ID:INVADEDを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
連続殺人犯・ハナビシを死に至らしめた逆瓢は、懲罰房へと送られる。パイロットを失い、一時の機能不全に陥る”蔵”。
アナアキに欠けたサバイバビリティを振り絞り、炎の地獄を走り続ける酒井戸。幾多の死を越えて、一つの答えにたどり着く。
名探偵の背中を押すのは何か?
という感じの、イドの中の死にゲー、ID第三話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
先週逆瓢の殺意を描いたのに対し、今回は彼の生存への意志、事件にしがみつく理由を、繰り返されるトライに載せて刻むエピソードとなった。
超高難易度のRTAを応援するような気持ちになれる、酒井戸の不屈のダイブ。
井戸端の人々と同じく、視聴者も酒井戸の素朴なタフネスと人間らしさに心動かされ…それは無残に終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
犯人は模倣犯、映像は録画、動機は勘違い。モニターという井戸越しに作品を覗き、実況チャンネルという二個目の井戸越しに見つめた生と死のライブは、全てが偽りでしかなかった。
このお話らしい意地の悪さ、残虐な肩透かしであるが、名探偵によるロジカルな謎解き、命がけの奮戦を描きつつも、生な犯罪のエグさ許せなさを忘れないためには、あの死体が必要…だったのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
素直なカタルシスに逃がしてくれない屈折は、この陰鬱なお話にはマッチしている。まぁ、こうなるな…
今回のお話は鳴瓢=酒井戸の唯一性、前回人を殺した彼が事件解決の主役になる理由を刻む話だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
それが被害者の生存に結びつかないとしても、真実にはたどり着く。死者の声を聞き、その無念と一緒に死んでいくことに、酒井戸は挑み続ける。
その不屈に、彼の唯一性がある。
アナアキは名探偵に必要な知性はあっても、事件にしがみつくモチベーションがない。彼は自分の頭蓋すら軽んじて穴を開け、他人の頭はもっと軽い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
そんな彼が転じる名探偵・穴井戸は、全く”実用”に耐えない。過酷なゲームにしがみつく理由が薄すぎる。
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では、それが懲罰房に入れられれば”蔵”自体が機能不全に陥るバイタルパート、連続殺人犯にして唯一のミズハノメパイロット、鳴瓢のサバイバビリティは、何処から来るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
それを推理≒共感していくのが、今回のお話だ。明瞭な答えは、以前藪の中だけども。
穴の底で窒息させ、人が(強制的に)生きて死んでいく様をライブ中継する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
バイラル時代の連続殺人、マーダーケース・ポルノグラフィ。
チャンネルという窓、あるいは井戸から安全に、コメント付けて生き死にを消費する者たちの、顔のない欲望が、緑にチラつく。
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その醜悪さは、このグロテスクで悪趣味な物語をわざわざ見ている僕らの合わせ鏡、ということでもあろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
ダメな人のダメな殺意は、オリジナルとは違って粒子となって漏れ出し、鳴瓢は再び井戸に潜っていく。
白紙の記憶に、真相究明の使命だけ背負った名探偵…のはずなんだが、彼は別の方角に走る
火元の一切ない空白に、ポッと浮かんだ焼死体。カエルちゃんの謎を解くために駆け出し、閉じ込められた少女を見た途端、酒井戸はまっしぐらに走り出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
穴井戸がすぐさま諦めていた、事件という迷宮。殺意の炎に焼かれつつ、彼はタフに疾走する。
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酒井戸の記憶とアイデンティティは、死ぬたびにリセットされる。それでも彼は何度でも、謎に潜り死に続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
まるで光に向かう虫のように、魂の奥底に刻まれた修正。それは謎や真実ではなく、顔の見える被害者を追い続けている。
猟犬…あるいは刑事の執念で、悪を追い命を守る。
そのひたむきさが、湧き上がる殺意と同居していることは、先週の自殺教唆でよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
鳴瓢は名探偵として知り得た真実を、殺人犯を殺人するために使う。殺せてしまうから殺し、進めてしまうから進む。
鳴瓢≒逆井戸の行動には、確固たる理由と理性がなく、湧き上がる衝動が溢れている。
幾度も焼かれながら、酒井戸は走る。現実世界の鳴瓢は疲弊し、しかし百貫の苛烈な視線も、鳴瓢の鬱屈も、休むことを許されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
映像の向こうでは、心を破壊され命を削られていく被害者がいる。井戸の上にいる俺たちは、チョコも食える。
死に戻りが、なんぼのもんじゃい
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被害者が押し込められた、生き埋めの穴。あるいは”ライブ”だと偽装された、既に終わりきった過去という檻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
それを上から眺めるしかなく、しかし命を削りながら真相に、命に近づこうとする”蔵”の人々には、確かにヒューマニティがある。
それが、実を結ばない徒花だったとしても。
酒井戸は炎の中を走り、飛び、手を伸ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
その必死さに、殺人者・鳴瓢のくすぶりが見える気がする。それは先週、ハナビシを縊死に追い込んだ殺意の対立物なのか、それとも背中合わせで同じものなのか。
彼が刑事だった時代、百貫の”仲間”だった時代は、まだ伏せ札だ
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そこがおそらく、”蔵”を満たす殺意と後悔と決意と不屈の入り混じった、不思議な水の出どころなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
そこに潜ることで、パイロットと”井戸端”の面々は事件の真相を追い、捕まえ…しかしだからといって、死人が戻るわけでもない。
それは名探偵ではなく、神様の仕事だ。
現実では名探偵ですら無い鳴瓢は、それでも子供を手に抱いて、必死に結末へと走り抜く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
『助けてくれてありがとう』
『真相に導いてくれてありがとう』
ゴールは結局、炎に沈んで燃えるとしても。遺志と無念を受け取り、名探偵は駆け抜けた。
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犠牲者は『命を守ってくれてありがとう』とはいわない。ミズハノメが作り出す”世界”は深層意識の投射でしかなく、犠牲者はバーチャルな夢…ある種の夢のようなものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
死人は既に死んでいる。凶行は止められず、手遅れのまま”蔵”は正義を執行する。少しの怒りも。
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地下室の奥、既に終わりきった埋葬地を開けた外務担当の怒りが、僕(もしかしたら僕ら)にはよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
あんなに走り回って、なんとか絶望を踏破して真相にたどり着いたのに、事実は歪められ、奮戦は無力だった。
模倣犯を殴り殺したくなる怒りは、鳴瓢が操る呪言と、多分同じ場所から湧いて出る。
モニター越しに殺人ポルノを消費していた、顔のない群像も含め。人でなしで溢れた、この世界に突き立てられた解明の装置。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
ミズハノメに潜ることは、人間性の最も醜い部分を浴びて、心と体を殺され続けることなのかもしれない。
だから、名探偵は幾度も死ぬ。
それでもしがみついて走る。それが徒労に終わるとしても、走って、走って、死者の声を聞き、無念を集めて真実に至る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
酒井戸は、窓に閉じ込められた少女にたどり着きたかった。カエルちゃんの真実は、そこに至れば自動的に見えてくる。
名探偵の仕事は、守護者として走った先にこそある。
少なくとも鳴瓢の心魂はそう己を定義していて、だからこそ彼は唯一のパイロットだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
そんな彼が、刑事として無垢に走りきれた時代。カエルちゃんが、まだ死体ではなかった時代。
それを百貫も共有し、しがみついている。2日寝ないのがなんぼのもんじゃい。
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鳴瓢にとって、百貫(と、おそらく松岡さん)と一緒に現実世界で、事件を追いかけた日々こそが、獣に堕ちきる歯止めになっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
殺人犯と監察官。立場は絶望的に隔たっても”仲間”であること。井戸の只中とその端に別れつつ、同じものを見て、同じ地獄を追うこと。
それこそが…
鳴瓢のヒューマニティであるとこの作品、安易に断言はさせてくれない。何しろ主人公、人殺しだからね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
人殺しは安易に消費できるドラマではなく、被害者は血みどろになり、死体は腐る。
生々しい無力感と罪悪感、湧き上がってくる怒りと殺意。そういうモノが必ずつきまとう、ライブな出来事だ。
そういうモノとして、”名探偵と殺人”を扱うために、このお話のゴア表現はあるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
メタにメタを重ねた名探偵物語と並走する、重くて暗い死体の話。井戸端に身を寄せず、そっちを主に走っている本堂町くんにも、事件発生である。
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同じアナアキの犠牲者、生存者、ある種の”仲間”である男は、何故ズギューン! と唇を重ねてきたのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
群衆と同じ方向を向けない、どうやっても孤立し真実と事件に飛び込んでいってしまう本堂町くんの宿命は、どこに転がっていくのか。
謎が謎を呼び、待て次回、である。いや実際、どうなるんだコレ…
今回の世界は”拡張された世界”だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
英字サブタイトルは『最初の直感と衝動だけじゃ、人間何をするべきか決められない』と言ったところか。
やっぱり作中のセリフから、サブタイトルは取ってるようだ。エピソードのバイタルパート、ってことかなぁ…
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名探偵としての酒井戸の衝動は『真実を追う』だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
だが今回の歩みは、窓の向こう、穴の底、イドの奥に閉じ込められた死体にたどり着き、開放して声を聞くことに向いている。
それがタフに生存し、分節化された真実を追うための、鳴瓢の衝動らしい。役目だけが、彼を追い立てるわけではない。
それが殺意にも向いていることは、前回と今回でよく見える。走った結果、蓋を開けたら腐った死体、終わりきった結末と対面させられることも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
鳴瓢も酒井戸も、正義の味方でも正義それ自体でもない。溢れかえる殺人衝動を、そのまま表に出して檻に閉じ込められる、弱い人間だ。
その脆さを知ってなお…あるいは知ればこそ、鳴瓢は過酷なダイブに挑み、事件を追う。ネジレてしまった関係に手を伸ばすように、百貫も井戸の上から、それを見守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
この冷たくも熱い、矛盾しきった関係がどこから生まれ、どこへたどり着くのか。
唇を奪われた本堂町くんの事件は、一体どう転がるか。
まだまだ大量の謎が伏せられつつ、少し作品にしがみつく手掛かりを捕まえたような、不思議な質感のエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
いやーしかし…連続殺人犯ども、みんなとっ捕まえなきゃダメだなホント…感染性だからなアイツラの害意。
この人間性のなさは凄い。最後まで耐えられるかな…。
次回が楽しみです。
追記 マトモなら見なくても良い死だと殺意だの、わざわざ潜って言語化する。追い込み、追いつき、追い詰める。その執拗な執念が、ライブでリアルな世界の何をあぶり出したいのかは、けっこう気になる所。ポップだけどエンタメの人じゃないからねぇ、舞城王太郎。
ID追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
今回の模倣犯は録画で犯行を済ませたが、となるとオリジナルは”ライブ”であることにこだわる、ということだ。
殺意が検知できない悪魔をどう追い詰めるかは今後の物語として、生きて苦しんで死ぬ有様を眼目に晒す”表現”は、ライブであるからこそ意味があるのだろう。
遠い犯罪の証拠隠蔽のため、殺しを模倣する。それは森を生み出さない一個の木であり、オリジナルは死体で森を作る何かを抱えている、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月22日
チェスタトンが今回引用されたように、チャンネル越しの現代版九相図を描くオリジナルは夢野久作”ドグラ・マグラ”を再演するのか。オタクだなー舞城…