petを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
迫る追撃。ヒロキは半ば自発的に、”会社”の檻へ入る。崩壊寸前に司に、寄り添うかののように。
一方悟は林の遺言を拾い集め、その真意を受け取る。
同じヤマ親を持つものとして、逃亡の計画を司に伝えたことが、崩壊の引き金を引く。
我々は何処から来て、何処へ逃げるのか。
そんな感じの、飛べない蝶たちの愛憎劇最終盤である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
しんどいのはいつもの事とはいえ、バランスを完全に欠いた司を放っておけないヒロキの成長とか、あれだけ拒絶していた『考える』という行為で答えにたどり着き、しかし司の人格荒廃を読みきれず一撃を貰う悟とか、子供らが喉まで使った泥沼が重い
林さんの遺産、彼が掴もうとした正しさは潰されてもなお消えず、小さく羽ばたいている。子供を未だ、導いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
しかしそれは、とても弱い。正しいことは、必ずしも強くないのだ。
そういう世界の厳しい過ちに、けして目を閉じず、子どもたちを厳しく試す姿勢。
これが最後までどう転ぶか読めないハラハラを生んでいるし、作品が描こうとしている世界の実相、泥の海を越えた先にある美しいものの輝きを、より鮮明にもしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
情けも容赦もなく、キャラクターを追い込む。
露悪でも諦観でもなく、『そういうもの』として厳しさを追求しつつも、希望は捨てない
非常に難しいバランスを取り続けたからこそ、この終盤の盛り上がり、キャラクターの運命への肩入れ、目を離せないハラハラがあるのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
露悪でやるのは、ある意味簡単だと思う。他人の悲惨は簡単に、消費可能なエンタメになるからだ。
しかし、このお話はそうではない。だから大変で、面白い。
メイリンの”蝶”を、距離を超え心の壁を越えて見ることが出来るという、ヒロキの資質。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
他人の気持ちが判るというのは、平和な世界なら何にも代えがたい優しさだ。
だがpetの世界では、自分の居場所を教えるサインになってしまう
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精神世界に長い腕を伸ばす、水の怪物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
それはヒロキを冷酷に追い詰める”会社”の忠犬であり、その耳元に愛をささやく親でもある。多分その両方が司の真実だからこそ、彼は引き裂かれて嘔吐する。
それはヒロキにも感染し、自分を引き裂いて逃げた少年は、兎の檻の前で吐き倒す。
何処へ行けば良いのか。何が正しいのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
何も解らないまま、ままならなさにあえぐ。
檻の中の兎が、肉食獣のような眼をしているのが面白い。petは飼い主の見えない所で、思わぬ表情をしているものだ。
子供だと思って、自我を否定し支配下に置く。自分の都合の良い、愛情の鏡だと思いこむ。
林の遺言を守り、会社の道具としての自己像を守り続けた司の中でも、誰かを慈しみ正しいことを為す人間性は死なない。醜いエゴイズムも、やけっぱちの怪物も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
そういう多様な存在として他者を認められないことが、自分の複雑さを上手く飲み込めず、分裂した行動に己を追い込む足場なのかな、とも思う
ヒロキが認識を歪め、滑り込んだ居場所。そのドアは、脆く崩れていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
”会社”の連中は一切躊躇いなく、カップルを射殺する。
ごくごく平凡に仲違いし、なぁなぁで仲直りしてセックスする。そういう風景を、顧みもしない。
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悟の”イメージ”にもなっているドアは、個人が他人や社会、それらが抱える価値観とどう距離を作り、受け入れ拒絶するかを演出する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
カップルに、扉を閉ざす権利はない。巨大な暴力を前に、紙のように死んでいくだけだ。
嘘を抱えたロンは、薄暗い監禁場所を前に、悟を引きずり込もうとする。
そして司は、ドアを閉じて孤独になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
自分を良いように使い倒す”会社”の言うことは聞けないし、悟との兄弟の絆、ヒロキとの親子の縁に戻るわけにもいかない。
一番欲しかった”親”との愛を、自分で断ち切ってしまっているのだ。もう、ドアを開けて出ていく場所がない。
それでも、何処かへ行きたかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
イメージの中で、ヤマとタニを与えて自分を作ってくれたように。現実のなかで、無限に広がる海を見せてくれたように。
自由に、正しく生きられる場所へ。ペットなどではなく、人間でいられる場所へ。
司は、ずっと出口を探している。水が流れ着く場所を。
悟もそういう場所を求め、ドアを開き続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
林というドア、ジンというドア。『考えない』ことで閉ざそうとしても、かつて見た美しい景色は消えない。
桂木の無神経な言葉に背中を向けた少年を、女は静かに、優しく誘惑する。こっちのドアは甘いぞ、と。
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ここはかなり大きな分水嶺だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
”女”という未知数の魅力、大人への階段に惹かれて進めば、その先には”会社”に都合のいい存在となっていく道が待っている。
しかし悟は、メイリンが繋げてくれた林の遺産を思い出し、桂木と一緒にドアを開ける道を選ぶ。
彼は恋(の気配に隠された謀略)よりも、自分を生み出し、育んでくれた存在を選んだのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
ジンとの関係には”会社”の思惑とか、大人の小狡さとかもあったけど、確かに心弾む新しい体験…”恋”への純粋な期待があった。
その扉は、否応なく閉ざされてしまう。こういう所も、この話厳しいよなぁ…。
”又三のおじちゃん”を装うことで、悟は桂木の認識をクラックし、USBを盗み取る。あるいは、林の立場を継承し、その遺志と知恵を引き継ぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
植え付けられた強迫観念。重荷をようやく預けた桂木は、童子のように邪気のない表情をしている。
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桂木を伝書鳩に使って届いたメッセージは、司が流し込んだ嘘へのワクチンとして機能していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
そこを受け取るのは、ドアも道もなく、個人的な秘密が保証されない開けた場所だ。
どこにでも進めるし、何処へいけという指令もない。『考え』なければ行けない状況へ、悟は追い込まれていく。
林からの重荷は後悔と懺悔と、かすかな希望の入り混じった色彩をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
子を奪われ(桂木さん、悪いことする時必ず煙草吸ってるな…)、望まぬ悲劇を量産する。
魂を削る悪徳は、社長の”安心”のために押し付けられる。
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社長がペットを邪悪に縛り付けるのも、親を殺された悲劇に端を発している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
その哀しみが気功術士を殺し、林さんに罪悪感を押し付け、司を救った。
愛憎は流転しながら、沢山のものを傷つけ、流れていく。風と水に運ばれながら、ときに美しいものへとたどり着く。
司が自分を手に入れ、臓器取りのスペアから開放されたどり着いた、広い海。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
そこは多分、夢にしか見れなかった自由な場所だ。それが本当にあって、自分が身を浸すことが出来る喜びに、少年は微笑む。
林さんがそこに見たのも、罪悪感の代理品だけじゃない。
一瞬の幸福を、写真に収める笑顔。むせ返るような憎悪を宿した、強い瞳。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
その両方を持ちうるのが人間で、だからこそままならない。運命は流れ、あらゆるものを押し流していく。
悟は『考える』ことで、その流れに棹をさす。立ち止まり、嘘を見抜いていく。
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自分たちのようなペット、メイリンのような鍵のないベイビーを生み出す、悲惨な輪廻。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
そこから、林は抜けたがっていた。なら、あの記憶も操作されたものではないか。
だって、俺達は何もかもを書き換えられるんだから。
会社の用意したドアではなく、林の遺志が開ける扉を選ぶ決断。
それが、悟の思考力と倫理、心のなかで死なない林への信頼を蘇らせていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
それは正しさと優しさが、か弱くとも死なないという希望であるし、所詮は弱いものであるという厳しさでもある。
改ざんには思い至っても、それを司が主導している可能性、ヤマ親を潰した事実には踏み込めない。
そういう甘さが、最後の発砲へと繋がるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
だが、悟が甘ちゃんなことで僕にはこー…安堵させられるのだ。
か細くとても弱く、大事なものを未だ手放しきっていない、という感覚。純粋さの生存証明。
それが”甘さ”になって、生き死にの窮地を招くのは本当に厳しいな、と思う。生きててくれよマジ…。
そして暴かれる、メイリンの爆心地。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
鍵がないということは、入り込む凶暴なイメージから自衛する手段がない、ということだ。
残酷な世界に立ち向かう武器として、林さんは司と悟にヤマだけでなく、タニと鍵を与えた。拒絶する自由を与えた。
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メイリンは意図的に、それを剥奪されて生まれ、炎の記憶に全てを焼かれてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
つ、辛すぎる…林さんが分け与えたヤマが、本当に綺麗な場所だけに。
『”会社”マジでクソだな!』って感じだが、まぁゴータマも”一切皆苦”って言ってるしね…。でも子供に押し付けなくて良いだろッ!
林さんは”会社”に凝集される世界の悲惨に疲れ果て、やり直しを求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
出会ったことが間違いだった。愛したことが過ちだった。
あまりに重たく哀しい言葉に、悟の瞳が濡れる。
そりゃ泣くけども、少年は頭を抱えつつ、歩みを止めない。
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悟にとっては(そして多分、司やメイリンにとっても)、永遠の自由、美しい空を教えてくれた”親”の温もり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
それは誘蛾灯のように悲惨を呼び込み、沢山の過ちを生み出した。
悟と林さんは、時間を越えて同じものを見ている。どっちも正しくて、どっちも無条件に許されてはいない。
帳を誘う青い空と、燃える炎。その中間点でフラフラさまよいながら、道を探していく人の生きざま。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
ここからバランスを失いドロップしちゃったのが司で、そのカルマに憐れさと哀しみを見たのがヒロキだと思うんだよね。
ヤマ親とペットで、人格的成長は完全に逆転してるな…。ここら辺、林さんと悟も。
掌に掴んだ、かすかな幸せ。せめてそれを抱きしめる自由を求め、林さんは逃げ出して失敗した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
ようやくたどり着いた”遺書”と、込められた遺志を捻り潰す現実。悟は一人苦悩し、道を求める。
どこでもドアは、どこにもない。考え、選ばなければいけないのだ。
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一方悟は、拘束したヒロキの前で憐れな声を出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
それは同情を誘う芝居ではなく、バランスを失った心の苦鳴なのだろう。
そういう弱さを、”会社”の前にさらせば即座に食われる。だから、甘えられるペットに求めた。
この心理が、どっか林さんに通じるのが…
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ヒロキは”親”の弱さも身勝手も、全て収めて飲み込むことにする。『ただ側にいたかっただけなのに、どうしてこうなったのか』という疑問も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
一番側にいるべき時に、逃げ出してしまった。
『考えた』結果たどり着いた罪悪感と責任感が、『ずっと一緒にいるよ』という呪いを、子供の口から吐き出させる。
ヒロキの望みも、司の救済も、多分その同情にはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
一人間の尊厳を杖に、真正面からお互いを見つめる。何処へでも行ける自由と、自分と誰かを笑顔にできる正しさを抱えて、風のように、水のように生きる。
そんな当たり前が、ペット達にはあまりに遠い。でもその現実が、諦める理由にもならない。
ヒロキはまるで”親”のように(あるいは”水”のように)、自分を縛り付ける司の身勝手も苦しみも、包み込もうとしている。すでに、立場は逆転している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
だが彼は力溢れる”金魚”で、己を縛り付ける檻はどうしても肌に合わない。
大事なものを慰めるために己を諦める道は、彼には似合わない…と僕は思う。
それは”林の子供”の話が終わった後、見える部分なんだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
悟は苦悩の果てに、薄暗い場所のドアを開ける。かつて大事な存在があって、潰れて消えてしまった残骸の前で、兄弟に秘密を打ち明けていく。
それは、あまりにも間違えすぎた男を追い込む刃。
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愛されていたという事実。優しすぎる嘘。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
『会社の望むように生きる』という遺言を、必死に守って地獄にたどり着いたのに、それは本当に望まれたものではなかった。
司の自我は激しく揺さぶられ、激情が喉を突き破る。マジできーやん、2020最ゲロ声優だな…。
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結局司は、兄弟から打ち明けられた秘密の真実をロンに伝える。銃で殺し、脱出口を塞ぐ道を選ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
そこには自己保身とか、自分よりも親に愛されたものへの嫉妬とか、色々どす黒いものが当然ある。
同時に、流されるままどん詰まりに行き着いて、今更生き方を変えられない苦しみも、あると僕は思う。
言われるがまま、会社のペットをやってきた。人の心を潰し、自分の親も潰した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
何も考えず、色んな事に目をつぶってもなお、世界の真実は滑り込んでくる。
死を前にしても、林さんは”子”の事を気にかけていた。自分を殺そうとする相手を、生かそうとしていた。
愛されていた。
クールな犯罪エリートを装いつつ、すでにアンバランスにグチャグチャだった司を決定的に壊したのは、その事実認識だった気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
そういう存在と、どうしても真っ直ぐ抱き合えない場所。
『どうしてこうなったのか』と幾ら問いかけても、虚しく木霊が返るだけの場所。
ペットは…というかもっと主語を大きくして、多分人間は皆、そこに追い込まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
そこから開けるドアは、生と死、どっちの道へ繋がっているのか。ロンが放った銃弾は、何を穿ったのか。
どっちにしてもキツい結末しか待ってない気もするし、かすかな希望が羽ばたく予感もある。
人倫と尊厳の、危うく厳しい峰。その上で己を刻み続けた異能者の物語も、そろそろ幕です。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月26日
どういう答えが出るかは、見通さなきゃ分からない。儚い魂たちが、どんな決断と結末へたどり着くか、見守る義務と意志が、ここまで見てきた僕にはあります。
pet最終回、非常に楽しみです。