梅雨のアニメ映画釣瓶撃ち企画、第5弾は『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-(2018年)』です。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
12年に一期、14年に二期がTV放送された、京都アニメーションの作品、その劇場完結版であります。
公式サイトは↓https://t.co/UAt4zs15mU
見た感想は…大変良かったです!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
TV放送から相当時間が開いて、二期からモロ続きの完結編。放送当時の感覚を思い出せるかなー、と思ってましたが、見ている内に当時好きだった部分、掘り下げて欲しかった部分、凄い勢いで脳みそから這い出してきました。
好きなもののことは、結構覚えているものですね
お話としてはあんま重たくない…外装を装いつつ、作品に決着をつけるのに十分なカジュアルな重さがある運びで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
中二病で自分を鎧うことで、父の喪失、成長の恐怖と闘ってきた六花ちゃんが、仕組まれた逃避行を通じて自分と出会い、自分を見てくれる勇太と同じ身の丈にたどり着くまでの話でした。
僕富樫勇太っていう青年が、本当に好きで尊敬してて。この感覚を映画見ながら思い出していったんですけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
一期最終回で、六花が”中二病”で守ろうとしたもの、失ってしまったものを判ってしまって以来、彼女の失われた父であり、最高の理解者であり、抱きしめ包んでくれる恋人でもあろうと頑張る子で
一人の人間の心がすごく不安定になって、それでも自分の形を調える”殻”としての中二病を、かつての自分への恥と敬意込みでちゃんと大事にして、六花ちゃんに全面的に許せるよう、いざとなったら世界の全部と闘うつもりで隣りにいる姿が、本当に偉いと思っています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
そんな勇太に小さなあんよを抱きとめて貰って、バカで世間知らずな子供として、幼い妄想に耽溺していた六花。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
彼女の幼さは一期も二期も問いただされることなく、判断保留で進んできました。
そんな彼女にとっての”社会”そのものであり、十花さんに追い立てられる形で、このロードムービーは始まります
それはシリアスな逃避行ではけしてなく、スタートもなんか勘違いとノリと勢いで始まるし、三宮の喫茶店で追いつかれたように、捕まえて終わらせようと思えば、いつでも終わってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
しかし旅を演じ、そこに身を投げることで生まれるものに期待をして、十花さんはこのおはなしを仕込む。
学校というアジール(”殻”)の外側で展開するこの映画は、勇太がその風に恋人を晒さないように守ってくれていた世界を、六花ちゃんが自分の足で歩いて、自分の足で見ていく物語です。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
それは自立の物語であると同時に、かけがえなく一生自分を支えてくれる、勇太を心底認める物語でもある。
勇太が死んじゃったパパの代わりに、子供のままの六花を肯定してくれるからこそ、彼女は幼いままだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
でもそのままじゃいけないという感覚もあるし、このままでいたくないという気持ちもある。
そういう震えの中に、娘のようでもあり恋人のようでもある大事な人がいて、結構頑張っていたと。
勇太が知ることで、二人の関係を変えていく勇気を手に入れていく旅路でも、この映画はあります。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
凄くチャーミングな幼い恋人たちが、ずーっとお互いを見つめ合って(なにしろそう約束したし)、手を繋いで、でもそこから一旦離れて、もう一度繋がることを選び取る。
恥ずかしさに中断してしまう、ままごととしてのキスではなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
まだどうなるかも判らないし、そうなることに恐怖もあるけども、性と愛を引き受けた大人だからこそ出来る口付けと抱擁に踏み込むまでを、丁寧に追いかける物語です。
だから、学校の外を旅することが必要になる。
このとき京都アニメーションの圧倒的な美術が、凄い演出的存在感を持っていて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
京都、大阪、東京、札幌と、時に過去の京アニ作品をコスりつつ流れていく美麗な景色。
それは写実的でありながら、旅に震える青年の気持ちを反映して、非常に幻想的でもあります。現実よりも更に、鮮明で美しい。
それは認識というフィルターを通して描かれる、心理としての情景を見事に切り取った美術で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
全てを絵空事として”描く”からこそ、このバランスで世界を描けることに、アニメーションの強さがある、面白さがあると、再確認させられる旅路でもありました。
色んな街の情景には、それぞれの空気と匂いがあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
楽しみながら駆けていく二人が”そこ”にいることで、世界が結構広いということ、それぞれにそれぞれの良さが輝いているということが、無言のうち立ち上がってくる。
情景がテーマを、非常に分厚く下支えしてくるわけです。
これは非常に京都アニメーションらしいクオリティであり、演出でもあると思い出しました。本当に美しくて、その美しさを的確に使うのがうまい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
(そしてそういうモノを作り出せる人たちが、凄く傷ついた事実をどうしても思い出して、作品鑑賞とは別の場所で、とてもつらい視聴だったりしました)
都市部を駆け抜けていったアーバンな歩みが、最後青森の自然の中で決着する運びが、凄く好きなんですよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
散々考えて、散々くっついて離れて、色んな人の助けの果てにナチュラルな答えを見つけられた、六花と勇太。
彼等のお話のピークが、草木と空が風になびく場所にある落差が巧かったです。
勇太が誓いを言葉と物質にして、六花に届けようとした指輪。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
それを東京では、六花は恥ずかしがって上手く付けれない。勇太が一期でたどり着いたポイントに、まだ追いついていない。
それがラスト、フェリーの船上での語らいではしっかり受け止めて、正しい儀礼になっている。
そういう形で、蛹が蝶になっていく瞬間を鮮烈に見せる運びとか、凄く良かったです。”蛹”という重要なフェティッシュを、序盤の山場で印象的に語らせてるのも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
二人がこの後どういう飛び方をするかは分からないけど、それは自由で、かつ強い飛翔になる。
そういう確信と安心が生まれる、豊かな恋路
ここに至るまでに、まぁ凸森とモリサマーが一生キャッキャしてたのは賑やかしとして、くみん先輩と七宮が満を持して、二期を越えたポイントに話を引っ張り上げたのも良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
七宮凄く立派な決意を二期で果たしてんだけども、それはあくまで独り相撲だったのよね…。
そこで彼女が果たした決断の貴さを認めた上で、六花が進む道にそれを押し付けてはいけないし、個人個人の決断をこそ寿ぐべきと、くみん先輩がちゃんとまとめたのが、僕はすごく好きなんです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
一期もそうだったけど、あの人勝負どころで年長者の仕事、キッチリやるわな。
”中二病”なる揶揄が、当事者の中では相当に大事で、人生を支える柱になりうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
だから、引っ剥がして現実の風に晒すでもなく、その夢に溺れきるでもなく。優しく蛹を守ろう。
そういう結論は、やっぱ一期で出ていたのだと思いますね。しかし、恋は強制的に人を大人にしていってしまう。
そこで恋を諦めて中二を取った七宮とは別の、何も諦めない道を六花は進んでいくわけだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
じゃあ二期でライバルとして話をかき回し、彼女なりに恋を殺し青春を守った七宮の生き様が、間違ってるかと言えば当然そうではない。
それは、ひとりひとりの決断として尊ばれるべきものです。
そこをしっかりまとめつつ、中二病というアイデンティティを失い、そうやって変わってしまった自分を勇太が愛してくれるか不安だった六花が、道を選び恋に進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
それは良いことで、変わっていくとしても価値があり、変わらないにしても意味があるのだと、作品全体を俯瞰する。
そのためには、小鳥遊六花という女の子が、結構生真面目に未来を考え、自分に悩み、世界に怯えていたことを書き直さなければいけません。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
微笑ましい困難が顔を出す、茶番なんだけど本気な逃避行の中で、六花ちゃんは庇護されるべき幼さと一緒に、彼女なりの真摯さというのを見せてきます。
それを確認するための旅路でもあるんだろうな、という感じですけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
赤ちゃんのガラガラであり、祈りの道具でもあるマニ車を回してたどり着いた、運命の結節点。
そこを超えたフェリーの甲板で、勇太は未来に震える六花ちゃんに、もう一度一生の約束をします。
それは一期ラストで彼が誓ったものと同じなんだけども、あのときとは違う対等な感覚、庇護されるべきものの特権が剥奪された恋が、爽やかに横たわっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
この後どんな未来が待っていて、六花がどう変わっても。
僕は君が好きで、中二病でも恋がしたい。
そんな二人の決断で、話は大団円へ向かう。
チャーミングな性欲含め、勇太だけが抱えていた年相応の成熟を、六花ちゃんが対等に共有できるようになったこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
冒頭で十花さんが言語化する、シェルターとしての中二病(その守護者としての勇太と、姫としての六花の共犯)の危うさを、綺麗に越えて変質しなかったこと。
むしろ旅に出て、(優しく捏造された)非日常の中でこそ、見えていなかった自分らしさ、相手の強さが見えたこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
そういう、TVシリーズが拾いきれなかった部分をほぼ完璧に回収しきって、キャラクターをシェルターから出して、不定形の未来へと押し出す。
そんな物語が凄く綺麗で、優しい目線に貫かれているのが、僕は凄く良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
そういう視線があったから、この作品が好きになったなと、見ながら思い出していました。
やっぱねぇ…あの年で惚れた女の人格と人生、全部背負う覚悟キメちまった勇太は、マジで偉いよ。
思ってるだけじゃなくて言葉にするし、態度で示すし、モノを贈って形にするし、誓いの儀式もやる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
凄く誠実な少年で、”小鳥遊六花”という少女に対して必死なんですよね。だから彼一人が守護者に為るのではなく、彼の誠実を六花ちゃんも支えられるような、無理のない関係になっても欲しかった。
二人の人格を”成長”の美名に歪めるのではなく、中二病でマスコットで初心でチャーミングなまま、身近にある変化に怯えるだけでなく、手を取り合って進んでいくよう、話を運ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
そういう事をちゃんとやってくれたから、『ああ、終わった』という感慨もあったのでしょう。
一生キャッキャいがみ合ってる凸サマー(でも、最後は年上っぽく〆るところ〆る森夏)も、旅路の勘所をしっかりキメて、自分達の物語も決着させるくみん先輩と七宮も、非常に良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
一色の扱いが雑なのはまぁ、二期からの方針だからしょうがねぇ。アニメ版だと物語的な居場所がないねん…。
十花さんが”結婚”という自分のプライベートに踏み出して、一期で衝突したじいちゃんも感涙するエピローグも、凄く良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
六花ちゃんが震える蛹から浮かしだしたことで、勇太だけでなく十花さんも、父の代理をやめることが出来たわけよね…それはナチュラルで、幸せなことよ。
『恋ってどんなことかな』ていう、凄いプレーンな問いかけに勇太の一挙手一投足が応えまくってるのも、最高にいいんですよね。常時、恋人を見守ってるの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
ほんと彼はジェントルで、最高の青年ですよ。お母さんにノーモーションの土下座かました時、”敬意”って言葉の意味がよく判ったもん。マジ偉い。
十花さんの問いかけに、幼形成熟の危うさをアホロートルで思い出したりとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
二人が別れて旅立つ青森駅で、列車の接続がされているとか。
イメージカットの使い方もアホほど上手くて、ここらへんも京アニ作品(つうか石原監督)らしい強さだな、と思ったりした。やっぱ情景の作り方は宇宙一や…。
初めて作品と出会ったときから、更に年を経て。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
六花ちゃんを愛でる僕の視線が、マスコットから児童に変わってるのも感じましたが。
だからこそ、自分の全てを受け入れ受け止めてくれる勇太を支えに、殻を破って羽化していく六花ちゃんの姿は、凄く綺麗だった。
そしてそこにたどり着いてしまった以上、”中二病”も”恋”も一つの答えを手に入れ、物語は終わるしかないわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年6月29日
そういうタイミングで、キャラクターとドラマをしっかり総括し、豊かな統一性を旅路に宿し、全体をチャーミングに、美麗に仕上げる。
とても良い映画でした。見てよかったと思います。