波よ聞いてくれ を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
深夜の巷をかき回す、虚実入り交じるゾンビ再殺譚。
ホラー調で始まったかと思えば神前漫才に繋がり、フルアドリブの決意表明へ。
全てがハンパなミナレの人生が、それでも少しは善くなるように。本気で戯ける楽しい”遊び”は、まだまだ続く。
そんな感じの最終回オーラ、職業人鼓田ミナレ・半端ながらも一本立ちのエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
原作連載中ということもあって全てが決着するわけではないが、グダグダでダメダメながらもなんか前向きに、なんか変わっていける明るさを照らして、いい具合にまとまりのある回だった。
小市民感覚をエスプリで絡め、笑いとヤダ味で整えてお出ししてきたこのお話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
ミナレの失敗と後悔と再出発はあくまで人間サイズに収まり、だからこそただ笑い飛ばすのでは終わらない、確かな手触りがある。
作品のいいところを、最終話一個前にブン回す話数になったと思う。
ウソとホントが入り交じるラジオドラマは、ゾンビが奇っ怪な宗教勧誘を始めて、ガチの神様と出会うトンチキ展開に。劇エヴァの量産型綾波みてぇな色合いしやがって…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
丁々発止のやり取りに、瑞穂渾身の雷鳴音効。みんなで作るドラマは、複雑な味わいだ。
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ホラーなのかコメディなのか、演者のリアルが滲んでいるのか、神様とか出てきてるし嘘なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
どーにも判別つかない半端さは、しかし汗まみれの”本気”で成り立っている。
手で仕事して、リアルタイムで音作んないと間に合わないアナログ音響を持ってきたのは、そういう”汗”を強調したいから…か?
とまれ、ミナレと仲間たちが作っている音が完全な虚構ではなく、またただのリアル垂れ流しでもないことを画面は強調してくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
神さまとのやり取りは妙にエスプリが効いて、しかしその叡智はマジどーでも良いことに使われ、リスナーも思わずツッコむ。
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呉連木さんは盟友・麻藤の願いを引受けて、超自然的なセッティングを借りて、三者三様のリアルを告白させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
死んで再出発する麻藤(偽)の告白は、文学の世界に漕ぎ出していく呉連木自身の想いを、最後になるかもしれないラジオ原稿に乗せた”遺書”かな、とも思う。
20年放送業界の端っこでくすぶって、どうにも社会に馴染めない己をどうにも出来ず、しかしどうにか表舞台に出ていく最後のチャンスを掴みかけている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
今更ながらの”生まれ変わり”に、自分がどう思っているか。波の向こうのリスナーには、さっぱり分からないだろうオッサンのリアル。
それを麻藤さんに語らせる所に、静かに熱い腐れ縁を勝手に感じて、妙に感じ入るものがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
作家・呉連木克三が再構築した光雄(だから”ゾンビ”なわけだが)も、どうにもならない己の”業”を嘆き、しかし自分の意志で生き直そうとはしない。
全てが塗り替わる神さまの恩寵を、地の底で待つ。
フルアドリブ(しかし結末は、ラジオのある現世への帰還と定められている。それが呉連木の筋書きか、麻藤の肝いりか…おじさん二人の悪巧みか)の無茶振りを受けて、ミナレは台本なしの想いを、虚構に向かって吠え叫ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
波よ、聞いてくれ。
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後悔したことを、後悔したいわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
恥と過ちの多い人生を、それでも己のものと引受けて、一歩ずつ己の足で。
それは恋人殺しの果てに神との邂逅を果たしたキャラクターのセリフであり、同時に生身のミナレが彼女の人生を、彼女の心を吠えている声だ。
リスナー不在、放送局(≒麻藤)から一方的に叩きつけられる、メッセージでありエールであり挑戦状でもある、力のある言葉。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
それはリアルのミナレに縁のある人にも、ない人にも届いていく。ホント、色んな人に迷惑かけてきたね…。
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今ここにいる、一日本人としての私。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
台本も余裕もない土壇場でミナレが吠えた言葉は、芸人・シセル光明が電話越しに死んだ時、麻藤が聞いた遺言と同じだ。相変わらず重たいなこのオジサン…。
過去を知る由も無いミナレが、知らず伝説を再演する奇跡。
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それを手前勝手に摂取しながら、麻藤さんは本気の”遊び”を積み重ねていく。ミナレ個人の人生を導きつつ、自分の胸にぽっかり空いた空白を取り戻すように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
そのチグハグでハンパな関係が、どこにたどり着くか。アニメでは語り切る尺がないが、面白い間柄だ。
…真実知ったらミナレキレるな、確実に。
自分の”才”も、波に乗った声が届いていく先も知らないまま、ミナレは精一杯ラジオパーソナリティとして番組を演りきり、人生を吠える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
用意された嘘っぱちを演じきることで、ミナレのリアルはちょっと良い方向に転がっていく。そんな虚実の重なりが良い。
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ギクシャクしてしまった生身の関係性を、マキエが微笑みながら胸に納めていくシーンが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
マキエは多分、音の向こう側にミナレを見ている。
ブースで必死に演じている姿も、ドラマの中の虚構も、入り混じりながら伝わって、ちょっとだけ人を動かすのだ。
ミナレの声と魂には、そういう力がある。
それを最大限発揮できる天職として、”ラジオパーソナリティ”はある。しかしミナレは、まだ『これこそ』という居敷は薄い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
いやなんか高らかに宣言とかすんだけども、この子基本ノリと勢いだからなぁ…すぐブレんだよ!!
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瑞穂がまーた感情爆弾を腹に抱え込んだりしてっけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
みんなで作った番組の、ささやかな打ち上げ。
個人的な愛着とかじゃないけど、ド深夜のちっぽけな番組にプライド持って、汗まみれで”仕事”したご褒美を、ミナレは仲間から受け取る。
一人で生きてるわけじゃないし、一人で作れるものでもない。
アナログ音響を取り入れ、リアルをフィクションに書き換えつつ現実との接点を残したドラマ放送。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
手間と努力が相当突っ込まれている”仕事”の様子を、笑いに交えつつしっかり積み上げたことが、ここでのミナレの実感を支えている。
こういう『お仕事アニメ』な要素も、ハイクオリティに仕上っからね。
夜を抜けて、たどり着いた朝ぼらけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
意図せず奇跡を引き起こすミナレへの感情を、そっけなく隠しながら麻藤は、彼女の”才”を指摘する。
ハプニングへの反射神経。土壇場での舞台度胸。
多分、シセル光明が強く持っていた”芸”
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まだお客さん気取りで企画も考えねぇ、ラジオも聞かねぇミナレが、自覚していない資質。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
麻藤はまるで良き教師のように、実地でそれを発揮させてから指摘する。型にはめず、無垢を汚さず、その才能を伸ばしてどこまでいけるか。
”知らない”ということの強さを楽しみながら、麻藤はミナレを見送る。
ホント麻藤さんのクソデカ感情は、この話の面白いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
ミナレが理想のパーソナリティ(あるいは芸人)になるように状況を作り、的確なアドバイスをし、必要な試練を持ち込んで苦労しまくってるのに、見てるのは過去に置き去りにした憧れの女(ひと)なんだもんなぁ…オジサン面倒くさッ!
んで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
そんな複雑さにちーっとも気づかないミナレは、元カレ埋葬宣言を高らかに鳴り響かせ、ニューミナレへと生まれ変わろうとしていた。いやー…どうせまたブレるっしょ。
半生ラジオ越しの絶叫が、ちゃんとVOYAGERの仲間に届いてるの良いよな、やっぱ。
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自分をさらけ出したミナレの叫びは、仕事場なんだかプライベートなんだかよく解かんねぇVOYAGERの空気を入れ替え、私的な関係性を整える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
その再生が、麻藤に課せられた”仕事”の突破口を、また開いていく。虚実と同じように、仕事と私生活もハンパにくっついたまま、ゴロゴロ転がっていくのだ。
VOYAGERをクビになるか否かもまーたハンパで、カレー屋なのかラジオ屋なのか判然としない、収入も安定しない不確かな波を、ミナレはこれからも進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
しかしその航海は、思っているほど孤独ではないことを今回ミナレは知った。流されるなりに必死にやってみると、良いこともついて回る。
それをミナレ個人で押し止めず、同居してる天使に分け与えようという余裕がでてきたのは、とても良いことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
笑顔の奥に溜め込んだ爆弾が、どう破裂するか。さーすがに毎日同じ寝床で暮らしてっと、判るものもある。報いたくもなる。
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他人の善意を真摯に受け止められない光雄に傷付き、それと決別したからこそ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
その傷をバックリ切開してさらけ出し、虚構と混ぜ合わせて世界に放送したからこそ。
瑞穂を含む仲間と一緒に作り上げたものが、自分を一人にしてくれない仲間にちゃんと届いていたと知ったからこそ。
ミナレは瑞穂に、ちょっと優しくなれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
『人間としての当たり前』と、人は言うかもしれない。まぁ飯は作るわ部屋は借りるわ、ちったぁ返さないと”嘘”だしなぁ…。
しかし神前で告白されたように、どうにもならない”業”というのは、簡単には動かない。
だから、この小さな一歩は偉い。とても偉い。
まぁ元々『好きになった人には尽くしたがり』なわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
そこで踏み込みすぎず、瑞穂のプライドを守って見守る距離を維持できたのも、また小さくて立派な成長なのだろう。
まぁ瑞穂のほうが踏み込んでくる…と誤解すんだけどね!
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『準備はOKってこと…?』じゃないんだよ。ホントチョロい女だなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
ミナレが瑞穂のこと好きで、瑞穂もミナレのこと好きで、朗らかに楽しく敬意を込めて同居生活が続いているのも、俺このアニメで好きなポイントです。
時々発情する所含めて、風通しよくていい関係だと思う。
どこに転がっていくか分からない、無政府状態のカオス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
麻藤が求めミナレが突き進んでいく未来を、天使と一緒に月に吠えて、ミナレの日々は続く。
過去を振り切って(振り切ってない)、仕事の醍醐味を知って(企画は立ててない)、他人に優しくして(ズルくてチョロいの変わらない)。
ハンパ女が成し遂げた、ハンパで立派な一つの変化。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
それをしっかり描いて、最終話一個前は終わりである。
この話らしい、収まりの良い”達成”だな、とおもう。
ハンパ人間のグダグダ人生を楽しむアニメとは言え、幕が下りる前になんらか、何かが成し遂げられた感覚ってのは欲しい。
そこをしっかり担保して、同時にまだまだダメダメな現実にも嘘をつかず、ミナレのこれからを優しく祝福し、少しあざ笑う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
そういうエピソードをこのタイミングで持ってこれたのは、凄くパワフルで精密だと感じました。人生という舞台は、悲喜こもごも取り混ぜて進み続けるのだ。
同時に麻藤が目指しミナレが導かれる”芸”のあり方も、丁寧な仕事描写に支えられてよく見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
虚実入り交じるからこそ面白い、自分から笑いを作るあり方。それは何もかもハンパで、でも妙に明るく未来に開かれているミナレの現実とも繋がった、境目の不確かなスタイルだ。
主人公が流れ着いた場所が、思いの外その真実としっかり繋がっていること。この確認も、作品に一貫性をもたらし、『ああ、良い話だったな』と思わせる大事な足場だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月12日
こういう所しっかり整えて、まだまだ終わらない最終回へと繋げる。
この話らしい作り込みでも魅せてくれて、次回も楽しみです!