BEASTARSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
迷いの森を抜けて、青春の夢が覚める頃。隕石祭本番が近づく中、獣達のジュブナイルが踊る。
一瞬の夢と、肌を触れ合う兎と赤鹿。その気配を感じ取り、万色なる混沌を塗りたくる狼。
殺しても、殺しても。這い出してくる愛おしさを牙に宿して、呪いのように呟こう。
嗚呼、君が好きだ
そんな感じの、三角関係超加速回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
裏市で生っぽく叩きつけられた”大人”の気配から、物分りよく距離を取って、薄暗い居場所に戻ろうとしたレゴシが、どうにも戻れない自分を思い知らされるエピソードである。
世界で唯一弱さを預けられる相手を、困り顔で諦めなければいけないルイ先輩のナイーブも光る
二人の男に挟まれ、複雑怪奇な恋模様に染まるハルちゃん…を掘る前に、さてワンクッション、鶏鳴のコメディを。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
レゴムさんの実のない卵物語、僕は結構好きである。色んな生き方をしてる動物が、同じ箱…”学校”に収まってるなぁ、という感じがする。
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レゴムさんのバイト精勤は自己満足でしかなく、しかし当事者にとってはかなりシリアスなアイデンティティの問題だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
家禽は卵を生むもの。リア充ネコ科カップルを背後に乗せて、ニワトリはより善い卵のため、鶏らしい生き様のために、苦手な運動に勤しむ。
それは喜劇…と、笑い飛ばして良いものか。
ビル・ザ・マッチョタイガーにしても、アオバにしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
主役として選ばれない存在にもちゃんとプライドがあり、下らなく思えても生き方には喜びと哀しみが混じり合っている。
そういう群像の尊厳を丁寧に扱っているお話のなかで、一瞬切り取られる鶏の自己満足。
彼女が”八の字”のディープな葛藤を知らないように、レゴシも自分の本能を沈めてくれる卵が、誰から生まれているかを知らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
しかしそれでも一瞬触れ合って、お互いの物語に分かれていく。その奇妙なダンスが、生っぽくて好きである。
一瞬の笑劇から、話は本筋に戻る。
ハルちゃんの夢は、何かが何かに移り変わっていく曖昧さ、流体の快楽と気持ちの悪さを見事にアニメーションさせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
固体から液体へ、くるりくるりと立ち位置と相を変化させながら、移り変わる夢。いつの間にか手からこぼれ落ちた、微かな愛。
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どれだけ肌を重ねても、むしろ重ねるほどに遠くなっていく関係性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
異種同士の恋は学生時代の夢でしかなく、”マトモ”な大人になるにつれ忘れていく季節性の情熱。その曖昧な儚さの中で、ハルちゃんはルイ先輩の弱さを抱きとめる。
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花畑を横から切り取るレイアウトが、誰がどのように境界線を乗り越え、関係が繋がっていくかを鮮明に写している。(毎回そうだが、今回は特に”越境”の描写が多く、巧い)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
枝角の王冠、あるいはそそり立つファリック・シンボルを失い、血を流して弱さがむき出しになる季節。
ルイ先輩は張り詰めた強さ(”男性的”とされる要素)を演じつつ、月経にも似た季節性、身体性の不可避な弱さを抱えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
ハルちゃんはアクシデントとしてそれに出会い、”赤鹿のルイ”を知らない学園の外れものとして、王冠を失った王子の素肌に触れていく。
ルイ先輩は学園のエリートとして、角を生まれつき持つものとして、金と威圧でハルちゃんを黙らせようとするのだが、そういう強圧的な秩序はハルちゃんには通用しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
別に、そういうものが世界に存在することを認識できていないわけではない。むしろそこにセンシティブだからこそ、負けじと反発する
ビルが無邪気に、そして意識的にぶん回すマチズモとは真逆のものを、ルイ先輩は生得的に抱え込み、秘密にしようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
月の巡りとともに、不可避に血を流し、去勢される。ルイ先輩はツッパったエリート顔の奥に、非常にフェミニンなものを秘めた少年だ。
踏み込んで、戸惑って、手を引っ張られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
ハルちゃんと花園で演じた関係性は、ベッドの上で再演される。
ルイ先輩は差し出された手のぬくもりを引き寄せて、枝角の無い自分に思い至り、フッと身を引いてしまう。冠のない自分に、女に言い寄る資格はない。
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温もりを求めつつ、重たくのしかかるのではなく震えながら身を引いてしまう繊細さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
ハルちゃんはそれを抱きしめてあげたくて、身を引いたルイ先輩を抱き寄せて、裸の彼を受け入れる。
でもそれは、一瞬の夢。学園の檻に守られた、季節性の恋煩いでしかない…と、世間はジャッジする。
このジャッジに、ルイ先輩は従順だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
強いやつは弱いやつを踏みつけにし、弱点を見せれば噛みつかれる。世界はそういうモノだと、なんとか飲み込めてしまう。
決められた結婚。世継ぎという責務。ノーマルでストレートな繋がりを、受け入れろと頭に伸びる手
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ルイ先輩はハルちゃんの頭を、今回よく撫でる。頑是ない年下の女の子にするような、慰めと言い聞かせの混じった仕草。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
しかしそうやって大人ぶるしか無い幼さを、受け止める成熟は男と女、どちらのものなのか。カーテンの奥で王子は冠を被り直して、”男”に戻っていく。少女を思春期に置き去りに。
と、甘苦く終わらないのが、人と人の触れ合う人生の妙味である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
ガラスで遮られた光の向こうに、ノンキに広がる狼の顔。ルイ先輩は背後に秘密を隠したまま、ガラスの境界線を抜けてレゴシと向き合う。仮面に合いた穴から、ボロボロ関係性が漏れていく。
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ハルちゃんでなくとも耳を覆いたくなる大混乱だが、レゴシは無邪気に、ただ会いたい気持ちを言葉にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
その純朴は、ルイ先輩が生まれた時から奪われたものであり、ハルちゃんの胸の中でのみ再生可能なものであり、今まさに手放そうとしているものでもある。
ガラスに映る影のように、世界は複雑だ。
ここでルイ先輩が繕いきれなかった矛盾は、レゴシの耳と鼻にしっかり突き刺さって、最後に炸裂することになるのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
この段階では、レゴシはまだ真実を知らない。ルイとハルだけでなく、その肉体関係に反射する自分の思い、内側の獣を認識できていないわけだ。
ルイ先輩が一足先に降りた、光に満ちた場所。レゴシは階段の暗がりに身をおいて、そこからじっと未来を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
肉食は肉食と、灰色狼は灰色狼と。
恋敵のはずのルイの言葉が、ジュノに優しくする成熟をレゴシに与えているのが、なかなか複雑な色彩。
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鏡合わせに仕草を真似るというのは、相手への親愛を表す行動だ。同時に、鏡には怪物も写る。
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ジュノは同じ灰色狼のオスにキュンキュン引き寄せられ、レゴシは鏡越しの自分に恐怖を覚える。
似ている、ということを確認するための光学機器が、心に引き起こすものは人によって、場合によって異なっている
ここら辺の複雑なミラーリングを、ジュノはガツガツと乗り越えようとし、レゴシは朴訥に跳ね返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
はしごの縦線が生み出す断絶を、乗り越えるのはやっぱりジュノの仕事である。レゴシは境界線の向こう側で、基本的には待つ。日陰がお似合いです、と。
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しかし無意識に発するセクシーが胸元からこぼれて、少女の視界を輝かせていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
鏡に映る二人は、まるで御伽噺の王子とお姫様のよう。振り付けを確認しながら、灰色狼たちの視線はズレていく。
まさに眼中に無し。鈍感は時に罪であるなぁ、レゴシくん…。
ピカピカな恋色世界は、朴念仁の生物学講座で一瞬にして色あせ、モノトーンに変わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
ライティングをちょっとコミカルに使いこなして、ジュノの弾む内面、脈なしの悲しさを演出したのは、非常に良かった。メスオオカミ…強く生きろ!
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さっぱり噛み合わないのはイヌ科の親友も同じで、ジャックはド変態に堕ちた幼馴染を相手に、ぐるぐる思考をかき回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
身体がデカくなっても虫大好き、カブちゃんに餌を上げているレゴシは、カーテンを覗き込んだ親友に牙を剥く。
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基本的に境界線を超えないレゴシが、大動転してカーテンを蹴り破るのは、ハルちゃんへの恋と食欲を問われたときだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
薄暗い場所に身を置いて、全てを諦めて作り笑い。
ルイ先輩が突き進むのとは別の歩みだが、レゴシだって”大人”になろうと、苦さを飲み込もうと苦労している。
しかしそれでも、胸を突き破って溢れる思いは止められない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
ただキレイなだけじゃない、愛情と情愛の混合気。それを吸い込む苦しさに、今までどうりの影に沈もうと決めた時、巨大な肉食恐竜の足がひさしになる。
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これがお似合いと諦めて、”マトモ”な距離感に身を引いて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
自分に言い聞かせるように、ハルちゃんと目線を合わせて大人の対応。溢れかえる愛おしさが、知らず尻尾を触らせている所が、純情であり危険でもある。
どれだけ大人ぶろうとしても、灰色狼の牙は元気だ。一度出会った光は、簡単には消えない。
この影に入りつつ、光に乗り出しつつの動きが、裏方から俳優へ、バックステージから表舞台へと進んだ”アドラー”と呼応しているのが、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
ルイ先輩に引っ張り上げられる形で、肉食獣の本能、世界の実相と対峙したあの舞台。
フィクションを追いかけるように、レゴシのリアルも明滅する。
ハルちゃんとの逢瀬で切開されたように、ルイ先輩は常に立派な角をいきり勃てた赤鹿を演じ続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
財団の御曹司として、弱さを見せず強くあり続ける。優しさを切り離し、誰かを踏みつけにし続ける。
舞台を下りても、ルイ先輩はずっと役者だ。仮面を外せる女とも、社会に出れば別れていく。
レゴシは自分の優秀な資質を、必死に覆い隠しながら影に生きてきた。しかし燃え上がる情熱は光となって、その巨躯を照らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
諦め、逃げようとしても追いかけてくる鮮烈な光。それを刻み込むのが”アドラー”であり、ハルちゃんへの慕情だ。
スポットライトが当たるなら、上手く演じなければいけない。
そんな矛盾を、足場のパイプをフレームにして見事に切り取ってくるレイアウト。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
自分を遠ざける境界線の向こうで、ひっそりと演じられる美しい恋。ピンスポットを絞るように、二人の逢瀬から目を離せない。
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やっぱりここでも、ルイ先輩はハルちゃんの頭をなでている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
『お前は子供だなぁ…』と、ボディ・ランゲッジで言葉にすることで、『俺は大人だぞ』と強がるように。
繰り返される仕草を、ハルちゃんは苦笑いと愛おしさの混ざった表情で受け止める。せ、切ねぇ…。
二人の交流に宿った、隠しようもない愛おしさを受け止めて、灰色狼の牙がとがる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
裏町で世界の真実を見た時は、遠くに輝いていた複雑な色彩。それは射精のようにチューブから飛び出し、レゴシの手のひらを汚す。
ハル、ハル、ハル。あまりにも、愛おしい君
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独占欲と嫉妬、尊敬と愛情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
全てが入り混じった混沌を、レゴシは愛の告白共に、自分の顔に塗りたくる。
物分りよく影に引っ込むなんて、冗談じゃない。この万色を飲み込んで、オレはオレになる。
そういう少年の覚悟が見える、凶暴なラブ・コールである。素晴らしい。
愛していると告げるには、あまりにも凶暴な瞳の中の赫。凶相を深く彫り込む陰り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
綺麗事だけじゃ終わらない、どうしようもなく湧き上がる衝動。その苦さも熱さもひっくるめて”恋”なのだと、レゴシが認めた瞬間である。
あっはっは、どーなるんだコレ…。
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先週”大人”になれなかったアオバと一緒に、見つめた世界の複雑な美しさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
レゴシは今回それを自分に引き寄せ、熱く塗りたくる。世界は綺麗なんかじゃないが、白々しい嘘よりも強く、脈を打ってるぜ…。https://t.co/BRkkbYkGat
この実感が、レゴシを新しい場所へ突き動かす。ビリヤードの球のように、その一歩が波紋を呼び、誰かをまた動かす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
その複雑な色彩と作用を、丁寧に切り取るエピソードでした。
境界線を超えない、陰気な狼が絶対譲れないもの。恋の輪郭は、なかなか凶暴だ。
そんなレゴシの恋敵…であり、敬愛する先輩でもあるルイが抱えた、フェミニンでナイーブな弱さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月21日
重ねた肌でそれを受け止めつつ、枝角の虚栄を引き剥がすには至らないハルの焦燥。
空回りする、ジュノの同族ロマンス。
青春を加速させる火薬が、キナ臭く匂い立つ。運命の隕石祭は近い。
来週も楽しみ。