ランウェイで笑って を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
数多の夢の残骸を食い散らかし、肥え太る”ファッション”という美しき怪物。
その華やかな地獄に、二人の青年が足を踏み入れる。身長158センチのスーパーモデル志願と、貧困の底であえぐデザイナー希望。
寸足らずの二人から、はみ出すデカい夢の物語、始まります。
つうわけで、週刊少年マガジン連載のファッション根性物語、堂々のアニメ化である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
当方原作既読、つうか結構なファンだと思っているモンですが、いやー…かなり良いアニメ化で大満足です!
元々完成度の高い第一話なんですが、その強さをしっかりアニメに落とし込み、グッと引き込んできました。
まず作画が良くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
『そんなん当たり前じゃん』と、昨今すっかりハイクオリティになったアニメ界隈じゃあ言われそうですけど、綺羅びやかな服飾業界をメインに据えたこのお話、キメ所がバチッとキマらないと、話全体が崩れちゃうと思うわけです。
原作はキメゴマ毎回勝負仕掛けて、勝つ強さがある。
問答無用の”圧”がある絵で、読者の顔面殴りつけてなっとくさせるパワー勝負と、どす黒いものも含めた濃厚な感情、溢れる思いの交錯で仕掛けるドラマの強さが両立している所が、面白さの一つだと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
これをアニメに落とし込むためには、勝負所で勝ちきれる作画のクオリティが必要。
さてどうなるかな、と思って蓋を開けた瞬間。千雪の顔がマジで綺麗で、ステージの華やかさ、衣装の美しさもしっかり刺さってきて『オッケーオッケー大勝利』って感じでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
勝負所で、キッチリ勝ちきれるのはやっぱ大事。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/RE7oDOSK8k
第一話の主役をやってる千雪は、二話以降少しサブに引っ込んで、デザイナーたる育人が主役になるわけですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
彼女の意地と夢をメインに据えたファーストエピソードの仕上がりが良いからこそ、作品に体重を預けれるってのは間違いがなく。
後の扱いも、ただのヒロインを超えた分厚さがあります。
服を作る側と、服を見せる側。デザイナーとモデル、それぞれの輝きと辛さを交錯させる、半ばダブル主人公みたいな仕上がりにもなっていくこのお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
冒頭、明暗分かれつつもそれぞれの晴れ舞台、たどり着くべきゴールとして描かれるシーンが鮮明なのは、非常にいい感じです。
後に花道を譲るとしても、この一話は千雪の話で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
過去に可能性を羨望されつつ、夢を諦めきれないままくすぶり、背伸びを続けている現状。
最低条件としての身の丈が要求される世界で、チビのまま足掻く苦しさと無様。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/cUdvCD00dx
そこら辺、露骨に着こなせてない憧れのコピーと、高すぎるヒールで見せてくる序盤はなかなか良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
結構足が喋るエピソードで、高いヒールが色んな意味合いを重ねられて、多彩な意味を持って描かれているのは面白い。
このタイミングだと、自分を把握していない無様さの象徴。
パリのステージから下りて、マネジメント方面に舵を切り替えた憧れの人は、やや低めのヒールを安定しては着こなしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
それでも追いつけない、圧倒的なフィジカルの差。最低限のラインにすら立てない、残酷な現実。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/cECBWkTees
そこが千雪のスタートである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
彼女は恵まれた立場にあるお嬢様で、他人に対する想像力が弱い。あんまり優しくない少女…に、現状なってしまっている。
当然、陰気なクラスメートのことはよく憶えておらず、ただただ狭い視野で、不確かな未来を追い続けている。
そんな彼女が最強の共犯者と出会い、手を組んでお互いの未来を切り開いていく物語が、これから展開していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
モデル志願とデザイナー希望。それぞれ願うものはありつつ、フィジカルと家庭環境というお互いの枷が、夢にまっすぐ進ませてくれない。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/7pGzkmGH40
千雪は育人が打ち消した夢に、ちゃんと気付ける女の子だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
でもその夢を無自覚に踏みにじって、自分が言われ続けた『無理』を突きつけてもしまう。
無邪気に未来を信じられた時代が、遠くに過ぎ去って諦めきれない。でも、絶望に適応もしかけている
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/YRETMp5X7E
育人と交流する中で、千雪はそんな自分を認識し直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
自分の憧れが何処にあって、自分がどういう人間になりつつあるか。気づけばそんな、幼い原風景を見失った”大人”になりかけている季節に、千雪はいる。
夢を諦める。現実を受け入れる。
そうせざるを得ない痛みは、あまりに切実だから。
気づけば心を鈍麻させて、何も気づかないふりを続けている。そのことが、自分の中のとても大事なものとか、他人のとても大切なものを踏み付けにもしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
夢の淵ギリギリのところで、千雪はそういう危うさに気づく。気付ける感性を、なんとか保って『夢見る少女』をやっている。
ここら辺の成熟と未熟、無垢と鈍麻のバランスが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
”大人”にならざるを得ない事情は、夢を追えば当然追いかけてくる。
職業としてのファッションに切り込むこの話は、経済活動としての夢の生臭いハラワタを、これでもかと切開していくことになる。その臭気で死なないためには、鈍くなるしかない。
『しかしそれじゃあ、あまりにつまらないじゃないか』というのが、このお話の基本路線である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
厳しい壁がある。諦めざるを得ない夢がある。それを前提とした上で、どう傷つき、どう乗り越え、あるいはどう諦めていくか。
子供っぽい幼さと、大人らしい諦めの中間地点で、どう踊るか。
そのバランス(あるいはアンバランス)の入り口に、千雪はヒールで立っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
自分がそうされて擦り切れたように、他人を踏み付けにするか。それとももっと繊細な足取りで、前に進んでいくか。ランウェイは、複雑に乱れている。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/PFMz48egMY
夕焼けの廊下を右に出ていって、迷ってオーディションを受けて才能を確認し、左に帰ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
育人を傷つけたと自覚し、道を探して進んでいく千雪の足取りが、廊下で定点観測されているのは面白い。
出て、戻ってくる。その先には育人が…デザイナー志願の少年がいる。
不自由な被服部で、夢を諦めようとしていた青年。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
重たい家庭事情と、確かな愛情を背負って『無理』を飲み込もうとしていた育人の運命は、千雪というモデルに肩を掴まれ、服を作ることで変化していく。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/e0fh0PBXKj
”家”という幸福の城のために、自分の夢を殺すのか。自分の夢のために、家族を贄に捧げるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
千雪が低身長で突っかかってる所が、育人の場合は”家”と経済にかかる。まぁ後に判るように、千雪のスーパーモデル志願も、”家”への思いが強く響いているわけだが。
育人を守り、縛り付ける”家”は、彼に主役のバトンが渡される今後の物語(特にアニメの範囲内)では大事な存在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
まーいち花Changが可愛らしくて、非常に良かったですね。
愛すればこそ裏切れない、愛情の鎖の重さ。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/ypbl4rPxLj
それがこの段階で感じ取れるのは、とってもいい感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
”家”への執着は育人と千雪を繋ぐ、ファッション以外の接点になるので、横道のようでいて本道なのよね家庭の描写。
さり気なく映り込む使い込んだミシンが、ずっしりと重くて素晴らしい。”血”を編み込んで、育人の服は出来ているのだ。
血縁はないが、幼い時から見守り、憧れとして立ち続けてきた女の独白。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
諦めを知るまで、無理解な”大人”の仮面をかぶり続ける。その痛みも、当人の辛さを思えばなんてことはない。
全てを諦めてしまったようでいて、”大人”にもまた血が通う。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/uOMF53yWOa
下がった視線を、強引に引っ張り上げる花の気配。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
高いヒールは、もう小さな身の丈を誤魔化すためのブースターではない。
育人というデザイナーに出会い、手に入れた自分だけの鎧。それに支えられれば、憧れに並べる。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/UiiGbkMgP2
身長差自体は変わっていないのに、冒頭のオーディションとは180度意味合いが違う対峙。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
身の丈ではなく、魂の大きさが横に並んだ。1%の可能性で、残酷な”大人”を演じる決意を突破するほどの”華”を、育人のデザインは花開かせた。
千雪…ホンマ綺麗や…。衣装のモード感もバリバリや…。
なぜ、無様と知りつつ”ミルネージュ”にしがみついたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
なぜ、ここに立ちたかったのか。
憧れに追いついたその瞬間、千雪の張り詰めた仮面が割れる。自分の名前を冠した、家族との絆。
それで、世界のてっぺんに立つ。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/u3IZjX2kxV
その思いがあればこそ、伸びない身長を抱えて夢にしがみついた。負けると判って立ち向かってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
そういう原点を思い出したからこそ溢れる涙は、育人の”服”があればこそ生まれる。デザイナーとモデルの共犯関係が、彼女を夢の舞台に引っ張り上げる。
そしてそれは、育人も同じだ。
運命の悪戯でコロコロ転がった評判は、大量のバズを貼っつけて太る。育人の服は千雪の未来を照らすだけでなく、ギラついた欲望を煽るだけの香気を放つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
彼の作る服は、”商売”になるのだ。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/zaQ6muerBA
そんな可能性を嗅ぎつけて、まっすぐ射抜く”父”の視線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
降って湧いた幸運に戸惑う育人と、自分が失ったもの、共犯者に奪われたものを見据える千雪の表情。
ただただ同志として進んでいくわけではない、屈折した関係性が凝縮された、良いヒキだ。最大の味方が、一番欲しいものを奪ってく残酷は綺麗よね
ここを折り返し地点に、主役はモデルからデザイナーへ、少女から少年へと移り変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
華やかな表舞台から、それを生み出すバックヤードへ。時にモデルよりも注目され稼ぐ、ファッション業界真の花形。
©猪ノ谷言葉・講談社/ランウェイで笑って製作委員会 pic.twitter.com/pSFd7mLkhY
”デザイナー”の物語が、ここから始まるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
原作よりも主役交代をより明瞭にして、はっきり描いてたのは良かったと思います。第1話で主役を張っていた少女が、ヒロインとして二話以降、横に下がるのはかなり大胆なコーナーワークだからね…。
混乱が少なくなりそうなのは良い。
同時にわざわざ、第1話の主役を千雪に任せた意味も、アニメになってなんとなく腑に落ちた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
性で主役が分けられる物語ではなく、あらゆる人が主役たりうる物語を、”ファション”を通じて描きたかった。
だから服に引き立てられるヒロインではなく、野望と意志を持った”主役”としてのステージを用意した
そういうことなのかなぁ、と。非常に華やかな、モデルだからこその見せ場がたくさんあった第一話を見ながら思いました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
この後カメラはデザイナーサイドに強く寄って、千雪はあくまでサブ、『出来上がった服を着る人』としての出番が多くなります。
しかしそんな彼女にも願いがあり、痛みがあり、譲れないものがある。それを共有するからこそ、お互いが未来に向けて引っ張り合う共犯関係が成立する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
そしてそれは、千雪とだけ成立するわけではない。年齢、立場、性別…様々なものを乗り越え、あるいはぶつかり合わせながら、育人の物語は続く。
その始まりとして、勇ましいちびのスーパーモデル志願の奮闘を力強く、華やかに描いたこのエピソード、とても良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
やっぱキメる所バッキバキにキマってたの良かったなー…華やかなものへの、理屈を超えた憧れをどう書くか、ホント大事だからな。そこキッチリやってくれた。
千雪に”服”を作ることで動き出した、育人の物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月13日
プロとして仕事を重ね、経済の重さを背負い、夢の意味を問う道は、まだ始まってすらいません。
華やかさの奥にある、シビアな現実。そこで息を潜めている、人間の重たい感情。
アニメがどう刻んでいくか、次回が非常に楽しみです。