まだまだ開けない長梅雨の、重たい湿気を打ち払う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
アニメ映画感想企画第12段は『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(2017年)』です。
93年にTV放送された岩井俊二のドラマを、シャフトがアニメ化したものですね。
公式サイトは↓ …公開当時のサイトは死んでる?https://t.co/mxADNNQR5W
見終わった感想は…あまり良くなかったです!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
僕は原作ドラマを見ていないので、ズレた感想になっていくかもしれませんが、全体的に半端で煮え切らない映画だな、と感じました。
全体的な雰囲気は田舎の閉塞感と思春期の愚かさと無力でじっとり気味なんだが、画作りはアニメアニメしている。
渡辺明夫のいかにもアニメしたキャラクターデザインと、非専業声優を起用した主役二人の素朴な演技。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
スローモーションやバロックな構図、過剰なクローズアップに建築物の強調など、いわゆる”シャフト演出”が頻出する割に、泥臭いローカルな雰囲気のあるステージセッティング。
リアリティとファンタジーをどのラインで取り合わせて、どう混ぜ合わせたいのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
最後まで見ても、いまいち伝わってこない感覚がもどかしかったです。そのふんわりと不思議な感じを軸に据えたい…と受け取るには、味の濃い演出やデザインを前面に押し出し、常時置きすぎてる印象。
どこにもいけないが、どこかにいきたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
そういう生っぽい思春期を扱うにしては、冒頭はしゃぎまくる男子中学1年生の人造感が強すぎる。
頭の中で捏ねくり回した『こうあってほしい中1』を、初手で叩きつけられる感じ。このイメージ先行主義は、ヲタクの妄想練り上げたような白ワンピヒロインもそう
その妄想感を押し出しきったのであれば、多元世界を行き来するストーリーの夢っぽさと噛み合って独自の味も出たと思うのだけど、なずなが母に引っ張られて家に連れ戻される芝居の弱々しさとか、友情にも恋にも向き合えない典道の煮えきらなさとか、ドラマが乗っかる土台はひどく生臭い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
性に興味がありつつも踏み込めず、何かを決断し踏み切るには弱すぎ、妄想に逃げ通すには普通すぎる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
何もかも半端な僕たちが、一瞬だけ見た夢の奥に続く日常…というには、じわじわ染み込むような日常描写の味わいが弱く、それは作中描かれているように特別な”ハレ”でしかない。
少年たちだけの愚かな聖域が、唐突な恋と別れの乱入で緩やかに破綻してく物語…と読むには、やっぱり男子集団への没入度が足りなくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
彼らが小学生ならあの描写も結構飲めるが、アタマで制服着ちゃってるからなぁ…なんかこー、凄くちぐはぐに見える。意識してちぐはぐにしてるのかもしれないけど。
んじゃあ典道となずなが迷い込む、不思議なifの迷宮が異様な引力を放っているかというと、それも足りなくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
というか、”ケ”であるはずの日常に土っぽい魅力が足りない結果、そこから飛躍する”ハレ”たるifの迷宮、様々に形を変える花火の美しさが、どうにも上滑りするのかもしれない。
子供と大人、ハレとケ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
対比物に思えるものが実は相互に繋がっていて、お互い響き合って魅力を強めるのだと再発見するのは、物語を見るときの大きな気持ちよさだと思います。
しかしこのお話、リアリティもファンタジーも何か…”ありもの”で済ましてる感覚を僕は覚える。
それが原作付きだからなのか、(悲しいことに)シャフトにありがちな手癖なのか、はたまたやった結果届かなかったからなのかは、僕には判別突きかねますが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
どこにも行き場がない生っぽさを、実在感がどうしても薄くなるアニメというメディアで活かすには、どうにも煮込み方が足りないと感じてしまう
なずなも典道も、彼らの人生の物語を見守りたいと思える可愛げにちょっと欠けてて、最後まで見てもどんな人たちだったか、イマイチ腑に落ちない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
ここら辺は僕の読解力が足りない部分でもあるんでしょうが、リセット展開を多数重ねるよりも、地道な芝居を重ねるのに時間使って欲しかった感じもある。
人間が見えてこないのは”母”も同じで、強制力を持ち嫌なことばかりする”壁”以外の仕事が、全然伝わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
なずなの一人称視点では、背丈が伸びて見えてきた”性”のイヤーな側面を突きつけてきて、自分のやりたいことを軒並み邪魔する”壁”以外の何物でもないんでしょうから、それはそれで良いんですが
その一人称視点の外側に回り込んで、彼女なりに再婚する理由とか心理とか、ちょっとでも見えたら横幅でて好みだったな、とか思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
典道となずなの一人称×2に狭めることで、思春期の視野の狭さ、それ故の圧力を描いた…というには、描写に隙間があって内圧が逃げていくんだよな…。
この話は『甘酸っぱい青春の1ページ』だとは思うのですが、それを破綻させるのがアルコールに溺れきり危険物扱う割にマジ適当な、毛筋すら共感できない花火職人なのも、どーかと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
もうちょっとこー、硝子迷宮を壊すだけの物語的必然性のある人に打ち上げさせたほうが良くね…?
僕は非専業声優の起用、そんなに嫌いじゃないと前置きした上で、菅田将暉は難しいキャスティングだったと感じました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
思春期の刃境で揺れる少年をやるには、声質も声優としてのスキルも、上手く噛み合っていない印象を受けた。スゲーとっつぁん坊やに聞える。
性も恋も世の理不尽も何も知らない典道が喋るたびに、当時24歳の菅田将暉が透けてしまうのは、元々作品に潜んでいたチグハグ感を加速させられ、とても厳しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
脇役なら良いスパイスになるかもしれないけど、主役として常時真ん中に写り続けるので、凄く良くない色が転写されてしまっている感じ。
なずなもひどくボヤッとしたヒロインで、大人びていい子なのか、幼さから抜けきれない少年たちを翻弄する小悪魔なのか、脆さを残したただの子供なのか、印象が定まらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
その全部だ、と書きたいのだろうけども、各描写は半端に尖って混ざり合わず、飲み込みきれない。
そういうイガイガした印象が、全領域で微妙に残って、しかし何を書きたいかはぼんやりと判ってしまうという、なんとも難しい映画でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
話に起伏と決断が薄くて、カタルシスが弱いのは自分的にはそこまでマイナスではない。流されていく無力な雰囲気を、通奏低音にしたい話なんだとは思う。
しかしその曖昧な弱さを味とし、生っぽい煮えきらなさを強みにするには、やっぱ悪い意味で”アニメ”にすぎる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
結局ロジカルな説明のないまま物語を回転させた、不思議なガラス玉で不思議なことが起こる必然性を、描かれる主役二人の感情は支えきれてもいない。
”アニメだから”で飲み込むにしても、”実写原作だから”で食べ切るにしても、なかなか厳しい映画だと、僕は感じました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月27日
もうちょっとこー、各領域にハッキリした輪郭を付けて活用してくれる物語のほうが、僕は好みです。