ヴィンランド・サガを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
雪原に、増悪とため息が踊る。
父を殺されたもの、父を殺したもの、これから父を殺すもの。業に囚われた”ヴァイキング”達が交わす、血塗られた個人史。
楽園を夢見て流れ着いた、血で血を洗う因業の果て。この罪の地から楽土は、遥かに遠い。
だが、だからこそ、それでも…
そんな感じの、ヨーク因業地図第二回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
父を殺されて以来、復讐に縛り付けられどこにもいけないトルフィンを、軽蔑と諦観混じりで殴り倒して、アシェラッドが過去を語る。
灰まみれの泥の中から、這い出して父を殺す。”ヴァイキング”を憎みつつ、誰よりも”ヴァイキング”に成り果てた男のどん詰まり。
髑髏の丘の刑場に、重い十字架を背負って死の谷を歩む男のように、自分が殺したビョルンを背負って進むアシェラッド。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
愛を求め愛を殺し、迷妄の果てにようやく命の捨てどころを見つけた男。
『ああ、死ぬしかないんだな』と、未来がストンと腑に落ちた。こりゃ死ぬしかない。
僕はこのアニメの感想を書く中で、”ヴァイキング”を常に””付きで書き続けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
それは作品がヴァイキングを、ただの職業や民族ではなく何らかの抽象…暴力や我欲や浅ましさや罪の集積体として扱っているような気配を、なんとなく感じていたからだ。
そのセンサーが嘘ではなかったなぁ、という安堵がある
それはアシェラッドの語りに色濃く宿る、自己嫌悪と諦観、荒れ果てた絶望からも、飢えた獣のように愚かに、必死に復讐にしがみつくしかないトルフィンのどん詰まりからも見て取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
”ヴァイキング”を憎みつつも、それ以外に生きる道を見いだせなかった男と少年の、道行きの果て。
それが今回であろう
物語はビョルンを殺し、いつものように決闘の茶番にアシェラッドが向き合うところから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
トルフィンはすっかり飲まれていて、アシェラッドの顔は見えない。増悪に目を血走らせ、視野を狭めることでしか生きられなかった今までと同じく。
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先週闇の中確かに光る”眼”に注目したわけだが、それはビョルンがアシェラッドの隣で”ヴァイキング”をやる中、確かに見えていた光明だったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
人間としての情や哀しさ、弱さや蔑視を確かに見据えるくらい、ビョルンはアシェラッドをよく見ていた。
黒い仮面の奥に、確かに瞳があると判っていた。
トルフィンは増悪で瞳を閉じて、11年ただただ命を狙い続けてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
偉大なる父の到達点を、自分の生き方で汚してしまう愚かさ。
自分を不幸に追い込んだ暴力や抑圧に、自分自身が変化していく矛盾。
復讐の虚しさと、己の弱さ。
色んなものに目を閉じるには、醒めるわけにはいかない。
父を理不尽に奪われた虚無を引きちぎって、なんとか前に進むためには盲目である必要があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
だから、トルフィンの視線で描かれる今回、アシェラッドは再び瞳のない存在、匿名無貌の”ヴァイキング”に戻っていく。
そういう怪物だと思わなきゃ、命を付け狙うことなど出来ない。
自分の認識の中で、仇の人間性を剥奪し憎み続けるための防衛反応として、トルフィンは愚かであり続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
それが彼をどこにもいけないどん詰まりに追い込み、逃げ場のない修羅界に投げ込んでいるのに、彼はそれに気づけない。気づかないし、気づくことは出来ない。
アシェラッドはそんな迷妄を上手く利用し、”決闘”に応じあしらうことで、自分に都合よくトルフィンを動かしてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
(それが血に塗れた呪いであったとしても)子供の願いを都合よく利用する、悪しき”父”として、適当に導き適当に使い倒してきた。
それが、今回の決闘で終わる。
兵団、野心、剣、副官。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
アシェラッドはクヌートと出会ってから様々なものを捨て、彼岸へ旅立つ準備を進めているように見える。
その一つとして、トルフィンを利用する不均等な疑似親子関係を、今回生産することになる。
お前らにはウンザリだ。何かの奴隷でしかない生き方から、目を覚ませ。
それは、結局因業の檻から抜けれないまま”死”へ突き進んでいるアシェラッドが果たせぬ夢を、取り残される者たちに刻んでいるようにも思えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
俺のようにはなるな。
それが、最悪の”父”としてトルフィンに残せる、最悪の遺言なのかもしれない。
アシェラッドは、11年前の”決闘”でのトールズを再演するように武器を投げる。素手でトルフィンに向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
しかしそこには、真の戦士たる覚悟も慈愛もない。ただ、気圧されたガキに火を付け、殺さず制圧するための手管でしかない。
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アシェラッドは元々、人間の心を操るのが巧い。自分自身の心も含めて、だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
武器を投げることでトルフィンの心を”居付かせ”て、狙いを縛る。自分の用意したルートに、クソガキを載せて勝ちを盤石にする。
11年間縛り付けてきた、老獪な手筋。”父”のエグさが、子を雪に縫い付ける。
アシェラッドが11年間、血の報酬として与えてきた”決闘”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
それが素手でも十分制圧可能な茶番だということを思い知らせるのも、今回武器を投げた理由の一つなのだと思う。
対等にやってたつもりだろうが、俺には遊びでしかねぇ。
それが悔しいなら、俺程度越えて未来に進め。
そういう殊勝なメッセージが、いつもと違う”決闘”に、込められているか否か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
ビョルンとの決着と同じように、非常に複雑で多層な思いが入り交じる闘争は、なかなか読むのが難しい。
一つ言えるのは、もうウンザリだってことだ。
血と業に塗れた”ヴァイキング”の世界も、そこを突破できない自分も。
殺す価値もねぇのか、殺したくはないのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
アシェラッドは刃を雪原に突き立てて、勝利を弄ぶ。
トールズとの決闘において、不当に殺すことで運命を捻じ曲げたように、今回は不当に殺さないことで未来を続けていく。
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死んだほうがマシな地獄が、この物語の一つの終わりとしてトルフィンに待ち構えるのなら、刃は雪ではなく肉に尽きおろしたほうが慈悲であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
しかし、アシェラッドは生きることを押し付けた。
お前はなんの力もないクソガキで、同じ場所を回り続ける狗だ。いい加減、そこから出ろ。俺の側から離れろ
それは生きることでしか果たされない、多くの人が抜け出せないカルマだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
死ねば終わるわけではない、分厚い檻。殺す側に回ったところで開放されるわけでもない、愛なき世界の宿命。
アシェラッド自身も全く抜けれない場所から、ヴィンランドへと旅立てる可能性を、愚かなるトルフィンは持ちうるのか。
それを掘り下げるのは、非常に長い物語になるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
ヴィンランド入植は失敗する。
クヌートの北海帝国は破綻する。
それは、年表に刻まれた確定事項だ。この屈辱と敗北を越え、父殺しの決断を越えてクヌートが”王”になったとしても、それは一時の夢に過ぎない。
それでも、何か美しい場所に…。
そう納得できる物語を刻み切るのは、非常に体力がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
アシェラッドという、才気と愚鈍、粗暴と天真が同居する魅力的なキャラクターの生と死もまた、そういう物語を支える柱の一つとして、今強くクローズアップされている…のだろう。
二期ねぇと、このハゲの一代記だな…”アシェラッド・サガ”じゃん
アシェラッドはどっかとレンガに腰を下ろし、己の過去を語り始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
その影の濃さ、距離の遠さ。雪は変則的な彼岸の河であり、アシェラッドは遺言として、自分の一番大事な恥部…過去の記憶、父母の思い出を捨て残していく。
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焼けた鉄を、冷水で焼き締めて刃に変えるように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
アシェラッドは激情を押し殺し、冷静に計算ずく時間を使って、己の望みを果たしてきた。
復讐。
トルフィンを動かすものと同じ怒りを、仇もまた背負ってきた。
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その怒りは、何処から生まれ何に叩きつけられるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
認められぬ子供として、世界の片隅灰まみれで生き延びるしかない宿命にか。
首を高く掲げ、卑しく笑う”父”の肖像にか。
場上で高笑いする、勝利者気取りの蛮族たちにか。
怒り。怒り。怒り。
烈火が、アシェラッドの灰に包まれ静かに燃え続ける。
それは誰かを殺せば終わるわけではなく、何かを成し遂げれば果てるわけでもなく、永遠に続く牢獄だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
トルフィンが父を殺され、否応なく飛び込んだ修羅界に、アシェラッドもまたいる。
仇と復讐者、父と子は複雑な歴史を繰り返しながら、延々と同じことが繰り返される。
もう、ウンザリなのさ。
だからこそ何処か遠く、豊かなるヴィンランドを求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
それは母が狂気の床で語るアヴァロンであり、再来するアーサーの夢であった。
自分ではない誰かが、ここではない何処かで。
そう願わざるを得ないのは、業の鎖の重たさが身にしみるからか。
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母が語らった美しきアヴァロンは、厳しい寒さが踊るイングランドの現実にすぐさま接合される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
どれだけ望んでも、それは夢でしかない。
今俺達がいるのは、出口のない罪人の土地。楽園は、遥か彼方にて思うものなのだ。
カルマとエゴから、一歩も出れない。俺もお前も変われない。
そういう諦観と疲弊が、中年(この時代だと老境かもしれない)に差し掛かったアシェラッドにベットリ張り付いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
憎み、哀れんだ怪物と同じものに、すっかり変わっちまった。檻から抜け出し真の戦士になれるチャンスは、自分の手で踏みにじっちまった。
『なーんちゃって』の戯けたニヒリズムが、自分の大事なものを自分でクソまみれにしてしまう勇気のなさが、アシェラッドを追い込んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
その果てが、この壁に囲まれた雪原であり、あらゆるモノを捨てた死地だ。
お前も、ここに来る。嫌なら、生き方を変えな。
ハゲの真剣語り場は続く。
アシェラッドの語りは、これから父殺しをするクヌートにもまた、向いていると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
いつか夢を見た救世の英雄のように、全てを振り千切り綺麗でいて欲しい。
クソみたいに下らねぇ我欲と因縁に縛られず、俺みたいにはならず、”父”を乗り越えていって欲しい。
俺は、そうはなれないから。
そういうメッセージを刻むのも、ここで過去語りをする理由なのかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
何しろ薄汚れた”ヴァイキング”の混血なので、アシェラッド自身は王にはなれない。そうなれたかもしれないチャンスを自ら叩き潰してきたからこそ、兵団を抱え、潰し、夢の果てにクヌートの隣を選んだのだ。
呪いは己の心の中、ままならぬ世界の中、親子の愛憎の中で複雑に反射する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
母は父を伝説の英雄と見間違え、父は迷いなく刃を抜く。
その顔は、老いさらばえた今のアシェラッドとそっくりだ。剣の無慈悲な光も、よく似ている。
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”父”は刃を収めて、”子”を認める。その再起を、己に役立てんと懐に収める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
トルフィンにとどめを刺さず、幾度も”決闘”を演じ利用してきたアシェラッドの姿は、父に学ぶしかない因果を強く反射している。
同時に、そこからはみ出す種明かしも目立つ。
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二年。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
笑顔を演じ、刃を隠し、兄弟皆殺しの地獄を引き起こす算段は、見事に果たされた。
”父”の遺産を簒奪し、兵団の頭に上り詰めた彼は、後にウェールズを来訪し、母の故地を守るために”ヴァイキング”として汚れていく。
憎み打倒した父なる怪物と、同じ存在になっていく。
この地に神がいないのならば、俺がこの手を汚して。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
その決意は、愛するものを奪われるがゆえの出発点は、クヌートと同じである。
トールズ、あるいはラグナルを殺して奪うことでしか、”子”の変化と出発を促すことが出来ないことが、アシェラッドの限界であり…多分人の業そのものなのだろう。
与えることなど考えられない、厳しい世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
その宿命を問うこともなく、殺し殺され、永遠に同じことを繰り返す戦士たち。
”ヴァイキング”
軽蔑と増悪が、アシェラッドの眼差しに宿る。
彼の才知は、自分が”ヴァイキング”であることを見落とせない。
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『ヴァイキング悉く死すべし』とヴァイキングが言うのならば、それは己を回避しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
俺も含めて、皆とっとと死ぬべきだ。神の捌きが、業から抜け出せない獣たちを皆殺しにする日を心待ちにしながら、同時にそんなものは来ないと確信している。
ここは人間の世界。何処にも楽園なんてねぇ。
そういうシビアな現実認識を、徹底して持ててしまうこと。それにしたがって、己を増悪の人形に効率よく変えれてしまうところが、アシェラッドの特質である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
これは視野を狭め、盲目でいることでしか生存できなかったトルフィンとは大きな差異である。
どちらも奴隷であることに、現状変わりはないけど
復讐に焦がれる気持ちすら、便利な道具だった。生きる縁は、愚かさの具現だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
それを突きつけられてなお、トルフィンは動けない。そこで何処か別の道が見つかるなら、兵団についていかず、”ヴァイキング”にならず、レイフの申し出も断っていない。
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自分が復讐に執着することが。増悪に押し流され、未熟なまま”ヴァイキング”に成り果てたことが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
真の戦士たる父の生き様を汚し、空っぽなまま道具に堕ちた事実を突きつけられて、トルフィンはようやく、アシェラッドの目が見える。
しかし、すぐに逸してしまう。愚かであり続けた11年。あまりに重い。
父の遺品たる刃を、砕けた腕にくくりつけて、延々と仇の肉を付け狙う狼。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
それ以外の生き様を探すには、時間を使いすぎた。沢山の命を犠牲にし、沢山の幸福を踏みつけにした。
そのツケと重たさは、今のトルフィンを支えるアシェラッドが去った後、一気に両肩に伸し掛かるだろう。ヤベーな…。
アシェラッドもまた、賢しい孤狼であり続けた生き方のツケを、今まさに払おうとしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
ビョルンの死体を、己を掲げる十字架のごとく背負って、因業の果てへ進む。
その背中へ、王子が問う。
別の生き方が、あったのではないか。
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無い。無いのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
剣を握り、父を殺し、母を失ったときから。
己が追うべき夢のカタチを、自分の鏃で貫き踏みつけてしまったときから。
賢い”ヴァイキング”であり、業深きウェールズ人として生き続けたときから。
何かの奴隷である人間を嫌悪し、何かの奴隷であり続けたときから。
生まれ落ちた瞬間から、アシェラッドは”ヴァイキング”になるしかなく、そこから抜け出す選択肢は捨て去ってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
そのどん詰まりが、このゴルゴダである。
王子は、権力の機械としての険しい表情をこの時していない。賢くも純粋な、未来ある子供の表情で人間、アシェラッドに問ういている。
それに還るのは、ただただNOだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
奪い、殺し、倦怠し腐敗し憎悪しただただ繰り返す。
そのカルマを突破できなかった、唯の”ヴァイキング”でしかない自分を、アシェラッドは見落とせない。
ハイ、それじゃあ生き方を変えます。
そう頷けるほど、今背負っているものは軽くない。
でも、お前らは…。
そんな微かな希望を、ビョルンを、彼と一緒に歩いてきた年月とその破綻を背負うアシェラッドの背中からは感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
灰色の空の先に、未来など無い。死人と一緒に歩いていった先には、死しか待っていないだろう。
クヌートは、そこには進めない。
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そしてトルフィンも、また。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
殺されることもなく、殺すことも出来ず、増悪と愛を内側に溜め込んで、ただただ吠える。
孤狼。
”父”を殺し道を過つ自由すら、今のトルフィンにはない。遺品に反射する、無様な殺意の成れの果て。
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雪原にこだまする慟哭は、誰も答えるものがない虚吠。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
しかしそれを生み出したのは、”ヴァイキング”として愚かしく、ただただ繰り返した思考停止の日々。
トルフィンが狗のようにしがみついた”決闘”のカラクリを明かしたのは、そこから”子”を解き放つ情か。
ただ、死にゆく足取りに、因果が重いからか
ビョルンの死体、夢の残骸だけで十分重い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
かつて刃を握り、復讐を完遂しえた自分にあまりに似過ぎたクソガキの業は、果てに持っていくにはキツすぎる。
そうやって、”仇”でい続けるある種の責務を、アシェラッドは今回置き去りにしたのだろうか。
複雑な色彩が入り混じって、たどり着いた灰色。
そんなアシェラッドのパーソナル・カラーが、物語全体を支配するエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
いやー…ネットリと重たく、出口のない物語で、こりゃ死ぬしか収まりようがないなと否応なく納得させられました。
つうかキャラの質量がデカすぎて、殺さんと他の話が回らんよ!
アシェラッドは今回明言したように、夢に見た王ではなく、愚かな”ヴァイキング”のまま死ぬだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
当然の報いであるし、そうとしか終われない男でもある。分厚く積んだ物語が、このどん詰まりを重たく飲ませてくる。
その死体に、”子”たちの新しい道は咲くのか。なんらか、新しい出口は見えるか。
少なくとも見えている範囲のアニメは、おそらくそれを切り取りきれない。トルフィンの空疎も、クヌートの覇道も、語り切るにはあまりに紙幅が足らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
それはそれでいいかなぁ、とも思う。アシェラッドの生き場死に場を嘘なく描ききれば、その先に伸びるものは自然と嘘なく進んでいくだろうと思う。
だから、ある”ヴァイキング”の死は、最高に書ききってほしいと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
賢く愚かで、美しいものを夢見つつ諦めた、奴隷でしか無い当たり前の人間。その人生が行き着く先を、血を墨に、剣を筆に何処まで刻めるか。
そういうアニメであったなら、そう終わろうじゃないか。
『楽園なんて、この世にはねぇ』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
そう吐き捨てつつも、母を殺させはしなかったし、ウェールズを諦めも、汚れることを厭いもしなかったアシェラッドの純情が胸に詰まる。
全てを見通せてしまうニヒルな知恵が、それでも青い世界への憧れを塗りつぶせない。でも、それは”ヴァイキング”を殺すほどでもない
全ての色を混ぜ合わせた、人間存在の灰色。それを色濃く作品に焼き付けた男は、そろそろ死ぬでしょう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年12月16日
夢の残骸と、友情と増悪を肩に背負って、全ての因果を置き去りに果てに突き進むアシェラッドの孤行。置き去りにされる子どもたち。
運命は、雪のヨークに燃える。来週も楽しみ。