イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイドリッシュセブンRabbitube特別編感想ツイートまとめ

・最初に
こんにちわー、見てきました!
アニメでは因縁と感情にまみれた”人間”としての彼らを見てきたわけですが、”アイドル”してる連中のお澄ましズラを見ると、世界観とキャラの解像度が上がっていい感じですね。

『作中のファンたちは、あのお仕事っ面の奥に、地獄めいた因業がゴリゴリ渦を巻いてることをあんま想像もせず、綺麗な夢として彼らを消費し救済されてんだろうなー』みたいな感慨が湧いてきました。
それはそれで、得難い立派な仕事ですよね。
”アイドル”ってそういうもんだ。

自分たちの足を絡め取る、重たい個人的な事情と感情。
それを表に出さず、きれいな夢を演じ続けるプライドみたいのもアイナナは大事にしていると思うので、今回3Dで『仕事してる彼ら』が見れたのは、なかなかいい体験だったと思います。
本放送前にこういう地ならし、コンテンツとしてつえーな…。

 

・個別感想/一織
プレイングマネージャーを務める彼らしく、ソツと破綻のない進行。
同時に面白みもないが、その堅さが面白さになるよう、スタッフ側で色々工夫してパッケージングしている。カタカナを多用した、ロボット気味なテロップとか。

『アイドルとはこういうモノ』『Rabbituberとはこういうモノ』というカテゴライズが自分のなかでハッキリしていて、それをはみ出さないよう、丁寧に状況と自分を制御している印象。
その規範意識/認識が長所ともなり欠点ともなっているのは、これまでの物語どおり。

型がハッキリ見えてる分、型破りなことは苦手な人格であるが、陸からセンターを肩代わりするというイレギュラーを自分主役で演じていく中で、例外を貪欲に取り込んでいくタフさも磨かれていくのだろうか?
キャラごと何が出来て何が出来ないか、凸凹が鮮明であり、そのかみ合わせで話が回る。

アイナナの基本形を考えると、堅さを残したまま柔軟さを手に行く形に変化していく…のかな?
そこは先の話として、現状一織の”売り”は丁寧さ、誠実さ、生真面目さ。
カッチリ固めた外殻から漏れる、天然のポンコツっぷり。
方向性としては壮五に近い印象。”硬軟”の硬担当。

開封動画でファンシーなウサギちゃんに触れ合っているのは、柔らかさ≒萌えれるギャップを引き出すための触媒。
こういうアイテムが”女性的”であるのが、メインターゲットを思い知らされて面白くもある。”私達”が触るのと同じものに触れることで、親近感を創る工夫か。

 

・個別感想/大和
お酒も飲んじゃう、ぶっちゃけも言っちゃう。
ちょいワルお兄さんとの半私的な空間を、優れたメタ認知を交えつつ巧く取り回していく。
一歩引いた冷たさを自分の魅力として、武器に変えているクレバーさ。
それを冗句でくるんで尖らせすぎない調整能力の高さ。

僕が大和を好きなのは彼が子供で大人なハンパモノだからだが、そのフラフラした感じを自覚した上で、最年長として仲間を引っ張る(あるいはあえて闊達に振る舞うことで、集団に自由度を与える)頭の良さも好きなのだ。
そこら辺が、作中のファンにも武器になっているのだろう。

番組の進行や大人の都合なんかも表に出しつつ、画面の向こうのファンへのサーヴィスも意識しながら立ち回る感じは練達で、適切に固く適切に柔らかい。
周囲に求められるものを肌で認識して、そのとおりに自分を従わせる能力が高いのかもしれない(自制心とは、また違った資質)

センブリ茶も”仕事”の一貫として、サラッと飲み干す。お酒も楽しんでゴクゴク行く。
しかしそれらは全部俯瞰で、どっか遠くて冷たい。その”分かりきらなさ”がアイドルとして必要な遠さ/ 高さを生んでいて、いいバランスで自己演出してると感じる。
やっぱ地頭はこの子が、アイナナで一番いいな。

俯瞰で世界を見れちゃう冷たさを、最前線に出さずに立ち回れてしまう器用さ。
これは一織や壮五にはない資質で、だからこそ溜め込んだモノも多そうだ。
いつか過去と一緒に溜め込んだものが牙を剥いた時、どういう荒れ狂い方をするか楽しみでもある。自分の中にいる子供を、いつか開放してあげて欲しい

 

・個別感想/三月

『よっし! 大好きな”アイドル”を巧くやるぞッ!!』という意念を殺しきれず、巧く必要な行動をとっているのにどこか空回る不器用さが透ける立ち回り。
ここら辺は、ぶっちゃけ感覚を自分の武器に変えて制御しきってる、大和と大きく違う部分。

僕は三月のその”強ばり”が滑稽で愚かで、人間的で愛おしいと感じている。
作中のファンも、『三月クンって張り切り過ぎだよね…』『でもそこが良いよね~』となっとるのだろうか?
アイドルを最も愛しつつ、アイドルに最も愛されなかったメンバー。追えば追うほど、求める完成形は遠ざかる不器用。
そんな資質から逃げることなく、幾度もぶつかる必死さが知らず溢れている所が、彼の魅力なのだと思う。

居住まいというのはキャラを見せる大事な要素で、3Dモデルになったこの企画だと、より実在感のある座相が見えるけども。
最初クッションを抱えて、自分を守る感じになってるのは面白い。

素の自分でアイドルに挑んで負け続けた結果、三月の自己評価は低い。
それでも自分を捨てきれるほど弱くも強くも無いわけで、笑顔と汗と自己欺瞞を混ぜ合わせたシールドでもって、”世界”から自分を守っている様子が時折見える。
最初もってたクッションは、その現れかな、と思う。投げ捨てるのも含め。

ラビチューブは暗号の多いコンテンツで、和泉家の稼業とか、メンカラーの挟み方とか、動画時間以上の情報量を前のめりに読み解くことを期待して作成されている。
ファンが勝手に情報を読み解き、物語を組み上げていく。その絡み合った、自動生成的なストーリーを方向づけつつ売る。

おニャン子以降のアイドル消費には、多かれ少なかれそういう部分が多々あると思う。
その潮流に乗っかって、アイナナ運営は(フィクション内部でも、その外側にあるメタリアルでも)読み応えのある物語触媒を多数提供して、消費の現場が元気に反応するようにしているのだろう。

我々は物語る動物であり、何かがそこにあるだけでストーリーを勝手に読み取ってしまう。
面白さは常に、状況から生成される物語のなかにこそある。
これをオフィシャルからの一方通行で制御し切ろうとしてるのがTRIGGERで、ファンサイドとの双方向で育成しようとしてるのがアイナナ…という印象。

三月もこころらへんの構造はわかってて、自分自身を触媒に色々沸き立たせようと、台本も読み仕事もし、そこから溢れる”素”も見せて…と頑張っている。
しかしクリティカルにバカウケ、という所まで持っていけない微妙な沸点の低さが、寧ろ個性と実在感にも繋がっている。

出来ないからこそ面白い。出来るようになろうとするからこそ面白い。
”雛”な存在が健気に頑張る過程をこそ、完璧な結果よりも愛でる風潮というのはかなり日本文化に特有だと思うが、そういう文化の先端にある”アイドル”を体現してるキャラの一人だと思う。
大変だけど頑張れ。

 

・個別感想/環
はーい、楽しんでいただけたようで何よりです。
んで見てきました。環はヒデぇな! そして凄いな!!
自然体で過ごしているだけで、人を引きつける”華”が上手くキャラクタライズされてて、巧いと感じますね。
見直すと…やっぱヒデェなコイツ!!
とにかく計算なし、自然体で暴れまくっているだけなんだが形になってしまって、メンバーで一番尺の長い動画になってる。
多分アイナナで一番”持ってる”キャラなんだろうなぁ…偶像に必要な仮面が、自然と生えてくるタイプのアイドル。

環の魅力は素直さと可愛げにあって、とにかく我慢せずに全部吐き出す。良いも悪いも態度に出して、その率直さが人に響く。
これは彼の天性で、こういうある種のカリスマなしで率直に吐き出していると、あっという間に孤立することになる。そういう恵まれた資質を、彼は自覚していない。
多分自覚してしまうと消えかねない危うい資質なんだが、千サンが巧く釘刺していたように、こっから先はある程度コントロールしないとお仕事にならない才能でもある。
方向づけが難しい子だけど、反発させずどうリードしていくか。周囲の器量が問われるか。

妹求めて始めたアイドル稼業だが、独自の楽しさを見つけつつある感じもして。
『やりたいこととやるべきことが一致した時、世界の声が聞こえる』と銀河美少年は言ったけども、環にもそういう瞬間が来るのだろうか? それとも、ナチュラルなアイドル筋の強さで乗り越えていくのだろうか?

 

・個別感想/壮五

んで見てきたんですが…色んな意味で面白かったです!

やっぱこの企画、『アイナナ世界のファンに向けた、パブリックイメージとしてのアイナナ』を客観視出来るのが面白くて。
フィクションの中のリアルをフィクション化してリアルで受け取るという、メタの多重ネジレがコンテンツとして機能してるつー

アイナナのど根性物語は、ファンは知らない個人的な事情。
それを至近距離で見つめ支える紡を主人公(一人称のアバター)として展開するゲームと、紡も含めて三人称で俯瞰するアニメの体験って結構違うとは思うのですが、まぁプライベートを見てるところは共通です。
私生活の荒波で見せた暴力人間な部分とか、心が酒びたりになってるところとかを、綺麗に切り落として”アイドル”逢坂壮五を魅せる意識の高さ。
その完成度がある種の可愛げのなさ、面白みのなさとして機能しつつも、硬い殻から漏れ出す天然ポンコツな部分が”華”になって、ファンを引きつける様子。
あの世界で”アイドル”逢坂壮五がどういう存在として販売され、消費され、愛されているかが見える番組なのは、やっぱ面白いです。

『商材としての客観視をコンテンツとして売る』意識は、ラビチューブ企画全体に重なってると思います。
『あの世界』での捉えられ方を、角度を変えてリアルに刺す戦術。
芸事としての完成度と、その途中にあるほつれ。
このバランスをどう捉えるかってのはアイドルコンテンツ永遠の課題だと思います。

完璧な偶像としてプライベートを隠して魅せるTRIGGERが、アイナナのライバルとして定位されていることからも、そこはこの作品にとっても大事なのだと思います。
完璧な存在って憬れはすれど、手元において撫で続ける存在にはなりにくくて。
大量消費の時代で勝つには”親しみ”てのが大事で、ドルも私生活や隙(っぽいの)を適切に見せて、売る時代が結構長く続いています。
アイナナはその、頑張りや拙さ含めて売る文脈を背負っていると思う。

壮五のソツのなさはそこからちょっと外れた感じで、その”浮き”が存在感でもあると思うわけですが。
箱ゲームでそういう可愛げのない可愛さを推しつつ、お絵かきゲームでポンコツな所引っ張ってきて落差で魅せる演出は、スタッフ上手いことドレスアップしたな、と思います。

普通に立ったり座っていたりしたら、自然と綻びなく整ってしまう。
その優等生っぷりを自分に課して生きてきた壮五にとって、例えば環のように天然で魅力的に崩れろ、というのは難しい課題になるのでしょう。

だから、基本素の整った顔を出す。でも、知らずほころぶ。
その計算されたナチュラルさで、あの世界のファン(そしてそれを画面越し覗き見る僕ら)はコロッとイかれてるのかなー、とか想像すると、作品世界の解像度が上る感じで楽しかったです。
『壮五クン仕上がって見えるけど、案外天然なんだ…』という裏切りは、自分だけの発見なので気持ちいいンスよね。
しかしアイドルが大資本と莫大なスタッフを伴う”仕事”である以上、それは巧妙に計算されマスに共有されてるありふれた体験でもあって。
『壮五クンはこういう子!』というイメージが統一されていないと、ファンの馬力も分散しちゃうしね。そこら辺のコントロールは精妙にやってると思います。

ドルを如何に売るかという、怜悧な職人意識があのあったか事務所でもしっかり駆動していて、背筋が伸びてると思えたのも良かったと思います。
売る。銭は稼ぐ。それは(少なくとも小鳥遊には)目標ではなく、夢を大きな舞台に乗せるため必要な過程なんでしょうね。だからこそ抜かない。

壮五も敏いんで、そこら辺の構造は意識した上で”逢坂壮五”をやってる部分はあると思います。だから、意識せず思惑を超えていく環に憧れ、苛立つ。
あのよく仕上がったファンサービスの裏で、どういう個人的感情が膨れてるかを想像するのが、一番面白かったですかね。
ありがとうございました。

 

・個別感想/六弥ナギ

はーい、お知らせありがとうございます…見てきましたッ!

『やっぱ六弥はすげーな……』って感じでしたね…。
正確には、僕が見たいと思ってた『客前に出るアイドル・六弥ナギ』の解析度・再現度が凄い。 

道化師ってのは非常に難しい仕事で、客を笑いに巻き込む本気の熱狂と、それを俯瞰で管理し切る冷静さを同時に運用しなければいけない、矛盾した役だと思っています。
このクラウンの知性と痴愚ってのが、僕がナギを見る時の足場なんですが。

彼は戯けた態度で企画に取り組みつつ、言うべきことは凄く広い視野で片っ端から拾いまくる。
進行はクレバーだし、番組の何が面白いかを言語化する能力(漫才におけるツッコミの才能)も元気です。一人でボケとツッコミ両方やって”場”を成立させてる状態でしょう。

そういう知性を、エセ外人なキャラ付け…ってわけではなく、かなりの部分がナチュラルではあるんですが…で包んで、相手を怯えさせないよう親近感を持ってもらえるよう、自分から明るく楽しく振る舞っている。
誰かを笑い者にするのが嫌いだから、自分から笑いものになる。そういう道化の雰囲気がある

まんじゅうこわい』ネタをふったり、難しい熟語を使ったり、ナギは表面的な発話能力に比べて、日本文化と日本語への理解が非常に深い。
その熱意と地頭の良さを、自分を整える方向に使えばいくらでもスタイリッシュになれると思います。しかし、彼はそうしない。

そこに何があるのかってのは、僕には分からない部分で。
他のキャラクターが”家”含めたプライベートな物語をかなり開陳し、その克服も山あり谷ありでやっているのに対して、ナギは(アニメだけを見てる僕の観測範囲だと)まだ全てを伏せている。
しかし、彼が賢く怜悧なのは理解る。優しいのも。
道化の仕草と、賢者の内面。
一見矛盾する二つの特性を繋ぐものが見えないからこそ、ソレを見たくなる。
パッと見のアクの強さをのけてみると、彼はアイナナで一番ミステリアスな青年で、つまりセクシーなのだと思います。
その秘密が、場に応じて顔を変える便利さにも繋がるわけですが。正にジョーカー

前のめりな本気っぷりと、それを制御仕切る冷徹の同居ってのが、今回の動画にはよく見えて。
伊織の開封動画と比べても、大好きなここなに興奮しつつ、客が見る”芸”として自分のオタクっぷりがどう暴れればいいか、どっかで静かに見ている感じが滲む。

愚者をゲラゲラと嘲笑していたら、スッと道化がこちらを見ている恐怖。
ナギの愚かしさを装った賢さには、そういうものが内包されている気がします。
主客上下が気づけば逆転して、自分が手玉に取られている怖さと快楽。
あの世界のナギのファンは、凄いドMが多い気がしますね。

『ナギくんってこういう人』と思えば思うほど、それを裏切られて新しい顔が見える。
捕まえたようでいて、すぐに逃げていく。
破綻のないサーヴィスを提供しているのに、作り込んだキャラクターの奥から滲む生き様が、それを裏切っていく。
アイドルを求めるほど、生身が見える。

どんだけ道化を演じても透けて見える、エレガンスと知性。
彼が(おそらく)逃げた”家”がどういう場所なのかも気になるけど、アニメで見れるのは当分先だろうなぁ…。
ジョーカーとしての仕事が便利すぎて、他六人の地ならし終わらないとナギの話出来ないよね、恐らく。

それまでは優しくて怖く、賢くて愚かな”アイドル・六弥ナギ”を楽しもうかと思います。
『大愚にして大賢』って属性は、自分が頭いいと思ってて実はバカだったと理解することで前に進んだ一織と、面白い対比よね。
この二人がやる『開封動画』の差異に、賢さの発露がどう違うかよく見えると思う。

おまけ

多分あの世界のナギヲタは『ここなとか全然解んないけど、ナギくんが楽しんでるからOK!』だと思うんですが。 この推しのハッピーで肌が潤う感じは、”ゴールデンボンバー”の歌広場淳さんが趣味の格ゲーで高まって、それをお姉さん達が見守ってる様子を思い出す。

あの世界でもここな特番とかに乗り込んでって、顔の良いリア充に最初ルサンチマン高まらせてたここなヲタが『コイツ…”本物”じゃん…』とガチっぷりを認めてファンになったり、ナギヲタのお姉さんたちと交流したりして欲しいところです。
ここら辺、宮田くん味もあるな、六弥ナギ。


・個別感想:七瀬陸/九条天

名字も違うし、双子だということを世間に隠している以上『偶然誕生日が同じな他人』な二人が、実は魂の奥底で強く繋がっていることを、モニタの向こう側の僕等だけが特権的に知っている。
この状況が、まず面白いなぁと思うわけですが。あの世界のファンは、この”偶然”どう飲み込んでるんだろうか?

まぁアイナナとTRIGGERはファン層も方向性も違うので、そもそも比べないのかもしれないですけど。
双子を同時に置いたことで、その差異もより強調された感じでした。
陸はとにかく朗らかで天然、失敗や脱線もチャーミングにナチュラルに、可愛らしく届けてくる。
天にいは小悪魔系ってペルソナを完全に演じきって、一切の破綻なくパーフェクトにやりきる。場の雰囲気に流されて、法螺貝吹くとかはやらない。九条天はそういうことしない。
プロ意識の有無…というよりは、プロのアイドルとしてどういう見せ方、売方するか、事務所と当人の方針が真逆な感じ。

舞台裏から見てると喘息でゼーハー言ってる印象が強いので、ファンに向ける”七瀬陸”がああいう『程よいほつれ』にまとまってるのは、新鮮な感覚でした。
自分の抱えた地獄を、カメラが当たる場所には持ち込まない。
持ち込まないために、強くなるし仲間にも頼る。
そういうアイドルとしてのプライドを本編で錬鉄した結果が、今回の陸だと考えると、可愛いだけじゃないよなぁ、と思ったりもします。そこが可愛い。

アイナナは芸事に携わる人がかならず抱え込む、尊い嘘に太い視線を向けてくれるところが好きなんですが、双子は特にそこが軸な気がする。
何もかもむき出しでさらけ出すと、ドラマにはなっても洒落にはならないってこと、沢山あるじゃないですか。
二期で九条鷹匡が言ってた『アイドルのラッピング』てのがあってこそ、ステージは夢足りえ、キッツイ現実を必死に泳いでる人の一縷の望みとして機能する。

ではどう”アイドル”を包み、自分を作るか。
そこに恐らく唯一の正解はないし、選んだプロデュース方針それぞれの大変さがあると思います。
陸と小鳥遊は、嘘はつかずに仮面はつける方針で、個性を生かして七色の虹をファンに届けようとしている。今回の陸は、その線上で色を出してる。

対して天にいは”情感豊かな小悪魔”というペルソナを…自分で選び取ってか、早乙女あるいは九条に選ばされてかは分からないけど、徹底的に演じ抜いている。
破綻のない完成度、ファンの望む嘘を『アイドルの当たり前』として、カメラが向く限り自分を殺して…というか、第二の自分として生きてる。

僕はその気高い嘘が気に入って、アイナナというアニメに前のめりになったりもしたわけですが。
どういう経緯で、TRIGGERの三人がかぶってる分厚い仮面が選び取られたのかは気になるんですよね。
みんな根っこは、気のいいあんちゃんじゃないですか。
でも、ハイグレードで売るにはそういう”私”は邪魔で。
before the Radiant Glory である程度、龍之介と楽は仮面の出どころが推測できるんですが。 一番うまく、徹底的に仮面を付けてる天にいが、なんで、誰からの影響で今回見せたような”九条天”を選んだのかは、結構大事なところだと思います。
義父と絡むなら、アニメ二期で少し見えるのかな?

天にいが選んだ仮面が、エロティックで挑発的でクレバーで、皆が夢中になりたくなる魅力に溢れた嘘だとちゃんと見せてくれたのは、とても良かったと思います。
彼はそういう嘘を徹底するために、色んなものを捧げている。
大好きな弟との関係も世間様に言えないし、自分の冷たい部分も出せない。

しかしむき出しの自分でいることだけが、価値の源泉ではない。
自由に個性を輝かせているように見えるアイナナだって、その善い側面、商品になる部分だけを上手く選りすぐって、客前に出しているわけです。
どんなプロデュースをするにせよ、適切な嘘は大事で。
同時に己を飲み込むような、自分で飲み込めない嘘は己を滅ぼしても行くので、なかなか難しいところですが。
パブリックイメージという怪物が”アイドル”を傷つける様子も、アイナナは細かく切り取っているので、嘘の書き方が多面的だな、と思います。
その影響はファンとアイドル、双方向に伸びるのだ。

面白いのは、天にいの”プライベート”が真実の全てかっていうと、そこにも嘘が混じってることでしょう。
あの子、優しすぎる自分を上手く開放できないから、分厚い嘘で二重に守ってる感じが凄いする。
小悪魔なアイドル、ぶっきらぼうで冷徹な仕事人間。
その奥に、情のマグマグラグラ煮立ってるでしょ

でもそういう優しさは、あくまで”仕事”なTRIGGER内部でむき出しに共有されているわけじゃない。
まぁ龍も楽も情感満載人間なので、仮面の奥からあふれるものを至近距離で感じるセンサーはしっかりしてるし、TRIGGERが維持できる範囲でしっかり報いてもいるわけだけども。

”私”をリシェイプすることで舞台の先にある”公”に提供してるアイナナと、”私”を分厚い嘘に包むことで”公”にアプローチするTRIGGER。
陸と天を同時に出すことで、その差異と合同がよく見えるRabitubeでした。
正反対に見えるけど、根っこに共通する部分は多いなぁ…。

しかし今更ながら、3Dモデルの表現力が凄くて感心です。
天にいの仕草に溢れる余裕と挑発、陸の体から飛び出す天真が、セルアニメーションとはまた別の表現でしっかり伝わってくるのは、作品を受け取る補助線として凄く力強い。
面白いよなーこの企画。

 

・個別感想:八乙女楽

お知らせありがとうございます! 見てきましたッ!!
TRIGGERの漢担当、強くて頼もしい……でも隙と礼節がある八乙女楽が、たっぷり楽しめるRabbtubeでした。面白かったです。

僕はアニメのほうでオヤジとの摩擦とか、仲間を思う気持ちとか、結構繊細で柔らかな感性とか、このチャンネルには出ない”素”を見ているわけですが。
想定していたより、”素”を隠してねーな、と感じました。
気のいい蕎麦屋の出前汁が、アイドルアーマーの隙間から出ちまってるよ~、って感じ。

素足も顕に、さっぱりと構えてザクザクと番組を進めていく。 『漢らしい』という作られたイメージに乗っかりつつ、スタッフさんには礼節をもって接し、仲間にもメッセージを忘れない。
視野が広く、包容力がある彼の”素”は、あの番組でも消えていない。

僕Rabbtubeがどういう段階で作られてて、そこに至るまでにどういうドラマがあったか把握しきってないので、ズレてる感想かもしれないですけど。
多分、アイナナと出会う前の楽(とTRIGGER)では、あんまでなかった味なんじゃないかなー、と思いました。
もっと、事務所が用意した鎧が分厚いつーか

オヤジが押し付けてくるイメージとぶつかったり暴れたりしながら、TRIGGERも『俺たちTRIGGER!』ってイメージを変えてきたと思うんですね。
ファンもまた、その変化を受け入れてあの映像がある…と思う。僕が見てない範囲で、凄い波乱とかあったのかも知れんけど。

とまれ、楽は風通しと面倒見が良くて、でも完璧にはちょっと足らない、可愛いお兄ちゃんとして提供されている。
多分、(現実の中でも虚構の中でも)ファンもそれを望んでいる。
そして、ピリッと危険なセクシーボーイとしての表情もある。昔はこっち売りだったんかなー。

完璧な彼氏面爆弾を視てキュンキュンきつつも、『でもこのにーちゃん、オカモチ持って出前一丁だからなぁ…』と思わざるを得ない、立体的な構造。
やっぱそれを視聴者に楽しませるように、シナリオが組まれてるなーと思いました。仮想の中の現実を、仮想を見てる現実で楽しませる転倒。

そういうメタな面白さぬいても、天から受け取ったバトンを龍にしっかり届けて、『俺たちTRIGGER!』というパッケージを印象づけるようしっかり動いてる楽の頼もしさは、見ていて気持ちよかったです。
TRIGGERが好きな自分を、かなり素直に受け止められてる感じするなー。ええこっちゃ。

 

・個別感想:十龍之介

というわけで、マッハで見てきました。
危惧していたよりは”素”の人の良さ、仲間思いで視野が広い所を出しつつ、アイドル・十龍之介に求められるエロティックなくすぐりを存分に込めた、いいファンサービスだったと思います。
露骨に性的な指のクローズアップ、アイドル稼業のヤダ味出てて良かった。

龍之介はど田舎人間でお金もあんまない素顔を、リッチでゴージャスでセクシーなイメージで覆ってアイドルをやってる(やらされてる)キャラだと、アニメの範囲だと受け取ってます。
アイナナと触れ合う中で、そんなイメージを押し付けてくる上との距離感もちょっとずつ変わって、でも支配下にある。

Rabbitubeでの彼はそこから少し前に出て、おおらかで包容力のある最年長としての”素”を出しつつ、無自覚なセクシーで偶像としての期待にも答えつつ…みたいな、良いバランスで自分を売ってる感じがしました。 
これが計算高く作ってるのか、意図せず取ってるバランスなのかは、手持ちだと判別つかんけど。

彼は色んな人達に沢山言及して、鷹揚な気配りを番組中、沢山見せてました。
他人の評価が徹底的にポジティブで、ただ楽しむだけじゃなくてそこから生真面目に学び取りもする。
そういう真っ直ぐな自分らしさを、アイドルとして表に出していい立場になってんだなー、と思った。
同時にセクシー路線は彼の強みでもあって、四方竹を撫でさせる手付き、優しいんだけどときおり鋭い目線と、アブない魅力もしっかりアピール。

僕アイナナ面白いなー、と思うのは、男性アイドルを性の対象として消費するファンの、無自覚な暴力性を作品内部に取り込んじゃってる所なのよね。
それは現実と真実を反射する鏡で、同時に秘めておきたいプライベートの領域でもあって、しかし同時にそういうリビドーこそが、偶像産業を駆動させる最強のガソリンなのも間違いない。
未成年の環を『抱かれたい男』としてピックしてしまうシーンは、そんなネジレを上手く切り取っていた。

僕は一般的に対象化されることが少ない(とされる)”男性”を表看板に世の中歩いていて、そういう視線に不慣れであるので、その存在と質感を切り取ってくれるアイナナの目線は、凄く勉強になる…というか、ギョッとした後背筋が伸びる感じするんです。
そら当然、女性も性を消費するよな、みたいな。

リアルの僕はサッパリキモオタなので、異性から性を求められる体験つうのを個人的に経験してない、つうのもあるんですが。
本来均等であるはずの性への欲望と対象化、それにまつわる一種の政治を、不均衡なものとして当然視している自分に、”オトメ”の視線は気づかせてくれる、というか。
だから性を欲望される対象として、そしてそれによって商活動の主体として銭を吸い上げる主体として、十龍之介が秘めやかにエロティックに描かれるのは、とても面白い。
僕自身は彼に興奮は(あんま)しないけども、そこにはかなり複雑な欲望の錯綜がある…気がする。

彼をプライベートに保持して、その性と主体を特権的に確保する(龍之介と恋をする)領域にファンは踏み込まないのだけども、最後の”なでなで”が示すように、その幻想を追いかけさせることでアイドル・十龍之介は駆動している。
けして届かないからこそ、対象として消費も出来るし、夢としても追える。
そういうセクシーな蜃気楼としての龍之介と、彼を”売る”構図が爽やかに焼き付いてて、今回のラビチューブも面白かったです。

ドル業界が何を売り、どう駆動してるかっていう”産業”への目線が太くあるのは、アイナナの独自性であり強みな気がするな…生臭いのどんとこい!
その上でアイドルの臓物が放つ臭気に負けず、それを超えてなお輝いてしまう星の眩しさ、偶像で幻像だからこそ成し遂げられる圧倒的な自己実現みたいな、甘っちょろいキラキラをしっかり見据えて話進めてるのも、偉いし凄いと思う。
簡単に露悪に転んじゃいそうな所で、一歩踏みとどまるのは強いわな。

悪夢・淫夢も夢のうち。 夢売り稼業は生臭いソロバン勘定と、キレイな光の混ぜ合わせ。 ここら辺の陰りを体現してそうな鷹匡が、作中でどういう立ち回りして何しでかすか、やっぱ楽しみだな、5話以降…。
ぜってーろくでもないでしょあの人。
ゼロの幻影から一生抜け出せない人でしょ。
そういうの好き。

 

・個別感想:百

というわけで見てきましたッ!
明るく楽しく元気よく、”アイドル”百がどんな顔で世間に向き合っているかよく判る動画で、本編で地獄坂まっしぐらな人と同じとは思えませんでしたね。気圧差で耳キーンなります。

百が歌えなくなった理由がどこにあるかは、アニメだとまだ伏せ札なのでなんとも言えませんが。
エア千するほどの濃厚LOVEを、アイドルとしての売り、自分の自然体として動画に焼き付けている彼が、不調に陥るなら原因は千なんだろうなぁと、不思議に納得もしました。

Rabbitube企画の立案者である彼は、今回出演してくれた後輩を楽しく回想し、過去コンテンツへの導線を自然に引きます。
プレイング・プロデューサーとして果たすべき責務を、過去の出演者にも、企画で食ってる参加者にもしっかり果たす。そういう目線があるわけです。
チラチラ見える八重歯や、あざといはきゅ~んポーズで迷彩されがちですが、彼は”売り”にしている通りの幼い存在ではなく…というか、そうであると同時に、非常に理性的かつ野心的な”大人”なんだと思います。

自分が置かれてる状況、アイドルという商売、企画でやるべきこと。
全体像を見通して、自分のやりたいこと、楽しいと思えることをどう実現していくか。
そこに対しての意識と経験値が高く、客が楽しめる形にシェイプしながらやりきる能力を磨き上げている。
あと2回で終わる企画、さらっと振り返りムード混ぜてるのがクレバーだなと思いました。

コレは物語に登場した段階から”てっぺん”だった彼ら…階段の途中を苦しみながら駆け抜けるアイナナに、助言とチャンスをくれる”上”の存在として、大事な資質です。
トップに居る相手が、自分のことだけしか見えない視野の狭い存在だと、描く業界全体が小さく見えちゃうしね。

百は自分が牽引するシーン全体が明るく楽しくなるよう、そこを走るアクターが潰れないよう、朗らかに手を差し伸べてくれます。
千はそこまで目立ったことはしないけど、クールにピンポイントな助言を、狭く鋭く突き刺している印象。
お互い形は違えど、メンターとしての仕事はしてる。

同時に彼らも人間であり、過去と苦しみを当然抱えて、それでも前に進もうとしている。
その時百最大の支えになっているのは、やっぱり千へのLOVEであり…となると気になるのは、”賞味期限”の演出なんですよね。
アレが喉に支えて、声出なくなってんじゃねぇの?

一切照れることなくLOVEを公言できる、それを自分の力、アイドルとしての好感に変えるシステムを世間に認めさせている百に対し、千はあんま百LOVEを堂々表に出してねーな、という印象があります。
そのクールさが百を夢中にさせてるのだろうし、タマにぶっこむから火力もあるんだろうけど。

どっちにしても、Re:valeは温度差があるコンビであり、しかし根っこの部分でしっかり繋がっているからこそ”てっぺん”まで走れた…そして座れた。
それが揺らぎつつあるのか、本編の今後が気になる番外編であったと思います。
どーなんのかね、ホントに。

百は凄まじく頭の良い人なんですが、その才気が人を遠ざけないよう笑いで包んで、親しみやすさを演出してる感じもありますね。
自分を売る上で、どういう形にまとめれば自分らしく、客が受け止められるのかを考えた上で、極力ナチュラルに燥いでる感じ。

天然に見えて演技している所が、大舞台を前に軋んでいるのだとしたら、そういう裏表全部含めて抱きしめれる相方しか、手を差し伸べれないと思うんだけど…さて、千が声を荒げて電話してたのはなんのためか。
奇縁によってこのタイミングになったのが、なかなか面白いRabbitubeでした。