梅雨の蒸し暑い季節に、ガシガシ見逃したアニメ映画を見ていく企画も第二弾。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
今回は太宰治の原作をディストピア・ダークヒーロSFに大胆改変、異常なテンションで突っ走る『HUMAN LOST 人間失格(2019念)』を扱います。
公式サイトは ↓https://t.co/c9JkuH87i3
最初に感想を言いますと…大変面白かったです!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
『全人類、失格』
『何いってんだテメー!』としかリアクションしようのないバカデカ主語なんですが、最後まで見ると『ああ、そうだね…全人類失格だね…』と納得させられてしまう。
地獄よりも地獄な厚生ディストピアを舞台に、尊厳ある死が醜悪な生か
究極の問いの先にある未来へ、太宰テイスト満載のナヨナヨした主人公が文字通り燃え上がる血を宿す獄卒と化して、全力で突き進む怪作でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
原作はボロっカスにバラバラにされ、つなぎ合わせてフランケンシュタインの怪物になってるんだが、確かに太宰の”血”がある。あと芥川。正雄が引用しすぎ。
お話としては地球規模の衰退を避けるべく、超衛生管理社会が発達した世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
人が人として生きること…そして死ぬこともできなくなったディストピアに、破滅と再生の運命を背負った二人の超人間で、新たな救世主がもがき苦しむどんより青春絵巻です。ラブストーリーもあるよ!(なお地獄)
すんげぇ息苦しい未来なんですが、だからこそそれを突破せんと無茶苦茶やるカオス陣営、なんとか希望をつなごうとするロウ陣営両方に(ある程度)共感できて、どっちも選べねぇ葉蔵の身悶えも結構納得行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
つうか宮野真守の演技が迫真過ぎて、『ナヨナヨしやがって…』とか思う余裕がない。
主人公が物語に乗っかるまでちょっと時間があるのですが、そこを繋いでくれる序盤のヒロイン、竹一くんと彼の”ゾク”が非常に良くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
出だしのクソ逃げ場なし描写で溜まったフラストレーションを、梵鐘一発ブッちぎり、明日なき爆走へ突っ込んでいく奇妙な爽快感は、良いイグニッションでした。
ゾクの溜まり場な寺の廃墟とか、合格人間の極楽絵っぷりとか、仏教美術、仏具の様式をうまーくディストピアに取り込んで、独特のルックを生み出していたのは良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
最終的に炎の獄卒と化す葉蔵のデザインと合わせて、どっちに転んでも地獄な現世と、そこを燃やし尽くす爽快感が絵になってた。
己最後の尊厳として命を燃やすことも許されず、老人の養分として生かされ続ける宿命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
それに中指を突き立て、狂った道化として明日に突破しようとする竹一の奔馬のようなヴィジョンは、実は善子の蒼きヴィジョンと同じくらい、葉蔵の未来を指し示してたと思います。ロックンロール!
でもそこで世界規模のド派手な安楽死に突っ込んでいったら正雄と同じなわけで、薄っぺらな希望と怒りに燃える絶望の間を、どうにか見つける必要がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
竹一亡き後の物語を背負ったのが、あまりにも透明すぎる贄、美子でありました。
本気のざーさんヒロイン声も相まって、マジヒロインだった。
体制に都合の良すぎる天使であることで、苦しみから逃れていた矛盾。信じていた秩序の醜悪に喰われた時、湧き出た憎悪。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
ヒロインの黒いエゴが、その美しい理想と同じくらい価値があると認めることで、その存在価値を跳ね上げる。
ここら辺の書き方は非常に良かったです。
自分の弱さも、内側で暴れ狂う憎悪も巧く乗りこなせないまま、終盤まで流される葉蔵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
彼が信じるに足りるものを美子が持っている(そしてそれが、どうしようもなく踏み崩される)ことで、クライマックスを越えた後の決断がストンと腹に落ちて、血みどろ地獄絵図なのに妙な爽快感がありました。
ポリゴン・ピクチュアズの大迫力3Dは色んな所で生きてました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
ディストピアの空々しい埃っぽさとか、大怪獣映画と化す終盤のカタルシスとか、非常にいい塩梅。
細かいガジェットのデザインが良くて、地に足のついた地獄っぷりが楽しかったです。昭和111年という設定に、妙な納得がある。
『まーた本広の関わる作品で、櫻井孝宏が銀髪の美形テロリストやってるぴゅる…』って感じだった正雄も、葉蔵の宿敵でありながら師でもあるような、不思議な存在感のある良い敵役でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
基本芥川言語で喋るので、太宰言語で喋る葉蔵とスーパー文豪バトルしてる雰囲気がでて、面白かった。
SF時空にぶっ飛ばしたお話なんですけども、玉川上水に沈んだ太宰の”先”に一つのアンサーを出してる感じもあり、原作への濃いリスペクトを感じたりしました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
心中しそこねは笑うところ…なんだけども、オルペウスをモチーフにする以上、そら現世にも地獄にも一緒にはいけんわなぁ、と納得しちゃった。
力ちゃんが力演する厚木さんがなかなかいいポジションで、人間失格の連続な登場人物の中、いいバランスで感情の受け皿になってくれたなー、という感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
葉蔵は色んな意味で人間超越するので、同じく美子を愛した厚木さんがいてくれることで、地獄よりも地獄らしい現世で鬼やる支えに…なるかなぁ。
どっちに転んでも出口のない、完全なぶっ飛びファンタジーのはずなのに重たい生々しさのある世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
それを維持したまま、ヘンテコな可愛げが愛嬌となって一呼吸つかせて、しかしそれで救われるわけでもない。
すごく独特の視聴感なんですが、僕は嫌いじゃない…っていうか好きです。
マジ近代文学ネタでクスグリすぎで、『そのレセプターあるやつそんな多くねぇぞ!』って感じなんですが、でもホントそういう歪んだリスペクトは欲しいもんで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
”乱歩奇譚”にやってほしかったが叶えられなかった要素が、片っ端から暴れ狂う感じはあった。フィーリングとしては”UN-GO”に近い。
個人的には美子のおっぱいがまーじで有り難くないシチュエーションで開陳されるところとか、泣けば良いのか笑えば良いのか感情ズタズタにされて、『あ、俺この映画結構好きなんだな…』って気持ちになりました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
そういう地獄めいたユーモアが、随所でボコボコ殴ってくるのは良い。息が継げる。
正気の沙汰とは思えないネタに、世界観構築もヴィジュアルもキャラ造形も映像もみーんな本気で取っ組み合いをした結果、奇っ怪な魅力を放つ作品に仕上がっていると思います。俺は大好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
ダークヒーロー爆誕物語として、哀しさとカタルシスがある物語。オススメはしないけど、マジ最高です。
あ、葉蔵はオルペウスだから、愛と欲に狂ったマイナデスと一生闘い続け、引き裂かれる宿命にあるのか…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月26日
うぶちんらしく、超トンチキな設定に無茶苦茶なインテリジェンスを火薬のようにぶち込み、そこらじゅうでボッカンボッカン爆発させてる文芸テロルは好きよ、大好き。