乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
ひょんなことから東図書館に集まった、いつもの面々。
学園七不思議の一つ、欲望を喰らう魔書が見せるのは、それぞれの願い。
魂を救われ、だからこそ燃える慕情。幼い想い人が気づかぬ夢を、せめて幻の中では…。
そんな感じの欲望ダダ漏れ! みんなの成熟度をチェックしちゃおう!! なエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
”夢喰いの魔書”という、ファンタジックな題材を上手く使うことで、カタリナとその周辺がどういう想いを抱え、どのくらいの関係になりたいかがよく見えるエピソードだった。
ロマンスの系譜に連なるこのお話、”恋”と”性”は非常に重要な題材である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
脳みそ幼女なカタリナ様は、自分の豊かに育った身体にも、無自覚に片っ端から落としまくる人間力にも自覚がなく、興味も欲望も薄い。
お菓子をいっぱい食べて、好きなだけキノヴォリして、友達と一緒に遊ぶ。
彼女の願望は”そこ”で止まっており、他の面々が望むような性的、感情的な独占は視野に入ってすらいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
というか、それこそ”乙女ゲーム”の中にあって、自分が祖の主役になりうる対象として恋と性を見る段階にないわけだな。
永遠に真白く幼き、無謬なるイノセンス、というわけだ。
しかしカタリナ様が成熟を止めても、周囲は勝手に大人になり、恋情と性欲に悩まされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
思いのまま独走すれば周囲の妨害にあうし、カタリナ様との幸福な関係は壊れてしまう。
加えて言えば、幼い彼女は自分に何が求められているか理解できないまま、荒々しい成熟したアプローチを”暴力”と捉えかねない
カタリナ様が大好きだから、自分だけの恋人にしたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
カタリナ様が大事だから、傷つけたくない。
かくしてカタリナの幼さは、周囲に山のようなジレンマとフラストレーションを溜め込むことになる。
そこには各キャラクターの成熟と人格に応じたグラデーションがある。今回はそれを顕にする話だ。
周囲の成熟と不満を生み出す、カタリナとのギャップ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
それが無垢から生まれるものである以上、急に”大人”になって恋に向き合うように変質してしまうと、大事なものも壊れていく。
ずっと無邪気で清廉なカタリナ様だからこそ、救われる歪みがある。主役特権の足場は、不安定な断絶を生みもする。
このジレンマを面白く、愛おしく書けている所が、やっぱり巧いし強いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
どうにもままならないジレンマを、それでも面白おかしく乗りこなして、理解ってくれない恋心に悶えつつ、無垢な笑顔に救われる。
このフラフラした歩みが、青春期の瑞々しい描写と重なり、独自のトルクを生み出している
さてお話は、アランとカタリナの微笑ましいやり取りから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
婚約者・メアリの腹黒妨害もあって、アラン様の成熟度はカタリナ様と近しい、幼い感じに収まっている。恋とか性とか、良くわっかんねー!
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ここでカタリナが差し出してるかぼちゃに”傷”があるのが、好きな演出である。外見とかは全然気にしねぇ、素朴で率直な価値観がよく現れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
このプレーンな価値観に、そろそろ色々気にして欲しいメアリはヤキモキである。ホントに君は、欲望のために他人の人生を捻じ曲げるの躊躇わないねぇ…。
そんな腹黒ヤバ子も、どっしり受け止め笑顔にしてしまうのがカタリナ様の器量である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
カタリナに出会えないまま、内なる獣に令嬢の皮をかぶせて生きていたら、メアリはどういう人間になっていたのか…想像すると、ちょっと恐ろしい。
今のメアリが腹黒チョロいのは、彼女にとって良いことなのだろう。
今回メアリは本に吸い込まれないので、自分の欲望を戯画化されない。その分、現実世界で獣欲全開、常時カタリナ様にヤバ視線である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
僕は誰かにヒリついた感情を投げつけるキャラクターが好きだから、常時赤面メアリは非常に良い。剥き出しになれッ!
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メアリが幼少期に、コロンと人生転がされちまった笑顔。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
傷のあるかぼちゃにも分け隔てのないカタリナ様は、会長にも無防備に微笑みを向ける。
ここでの会長での受け方が結構複雑で、何考えてるのか色々読みたくもなる。単純な好意というには、揺らぎとタメがデカいよなぁ…。
それはクライマックスへの導線として、今回はいつメン欲望大暴走のエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
いつものように飛び交う牽制、恋情の数珠繋ぎで図書館までワラワラ進んで、発動するヤバ魔導書の恋獄。
正解も厄介事も引き寄せる、カタリナ様はまさに特異点である。
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普段たおやかなご令嬢を装ってるメアリが、今回は狂言回しとして色んな表情を見せ、自分の奥底にある慕情をモリモリ表に出してくれているのが、見てて楽しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
見ろよあの”拳”…居並ぶライバルを蹴落とし、脳みそ六歳児にあんな事やそんなことをしたくてたまらねぇ女だけが、作れる”握り”だぜ…。
それはさておき、本の迷宮は各々の欲望を映し出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
ドギツい性欲だけでなく、滑稽で愛おしい見栄とか願望もスルッと透けて、結構おバカなイケメン&淑女の顔が見えるのはとても良い。
ジオルド様、なんスかそのスタイリッシュ飲酒…。
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幼少期から腹ぐr…成熟いたしてらしたジオルド様は、結婚とその先にある生殖、感情と身体の独占へと、アダルトに欲望を進める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
ロマンスが”性”を貨幣として駆動する感情経済である以上、行き着くところは『赤ワインを飲み干す』新鉢割り…なんだが、当のカタリナはその段階に全くない。
初というかおぼこというか、ここまで迫られてもまーったく何されるか理解してない児童を相手に、自分の望みを叩きつければそれは合意なき”暴”でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
そこはジオルド様も判っていて、青い果実が熟れるまでジワジワジワジワ粘り倒し、時々我慢できなくなって義弟に邪魔されておる。
でも本当は、大好きなカタリナ様と褥で乱れたいッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
そんな欲望を、”本”は顕にしていく。
他の連中が抱える生臭い欲望を、現実領域で見せつけられるメアリ&マリアもいい面の皮である。
暴走ボケのメアリと、冷静ツッコミのマリアのバランスが良く、読者漫才も非常に楽しい。この二人もいいな…。
義弟も焦らしておねだりさせたいし、ソフィアも白皙に赤い脈動を隠しているし、仲良しサークルに秘められた隠微なる獣欲に、視聴者もマリアもドッキドキである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
キースがむっつりしゃぶらせ大臣なのは知ってたけど、ソフィアくん想定より攻めるねぇ…。
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ギト付いた願望を暴露されて、メアリは半パニックになり、マリアは客観的に乗りこなしている描写はなかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
まぁ二人共ギャーワー言ってたら、話が先に進まねぇ、ってのはあるけども。
感情に踊らされず”正しい”選択肢選べるのは、主人公の資質よね。
本に描かれずとも、本心ではカタリナ様をメチャクチャにしてメチャクチャにされたい欲望の嵐が、メアリに渦巻いてるのはよーく分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
しかしマリアが落ち着いた態度の奥に、どれくらいのリビドーを隠しているかは今回見えない。この特権的隠蔽が、話の語り手でもある”主役”っぽくて面白い。
一人称で物語を進め、様々なルートに進みうる主人公が何を考え、何を秘めているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
それを問わないことで成立している”乙女ゲーム”のメタ文法が、悪役令嬢に主役の座を明け渡した後でも健在な感じで、なかなか興味深い。
バランスのいい子なので、そこまでリビドー全開って感じじゃないだろうけど。
普段は無口なニコルも、魔書に心を暴かれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
思いを隠し、それを暴く。ヒロイックな活躍を果たし、世界を翻弄する。
形式上、ジオルド王子がカタリナを専有している現状を理解しているからこそ、溜まりに溜まったフラストレーション。
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『そっか…ニコルははめふら仮面様になりたかったんだ…』と思わされる、月下の抱擁。限界まで追い込まれたメアリを、冷静に御すマリアの”近さ”が良い…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
普段から分を弁え己を押さえてるけども、本音ではド派手に表舞台に躍り出て、魔性で世界を魅了したいのだなぁ…単純な独占欲ともまた違うわね。
『カタリナを自分だけの存在として、側に置いている自分』含めて、魔書が暴くのは加速した自己実現願望だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
『こういう自分になりたい』というヴィジョンの中心に、常にカタリナがいる。
そういう絶対的な”近さ”を、色んな人に与えうる存在感と影響力が、カタリナ最大のチートなのだろう。罪な人だ…。
婚約者は雑にざっくり扱いつつ、欲望という名の電車は遂に主役に及ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
お菓子のおうちを、お腹いっぱい食べたい! 完全に児童だコレ!!
他の連中が抱える性欲も独占欲も、それを投射される当人にはま-ったくピンとこないのだ。恋とかわっかんねー!
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つーか本の外で見守ってる二人も、完全にお腹好かせたバブちゃんに向き合う対応してて、カタリナ様が”そういう”んじゃないのは重々承知なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
分かってはいるけども、伸びた身の丈と心は強い繋がりを、自分だけの思いを求める。お菓子でお腹を満たすより、もっと複雑な願望を充足したくなる。
しかしその我欲を暴走させれば、何もかもぶち壊しになってしまう現状もまた、賢い子供たちはよく判っている。あと腹黒共がビシバシ牽制を打ち合って、決定機を握らせないよう立ち回ってる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
かくして、無垢なるカタリナを中心に周辺が渦を巻く、奇妙な恋心銀河が完成するわけだ。
涼しい顔で菓子盆持ち続けてるマリアが可笑しくてしょうがないが、彼女らの尽力もあって、魔書の誘惑は終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
他の連中が桃色幻想と戯れて満足してるのに対し、”空腹”というフィジカルな幻想で満たされず魔書空間自体をぶっ壊しちゃうカタリナ様のパワフル、俺は好きだよ。徹頭徹尾、具体的な女だ…
成熟した関係を望む連中は、秘めるべき欲望が顕にされたヤバさも知っているので、そそくさと後ろめたく図書室を後にしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
それに気づかない無垢メンと、欲望を見られなかった腹黒女。複雑な距離感を気にせず、クッキーにハート目の主人公、と。
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『アランの扱い雑じゃね…?』と思ってたら、超正統派の爽やかロマンスを最後にぶっ込んで、大幅アドバンテージゲット! メアリ憤死寸前!! という流れ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
素足を顕にするエロティックの、かすかな気配は嗅ぎ分けるアランと、気にしないカタリナの温度差が良い
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木の枝と細い腕が作るフレームに、アランは囚われてしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
躊躇いを脱ぎ捨て、その内側に飛び込む以外の選択肢は、世界の見え方を変えてくれたあの時から、少年にはないのだ。
そして運命と魂を捉えてしまった責務を、カタリナは認識していない。
それでも、というかだからこそ、無垢な思いは今でも元気に、二人の世界を輝かせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
アランにとってカタリナは、性の対象として独占するものでも、己の恋心に応えてくれるものでも(まだ)なく、世界の実相を教えてくれる、かけがえのない導き手だ。
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それがロマンティックな鼓動に押されて、恋へと変わっていく季節に、少年は身を置いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
カタリナもまた、今まで当たり前に見えていた景色に色が付き、目の前の存在が別の陰影を持って立ち上がってくるような変化に、身を投げる時が来るのだろうか?
カタリナを中心に回転する、モヤモヤと愛おしさの銀河。物語の構造を維持するためには、カタリナは成熟することを許されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
彼女が大人の一歩目を踏み出してしまった時、お話は終わりへと近づく。ここら辺は、連載ペースという別領域との兼ね合いとか、色々絡んでくる領域でもあるか…。
児童文学としてみると、幼いカタリナが内側から湧き上がる成熟へ、自然と当惑し向き合う場面はあって欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
永遠に続く、無垢なる輪舞を維持するための”装置”として、この純粋な少女を閉じ込めてしまうのは残酷でもあるなぁ、などと思う。
しかしずーっと六歳児なカタリナ様が、可愛くもあるのだね…
ロマンスの文法に取り込まれない、永遠の幼児としてカタリナがあることが、その文脈で駆動する”乙女ゲーム”への無自覚なアドバンテージになってる部分も、多々あるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
性的に成熟せず、恋の主体にならないことで、”女”として選び選ばれるゲーム自体を無化し、相を変えていく。
カタリナが物語に持っている優位性は結構メタであり、それは”乙女ゲーム”というジャンルを戯画化/メタ化した上で語られる作品ジャンルとも、緊密に繋がっているのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
こういう堅いフレーム持ちつつ、キャラが作品世界で生きる瑞々しさ、生っぽさが一切死なないのが強い語り口よね…。
美しき無邪気さの中に潜む、思わぬ恋模様。邪悪なコントロール下に置いたはずの婚約者が、爆アド確保してる現実に向かって、メアリもぽっぴんジャンプだ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
今週のメア公はワーワー必死で、非常に可愛かった。剥き出しになれッ!!
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というわけで、カタリナを中心とした銀河がどういうリビドーで回転しているか、コミカルに暴く回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
いやー…みんな溜め込んでおるねぇ!!! こういうギト付いた部分を綺麗サッパリ拭うのではなく、”ある”ものとしてちゃんと書くのは大事だと、僕は思う。
そういう本音を前提として、カタリナを…彼女が呼び込んだ奇縁で繋がった友達を傷つけぬよう、壊さぬよう、子供らは結構気を使って、人生を歩いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
その臆病な配慮は優しくて、僕にはとても愛おしい。カタリナだけじゃなく、集ったみんなが大事だから、曖昧な今を守るのだ。
その清廉は横に置いて、子供じゃいられない心身は”自分だけの女”を強く求め、熱く発火する。その体温も人の営みとして当然で、可笑しくも愛おしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月23日
思春期のただ中にいる青少年、それぞれの成熟と未熟がよく見えて、彼らをもっと好きになるエピソードでした。
面白かった、次回も楽しみ!