BEASTARSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
恋慕と嫉妬、執着と清廉。百万の感情が、混沌の色で焼き付く。
恋。
肉食も草食も関係なく、脳髄の奥を焼く想いが、隕石祭前夜に明滅する。
君を知りたいと願い、知り得ないことを思い知らされる。
それでもなお、闇の奥に瞳を凝らし、鼻を突っ込むのは…。
そんな感じの躍動する思春期、嵐の前の欲望祭りである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
オレンジの表現力がもう一段高いところ…顔だけでなく指先や目線での芝居に色気を匂わすところまで来た感覚が、明暗や高低差を生かした演出の中でビリリと響く。
粘ついた性欲と、清潔な純情。そうシンプルに切り分けられない、青春の血潮。
そういうものがキャラに宿り、隠しきれずに指先から、あるいは尻尾の端から迸る。受け止め、あるいは受け止めきれずに秘密に抱えて、お違いの色が入り交じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
青春。傷つきやすい心身と、世界をより善く知りたいという願望が入り交じる熱の時代を、非常に鮮明に描く筆が、今回も元気である。
さて先週、無茶苦茶な色彩の恋を自覚したレゴシ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
正面から描写すると放送できない、複雑怪奇な感情に揺れるペニスを、尻尾、あるいはペットボトルに象徴化して描くこととなる。
自分の一部でありながら、自分を超えた欲望の権化が、勝手に動く厄介さ。
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持て余すのが性欲だけでなく、食欲、恋、あるいは『喰う/喰われる』という物理的/社会的な区分と断絶であるところが、レゴシの青春の複雑なところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
ハルちゃんを思って尻尾を扱き上げれば、快楽と一緒に鬱屈が出ていく。そういうシンプルな構造に、彼らの恋…あらゆる恋が多分、出来ていない。
長身のレゴシがおっ勃ってるだけで、影に入ってしまうハルちゃんの矮躯。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
ルイ先輩が再三突っついているように、生来恵まれた(あるいは呪われた)体躯を、レゴシはなかなか意識できない。
影を生み出す長身を曲げて、草食の目線に合わす。
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哀れみとも気遣いとも取れる相手目線が、肉食と草食(あるいは男と女?)が付き合うときには必要だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
裸電球のライトが、レゴシが直立しているときは陰り、体を曲げた時はハルちゃんを明るく照らしているのが、非常に示唆的である。
脚光を浴びるか否かの選択権は、あくまで肉食獣/男性側にあるわけだ
洒落になってない血走り加減で、”紳士的”にハルちゃんを送るレゴシ。一足違いで乗り過ごした、明るい電車からの窓越しの視線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
取り残されたホームで、二人は複雑な陰りに身を預ける。看板に書かれた”野菜大好き!”の空々しさが、なかなか良い仕事。
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柱が分断するわけじゃないけど、完全に身を寄せることも出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
性を贄に捧げて立場を作る女の戦術を、男は上から否定してくる。でもそこに、死すべき小動物の儚さがあると、なかなか想像できない。
特急がつれてくる光が、建前の奥の陰りを際立たせる
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一皮むけば欲望が牙を剥く世界の中で、弱い兎が唯一差し出せた武器。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
ビッチと謗られ、水と悪意を叩きつけられても、そう生きるしかなかった決死を、ハルちゃんは震えながら叩きつける。
身勝手で、でも嘘のない少女の真実…の一面。笑顔で誤魔化すのを止めたのは、レゴシだけじゃない。
ここで男/女、肉食/草食の間にある巨大な断絶に踏み込んだのは、それだけハルちゃんがレゴシのことを信頼している、ということでもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
みんな仲良く暮らしましょう。そういう綺麗事で回る世界で、身につけた笑顔の仮面。社交術で距離をおいていた時代から、二人の関係はたしかに進んでいる。
それは一番最初の出会い…腕につけた深い傷と、鼻の奥でうごめく欲望に帰還するということでもあり、それを乗り越えるべく秘密を暴露することでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
結局、”そこ”に帰還しない限りは二人の関係は、前には進まない。しかし、そこに行き着くまでには紆余曲折がたっぷり待っている。
性と喰殺にまつわる圧倒的なギャップを前に、背中を向けようとしたハル。その手を、狼の大きな手がグイと掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
この時、レゴシは膝を曲げ、草食の目線に合わせる気遣いを持てない。余裕なく、素の自分…肉食でしかないマッチョな自分を暴露している
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『手を引かれる』受け身の立場だったハルちゃんは、自分たちの複雑さを個別には見てくれない世間の常識(無理解、あるいは優しさ)を前にして、『手を引く』主体へと変化する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
世知に長けた、一歳年上の少女として。パワーをナチュラルに行使すれば糾弾される世間を、必死に駆け抜けていく。
『私のこと、アンタには理解らない』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
そうやって断絶を突きつけていたはずなのに、いざ保護(あるいは分断)されそうになると、一緒に逃げたくなる。
手を繋いで、同じ場所を目指したくなる。二人きりの、個人的な複雑さとじっくり向き合える場所へ。
体の大きさを活かして、全力疾走でエスコート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
”男らしく”あることを望むハルちゃんの願いどおり、レゴシは堂々兎を追い抜いて、『手を引く』側へと変化していく。
リードとフォローが入れ替わる、青春の社交ダンス IN 地下鉄。
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思わず伸ばした手が掴んだむんずと二の腕から、手のひらへと連結が変わっているのも面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
それは指があり、自分の意志で握り返す事ができる器官だ。強引にパワーを押し付けられるのではなく、対話と合意で、繋がり合うことが出来る部位。
セックスしない(出来ない)彼らの、プラトニックな性器か
薄暗い便所に身を隠し、官憲の目をやり過ごす二人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
狭い場所に隠れる関係上、身長差が縮まって自然、対等な距離感になるのがいい。
至近距離でむき出しの牙を確認してなお、戯けた肘鉄を打ち込む。過剰なシリアスさを避ける、靭やかな気遣い。
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夜闇の中踊った、断絶と理解のダンス。ようやく一息ついて、ハルちゃんは一つの秘密を差し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
『私、食い殺されかけたの』と切り出すのは、結構勇気のいることだと思う。そしてその当事者が目の前にいることを、彼女は知らない。
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自分がすでに加害者であることを、レゴシは前腕を擦る仕草で思い知らされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
肉食として生まれた事自体が罪か。隣人の弱さを共有できないことが罰か。
抱え込むには余りに大きなものを、それでも一時保留して隠す。この一瞬の夢と光が、せめて長く続くように、と。
実際Victimとして傷つけられた(そこに”行為”の有る/無しは決定的に重要ではない)ハルちゃんに、レゴシはかけるべき言葉を持たないだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
ビルのように、ナチュラルにマッチョな自分を明るく誇れと、兎はいう。
でもその危うさと不衛生を飲み込めないから、レゴシは裏町を駆け抜けたのだ。
しかし影に隠れてばかりもいられない。キミと歩く光の下は、あまりにも美しいから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
狼は学園という劇場で、甘酸っぱい恋を演じるために仮面を被ると決める。ああハルちゃん…笑顔が素敵だ…。
このペンディングが、一体何をもたらすか。
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それは先の話として、ルイ先輩の血塗れの過去…は一瞬見せて先送りッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
ハルちゃんが犠牲と刻まれた前腕の刻印と、近い場所にビルの爪が刺さっているのは示唆的だ。やっぱ『弱者/女/草食』の側として、ルイ先輩はスタートしている。
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鏡写しに湾曲した、複雑な世界で何があったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
意図的なカットからBパートに移り、陰気な狼は露骨な不機嫌を叩きつけてくる。
恋敵であり、憧れのスターであり、光の象徴でも有る赤鹿。飲み込んだ恋心が、ぐるぐると狼を唸らせる。もう、黙ってられない
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”部室”がミニマルで未発達な、しかし一個の社会として機能しているのは、これまでも描写されたとおりである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
草食/肉食、役者/裏方、男/女、花形/凡俗。様々な断絶を刻まれながら、あるいはサークルをなし、あるいは孤立を生んで、お違いの有様をよく見る世界。
その中心に、ジュノが躍り出る。
生来のルックス(”どう見られるか”であり、同時に”どう見るか”の足場になるもの)を嫌味なく活用し、別け隔てなくフラットに接する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
草食のルイが枝角の冠でふんぞり返り、圧倒的エースとして支配しているのとはまた違うカリスマ。内側に入り、心遣いで繋げる強かさ。
それが生み出すサークルから、レゴシも、そしてルイも少し距離をおいて弾かれている。陰キャは判るが、王様もねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
次期ビースターに相応しい力量を備えた相手が出てくれば、ルイという星も唯一絶対の太陽ではいられない。
挑戦者がいることは、孤独な王子には結構ありがたいことかも知れない。
で終わんない所が、このお話の複雑さで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
ライト一つの薄暗い舞台で、雌狼と赤鹿は複雑なダンスを踊る。
身長差、手を引く、犠牲になるしかない草食。
男女と役者を入れ替えて、ハルとレゴシが地下鉄で演じたものが再演され、変奏される。
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リードする手のひらを強引に掴み帰して、弱気なはずの一年生は演劇部の王に宣戦布告する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
カーテンが生み出す断絶、犠牲者の聖痕を隠す包帯。
ハルとレゴシが地下鉄で演じたダンスより、より政治的でエロティックな匂いが、鮮烈な明暗の中で引き立つ。
エスコートされるだけが、女の領分ではないの。
パワー志向の牙を隠し持っていたジュノは、ルイ先輩を影に追いやる。舞台袖から、強くあろうとする美しさを見上げていたレゴシとは、当然違うものをジュノは見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
交錯する視線と明暗、至近距離で絡む身体。強張って諦めたような、指の表情がエロい
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今回は性的なメタファーを、上品にそして露骨にほのめかす演出が多い…と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
ここのルイ先輩の芝居は、益荒男に手篭めにされる手弱女そのものであり、暴力を前提に生きるしかない草食の諦観と、それに絡め取られず生存の道を探す逞しさが、ぎゅと詰まっている。
この脆さ弱さが通じ合うからこそ、ハルちゃんとも寝て、しかし弱さに溺れきれないから一緒にはなれないわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
鏡合わせにどこか似た場所を探し、そうするごとに違いを思い知らされる。色んな舞台、色んな役者が、人生という劇を踊るアニメであるな。
ルイ先輩は気迫と強がりで、ハイイロオオカミのフィジカルを跳ね返し、堂々光を背負う。まだまだ役者が違うねぇ、ジュノちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
そこで対等な逆転を許す…『喰う/喰われる』以外の関係性を求める所が、ジュノの気質であり美質である気がする。
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レゴシに『ジュノを見てやれよ』と言ったように、ルイはジュノに『レゴシをちゃんと見ろよ』とアドバイスする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
いけすかねぇ権力主義者と思わせておいて、ちゃんと人間を気にかけてしっかり”先輩”するところが、この赤鹿ちゃんの可愛いところだ。俺様に見えて気遣いの人…じゃなきゃ生存も出来ん世界
あくまで『礼儀正しい隣人』でしかないレゴシの距離感を、どうにか埋めようとするジュノの熱視線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
当然、ぼんやり狼はそれに気づかない。
提灯の紐が断絶を暗喩する、残酷なカメラワーク。周りからは『レゴシしか見てねー』とバレバレなのにねぇ…。
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そんな恋の炎がフワッと消えて、むき出しの闇が訪れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
隣人が怪物に変わってしまう、原初の闇。
それに想い人が飲まれないように、レゴシは四足の獣に戻る。嗅覚を活かして、獲物の足跡を追う。
肉食獣プロテクトに参加しない所が、レゴシだな、って感じ
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”社会”から自分勝手にはみ出してでも、自分が見つけ出し守りたかった少女。それは闇から開放されて、自分以外の男の名を呼ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
『あっ…地獄…』って感じだが、隠しに隠したハルちゃんの純情が思わず漏れた感じで、言った彼女を責めれない。
はー…ままならねぇなぁ…。
ナチュラルに突っ立っていたら、けして埋まらない二倍以上の身の丈の差。その断絶を、レゴシは微笑みに膝を曲げて、なんとか埋める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
光も恋も、あまりに遠い。それでも、君のことが好きだから。気にしてないふりを装って、舞台を続けよう。
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そんなレゴシの幸福を、静かに睨めつける重力源一つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
私の前では見せない顔を、そんな女に無邪気に晒す。燃え上がる緑の火が、エリート志向の才女に宿る。
恋と青春と食欲と権力の青春四角関係、一体どうなってしまうのか!!!!!
ってところで、次回に続くである。いやー、どうなんだろうね?
というわけで、恋の自覚を手に入れたレゴシくんを中心に、皆が青春に身悶えするエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
モゾモゾとうごめくエロティックな情感を、時に露骨に照らし、時に上手く反射して、体温と匂いを青春群像劇に宿す。
『オレンジは3Dモデル表現の新領域に、確かに踏み込んでいる』と確信する話数でした
くったりと力を抜くルイ先輩の指とか、髪をかきあげ鼻に意識を集中するレゴシの仕草とか、とにかく男がエロくて良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
エロティシズムとは性だけでなく、生を浮き彫りにする画材でもあるので、青春を必死に生きてる彼らを刻む上で、大事に鮮烈に使ってくれるのは素晴らしい。
レゴシからの歩み寄りで野心と才気に火が点いたジュノが、なかなか狙い通りに邁進できない様子も、可愛らしく描かれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
いやー、この話でただのお目々キラキラヒロインなんぞいるわけもねぇが、それにしたってギラギラだぜ。好きだなーホント。
飛ばしたルイの過去をどう使ってくるかも気になるし、不穏さを埋め込んだ闇の濃さがどう襲いかかるかも楽しみ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年11月29日
青春というジャングルに、身を潜める数多の欲望。その個別の表情と相互の作用を、とても大切に転がしてくれました。群像劇としてしっかりしてるよな、やっぱ。
来週も楽しみ。