歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
混ざり合わない水と油が、出会って交わる歌舞伎町。
長屋の隣人となったアイリーンは、切れる頭と度胸を武器に探偵をこなす。
変人探偵の膝下で、天下に憚る悪童商売。
無邪気な笑顔が照らすのは、遠い過去か近い未来か。
泥棒まがいの義理仕事、子はかすがいと申します
そんな感じの、アイリーン解答編…っても、彼女が巻き込まれた事件、隠している過去と狙いはやっぱり見えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
見えるのはクールで怜悧な彼女の人情であり、同じく変人探偵の人間味である。
片や推理の現場、方や慣れない子守。お互い反発しながら、一つ事を守ろうと走り回る二人の顔がよく見える回だ
今回長屋は、カルテ窃盗、事実の改ざんと、それなりの悪事を背負い込む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
お綺麗な西じゃあ問題になるかもしれないが、ここは混沌の歌舞伎町イースト。探偵が泥棒の真似事、詐欺師の片棒だって担ぐ。
今回はアイリーンをてこに、対比物が色々混ざり合うエピソードだ。
いつもはドシモなパイプキャットも、えみりの可愛げに当てられて絵本調に変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
とは言うものの、相手は最悪の恐喝王。どす黒い欲望からか弱い存在を守るためには、手練手管も必要となる。
全部がいきなり綺麗になるわけでは、当然ない。
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何かが混ざり合うためには、まず分け隔てられた状態を書かなきゃいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
アイリーンは切れ者としてパイプキャットの男たちを籠絡し、しかしモリアーティとはバチバチ火花を散らす。
ホームズやワトスンくんと違い、この断絶は今回では埋まらない。
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探偵仕事を放棄したホームズに変わり、アイリーンは推理力とコネクション、切れる頭を駆使して、代役を立派に務める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
女優業でつちかった人当たりの良さを考えると、変人探偵よりも探偵に向いているかもしれない。
同じくホームズも、探偵として推理を差し出す以外の人との繋がり方を、えみりと描く
仏頂面の味覚壊滅人間と、無邪気な子供。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
どうにも水と油な二人は、”食事”という生物の一番根本的なところから、なかなか繋がりあえない。
ホームズが当たり前に食べて疑問に思わないものが、なかなか社会には受け入れられない世知辛さ。笑いつつも少し寂しいシーンだ
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そんな断絶を乗り越えて、ホームズは困惑しつつ、安楽椅子探偵ならぬ安楽椅子保父を頑張る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
ガキは嫌いだとツンケンしつつも、目の前で泣かれると困ってしまう情はあり、なんとか歩み寄り笑顔を取り戻そうとする優しさもある。
そんな変人の体温に、えみりもゆっくり懐いていく。
どうも”異物”としてのシャーロックばかりを見てきたので、今回当たり前に『人間らしく』当惑し奮戦するホームズには、新鮮味と妙な安心を感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
それは”探偵”というロールを背負わないからこその繋がりで、事件から離れたこそ見えた温もりだ。
推理装置以外の繋がり方が、彼にも可能かもしれない。
そう思えるのは、探偵仕事をアイリーンが代行してくれているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
金も体も興味がない、情報をむさぼる出版会のドン。
普通の価値判断とは切り離された情報源は、どこか変人探偵と似ている。一筋縄ではいかない歌舞伎町の怪物を前に、アイリーンは己を切り売りする
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冷徹な脅迫者、理性の怪物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
前回までのイメージが変化していくのはアイリーンも同じで、『なぜ他人の事件に前のめりに、傷を増やしてでも前に進むのか』というミステリが、カルテ探し、脅迫王殺しという事件と並走で進行する。
この同時進行は、今までもガッチリこのお話を支えてきた得意技だ。
黒か、白か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
転落した元大女優の背負う陰りも、アイリーンは自分ごととして引き受ける。
男と女の境界線を超えて、掴んだ栄光は泥に塗れた。私欲で全てをしゃぶり尽くす極悪に、女探偵はメラリと怒りを燃やす。
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白から黒に自分を塗り替え、実の子供すら鬼畜の餌。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
無防備に身を預けた温もりに、シャーロックも熱くなったのか、かなりアタリが強い。
シャレで済んだり死人が出たり、このお話が扱う事件はバラエティ豊かだが、ここ迄シャーロックが感情を出すのもなかなかに珍しかろう。
慈父顔してても名探偵、ナイトプールの名残が一つで真実を見抜き、待ってましたの名高座…とはならないのが、アイリーンの怜悧である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
ワトスンくんならしっかり聴いてくれる推理落語を、ぶった切って答えにたどり着く明晰。探偵の資格は十分である。
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流されて欲望の巷、カルテが隠れる事務所の奥で、シャーロックは巨大な肉に当惑する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
反りが合わぬと思いきや、妙に惹かれるその瞳。女っ気がなかったホームズが、アイリーンにだけはメラリ情欲の照り返しを見せるのも、原典への目配せと言えるだろうか。
アイリーン相手だと”血が通う”のね…面白い。
ワトスンくんは変人を変人のまま、相棒役の仕事をスムーズに果たしてきた。事件の真実を見抜く怜悧さを持たないからこそ、推理落語も座って聴いた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
アイリーンはそれとは違う角度から、ホームズに寄り添っていく。変人探偵と同等のアタマを持つからこそ、相棒役は務まらない。だが愛すべき強敵なら?
そんな二人は闇を抜けて、黒木アガサの殺人に目を瞑る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
生きていても不幸しか呼ばない鬼畜に、法の救済は無用。
朗らかに間をつないでくれたワトスンくんがぶん殴られてる裏で、男と女は共犯者になる。
苦いものを飲み込んだシャーロックの表情が、色気を宿して良い
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ホームズは真実なら何でも飲み込む、情報の怪物ではけしてない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
子供の体温を身近に感じ、鬼畜殺しの矛盾を飲み込み、なんとも言えない顔で犯罪に加担する、複雑な表情を持っている。
それを照らすのが、アイリーン・アドラー登場の理由かもしれない。
ここら辺、”変人”としてのシャーロックをワトスンくんが上手く照らし、その魅力を届けてくれたのとは面白い違いである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
ワトスンくんが前座として温めてくれたところに、アイリーンとの艶話が乗っかってきた、とも言えるか。1クール目終わりが見える中、なかなか光明な話運びである。
ガキの笑顔に興味はないと、カルテ燃やして事件の始末。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
しかし大事なはずの噺家プラモを、ひょいと手放し差し出してしまうあたり、ホームズかなりのデレ期である。
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それはアイリーンも同じで、膝を曲げ目線を合わせる仕草に、冷たい脅迫者の匂いは薄い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
ワトスン夫人との関係も回収し、なかなか上手いミステリ解明編だった。
これが機能するためには、キャラの内側を知りたいスケベ根性と愛着を煽る必要があるわけで、見せ方がやっぱ巧いのよね。
とは言うものの、大ネタはまだ伏せ札である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
世を騒がせる連続殺人鬼、怪盗ジャックが目玉を狙う。
己の情報を切り売りしてまで、困窮を救いたかった仲間を取られたアイリーンに、ホームズはグッと手を伸ばす。
出会った時は興味なく、背中を向けていたのに。
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己を守るように腕を抱えるアイリーンに、騎士のようにひざまずきホームズは目線を合わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
それは彼女がえみりに向けた優しさと同じで、そうさせるだけの特別さが彼女に…あるいはそこに反射するホームズの過去にある、ということだ。
変人探偵は、如何にして社会不適合の推理機械と成り果てたのか?
それもまた、一つの大きな謎である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
そこに首突っ込んで中を覗きたいと思わせるためには、ぶっ壊れてなお息をする人情味、怪物なりに人とふれあいたいと願う切なさを書かなきゃいけない。
えみりと向き合う中で、そういうホームズの顔を書くエピソードでもあったかな、と思う。
ホームズを怜悧な問題解決装置、おもしろネタを降ってくれる変人機械だと考えるなら、今回のお話はノイズだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
しかしその『らしくなさ』にこそ、混沌と明暗に身を投げ、わけの分からねぇ世界に追い立てられつつも”人”である証明を欠片、掴もうとする息遣いがある。
そんなお話であった。
今回は『変人だけど人情味』を描いたけども、ホームズがウェストに流れ着く理由となった、あるいは噺家として身を立てれない『人情味あれど変人』の部分を、この話はちゃんと描くだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
子供の笑顔のために奮戦するってことは、犯罪の方防火ついで証拠を隠滅するってことでもある。
白黒入り交じる、シェークスピア悲劇のような歌舞伎町八百八町。そのど真ん中で暴れまわる、解体野郎と餌食の美女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
大きな話が回りだし、変人探偵は渦中に飛びこむ。
さて、さてさてご一同、物語も佳境でございますが本日はこれにて。
次の噺も楽しみですな。
追記 大バカでもいい。善良に育って欲しい。
シャーロック追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
今回京極くんはアイリーンに顎で使われたり、マキちゃん出演のポルノブックにお熱だったり、画面の端っこで賑やかしをやっていた。
しかし彼のボンクラな振る舞いは、脅迫王の鬼畜と面白い対比をなしていたように思う。
賢くないことは、ときに善良を呼び込みもするのだ。
早くシコシコしたいから探偵仕事は蹴るし、お宝ブックを本人に突きつけてサインしてもらうし、京極くんのボンクラ力は天井知らずである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
しかしそれを脅迫材料に使って、肉だの金だの掴むような『賢い大人』に、彼がなって欲しいかと言われれば断固NOだろう。
ウェストに出てマトモに生きると、形だけ整えつつも頭ァパー。あの振る舞いじゃマキちゃんとの恋もなかなか成就しないと思うが、そんな間抜けが愛おしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月2日
我が子を型にハメて売り飛ばすような、現実的な鬼畜が出てきた分、ポルノ野郎のマヌケな青春が愛おしい回でもあった。バカだなぁ…(LOVE)