルシスと、そこに誰かがいてくれるありがたさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
その意味を眞己は凄く重たく受け止めて、柊真がいまいち判ってないギャップが、繊細でいいな、と思う。視野の広さ、認識の鋭さはやっぱり、眞己の特質なのだな。”見る”のは眞己の仕事、と。
クールな超新星が抱え込んだ、重たく深い傷。それを共有した相棒がどこに転がっていくかは、まだ先の話であろう。相手はマジモンの屑だからな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
しかし今回繋がったものが、押し寄せる泥から身を守り、星を見つける助けになってくれるだろう。
…なってくれると、信じたいもんだ。
”家”の事情は主役の独占物ではなく、絹代ちゃんもまーなかなかのクソまみれであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
嫁姑の確執、富めるがゆえのの虚勢。絹代、瑠璃羽…勝手に押し付けられる複数の名前。
そっかー…ストレス太りか絹代ちゃん…。
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己の名を告げる。柊真がクソ親父に吠えたものを、絹代ちゃんもひっそり、日記の表紙に隠している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
携帯で隠し撮りした愁嘆場と、香織という私だけの名前。
鍵をかけたそれを、預ける相手をいつか見つけられるのか。
イヤミな生徒会長にも、色々複雑な事情はあるのだね…みんなキチーな…。
そんな窒息寸前世界に空いた、明るく可愛い空気穴。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
あー…やっぱオラつき童子、ちっちゃい妹と仲良く楽しくやってるんだね…。それでいい…それで良いんだよホント。
竹ノ内くん、私服可愛すぎんか。大丈夫かホンマ(全くもって大丈夫です)
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俺は甘チョロちゃん五郎なので、出来ればみんな家族と仲良く、バッタダンスに浮かれて騒ぎ、楽しく暮らしていて欲しいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
暗く重たい”家”を背負う子が多い中、竹ノ内くんみたいな子供がいる。それは平等で良いことだと思う。色んな子供が、世の中にはいるのだ。
そしてここにも、もう一人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
ソフテニ部の頭脳派、優秀なバランサーたる凛太郎くんが、世界を見つめる時見せる陰り。
その理由は、桜の中の幸福と、大人になりかけた時突き刺さった真実にあった。
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愛されず生まれた欠落を、それでも愛してくれる負い目を、優秀であり続けることで埋めたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
そう願えばこそ、出来ない自分がドツボにはまる。凛太郎の自虐を、柊真の向こう見ずが全力で蹴飛ばす。
ばっきゃろー! 俺の声は畠中祐だぞッ!!
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マジでこの瞬間の柊真は、俺が言ってほしいことを全部言ってくれて最高に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
負い目も哀しみも、何も必要ない。凛太郎は最高に頑張っているし、愛情を疑う理由なんてどこにもない。
『羨ましくなるほど、お前は愛されている』
柊真の傷が、熱血の奥にじわりと滲んでいた。
やろうと思えば、妖怪とだってカバネリとだって戦える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
周囲を見ずに思い切り突っ込む柊真の熱血が、今回ほど頼もしく、ありがたく感じる回もなかった。
お前の暑苦しいまっすぐ加減、マジで誰かを助けてるから…お母さんと上手くいかなくても、お前はかけがえない存在だから…。
そして凛太郎くんの自虐は、確かに眞己が聴いたら即ギレだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
血の繋がった親父に殴られ奪われ、泥の中で窒息しかかってる少年にとって、血の繋がりがなくとも愛で繋がれてる布津家は羨ましかろう。
しかし、凛太郎くんの迷いが”嘘”ってわけでもなくて。
みんなそれぞれの難しさ、息苦しさ生きづらさを抱えたまま、色んな色彩を生きている。それは単一でも単調でもなくて、出会ったことで変わっていく色合いだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
青春の群像を、それぞれのプリズムを透過させ、重ねて表現する筆は、やっぱり奥行きがあっていい。みんな幸せになっておくれ…。
飛鳥くんと御杖さんの、コートの隅っこコンビも可愛くていいんだよなー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
グダグダ文句言いつつ、部活から、眞己から目が離せない。自分が胸に秘める思いと似たものを、飛鳥くんは御杖さんに感じ取っている。
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炸裂する呪い。形にならない想い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
そういうものを抱え込んだまま、御杖さんも制服を来たまま、男子ソフトテニス部に隣り合っていく。そういう縁の繋がり方だって、当然あるのだ。
御杖さんのネクラな青春がどこに転がっていくかも、このアニメの楽しみの一つだ。俺、この子好きなんよね。
『ちげーし! 眞己もお前らのスポ根も興味ねーし!!』と吠えていた御杖さんを、玄関前で回収し。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
部長の空回りをボヤきつつ、”部活”は試合に望んでいく。
その場所を作ってくれた先生曰く、『大人は成長なんてしない』らしいけど…やっぱ、アンタ偉いよ
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部員たちがジワジワ眞己と飛鳥くんを認めてくれる描写も多かったし、IQとEQ高いコンビで通じ合ってる様子もよく見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
僕飛鳥くんと眞己好きなんで、二人が視力の良さを活かし、”部”の風通しを良くしてる様子、支え合ってる感じが太く感じれて良かったな、今回。
傷も悩みも、それぞれ抱え込む青春。その色合いは孤独に沈むのではなく、複雑に混ざり合っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
新しい色が、希望と絶望、どっちを連れてくるかは判らない。
でもそうやって混ざりあえるなら、俺たち、側にいたほうがいい。
”部”で出会えた意味が、少しずつ結晶化するエピソードでありました。
この後の練習試合で、一体どんな変化が見れるのか…てのは、先に見ちゃったから良いとして。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月16日
大人びた眞己の涙を受け止め、より強く結びついたダブルスがどこに行くかは、第7話で片鱗が見えそうです。王寺くんとの試合が終わっても、傷と優しさの入り交じる人生は続いていくのだ。
次回が楽しみですね