むせ返るような湿度に辟易しつつ、その苛立ちをアニメ映画にぶつけていく企画。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
第七弾は『HELLO WORLD(2019年)』です。野崎まど脚本の、多元仮想現実青春SFラブストーリーですね。
公式サイトは↓https://t.co/rVIFqRNw2w
見た感想は…大変面白かったです!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
10代をハヤカワ青背読破に費やしてきたクソもやしの『堀口デザインの、ちょっと不思議で最高に可愛い子のために世界と闘いてぇ…』という妄想を最高に叶えつつ、そういうナードのオシャブリに付き物のヤダ味を、色んな角度からぶっこ抜く、風通しの良いSFでした。
色々良いところがあるのですが、まずはルックが良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
堀口悠紀子デザインがブンブン唸る一行さんのヒロイン力、直実くんの一見へにゃっとしてヒロイックな顔…だけでなく、2027世界の『地続きで、しかし確実に未来である』と感じさせるフューチャーデザインが非常に良かったです。
京都という、土着的でノスタルジックでありながら、未来派の訴求力も持ってる土地の力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
これを活かしてSF的想像力のキャンバスにしていく筆致は、”京騒戯画”を思わされたりもしますが。
前半の青春ラブストーリー、後半の大怪獣世界改変カタルシス、両方が『京都だから』な面白さに満ちていました。
そういう面白さは現実の京都をトレースしただけでは発生せず、一番美味しいところを上手く抽出し、物語や演出に合わせてコラージュし、ときには実在しないものを付け加えることで生まれるわけですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
そこら辺の操作も引っくるめて、ユートピアとしての京都2027が、凄く良いんですよね。
『こんな京都あるわけねぇだろ』とツッコみたくなるけども、『でも、非実在京都だからこそ良いな…』と同時に思わされる、主役を取り巻く世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
これを冒頭スマートに、しっかり見せたことで僕の中で作品を見る足場ができました。
それが、キャラとドラマを飲み込んでいく土台にもなる。
この話100分とは思えないほど複雑な構造してて、仮想と現実は複雑に入り乱れ、時間軸も2027/37/47が多層に重なりながら展開していきます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
キャラも絞ってると言えば絞ってるんですが、多時間軸の同一キャラクターが別の姿、別の哲学を持って暴れ狂うので、飲み込むのが大変…
なはずなんだけども、結構引っかかりなく食えてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
これはたっぷり詰まってる作品の美味しさを、どういう順番、どういうサイズ、どういう味付け出くわすかを、凄く考えた結果だと思います。
視聴時間の進行に合わせて、食べれるサイズ、食べたくなる美味しさで切り分けて、お話が押し寄せてくる。
例えば冒頭、直実は同級生が駆け抜ける信号で立ち止まってしまう。結構優しめなクラスメイトが誘ってくれた、カラオケ親睦会も断ってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
これが『選べない男』としての主人公を印象づけて、『このお話は”選ぶ”話なのだ。渡れなかった黄色信号を突っ走る話なのだ』という予感を作る。
流石のグラフィニカというべき、鮮明な撮影が生きた光の演出で、勝負どころをピカッと輝かせるライティング。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
あるいは、キャラクターの心の壁を物理的障壁でしっかり見せて、それを乗り越え繋がる描写の活用。(先生と出会った時、川べりで一行さんと話す時などなど、境界線が鮮明なシーンは多い)
キャラをどう印象づけて、その心理にどうシンクロさせるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
これをよく考え、アニメとして届くように全ての武器を駆動させ、圧縮された展開をそうと感じさせない工夫が、随所に見られます。
そしてそれは、的確に機能している。キャラの魅力を食わせる筆がかなり元気です。
俺は強い感情に押し流されて知らず号泣メンが大好きなので、先生が一行さんと再開してスーッと涙を流すシーンで、即座にこの映画好きになっちゃったんですけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
最初に先生、次に一行さんと、主人公が見知らぬ人と出会って、判って、好きになっていく過程も適切な順番とサイズ感でお出しされる。
『世界VS恋』って話なんで、見てる人も直実と同じくらい一行さんを好きにならなきゃ話になんないし、その恋で同志となり導師となり敵ともなった先生にも、心を寄せないといけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
前半部分はここら辺の感情を、SFテイスト薄めなピカピカ青春ラブSFで、ちゃんと作ってくれる。
それが先生の裏切りから一気に反転して、仮想世界のデフラグメンテーション、新世界の創造までスケールアップする気持ちよさ…と、そうやってデカくなった話に、『一行さんとキスするんじゃい! クソ大人にも雷にも邪魔させないんじゃい!!』という、泥臭い体温がちゃんと宿って駆動してる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
デカい話やってんのに、妙な切迫感(先生のヘナチョコ主人公力含む)がちゃんとあるのがこの映画の良いところだと思うのですが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
それは主役が結構、汗水たらして頑張る描写が担保してる感じがあります。
直実はシコシコ、グッドデザインの使い方を練習する。異能も使いこなすには、人しれぬ努力がいる
そんな直実を鍛える風で、上部レイヤーから降りてきて便利に利用した先生も、彼の現実では惚れた女のために10年人生を捧げ、稲妻に打たれて歩行能力を失っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
神様に見える存在が、その実代償と努力を支払って譲れないもののために汗水たらしてると判る一連の描写が、スッと胸に入る。
『その必死さを見落とさず、直実大逆転の足場になってくれるカラスがヒロインじゃねーか! 声も釘宮だしッ!』っていう印象が、最後のドンデンで回収されるところも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
アレ『男=ヒーロー』つうマチズモのヤバさを解体すると同時に、先生の賭けが嘘じゃないとも描いてて好きですね。
一行さんとの図書委員活動とか、学生なり必死に走り回って実現させた古本市とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
後に仮想世界と明らかにされても、そこにいる存在にとっては唯一の現実で、世界も死ぬし自分も死ぬ。
そして仮想だからこそ救えるもの、溢れる超常ヒロイズムも、ちゃんとある。
現実を上部構造に置いて、仮想を下に見る古臭い見解からは相当距離を置いて、各レイヤーで生きてる人、必死になるしかねぇ想いってのに、重さと汗臭さを担保する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
そういう事をちゃんとやってくれたことが、複雑怪奇な多層構造を気持ちよく食える足場かなー、と思ったりしました。
2027/37/47と、それぞれのリアリティがあって、それぞれのヒロイズムと愛があって、それはそれぞれ別個なんだけども意味があって、連動してると思えるのは、ほんと良いところだと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
27レイヤーはバキバキピカピカの青春異能SFラブストーリーで、自己啓発と世界改変と初恋成就。
最初は先生に導かれる子供に見えた直也は、先生が持ってない現実改変能力を使いこなして、大災害に立ち向かい女を背負うヒーローになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
対して37レイヤーのヒーローである先生は、雷は防げねぇ、再生させた恋人は抱きしめてくれない、お別れには情けねぇ顔で号泣と、かなりのへロり加減。
しかしその大人の情けなさが『別の運命をたどった同一人物』という属性で直実と繋がることで、叶えられなかった未来に飛び出してくれるありがたさ、挫折まみれだからこそたどり着けた後押しに、グッと力を入れてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
『同じ女を愛した別々の僕』つう、変則バディものでもあるのだな。
直実は子供だから自転車には乗れないし、先生は大人だから奇跡は起こせない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
そんな二人が、先生の運転する車で運命の京都駅にたどり着き、直実の奇跡で『あの時の気持』にたどり着いて、47レイヤーでも(20年全てを捧げたヒーロー含め)救済されるオチは、やっぱ気持ちがいいです。
直実と先生、一行さんの三人で回る話なんだけども、世界救済のスイッチを押したのは千古先生だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
直実が退けなかったのは京都タワーに生きてる、37世界のモブを見ちゃったからでもあって、適切な範囲で世界が広いんですよね。伊達にタイトルに”WORLD”冠してない。
まぁ勝てるデザインと立ち回りしまくりの勘解由小路さんが後半フェードアウトするのは気に入らん! って思ってたら、彼女主役のIF小説が公式刊行されているそうなので、感想書き終わったら読みます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
あの子マジ”仕上がって”て、それが真っ直ぐに可愛い子より一行さんを選ぶ選択を際立たせもするネ。
一回作品を見終わった後、全体の構造を把握しながら、キャラクターが各場面で何考えて行動してるか、見直すのが楽しい作品だとも思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
喋る前の不気味なカラスが、直実が自分以外見るとビシバシツッコミ入れてるところとか、ほんと可愛い。月面からLOVEを込めて…なんだよなぁ…。
”ゼーガペイン”とか”君の名は。”とか、先行作からの影響を当然と受け止めた上で、『作るやつと作り方とメディアが違えば、違う映画になるだろーが!』と開き直って、やりたいことしっかりやったのは凄く良いと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
まぁ青少年をターゲットにする映画作品は、”君の名は。”の影から出れないよね…
今回の企画は2016年以降のアニメに基本絞っているのですが、それこそビッグバンのような”君の名は。”ショック以降の青春アニメ映画の変化を、実際に作品見ながら系統立てたいってのが、理由の一つです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
真摯に見ないで『あー、”君の名は。”っぽいやつでしょ?』と半笑いで言うの、マジダサいからな…
似てるとか同じっていうにしても、自分の目で見て判断した上で、自分なりにマッピングしたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
そういう意図でこの映画も見てたわけですが、いや、色んな意味で”君の名は。”っぽくないですよ。
確実にナード野郎の脳天直撃、図書館でヌトヌト燻ってたいが堀口デザインの美少女と恋もしたい輩特効。
『そういう湿気の多い連中でも、世界を救って新しい白紙の未来に飛び出してもええじゃろが!』という、パンクスの気概を感じる作品でもありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
くそったれ読書少年が怪物と戦う武器は、なんだかんだ”本”なんだよなぁ…読書アニメだとも思う。イタメシ屋でバイトとか一生しねぇ!!
あと前半一行さんと手を繋いで歩く京都のキラキラが、後半の狐面百鬼夜行、赤く光る折りたたみ式京都で上手く変奏されてるのも良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
古くて新しい舞台の魅力を、デジタルな亡霊が闊歩し、巨大な悪霊集合体を祓って国産みする二進法神話として書き直すところも、都市論・神話論として好き。
観光都市としてピカピカなだけでなく、長い歴史と暗い闇を持ってるのが京都の好きなポイントなので、メインストーリーと絡め大立ち回りの舞台として、それを生かしてくれたのは面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
逆向きの黄泉平坂下りだよなぁ、この話。『もしイザナギとイザナミがマジLOVEだったら』って二次創作。
というわけで、楽しいところが沢山あるアニメでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
相当にマニアックで敷居の高いネタを山盛り詰め込んでいるのですが、そのナード性をしっかり理解し、広く届いて大きくウケるよう、いい意味でミーハーに仕上げたのは立派だと思います。
本気で”売り”を掴みに行くのは、ポップカルチャーは大事よ。
同時にマニアックなところを妥協せず、極めてオタクな多元情報世界だからこそのラブストーリー英雄譚として、骨太くキャラとお話をまとめたのも良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
衒学と軽薄が、非常に幸福で精密なダンスを踊っとる作品だと思う。こういうバランスは、狙ってしか取れないけど狙ってもなかなか実現しない
自分はどこに出しても恥ずかしい萌え豚としても、堀口デザインの美少女が最高可愛くて最高でした。3Dモデルでよく、あの柔らかい描線生かしたよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
一行さんはデザインもいいけど、立ち居振る舞いと言動g良いんだよなぁ…ずーっと敬語で喋り続けてるカップルは萌え。みんな可愛い。
というわけで、大変楽しい映画でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月4日
SF、ジュブナイル、ラブストーリー、英雄譚、京都観光、異能伝奇。
色んな美味しさが沢山乗っかって、しかも食べやすく工夫してある贅沢な作品なので、どれか引っかかる人も、全部食べたいグルメ野郎も、是非にオススメです。