ID:INVADEDを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
井戸の中の井戸に形成された、あり得たかもしれないもう一つの世界。失われた夢に溺れながら、鳴瓢はジョン・ウォーカーを追う。
そんな日々は、唐突に終わりを告げる。
許されざる名探偵の邂逅。崩壊する世界。
美しき破滅の只中で、男は涙とともに目覚める。
さらば、愛しき人よ
そんな感じの風雲急、INSIDE-OUTED IIである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
謎が謎を呼ぶジェットコースターは終局に向けて加速を始め、息を継ぐ暇もないほど状況は流転する。
予防措置的な殺人鬼殺人、飛鳥井木記の消失、二人の名探偵と世界の終わり、ルールを欺くもの。
その中心に位置する、鳴瓢の涙と哀惜。
いつも以上にズッシリと胃に響き、メロウな後味を舌の上で転がす暇もなく、物語は加速する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
このアニメらしい揺さぶり方で脳髄がグシャグシャにされ、心地よく酩酊しているけども、まぁ言葉でまとめながら振り返っていこう。
いやー…面白いなぁ…。
鳴瓢は井戸の中の井戸で展開される夢に、次第に自分を置いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
目の前で弱っていく女のために、人殺しを殺す程度のことしか出来ない彼は、警察組織からはみ出した正義を執行するために、独自の事務所へ身を置く。
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夢の中では、時間すらネジ曲がる。他人が持ち込んだ殺意と未来は、飛鳥井を確実に弱らせていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
それは悪夢の散策者を”現実”のなかで殺しても、全く改善されない業病だ。
夢を通じ、他人と仮想を共有できてしまえる飛鳥井の異能。それをスキャンし、機械的に再現する欲望。
後のミズハノメに繋がる謎を、鳴瓢は追いかけない。彼は世界よりも、そこで苛まれる”人”に重点を置く。酒井戸が、数多の世界でそうしてきたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
思い出しただけで、物理的な血を流させる飛鳥井の思い出。鳴瓢はそれに共鳴し、殺人鬼を自身の凶器/狂気で殺させる。
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飛鳥井(≒カエルちゃん)に投影される欲望が、最終的に殺人鬼自身に反射して己を刺す。そうなるように、超越的に知り得た未来(井戸の上、”現実”)の知識を使う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
鳴瓢は一方的な加害の傾斜、その上に自分の弱さを棚上げしているクズどもを追い詰め、自分にそのサディズムが向くよう方向づける。
それが鳴瓢によって歪められたものなのか、ジョン・ウォーカーに縁深い凶人達が共通して持つ性質なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
…そう言えば、アナアキは『誰かが頭に穴をあける』のを見たくて、開頭殺人を繰り返していた。
殺人鬼が最終的に刺し貫き、統合したいのは自分自身なのかもしれない。だが、害意は外へ向かう。
ジョン・ウォーカーに方向づけられた、無形の悪意。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
その受け皿となる飛鳥井は、己の死を望む。
いくら外部からの侵入者を切り捨てても、自分の中から湧き上がる記憶が己を刺す。流出する自我、侵略する意志は己を崩して、世界にあふれていく。
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ミズハノメシステムのおそらく根幹にある、飛鳥井木記の流出する夢(ID:INVATED)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
予言にも似た核心で、それが人間としての自分と、人間の世界を壊していってしまう恐怖に、彼女は鳴瓢による終局を望む。
だが、鳴瓢はそれに答えられない。
彼は警官だ。法を外れ、私刑執行人に成り果てても。
井戸の奥の井戸で暴かれる、もう一つの現実。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
妻子を殺され、タイマンを殺して獄に繋がれた鳴瓢が、歩めなかった自由な世界。
そこで語られるものが、井戸の上の”現実”と重なっているか、否か。
その確証すら揺らぎつつあるが、彼女の予言は奇妙に、奇妙な現実と符合していく。
条理を覆して、犯罪を推察する機械。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
そこで描かれる共有幻想の只中、いわば汎・被害者として殺され続けるカエルちゃん…飛鳥井の顔をした女。
流出し崩壊する彼女の人間性が、そのベースだとすると色々説明が尽き、納得も行く。
とすれば、彼女の予言が成就した”現実”は、決定的に壊れた後だ。
”蔵”が存在し、不可逆の悲劇が既に終わった後…鳴瓢が置き去りにされたまま孤独な苦闘を続けている世界の、裏側にあるシステム。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
それを探るのは、(あるとして)名探偵が帰還してからになる…のかなぁ。あるいは、井戸を掘り抜いてたどり着いた果てが、真実に繋がっているか。
それは先の話として、飛鳥井は失踪する。溢れ出した夢を看護婦に感染させ、足取りが掴めぬまま消える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
鳴瓢は百貫さんの問いかけに、自分が知る真実を隠す。
狂った状況に巻き込みたくないのか、正気で普通の警察システムでは、ジョン・ウォーカーを追えないと考えたか。
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どちらにしても、鳴瓢は法の外側に出て、彼自信の法を執行する。飛鳥井がいなくなってもジョン・ウォーカーを追い、殺人鬼を殺す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
妻子が生き続ける、美しく都合のいい夢。飛び込んだときは確かに持っていたはずの、”現実”を判断する視力はもう無い。
ここが夢の成れの果て、たった一つの現実だ。
彼はアナアキの(未来の)犠牲者を見ても、そこに目を留めた理由を百貫さんに話さない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
赤信号に縫い留められたように、自分一人孤独な闘いを抱え込み、狩り残していた獲物を思い出す。忘却と孤独は、井戸から出ても/井戸に飲まれても鳴瓢≒酒井戸の属性だ。
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鳴瓢は奇妙に捻じれた時間と因果に適応しつつ、同時に世界に馴染みきらない異物として、その特権を振り回す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
深層心理に潜って手に入れた真実、時間を巻き戻して知り得た事実。
それをパズルのように組み合わせて、銃弾で撃ち抜こうとあがく。せめて、この夢の中では。
飛鳥井を”楽にする”ことに拘るのも、ここでは実現しない妻の衰弱、その果てにある自死のトラウマが、深く突き刺さっているからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
世界の終わりで回想される、あまりにも哀しく無駄に終わった、ケーキのプレゼント。
それで、少しでも元気になってほしかったのに、愛しい人は血の井戸に沈んだ。
『ここが現実なんだ』と思い込もうとしても、井戸の奥に封じた”現実”の記憶は不可逆に、鳴瓢の(そこから広がる世界の)在り方を規定してしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
夢は現実を侵食するが、同時に現実は夢に対して優位に立つ。その不気味なアンバランスが、遂に崩壊する瞬間が来る。
井戸の中の井戸に落ちてなお、捜査官としての責務を果たしていた本堂町くん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
彼女との出会いが、瓢が信じたかった”現実”を壊し、矛盾する時間が、世界を美しい滅びへと導いていく。
名探偵は、世界に二人いらないのだ。
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ぐるり、ぐるり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
世界を揺り動かしながら、二人の認識は混ざり合う。
この世界は、あくまで井戸の中の井戸、夢の中で描かれるありえない過去。現実は上部構造として冷徹に存在して、時間は巻き戻らない。
そう思いながらこの世界に落ちてきたはずなのに、鳴瓢は決死に真実を否定する。
美しい終わりの只中で、彼は愛するものに言葉を届ける。まるで全てが嘘みたいに、非人間的に瞳を隠すアングルの巧さが際立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
たとえそれが、一瞬の夢でも。何もかもが白紙に染まる、下部構造の嘘だったとしても。
溺れてもいいと思えるほど、綺麗な夢だった。
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鳴瓢は明晰な頭脳で、本堂町が告げる”真実”が正しいことを認識する。していってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
全ては闇の中、不可逆に終わった奈落の底。思い出は写真の中にしかなく、自分は警察官ではなく、獄に繋がれた復讐鬼だ。
そこに、君はいない。僕を置いて、いなくなってしまったのだ
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それを飲み込めてしまえる鳴瓢の明晰が、とても寂しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
記憶に焼き付いた、全てが断ち切られた瞬間の痛み。食事を拒絶する妻のために、彼女の魂を繋ぎ止めるために買ったケーキは哀しく虚しい。
俺が何処かに行くのではなくて。
君等が何処かへ、行ってしまった。
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鳴瓢の在り方を決定的に刻んだトラウマは、どれだけ夢に溺れても書き換わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
タイマンが自分の娘を一方的に殺すようなクソ野郎だと、腕を折られながら証明しても。
続いていく日常への渇望に、一年以上溺れても。
それが夢なのだと”推理”出来てしまう正気も、また消えはしない。
その強靭な狂気と正気が、鳴瓢秋人という人間の根源であり、彼を”名探偵”足らしめているものなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
だから彼は、夢にサヨナラをいう。終わる世界で家族を抱きしめるのではなく、真実を本堂町くんと追う方に賭ける。
夢に落ちてきた時、残された時間でやりたかった心残りに、自分から背を向ける。
津田健次郎渾身の演技も合いまり、非常に印象的なシーンだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
壊れていくこの世界と、鳴瓢は心中できない。名探偵は事件を解決し、犠牲者の無念を聞き、真実に寄り添うために存在するのだ。
この美しい世界で、聞いた飛鳥井の絶望。己の中に宿る、愛の深い傷。
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それが逆向きの井戸(酒井戸!)のように、上部構造に吸い上げられていく鳴瓢の行く先で、彼を真実に近づけてくれることを祈りたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
彼が残したメモが、井戸の中の井戸に取り残されれる本堂町くんの捜査に、クリティカルな手助けとなることも。
世界が終わるまで、まだ時間はある。
しかし目覚めた先が、確固として不可逆たる”現実”とも限らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
鳴瓢は砂漠の世界に涙だけ残して、下部構造の記憶を失ってしまう。名探偵として下に降りるということは、そういうことだ。
じゃあ、そのルールを無視できる者は?
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砂漠の世界という、名探偵にとって唯一の”現実”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
そこに取り残された穴井戸は、アナアキとしての記憶を持ったまま世界を探り、”時計泥棒”の正体を探り当てた。
その胸に宿る、美しい記憶。酒井戸すら忘れている、鳴瓢秋人のコアを抉り出す。
時計はなかったし、時計泥棒もいなかった。
大事なのは、『被害者から離れるな』というルール。カエルちゃんと名探偵を結びつける出だしが共通しているのなら、ここは雷の世界の成れの果てだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
百貫の残留思念として感知されたものは、鳴瓢の世界、その欠片だった。
己を焼き尽くす理不尽すら消えた、擦り切れた砂漠
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そこで描かれたバディ・コメディも、冷徹な殺人鬼の演技だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
井戸の底が抜けた先にある、もう一つの井戸。上部構造と下部構造が繋がった、Inside-outな世界。
そこに嵐を巻き起こすべく、アナアキは酒井戸=鳴瓢という真実を叩きつけ、ミズハノメのルールを壊していく。
明瞭に分かれているからこそ機能する、井戸の中と外。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
酒井戸は下の名前を持たず、鳴瓢であることを知らないからこそ”世界”に潜れた。
しかしアナアキが差し出した爆弾が、その境界を壊す。
ドグマ落ち。井戸嵐。一体、何が始まるのか。
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さっぱり解らないまま、井戸の上にべっとり張り付いたジョン・ウォーカーの姿を確認して次回に続く、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
名探偵が二人いると、世界は崩壊する。
しかし”砂漠の世界”は壊れない。
では本堂町くんと穴井戸は、何処が違うんでしょうか、って問題が、すぐさま穴井戸の裏切りで回収されるスピード感。
大ネタ一切出し惜しみなし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
『判った!』と手を打った次の瞬間、世界がでんぐり帰り、逆向きの井戸に叩き落される当惑と快楽。
面白い。非常に面白い。
そういうスリリングな加速に、血の滲むような人間の哀惜がしっかり交じるところも。鳴瓢…いい夢だったか?
今回も、”INSIDE-OUTED”に名前はつかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
穴井戸というインサイダーだったはずの存在は、アナアキとしての記憶と狂気を保ったまま、頭の中に吹き付ける風を聞いたまま落ちたアウトサイダーだった。
彼のトリックが、世界をどう壊し、再構築していくか。
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そう言えば、彼の”世界”はバラバラにされた世界≒再構築されることを望んでいる世界だったな、などと思い出しつつ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
英字サブタイは『本当に、素晴らしい世界だった』
過ぎ去った過去の夢に、『帰ってくる』と告げた鳴瓢の旅路は、嵐を控えてまだ終わらない。
むしろ、ここから始まるのだ。
複雑に絡まった謎を解きほぐすヒントは随所にあるようで、しかし幾層にも重なった現実と夢の侵略性と優位性が、答えを阻むようでもあり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月2日
先が見通せないが、そのことが楽しい。残酷極まりないが、それ故に美しい。
凄まじく面白いアニメは、次回に続きます。マージで凄い。来週も楽しみ。