かくしごと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
嵐の如きクリスマスを駆け抜け、晴れて迎える年明け。
姫が引き当てた伊豆旅行のために、可久士は仕事を一気に終える。
訳あり傷持ちの連中が、引き寄せられる温泉旅館。奇妙な同調圧に、封じられた扉が開く…のか?
そんな感じの最後の日常、かくしごと第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
相変わらず明後日の方向に突っ走る可久士と、しっかりしているようでボンヤリな姫の幸福が楽しい。
が、『それも終わるのだ』と、ラストカットの潮騒が告げていた。最終話に向け、破綻のその先だけが見せられてきた未来へと、否応なく時は進む。
新しい年の始まりが、最後の日常となりそうな所にシニカルなセンスを感じるが、だからこそ伊豆旅行にまつわるドタバタは明るく楽しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
アルフォート全部食べちゃうのはしょうがないよ、姫ちゃん…美味しいからねアルフォート。
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生業を隠していても、妙な所が似ている親子。『計画性がないッ!』と突っ伏す可久士は、まさに姫の生き写しである。二人共可愛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
ここから話はゴロゴロ転がって、伊豆に向かって超加速していくことになる。目的地にたどり着くまでに、楽しいひと悶着があるのが、この話らしい所。
娘が引き当てた家族旅行のために、修羅と化して仕事をやり抜く可久士先生。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
十丸院がまたイランこと言ったり、女達がバチバチ火花散らしたり、『チチキトク』みたいな絵面になったり、正月目前でもどったんばったん大騒ぎである。
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『一週間に二回も、少女がバカンスを引き当てるアニメが見れるなんてな…』と、奇妙なシンクロニシティに感じ入ったりもしたが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
計画性のないダメ大人も、娘のためなら全力投球。
僕らが見てきた愛すべき後藤可久士は、最終回直前でも非常に元気である。いつもどおり微笑ましく、いつもどおり楽しい。
それが計画的に作らられた愛着であろうことも、僕らはよく知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
永遠に続いて欲しいと思える、おバカで微笑ましい日々。
それが笑えない冷えた結末にたどり着き、現実の冷淡な解像度が世界を覆い尽くす未来は、既に描かれている。
過程を飛ばしたまま、積み上げられている。
後藤家の朗らかさが胸に刺さればこそ、『何故?』という疑問は強くなる。赤から青、ボンヤリとしたファンタジーから冷たいリアルへの相転移が、どのようにして起こったか知りたくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
そういう興味の源泉は、このあと展開される終局で暴かれるのだろう。
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それを知りたかったようでもあり、未来になぞたどり着かないでほしかったようでもあり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
どちらにしても箱は暴かれ、”かくしごと”はバレる。真実を暴くことが必ずしも正義ではなく、秘められた箱の中にこそ幸福はあったりする。
今回のお話は、その前駆でもある。…今までの話の全てが、か。
可久士が寝ている間に、山と積まれた女の”念”。『存外、無自覚なハーレム状態が洒落にならず、大事故起こったんじゃないかな…』と、推測したくなる邪悪さだ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
先生は奥さんに操を立ててるから、岡惚れされてることに全く自覚がないんだよな…。
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己を慕う女達を束にまとめて置き去りに、可久士は伊豆へと向かう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
『三名様ですか?』という問いかけに、父母揃って当然という”正しさ”の一撃を、勝手に幻視してしまう思い込み。ペーソスの合間に、洒落にならない生っぽさが挟まる。
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色んな隠し事が封じられた旅館は、建物の形をした後藤可久士だ。執筆から離れた伊豆旅行は、可久士がどんな人間なのか、笑いを交えながら静かにまとめていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
冷たい世間とばかり向き合ってきたからこそ、その風から姫を守ろうと必死にもなる。
『お母さんがいないから』とか、絶対言わせねぇ。
それが可久士の頭の中にしか響いていない言葉なのか、透明な誰かがつぶやく呪いなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
それを客観で確認する手段はない。目に見えない亡霊のように、そこにあると思ってしまえば囚われるものに、可久士は強く縛られている。
それは、アシスタントとの楽しい日常でも、癒やされることはない。
突如始まった暴露大会に、開かずの間に封じられた秘密。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
可久士が隠し持っている山程の重荷は、タガが外れる瞬間をずっと待っている。
父の重責は幼い姫には良くわからないもので、全てが破綻する暴露を前に、少女はボケーッとした顔をしている。
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そんなものはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
『素っ裸で全てを晒したと思わせれば、それ以上は突っ込まれない』という冷徹な計算で、道化を演じていたという事実なんて、あるわけない。
墨田の鋭い追及を、可久士はいつもの調子でスカす。
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そこから目を逸らした筧が、何に感づいているのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
何に目を伏せることで、この楽しい日々が維持されているのか。
今まで結末と輪郭しか描かれたなかった怪物が、だんだん目鼻を整えていく。
知るということは、つまり終わるということだ。終わらないために無知でいたくても、時は流れる。
小さな姫の背丈は伸びて、隠されていた秘密に手を伸ばす。素っ裸に戯けて隠したかった秘密が暴かれて、可久士は洒落を売る商売を続けられなくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
時は逆しまに戻らない。妻との満ち足りた日々が、そうであるように。
時の残酷さもまた、この物語のテーマなのだと思う。
しかしそれは、全てが過ぎ去り荒れ果てた後に思い返すものであり、時の潮に身を任せている最中には思い至らないものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
幽霊の 正体見たり 白鼻芯 もしくは父の 夜の悪戯
お茶目に明るく、伊豆の日々は更けていく。
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ドタバタが過ぎ去った後の、親子の幽霊トークがとても綺麗で、寂しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
姫も結構母の不在については考え続けていて、だからこそ『幽霊はいてくれたほうが良い』という言葉も出る。
そこで語っているのは、地球がパンパンになるほど沢山の、顔も知らない誰かではない。
たった独り、ここにはいない誰かに姫は手を伸ばしているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
満ち足りた幼年期にも当然孤独はあり、それを共有し遠ざけてくれる、戯けた庇護者もいてくれた。
心に影を抱え込んだ時は、必ず上がってくる縁側。
そこから、終わりは始まった。
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道化を気楽に嘲笑えるのは、それが洒落になる間だけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
箱に閉じ込めた悲惨が暴かれたのなら、もう笑いものになる商売は出来ない。
海の側に立てた我が家に、どうしても居続けられなかった理由。亡霊は封印を解いて、海から現し世を呪う。
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”現在”ではボケーッとしてる墨田が、持ち前の鋭さを全面に出して『ギャグ漫画が消費できる構造』を語っているのが、空白の時間が与えた変化を物語っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
可久士は洒落にならない過去を抱えつつ、それを隠してギャグをやっていた。
作品と作者を結びつける世間、母がいるのが当たり前の世間。
被害妄想込みで膨れ上がった、一個人が戦うにはデカすぎる巨人と、姫を抱えて独り戦ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
父の胸に庇われた少女は、その厳しさを知らない。それを教えないために、ガムシャラに闘ってきた可久士にとって、”知らない”ということはある種の救いなのかもしれない。
だが、それも終わる。蓋の箱は開く
そこから飛び出した真実が、どのように破綻を導くか。いかにして父と子は別れ、全ては荒廃していったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月4日
次回からは、既に約束されていた終わりが掘り下げられていく。待ち望んでいたようでもあり、畏れていたようでもあり。
どちらにしても、楽しみではある。願わくば、幸福な終わりの続きを…。