地縛少年花子くん を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
ふとしたきっかけで、彼岸此岸の境界を超えてしまった少女、寧々。
彼女を見初めた亡霊とは、果たして心が通じているのか?
そんな疑問に、水の眷属たちが忍び寄る。
穏やかな日々を揺らす波紋を越えて、不思議な青春は続いていく。
そんな感じの、アニメ花子くん最終回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
花子くんの過去、寧々の未来、光くんの決意、”放送室”との闘争。
大量にバラまいた謎と伏線を、回収しきれない終わりであるけども、ここまで描いたものをちゃんと取り込み、典型的な『花子くんのいる一日』でしっかりまとめる、業前冴えるラストエピソード
原作が好評連載中なので、お話としてしっかり決着が付いて大団円、ってところまではいけないだろうし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
回収しきれる量の謎を撒いて、アニメの範囲でコンパクトにまとめるよりも、潔く『続く!』にしてきたのは、僕は良かったと思う。
やっぱミステリとして、読み甲斐があったよね…出題編だけでも。
このまとめ方になった以上、俺は”原作”行くしかねぇが、そう思わされるだけのヴィジュアル的パワー、民俗と魔術への視線、ジュブナイルとしての強さが伝わる、いいアニメ化だったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
当初想定していたよりも、色んな領域にまたがって深い、リッチな作品だったなぁ…出会えて嬉しかった。
さてお話は、これまでの経緯とこれからの見通しをまとめる形で展開する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
ようやく描かれた寧々の私生活は、ごくごく普通の少女らしいもの。ハムスターのブラックキャニオンくんが、非常に可愛いね…仕草の一個一個が良いよ、頬袋とか。
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自分の中の夢想以外、一切興味なし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
目の前三センチどころかマイナスにめり込んだ行き方してた寧々も、花子くんに導かれ怪異の世界に飛び込む中で、少しは世界が広がった。
光くんのあからさまな強がりにも、ちゃんと視線を送っている。
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夜闇を貫く、妖しい光。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
カラーリングがとにかく冴えてたこのアニメ、この”緑”の使い方は凄く良かったと思う。
日常とは一線を画しているのだけども、不気味に美しく、惹きつけられる。色彩の美しさが、作品の真ん中にあるものをしっかり、視聴者を誘っていた。
綺麗なんだよね、このアニメの”緑”
僕はこのお話を、狭い自意識に閉じ込められていた少女が世界と他者と自分を知るジュブナイルとして見ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
だから最後に、花子くん(を通じて、色んなもの)とどう向き合えばいいかを真ん中に持ってきて、二人の関係を刻み直して終わるのは凄く良いな、と思った。
コンパクトな怪異譚としても、最初の事件である”人魚”が絡むのは『行きて帰りし物語』感あるしね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
あの時人魚の鱗を飲み込んだせいで、寧々は人ならざるものの領域に踏み込む。
見えないものを見て、掴めないものを掴み、聞こえない声を聞くようになる。
それは、彼女を孤立させる。
迫害や暴力も何処か、洒落ですむポップな雰囲気をまとい続けているのもまた、この作品の特徴だと思うけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
寧々は花子くんに取り憑かれることで、教室から浮いている。霊媒というのは、まぁそういう宿命を背負うものだ。
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『髪を櫛る』という行為が、魔術的に、また性的に何を意味するか思いも寄らない、寧々の無垢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
それ故に花子くんが見えて、眷属として取り込まれた感じもあるわけだが、亡霊との戯れは常人には見えない。
寧々は変人として、一般的な世界から隔絶される…が、そこに悲壮感はあんまりない。
考えてみると危ない目にも何度もあってるし、結構心もずたずたにされているとは思うのだが、それらは過剰な重さをまとわない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
このポップさが原作由来なのか、安藤監督の手腕なのかは判別しきれないけども、作品独自の味わいで強さだなぁ、と思う。
水底の怪物に誘惑される展開も、マスコットめいた可愛らしさで展開して、そこまで重くはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
花子くんが自分の岸に引っ張ってくれなければ、魚に堕ちて入水し果てる結末だったわけだけど、そういうヤバさは薄い。
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同時に薄いだけで、人が彼岸に足をかける危うさ、怪異と向き合う恐ろしさは、しっかり作品内部に刻まれているわけだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
この一端が光とミツバの物語を重く軋ませているが、アニメの範囲だと寧々が主役となり、その最奥に潜る展開はなかった。花子くんの過去掘らんと、そこに当事者性を持てんね。
花子くんは学園結界の主として、寧々を誘う水の眷属を感知する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
その瞳に、どんな感情が真実宿り、それが何処から生まれてくるのか。
彼の真実を受け取る物語は、アニメの範囲外だ。だが、真剣な視線も滲んでいる。
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寧々はここ迄知り合った人々と対話し、自分と花子くんの距離感を再定義していく。並み居る七不思議に、茜ちゃんが混ざってる所がまぁ、ねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
ヤコが釘を刺す、怪異と人間の境界線。存在を書き換えられ、一度暴走した彼女が言うとまぁ重い。
それを受け入れて、友達に背中を向けるか。
はたまた、亡霊に残る人間性の残滓を引き受けて、その表情をしっかり見据えるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
魚が水底に誘う今回は、そういう生き方の決断でもある。それが何かに流されてではなく、小さな自発性に乗っかってる所に、12話分の変化があると思う。
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土籠先生がまーた飄々とした態度に巨大感情を滲ませており最高であるが、寧々に問うた”後悔”は、つまり彼自身の傷なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
人間として、人間でしかない柚木普に向き合いきれなかった。約束された幸福な未来へと、導くことが出来なかった。
そんな俺の後悔を、取り返してくれるかも知れない少女。
それに期待したからこそ、土籠は依代を寧々に預け、過去を見せたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
やっぱ土籠の『終わっちゃった、かつての主役』感は良い。
俺は間違えたから、もう世界を変える権利は持たない。でも、擦り切れた願いを誰かに託すぐらいは、神様も許してくれるだろう。
諦めた大人の顔をして、諦めきれない何かが胸の奥に宿る。所詮怪物と嘯きつつ、誰かを思う人間性がジクジク痛む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
”境界”をめぐる物語のコアに、よく繋がったキャラだと思う。ヒトデナシに堕ちたからこそ、人の証を求める話だからねぇ…。多分、あまねは生前から人非人(偏見)。
他者という鏡に自分を反射した結果、寧々は水底の誘いをける。怪異とはそこで引くものではなく、強引に水を広げ、少女を魚に戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
コミカルだった魚たちが、怪異の本性を顕にする恐ろしさが、上手く演出できてるシーン。
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まぁそこで、「恋愛ヒエラルキーのトップに立てるなら…』とフラフラ、浅はかに人の生を捨てる直前まで行ってしまうのが、寧々の思春期なわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
そういう意味では、彼女は第1話からまーったく前に進んでいない。愚かさ、浅ましさは彼女の特徴で、花子くんと歩む物語全体で、じっくり変わるものだ。
だからこそ、彼女が決定的に少女時代と決別し、巨大な決断を果たす瞬間を見たいわけだが…これは原作の領分、ということだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
彼女の人格的成長が、花子くんの眷属として、友人であり恋人であり巫女であることと繋がっている以上、その起源と真実、人生の残酷を知ることが契機となる。
それを根っこまで掘り返し、叩きつける物語をやるには尺が足らない、つう事なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
その上で、彼女が何処まで来たか、何を背負おうとしているかは、この最終話で綺麗に切り取られていく。
話のテーマ、12話分の成果をコンパクトにまとめられているからこそ、モロに『続く』でも満足度が高いのだな
寧々は再び、彼の王子様であり魔法使いでもある少年に拾い上げられ、地上に帰還する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
寧々にとって、年経た亡霊が命綱であるように、花子くんにとっても寧々の存在が自分を、地上に繋ぎ止めている。
だが、2人の立ち位置は重ならない。
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花子くんは影の中で向き合い、一瞬触れ合って寧々を追い抜いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
所詮は怪異、悪霊、死者。人と同じ生き方は出来ないし、隣り合うことは許されない。
そういう秩序を、花子くんはずっと守っている。
でも本当に、それだけでいいのだろうか? 寂しくないのだろうか?
世界の大きな理も、取り返しのつかない残酷も、寧々には判らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
でも、形だけの恋に憧れていたときよりも、もっと形のあるものが見える。花子くんが半透明の、寄る辺ない存在である現実は、彼女の瞳に写っている。
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だから光と闇の境界線で、指を絡めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
いつか、必ず。
叶うか判らない約束は、いつか呪いに変わるかも知れない。それでも怪異混じりの指で、おずおずと彼岸に手を伸ばす。
伸ばしたいと、思える。
そういう所に、浅はかな少女がたどり着くまでがこのアニメだ。
水底から帰ってきてからのシーンは、情景の美しさ、花子くんの存在規定、二人が身を置く境界と、作品の良い所がギュッと詰まった見せ場だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
二人は境目に隔てられつつ、生者と死者、人間と怪異を入り交わらせて向き合う。
沢山の秘密と愚かさが交錯する、奇妙で甘酸っぱい青春。
怪異譚であり、ミステリであり、青春物語だったお話をしっかりまとめ上げる、ロマンティックで美しいシーンだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
画面の象徴学が凄く鮮明に機能して、オカルトとして的確な”絵”に仕上がっていたのも、今まで通り良いところ。
本当に見事に、境界線上の危うさと力を切り取り続けたよなぁ…。
さて、お話は終わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
”放送室”も源兄弟も、寧々と花子くんも決定的な変化を未来に置き去りにしたまま、物語は一旦の幕を閉じていく。
一見明るく自由なようで、”放送室”絶対地獄なんだよなぁ…。
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頼にーちゃんが絶滅主義者になった背景とか、花子くんと寧々の宿命とか、悲劇が約束されているロマンスの行く末とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
見たいものいっぱいあるけど、まぁアニメの範囲だとそれを描ききるのは無理で。
でもそういうモノをいっぱい詰め込んだ、豊かな物語だということはよく伝わった。
最初は『なんか絵がエロいし、緒方恵美のミステリアス少年がエロいし、雰囲気いいし』で見てたけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
そして宝くじ級のラッキーを、それと知らず蕩尽しまくる寧々の無邪気さにハンカチを噛んだけども。アンタ”勝ってる”からね確実に!
次第に顕になる世界感と魔術的視座に、グッと引き寄せられました
ヴィジュアルが独特、かつ的確に美麗であったのは凄い強みで、毎回良いもの見れて幸せでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
ヴィヴィッドな色使いとデザイン、異空間と日常を行き来する”学校”という結界。
和テイストと花を随所で活かし、”絵”としてよく刺さるモノに仕上げたのは凄く良かったと思います。
寧々のブッチギリな浅はかさに軽く引いたりもしましたが、回を重ねるごとに愛おしく思え、また浅薄だからこその一歩ずつの成長に、頼もしさも感じました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
世界や他者と出会い、己を見つけていく時代としての思春期を、オカルトと絡めて独特に描く。怪異ジュブナイルとして、凄く鋭い筆致でした。
ポップで軽い雰囲気の中に、取り返しのつかない過ちとか、厳密に存在する境界とか、かすかに薫る”性”の匂いとか、いい具合に差し色がしてあるのも良くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
楽しいだけで終わらない、青春の足元の奈落。その上で軽やかに踊り、時に落ちかけつつ進んでいく物語は、グイグイと僕を引き込みました。
花子くんと出会うことで、少しずつ世界と人間の真実を知っていく、寧々の歩み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
それが何処に行き着くかは、原作が幕を閉じるところまで見ないと確認できないのでしょう。
これはもう、”追う”しかねぇんだよなぁ…やっぱ思春期の物語として、相当なコクがあるよこのお話。
それをアニメが追いきれないのは惜しいところですが、アニメにしか出来ないビジュアルで惹きつけ、その奥行きを見せてくれたこの作品、非常に良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
勘でしかないけど、相当大胆に枝葉を切って再構築して、12話のアニメとして見せるために最適化してる感じはする。
しかしそれでも、原作が持ってる”オーラ”みたいのを躍動させ届けてくれる、いいアニメでした。メディアが根本的に違うからこその強みが、生きたんじゃないかと勝手に思っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年3月27日
この道の先をアニメで見たい気持ちも強くありますが、今は善い怪異青春譚を見れたことに感謝を。面白かったです!