波よ聞いてくれ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
ド深夜のトンチキ番組といえど、ミナレが生み出した波は誰かに届き、何かを変えていく。
銭ギッて行方をくらましたはずの元カレから、届いた”会いたい”の言葉。情と憤怒の間で揺れる、結構微細な乙女心。
ミナレは果たして、都合良すぎる自分と決別できるのかッ!!
そんな感じの、パンク女 VS クズ男最終決戦(アーマゲドン)である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
藻岩山ラジオからもボイジャーからも少し離れて、私人としてのミナレ、その揺れる心理を一話どっしり追いかける、叙情性のあるエピソードだった。
いや、泥まみれではあるんだが…大笑いした後少し切ないのが、この物語の良い所。
僕はミナレの、あまりにも人間的などクズっぷりを笑いつつも、妙な器量のデカさ、知性と爽やかさに感じ入ってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
人間の美醜悲喜をごたまぜに詰め込んで、ズカズカと勢いで転がしていくお話しの主役には、土壇場での度胸と不思議な気持ちよさがある。
光雄の生々しいダメっぷり、それ故の忍び寄り方でミナレの情が刺激され、グダグダと元の鞘に収まってしまうのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
どっからどう見てもクズな男を振り切れず、つまんなくてかっこ悪い女になってしまうのか。
そこら辺をハラハラしながら見守れる、心理描写の回だったと思う。
どす黒い殺意を滾らせつつも、情にほだされていくミナレの内心。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
細かく表情を切り取り、食事や化粧に距離感を焼き付ける演出は、彼女がゆらゆらと揺れるあり方を上手く伝えてくる。
その震え方が、どっちに落ち着くかわからないサスペンスとなり、エピソードを最後まで魅せてくれた。
というわけで、出だしはコミカルに演出された憤怒から開始である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
コミカルで勢いの良い、このアニメらしいぶっ飛んだ感情表出。光雄と顔を合わせてからもこの調子は、リリーフピッチャーのように顔を出す。が、今回の主役ではない。
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服を選び、デートを楽しみ、膝に恋人を乗せて二人きりの時間を楽しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
そういう場所が破綻した寂しさと荒廃から、電波の国に吸い込まれていったこのお話が書きそこねた、一人間としてのミナレの、ささやかな幸福。
今回の筆致は、そこに重点を置いている気がする。
『殺すー!!』と大声でほざきつつ、パンクな戦闘服に身を包み、真っ赤なルージュで武装する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
そうしなければ流されていってしまう自分を、強く認識すればこその儀式を、カメラは微細に追いかける。
その接写に、ミナレの弱さと小ささ…故の決意が見える
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自分が好きだったからこそ、好みの細かいところまで知っている男に、ペースを握られないためのルージュ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
調子こいた寝言を心に入り込ませないための、黒くアグレッシブな服装。
それはわざわざ鏡の前で選び取られ、ミナレの外装を変化させていく。ということはつまり、中は変わらず脆い、ということだ
全北海道に恥を晒したり、裁判一歩手前まで踏み込んだり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
コミカルな大惨事で僕らを笑わせつつ、ミナレのハンパさは生っぽい。
人生を支える”確固たる自分”はどこにもなく、感情に流されフラフラと…でも、小さな成功と自己実現が、その歩みの中にある。
戯画化されたコメディエンヌであると同時に、ちっぽけでありふれた…だからこそ存在感と実在感があるミナレという人間をずっと観てきたからこそ、彼女が治らない傷跡をグジグジ弄り倒す足踏みは、妙にもどかしく愛おしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
スパッと割り切り終わらせられれば気持ちいいが、そうはいかんのだ。
ミナレが始末しておかなきゃいけない恋のゾンビを、あくまでリアルな人生の一局面として描くために、藻岩山ラジオの同僚は漫画的解決策に成りうるレコーダーを、マトモなこと言いながら没収する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
今回の話は、ネタでは解決できないのだ。放送にも乗らない。
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…少なくとも、ダイレクトな形では。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
こういうしみじみとした人生の酸っぱさを、後に番組に加工して波に流すいぎたなさも引っくるめて、なかなか味わい深いところである。
面白がりつつも、同居人兼同僚としてちゃんとエール贈ってくれる瑞穂はいい子だね…そら”ハニー”言うわ。
ゴロゴロと人生転がされて行き着いたラジオ局で、カレー屋勤務では見えなかった自分の資質を見出し、親身に寄り添ってくれる友達も出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
泥まみれの生臭い遍歴だけど、瑞穂と出会えたのはミナレにとってデカい財産だなぁと、地道な筆致で進む今回しみじみ思う。
そんな友情に支えられて、ミナレの恋は一世一代の大勝負である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
浪川大輔の名演と合わせて、『お…坊っちゃん顔のドクズだな…』と”秒”で理解らせてくる光雄の造形が素晴らしい。
生っぽいヤダ味が凄いよ、光雄くん…。
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50万というリアルなマネー…と同時に、愛し信じた想いを裏切った重たさを、な~んも考えてない明るい軽さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
ミナレならずとも殺し屋の目になるが、そのイノセンスがミナレを引き付け、未練をグジグジ傷ませる。
ポケット直入れの”通りもん”を差し出す、光雄のヤバ。それを飲み込んでしまう、ミナレの情
他人を斬れない…誰かを好きになった自分を諦めきれない、ミナレのハンパな優しさがよく見える、いい出会いのシーンであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
今回は”食べる”という行為が幾重にも重なって、二人の距離感、ミナレが光雄の存在を腹に収めるか否かが、浮き彫りにされていた。食べちゃうんだよなぁ…。
同時に帽子の着脱、ルージュの色合いにもミナレの心は焼き付いていて、衣食住の描写に心理を照らしていく、生活感のあるエピソードだと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
飯を食い、服を着る。そういう近しい存在としてのキャラクターを細密に描くことで、見えてくる感情があるわけだ。
思わぬ角度から差し込まれた、ハンパな二十五万。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
光雄が心を入れ替えてくれたと喜ぶべきか、ご機嫌取って有耶無耶に押し流そうとしてると見るべきか。
愛すべきか、憎むべきか。ミナレの心はグラグラと揺れ、風が強く吹く。
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根本的に弱っちいチョロ蔵だし、好みのタイプだからこそ付き合っていたわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
クズが治ってくれるなら、復縁も吝かではない…という気持ちがあればこそ、遅すぎる”会いたい”にも応じたわけだ。
ヤバいのは理解っている。思い知ってる。でも、情というのはどうにもならない。
光雄のペースに乗せられて、ジャケットを脱がされ同じテーブルで飯を食う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
空気は読まねぇ、呵責もねぇ光雄がガツガツ全部食い切る中でも、ミナレは未練と正しさをどう飲み込めばいいか、スプーンを迷わせている。
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悪辣な面白顔もするけども、ミナレの心の奥には凄くナイーブで柔らかい存在がずっといて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
それを傷つけられたからこそ、自分を見失うほどに酩酊し、それが奇縁と”今”にも繋がっている。
トンチキ人間の奇妙さを笑いつつも、その根っこに真正な人間味が滲むからこそ、ユーモアとペーソスも産まれるのだ
光雄の方から吹いてくる風は、ミナレの心に吹く風だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
信じたい、戻りたい、騙されてしまいたい。
もう傷付きたくない、クズに良いようにはされたくない。
どちらも本当で、だからこそ選べない。
波に流される小舟のように、幼さで取り繕った調子の良さに、ミナレは一旦身を預ける。
ルージュを外し、ジャケットを脱ぎ、膝突き合わせてプライベートな食事をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
カレー屋のときとは違い、ここの会食はミナレから言い出している所に、彼女が心の鎧を外しつつある状況が見える。膝は突き合わせても、あぐらはかかない心根、と。
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真紅のリップは、光雄のキライな色。それを塗りたくることで、『自分は光雄をキライなんだ。許しちゃいけないんだ』と、言い聞かせていた部分がかなりあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
口紅を外すのはキスで色が移らないため…その先にある恋人の距離に踏み込むための、武装解除の証である。
この女…堕ちたッ!
とならねぇのが、色々痛い目見まくった今のミナレである。わだかまりをティッシュで拭って捨て去り、光雄に全てを預けようと、波に流されようと思った瞬間、ゴミ箱に捨てられた”証拠”に気づく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
ラジオパーソナリティの鷹の目は、こういう所でも生きてしまう。
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ミナレは苦いコーヒーごと、気づいてしまった苦い真実を飲み込む。それは外してしまったルージュの代わりに、心を再武装する手続きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
全てを許し合える甘い距離だったはずの膝枕は、決別のラナを叩き込む必殺の間合いに変わる。VS沖くんといい、こういう系列の技得意ねミナレ…。
現実を前に痛い目見て、恥をかいて成長していく自分。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
過去の経験に照らし合わせ、甘い夢に戻るのではなく、辛い一歩を踏み出す決断。
ヤバさと情の間で揺れていたミナレは、自分が見たいと思う世界ではなく、自分が見つけてしまった青椒肉絲真実に、己を投げ込むことにした。
それは正しい決断であり、全くもってスカッとする一撃だったが、同時に少し寂しくもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
情にほだされ差し出した五十万を、奪って逃げたにくい人。戻ってきたと思ったら、別の女の財布から抜き取った金で、都合の良い自分を買い戻しに来ただけだった。
それが事実。それが真実。
そう気づいてしまえるようになった自分を、ミナレはあの瞬間飲み込んだのだ。それはつまり、信じたくなかった…光雄に夢を見たかった甘くて優しい自分も、飲み殺してしまった、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
それは誰もが体験する、人生の一幕なのだろう。みんなそういう決断を経て、大人になっていくのだろう。
それでも、この一撃はミナレという人間たった一人のもので、その甘さも痛みも、特別な陰影がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
それを感じ取れるように、どっしりカメラを据えて、賢くなりきれない女の肖像を、その心に吹く風を、ルージュの武装を解除する瞬間の表情を、飲み込むコーヒーの苦さを、カメラは丁寧に追ったのだろう
帰ってこない二十五万は、甘い自分への手切れ金。再び帽子で武装して、への字眉毛で気風を気取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
クズ男を成敗し、過去の自分に決別したミナレはカッコいい。でもその眦に、殺しきれない未練と甘さが、やっぱり少し残っている。それが良いのだ。
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イヤでもまぁ、クズと復縁するミナレなんてぜってぇ見たくねぇから、この結末で良かったよマジ!!!(ダイナシ宣言2020)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
どう見てもドクズなんだが、心に忍び寄る純真をナチュラルに演じる、光雄の異形。
それに絆されつつ、正しさと情の間で揺れるミナレ。
自分を確信し疑わない醜さと、揺れるからこそ冴える決断の痛み。そういうものもどっしり対比された、再開と決別のエピソードでした。いやー…美味しく苦い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
『青春をぶっ殺したら、その亡骸を再利用しないと芸人じゃない!』つうわけで、次回は光雄の埋葬。
お仕事回にもなりそうで、楽しみです!
追記 頭抜けた洞察力は、ミナレの話芸を支える。同時に、光雄とやり直せるという腐った夢も粉砕してしまう。才覚とは、一度目覚めれば手綱を付けられない奔馬であるな。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
青椒肉絲真実から、光雄がな~んも変わってない現状を見抜いてしまったミナレ。
”気づく”という才覚は、彼女の言語センスと相まって、ラジオパーソナリティという職能を成り立たせる柱でもある。
麻藤さんがそれを覚醒させた結果、この結果に至った、とも言える。
新しい職業に出会い、新しい可能性と出会いを掴む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
キャリアメイクを通じた自己実現物語でもあるこのお話が、フラッと立ち寄った”私人”ミナレの迷いと決断。
そこでも、職能に通じる”才”が決め手となって、彼女は生き方を選ぶことになる。”気づく”能力を、ミナレはもう黙らせておけないのだ。
トンチキな作り話、クレバーなトークを生み出す”仕事の才能”が、プライベートでイノセントな煙幕をかいくぐり、悪魔の真実を暴き立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月30日
今回はそういう話でもあって、公私の領域が実は結構力強く繋がっているのだと、作品が語りかけてくるエピソードだったのかなぁ、と思う。