歌舞伎町シャーロックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
京極くんも復調し、いつものオトボケを取り戻した探偵長屋。
今宵の依頼人は、マルチと恋に騙された哀れなポン引き。配る雫は気違い水、喉まで浸かれば魂を焼かれる悪徳は、赤い毒液死の一滴。
名探偵がそっぽを向く事件に、助手ワトソン、奮戦す!
そんな感じの、いつもどおり下世話で残酷で、ちょっと変化球なエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
ジャック・ショックもようやく癒えてきて、しかし相変わらずイーストには狂気と悪徳が満ちていて、その間をメアリとワトソン君が、ロマンスの風を巻き起こしつつ走る話だ。血腥いが、妙に爽やかでもある。
それが怖い。
この街がひどく残酷で、その重さを背負い込みつつ、探偵長屋の住人はバカをやっている。気楽なバカをやりきれなくなって、人の喉掻っ切ってモリアーティは塀の向こうに消えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
幸せの足元には、巨大な落とし穴がある。そういう世界だと思い知らされると、ロマンスの気配もただホッコリ、とは行かない
しばらくは世知辛くも温かい、新時代の人情噺ミステリが踊るとは思うのだが、同時に着々と積み上げられている大きな物語への布石が、グッと動き出した時。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
こんな幸せもまた、虚しく崩れていってしまうかと、ほのかな恋の気配を嬉しく思いつつ、ひどく怯えてしまった。
僕、あのバカ好きになってるな…
さて今回は、水にまつわる一つの事件。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
マルチでスピリチュアルで自己啓発で健康詐欺で、おまけにテロ。ヤバさの三倍満みたいな場所に、ワトソンくんとメアリが飛び込んでいくエピソードだ。
事件が転がるまでに、”水”の描写が妙に多いのが、なかなか面白い。
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モリアーティが憂鬱に打たれる、獄中のシャワー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
血の色をした妖しい水に、色気づいた姉さんの化粧水。男たちがガツガツ食らう肉と、流し込むグラス。
高値で売りつけるただの水を資金源に、世界に赤い毒を撒き散らす狂った計画。そんな真相を象徴するように、トンチキたちは水の中を走る。
メアリは水より濃いはずの血の縁を追って、事件に飛び込んでいく。縁もゆかりもないはずのワトソンくんは、持ち前のマトモな優しさで彼女とペアを組み、体を張って女を守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
水杯が繋ぐ縁。修羅場を共にくぐり抜け、恋の花、咲くや咲かざるか、といったところか。
依頼人のディランはすーっかり騙され、探偵に依頼を持ちかける。岡目八目で見れば、すぐさま答えがわかるバリバリのヤバ詐欺も、事件と恋の只中にいると、なかなか気づけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
そんな傷の只中にいた京極くんも、ホームズの荒療治でようやく、調子を取り戻した。
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ソープに行くの行かねぇの、下世話ながらも人間の逞しさをギラギラと宿す、歌舞伎町のネオン街。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
その住人として、セックス・トラウマ(それは”死”のトラウマでもあるのだが)をなんとか乗り越え、冗談のタネに出来るくらいに調子を取り戻したのが、僕は嬉しい。
一方、名探偵は”ケッ”である。
食欲と同じく、性欲も普通の形していないホームズが、ひどく普通のロマンスに飛び込んだアイリーンが、やはり特別な女、ということか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
どっちにしても、今回ホームズは現場に足を運ばない。代わりに探偵役、メアリの騎士役を頑張るのはワトソンくんだ。
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メアリは性悪だがいい子(矛盾した表現だが、この話を見てればそう表現するしかない。そういうイキイキした矛盾が、作品の面白みでもある)で、ワトソンくんも良いやつだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
お似合いのカップル…だとは思うんだが、小さな幸福は大きな不幸の呼び水としか思えず、非常に不安である。
いつもの七五調も無事戻ってきて、詐欺あり暴力ありのドタバタ人情模様が、ジリジリとうねる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
事件の渦中にいるぼんくら探偵共は、軒並み大した結果も出せず、安楽椅子でパンツ洗濯してたシャーロックが真相に気づくのは、面白い転倒。
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つくづく怪しい薬物に縁のある京極くんだが、フラツイた彼をホームズが抱きとめる描写が、何のことはないのに妙に染みた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
やっぱこの変人なりに、長屋の住人のことは好きで。バカが雁首揃えて飛び込んでった城に、とんでもねぇ怪物がいるのを嗅ぎつけて、裏から手を回しもする。
名探偵がいないことで、逆にホームズの叡智と優しさが見える。こういうネジレもまた、このお話らしい構造だと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
同時にホームズがいないからこそ、ワトソンくんとメアリの距離はぐっと近づき、ロマンスは加速していく。パンツは投げる。
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女の涙は魔法の薬、男を狂わせ進ませる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
借り物の探偵ポケベルで、あっさり依頼解決の切り札を手に入れたワトソンくんだが、メアリの演技に載せられて、ヤバい所にぐっと身を乗り出すことになる。
ぺろりと舌出す小悪魔の、それでも踏み込まなきゃいけない理由。それに気づいてる描写が、なかなか良い
ドローン飛ばしてバカを煽り、水道水で荒稼ぎ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
しかし悪魔の城のヤバさは、そういうところにはない。赤い水の真実を追いかけるなかで、メアリが語る雪の思い出。去っていった父との、血の縁。
それは自分を守ってくれる姉との、確かな絆でもある。
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父を追って踏み込んだ死地は、結果としてお人好しの姉を救うことにもなる。小狡い与太郎娘が、ポロッと零す過去と現在の人情を、ワトソンくんはどっしり受け止め、引き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
その静かな歩み寄りが、彼らしくていい。やっぱ好きだなぁ…ワトソンくん。
人の生き血をすすり、赤い毒を撒き散らしテロを企む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
ポン引きのくだらない依頼で飛び込んだはずの事件は、命をかけて狂気と闘う現場に、グッと表情を変える。
”東”がそういう、油断できないジャングルだってのは、これまでも画かれた所。安心できないねぇホント…。
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体を張って操を立てたワトソンくんは、胸に入れてたポケベルで命を救われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
それが、彼が独力で事件を解決できる”探偵”になれたという証明なのか、それともあくまで彼は助手であり、”探偵”の証明は壊れてしまう宿命なのか。
なかなかに考えさせられる描写だ。
ワトソンくんはポケベルに録音した、デュランを傷つける真実に戸惑っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
手に入れた答えをどう使い、どう開示するか。それもまた…というかそれこそが探偵の資質であるなら、重い真実を閉じ込めた箱が壊れるのも、天の導きか。
まぁ、探偵見習いのケツはしっかり、名探偵が持つわけだが。
ホームズは危険な匂いを嗅ぎつけ、犯人候補データベースと照会することで、現場にいないまま状況を把握・制圧した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
見事な差配だが、その慧眼は犯人が自殺するのを止め得ない。マルチを隠れ蓑に、大量殺戮を企てた凶漢…その裏に、探偵の視線は伸びる。
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とまれ、渦の真ん中で踊った愚か者たちは、そういう深遠なヴィジョンは持たぬ。ただ一緒に駆け抜けた熱を、赤く頬に宿し、かすかな恋の予感が確かに、小さく息をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
好きな理由は、お姉ちゃんに似てるから。メアリも大概シスコンだよね…。
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『人のためになる仕事』という空言に踊らされたデュランも、いつもの居場所に戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
薄汚れたとバカにされ、胸を張れない仕事に片手を上げて、讃えてくれるバカが居る。立たない哀しさに膝を折り、一緒に涙するバカも居る。
人殺すバカよりこっちのほうが、同じバカでも気持ちがいい。
そんな”東”らしい真実(オチ)をしみじみ噛み締めつつ、ワトソンくんはパンツを探す宿六顔。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
ホームズは奇っ怪な自死の奥にある、巨大な謎に一人鋭い視線を向ける。『毎度バカバカしいお話』に見えた今回、漂う不穏な影に、彼だけが気づいている。
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そんな感じの、コンパクトに纏まったお話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
メアリとワトソンくんのロマンスは甘酸っぱくも微笑ましく、大変よかった…んだけども、だからこそ怖い。
その不安をすくい上げるように、一色の背後にある巨大な謎の輪郭が、おぼろげに不気味に立ち上がって来る。変人探偵の鷹の目だけが、それを睨む
その先には、クライマックスへと続く大きな物語があり、多分その尻尾はモリアーティが閉じ込められている檻に繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年1月27日
そんなお話でした。俺この話のボンクラ共好きなんで、あんまひどいことにはならんでほしい…。
でも日常を越え、デカい話が転がるの様子は間違いなく面白い。次回も楽しみ。