かくしごと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
雪の東京に、寂しさだけが降り積もる。
漫画稼業の避け得ぬ定めと、勝手に思い込んだ最終回。やけっぱちで唸る筆、高速ですれ違う想い。
今日も今日とて、後藤先生の回りは大変ですッ!
それは終わりのない喜劇のように、永遠に続くはずの日常。
さぁそろそろ、その先へ行こう。
というわけで、いつもどおりと肩透かしとダイナシとハラハラが大暴れする、おそらく過去編最後のエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
仮に未来が描写されていないのなら、『まーた可久士がバカやってんな…』で安心できるのだが、破綻は既に書かれている。お約束に安心し切ることは出来ない。
思えば話の最初から、終りが見えているからこそ”それ”が何時来るかというスリラー、どのようにやってくるかというミステリが、ほんわか日常コメディを引き締める構図だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
真冬の最終回騒動は、そういう作品全体を俯瞰して、最後の飛躍に弾みをつけるエピソード…なのかもしれない。
僕はこの話かなりビクビクしながら見ていて、すれ違いも思い込みも重たい過去も洒落ですんでいるバリアが、いつパリンと割れて洒落にならなくなってしまうのか、とても怖かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
それは姫との暖かな日々、苦労もあるけど楽しい漫画家生活を体温込めて描く筆と直結している。
失われて欲しくないと思えるような、可笑しくも愛おしい日々。それがちゃんと心に刺さるからこそ、荒廃した未来も痛ましく思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
どーでもいい奴がヒドい目にあっても、マジどーでもいいからな。悲惨に共感させたいのなら、手を伸ばして身近に起きたくなるような手触りを、ちゃんと創るのが大事だ。
それにこのお話が成功していたと、強制的に再確認させられる冬の日、約束の成就でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
二度目だけではなく、三度目、四度目と永遠に。
誰もが夢見る幸福は、荒れ果てたアパート、擦り切れたアルバムという”箱”に閉じ込められ、もう息をしていない。
本当に、ギャップで刺すのが巧い作品だ。
というわけで、長尺で展開する冬の悲喜劇、開幕はこたつである。掛け布団に半分埋まっちゃう姫ちゃんのサイズ感が、マジ可愛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
姫が問答無用に可愛いの、作品としての強みだよなぁ…ギャップ活かす構成にしても、そこが刺さんないと駆動しない。
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背中合わせのズレっぱなし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
『コミュニケーション大事!』という話をしているのに、その当事者でコミュニケーションが成立していない。
それを気づかせてくれるツッコミ不在で、状況はゴロゴロ転がる。
まぁ優しい世界だし、どうにかなるだろう。そういう思い込みが、不意に蹴っ飛ばされる事実。
それを僕らは11話、幾度も見てきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
どんなすれ違いも笑いで包める過去とは、違うリアリズムで描かれた未来。思い込みや思い違い、偏見やコミュニケーション不足が不可逆な傷をもたらす、当たり前の世界。
漫画にとっての死…最終回すら洒落ですむ場所から、青い鎌倉への飛躍。
結果だけが積み重なり、その過程が描かれないフラストレーションはバキバキに溜まっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
同時に、全てが洒落で終わる世界を再確認して、『ずっとこういう日が続けばいいのに…』という思いもある。
破滅を持ち望みつつ、破綻を忌避する。相反する感情が燃料となって、作品への姿勢が前のめりになる
そこに至るまでは、まぁ散々のドタバタとダイナシが積み上がっていくわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
めぐろ川たんていじむしょは再起動し、漫画家は打ち切りを覚悟し、編集は漫画家の心知らずでハラハラパクパクする。あいっかわらずモンスターだな十丸院…。
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不安定な稼業に吹き込む、冷たい世間の風。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
可久士は自分自身も、漫画家を取り巻く世界もシニカルに客観視し、ディスコミュニケーションは少ない。
対して十丸院は、報告も連絡も相談も全く出来てないし、我欲ですれ違いを加速しているのに自己認識は『良い編集』である。
様々なすれ違いが加速し、再描写されていく今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
自分を理解っている(のに、生来の思い込みの強さで致命的に間違える)可久士と、自分を全く理解っていない(のに、怪物的な鈍感さで摩擦を感じない)十丸院の差異と、だからこそ奇妙にハマる腐れ縁も、じっくり書かれていく。
父子家庭であること、”フツー”の仕事でないこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
可久士は世間が自分をどう見るかを、常時気にかけている。自分と世界を客観視し、適切な対応を探る。
その結果が不思議な二重生活であり、財産の大半を海に消えた妻の捜索に注ぎ込む生き方である。
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不安定な画業を、水槽(これもまた”箱”である)を泳ぐ魚に例えた後、妻を飲み込んだ海、金を飲み込む探索を見せるモチーフの広がりが、かなり好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
海は人を飲み込み、それでも美しく潮騒めき続ける。
世間の荒波、妻への哀惜に飲み込まれないように踏ん張りながら、姫の寝顔を縁と耐える。
奇妙なすれ違いを笑いつつ、寒風吹きすさぶ夜に刻まれた可久士の人生は、冷たく苦い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
こういうシニカルな視線をフッと、バカバカしいお笑いに差し込むセンスが、やっぱ良いなと思う。
打ち切り、妻の消滅。様々に訪れる死。
笑えねぇ世の中だからこそ、可久士は少しでも笑えるよう色々やっておるのだ
でもまぁバカはバカだから、思い込みで突っ走ってやりたい放題し放題、かぞく会議も井戸底の亡霊でぶち壊しだ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
全てがギャグなんだけども、ロクを3人目の家族と信頼して姫を託し、亡霊に立ち向かわんとす可久士の侠気には、思わずジンとしてしまった…。
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十丸院が最高にいい性格したモンスターだからこそ、結構定期的にヒドい目合わせる。作品を食わせるバランス感覚が、ここでも元気であるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
有能アシの気配りで原稿は紛失せず、打ち切りも思い違いだと理解った。マジ十丸院『そういう人』扱い。
はー、めでたしめでたし、全部洒落ですんだよ!!
画業が繋がった喜びに沸き立つと思いきや、アシはワクワクの長期休暇が潰れてガッカリだし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
打ち切りブーストで跳ね上がった面白さも、シュルシュルと消えてパッとしない感じだし。
まぁそれも込みで、お父さんの凸凹人生は続く。きっと明日も上手くいく
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そういう安心を、最終盤の大暴露直前に煽ってくるのはエグいなぁ…と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
いくら破綻した未来を見せられても、やっぱり見ている側としては『ずっとこの日が続いてほしい』のだ。
斜陽産業と愚痴り、不安定さに揺らされていても、漫画家は続けられる。
仲良し親子は、ずっと幸せに暮らせる。
そういう視聴者の願望を、この作品は第1話出だしから蹴っ飛ばして始まった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
『お前等が見て楽しんでいるものは、永遠には続かない』
そういう宣言からスタートしているのに…しているからこそ、ドタバタと愉快で暖かく幸福な日々が、永遠であって欲しい
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ほんっとに…約束守れたお誕生会は、見てて辛かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
約束は成就する。”ずっと”はそこにある。
そう一回見せておいて奪うからこそ、残酷はよく突き刺さる。残酷で幸福の皮層を引っ剥がすからこそ、その奥で蠢く本当の暖かさも、よく伝わる。
考えるほどに、二層構造が巧妙かつ的確に機能してるお話だ
『姫は絶対守る』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
色んな波風に苛まれつつも、自分を立てていた可久士最後の矜持。
その決意と約束が、確かに果たされたはずなのにあっさりと壊れてしまったその先を、僕らは知っている。
再確認して物語の開始時へ戻り、時間が動き出す。
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『ロク生存確認ッ!!!!!』と、モニタの向こうで思わず吠えてしまったけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
二人きりのお誕生会でオルゴールと家…2人を守る大事な”箱”を見せておいて、それが7年の年月を経て風化し、まだ消えないやるせなさをギュッと煮出してくるのは、凄く上手かった。大地コンテの妙味かなぁ…。
もう写真の中にしか無い、幸福な時代の思い出。永遠に続くと思っていた、当たり前の日常がかけがえのない夢であると、思い知らされた後の世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
姫は海に喚ばれるように、そこへと踏み出していく。
何故、全てが箱の中で静止したのか。
その鍵を携えて。
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というわけで、後藤家最後の日常でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
いつもそうなんだが、今回は特に幸福の裏にある寂しさが色濃く煮出されて、笑いつつも心に空っ風が吹く、いい仕上がりだった。
肌寒さを思い出させるからこそ、愛おしい日々の温もりがボヤけず伝わる。そういう効果も、二層構造にはあるのだろう。
ここまで作品への熱を保ってくれた、暖かな日々と残酷な未来の対比。それが一方へと不可逆に、次回からは流れていきそうです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月11日
意図的に箱の中に隠された”ひめごと”が暴露される時、何が壊れ、何が残るのか。恐くもあり楽しみでもあります。
願わくばトボけた親子に、幸せな結末を。