ケムリクサ 第二話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
立ち止まって手に入れる安楽な死か、危機の果てにある新たな生か。
りんは迷いつつ、わかばを連れて島を迷う。
ケムリクサの多様な色彩、身近な死、生きることと好きなこと。
無明の果てに、りんは旅立ちを決意する。踏み出した一歩に待ち構えるは、残酷なる美麗か。
そんな感じの、ケムリクサ視聴体験第二回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
相変わらず分からんことだらけだが、色々裏設定がみっしりある気配と、そこにこだわりすぎず、あの世界を生きる者たちの歩みを実感込めて描く”覚悟”みたいのが伝わってきた。
枝葉をたくさん準備した上で、幹を活かすためにバッサリ切る。
そういう作劇姿勢が滲んでいるのは、見る側としてはありがたい。自分はあんまり、細かい考察とかに楽しみ見いだせんからなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
迷い、出会い、決断する。ただただ生き、ただただ守る日々の中に、”恋(どく)”が混じって色を変える。
やっぱそういう話なのだと思う。りん姉は可愛いねぇ…。
生きたり死んだり生き返ったり忙しかった第一話に比べ、第二話は比較的スローペースに進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
その足取りが、作品世界をどっしり魅せてくれてありがたくもある。
今更ながら、最初の島は端島なのな…モデルなのか、崩壊した北九州が舞台なのかは判別付かんけども。
戦いが終わり、姉妹はお互いの生存を喜ぶ。素朴な愛情の仕草がとても良いが、身を捨てて命を守ったわかばは異物として警戒され、生き死にの際に吊り下げられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
それがりんの防衛本能なのだと、作品は幾度も強調してくる。
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記憶もなく、ボーッとしているわかばが遠ざけているもの。アカムシ相手に喰うか喰われるかのサバイバルが、りんの存在意義である。…少なくとも、今は。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
味方を背中に隠し、敵を遠ざける。そういう機構として、厳しく己を定めるりんの生き方を、は立派だ。甘い優しさが、とても高くつく世界なのだろう
わかばが姉妹の旅路に混ざることで、遠ざけていた(が身近にあり続けた)人間味は、りんを侵食していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
死はいつでも身近にあり、しかし現実と諦めることも出来ない。守れなかった命をいつでも悔やみ、だからこそ次は間違えないと、歯を食いしばる生き様。
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それを貫こうとするりんを、りつは”姉”として優しく見守りつつ、闘い傷つく妹の職能に敬意を払っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
後に色弱(あるいは弱視)の描写があるけども、りつは座することしか出来ないからこそ、知恵や特殊な能力を発揮することを、己の責務と任じている人…かな?
共同体のポジションとしては”老人”
狩り、守り、闘う。”若人”たるりんは職能以上の事を考えないよう、昨日としての自分を研ぎ澄ませている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
しかし自覚のないまま、異性であり自分達”ヒト”とは違うわかばは、りんの心にするりと滑り込んで、彼女に知らなかった感覚を与える。
イヤ…それ毒じゃないって…。
厳しいサバイバルに身を置いてきた姉妹にとって、他者を自分に取り込んで自分を変えていく営みは初めてであろうし、これまで犠牲を出しつつもなんとかサバイブしてきた方法論を、大きく変える切っ掛けでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
わかばを警戒し、縄をつけ内側に入れない。その振る舞いは、物理と同時に心理でもある。
他人を身内に入れる最もスタンダードな儀礼である”婚姻”が、りんが犯された”毒”の果てにあるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
ロマンスの行方は気になるところだが、その歩みは常に、生きるか死ぬかの決断とともにある。
サラッと流されていたが、初期段階だと姉妹、この島で美しく死んでいく気満々だったっぽいな…。
わかばと出会ったことで運命は動き、死ぬはずだったりなは守られ、水が手に入った。立ち止まり諦める道から、危機と可能性に向けて進んでいく道へとジャンクションは変わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
しかし、わかばは自分が引き起こした変化を自覚しない。
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というか自分が何処から来た何者であるかも含め、何も知らない。知らないからこそ知りたいと思う、好奇心の塊である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
彼の興味が道標となり、ケムリクサの色彩、赤い血を流すアカムシ、ミドリの力の多層など、作品世界の色んなことが見えてくる。
りんは多分、わかば的な好奇心と想像力をあえて殺し、姉妹を守る戦士として機能してきた。他人や世界に思い煩えば、殺す仕事の切れ味は鈍るのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
しかし二人は出会ってしまって、わかばの持つ特性はりんに伝播し、変化を生み出しつつある。…あるいは、元々持っていたものが再生しつつある。
アカムシに対しては”殺す力”としてしか機能しないミドリビームが、わかばに対しては再生のエネルギーとして機能するのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
それは気づいていないだけで、元々りんに備わっていた権能であった。彼女はわかばを殺すように力を使うが、わかばという他者はその形質を変えて発現させる。
姉妹に対する対応、時折鎧の隙間から漏れる想いからして、りんが死ではなく、死の先にある豊かな生を求める人だということはよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
しかし厳しい現実は、彼女を戦士に、姉妹を諦めた果ての死に追い込んでいく。彼女自身も、それが自分なのだと認め生きて来た。
それが変わりつつある象徴として、枯れた白から生きた緑へと、ケムリクサの色も変わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
新奇に出会うことは変わるということだが、それは急に空から降ってきたわけではない。新しく思えるものは、存外元々あったものなのだろう。
そういう書き方で可能性を彫り込んでいくのは、結構好きだ。
灯火となりうる黄色のケムリクサを集めながら、りんとわかばは『好き』について語る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
りんに好きはない。そんなことを考えては生きてはいけない。しかし、姉妹に好きはあって、生きることにも役に立つ。
そして、わかばには好きしかない。
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わかば自身が言うように、この厳しすぎる世界で生き抜くには、わかばは好奇心が強すぎ、警戒心がなさすぎ、夢を追いすぎる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
命をつなぐ水はいつでも否応なく減り、敵はこちらを狙っていて、死んで欲しくないと思っていようが、大事な姉妹は死んでいく。
りんが適応し、”好き”を感じないよう己を作り変えたシビアさから、わかばは離れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
そういうロマンティックな非現実性を”男”が背負い、戦士の仕事を”女”がやってる逆転は、僕には面白く見える。崩壊世界でまで、古いジェンダーロール継承している必要性ないもんな。
りんはわかばを鎖でつないで遠ざけ、彼が溢れさせる”好き”から距離を取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
しかし言葉をかわし、一緒の場所で生きるための作業をこなす中で、”毒”は確かに到達する。
黄色のケムリクサを採取した後、彼らは柱に遮られた距離感ではなく、同じフレームに入りながら退場していく。
りんの心を揺らす、名前のない毒。それが何かを動かしうるものだということに、りつは気がついている。耳もピクピク動く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
世知に長けた年長者として、当人が気づいてすらいない感情をラベリングする。そのことが、りんのより善き生の標となるのか。
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それは未だ見えないけれども、りんが『自分にはない”好き”を知ってる』と評した姉妹は、わかばを異物と遠ざけず、サークルの内側に入れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
りなちゃんはイマイチ何考えてるかわっかんねぇけども、りつ姉は確実に身内扱いだよな…。
妹助けてくれた恩人だし、”老人”としてはそう評するか。
しかし戦士として、共同体を蝕む毒を弾かなければいけないりんは、なかなか油断を許されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
そんな責務を砕く衝撃が、わかばの『新しいことを覚えるのは、最高に楽しい』という言葉にはある。
何も知らないということは、弱いと同時に強い。りんは頑なであると同時に、発見に対し開かれてもいる。
”好き”を持っているものの暖かなサークルから、頑なな戦士を遠ざける鳥居の結界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
あえて距離を置いている部分もあったろうりんは、島での静かな死ではなく、可能性に向けて進んでいく道を選び、宣言する。
りつから託された”考える仕事”を、しっかり果たす。
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その決断(を生み出した、わかばとの出会いと交流)が、りんにも”好き”を与える(あるいは思いださせる)大事なものだということは、結界を越えて歩み寄ってくるりつ姉を見ても判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
自分達を守るために鋼の戦士になった妹が、柔らかな感受性を獲得(あるいは再生)させることを、姉は心から寿ぐ。
そういう喜ばしい変化の触媒としても、りん姉はわかばを高く評価してるのかなー、とも思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
りんが変化のない…ある種鉱物的な戦闘の機械として、守ろうとした静的な”身内”。
しかしそれは、かなりどん詰まりの状況で島に流れ着いている。水はなく、どう死ぬかが前提にある。
しかしわかばと出会ったことが、物理的にも心理的にも変化を生み出し、りんは危険な旅路に踏み出し、より善い生へと踏み出していく決断をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
そこには、静的な防衛装置から動的な生存存在へと、己の在り方を書き換えていく変化があろう。りんのVita Novaは、恋から始まるのだ…ダンテ的だな。
滅びきった世界に、それでも生を求め歩む旅路。元々”神曲”っぽかったお話が、ようやくレールに付いた、とも言えるけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
数多の危険が待ち受け、愛しいものと別れるしかない旅路。それでも、そこに”好き”があるのならば…ミドリちゃんのキモい足も動き出すぞ!
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一行が命を預けるミドリちゃんが、動物と植物、文明と野蛮、生物と機械の中間存在なのはとても面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
人間の形をしてても、姉妹もわかばも”人間”ではないっぽいからなぁ…色んな概念のキマイラ(あるいはサイボーグ)を描く中で、共通する”人間性”をあぶり出していく話だと、今の僕は認識している。
危険と好奇が同居する、ミドリちゃんの屋根の上で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
りんは感謝の言葉をわかばに告げる。
いまだ奴隷の鎖は解かれていないが、言葉の通じない敵でも、思いを預けるべきではない他人だとも、りんはわかばを受け止めていない。
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ヒトだと、あるいは家族だと…少なくともそうなれる可能性のある存在だと認識したから、りんは死ぬ前に思いを言葉にしておいたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
あるいは、敵と認識した存在をそうやって再認識し、自分の中に入れられるりん自身を、ここでのコミュニケーションは再定位したかもしれない。
そうやって少しずつ、自分を削って他人を受け入れて、新しい自分が栄えていく。緑色の若葉のように、凛と孤独に立つ戦士の生き様も変わって行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
待ち受ける風景は、危うく暗い。厳しい戦いと、悲しい別れが待つかもしれない道が、より善い可能性に満ちていることを祈りたい。
そんな感じの、ケムリクサ第二話であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
死から生へと、わかばと出会ったことで生まれる相転移。姉妹を未知の領域へと押し出した変化が、何もかも判らぬ世界をどう縁取っていくか。
未知を既知に変えていく苦労と喜びを、この話がどう描いていくか。
そこら辺が大事なのかな、と思わされる、相変わらず全然分からん…しかし色々判るお話でした。しみじみ面白えーな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
俺は椎名誠SF直撃人間なので、荒廃世界でも一歩ずつ命の営みを重ねて、人と人の魂が繋がっちまう描写がじわじわ重なるお話は大好きなのだ。
僕もけもフレ一期は見てて、第一話は正直『けもフレじゃん』って感じはあったんだけども、こりゃ逆なのだな…。版権仕事を、ケムリクサ的文法を武器に切開し、再構築して語った結果がけもフレ一期…なのだろう。https://t.co/2pNLeOlfGn
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
そんなことを思いつつ、周回遅れの視聴は続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月28日
りんの頑なさがわかばの毒で解されていく様子は、とても微笑ましく応援したくなる。同時にりんが己を鋼と任じ、譲らなかったことで守られるものの意味合いも、厳しい戦いの中で見えるだろう。
その相互作用が、動き出した旅路でどう輝くか。楽しみだ。
追記 ”♪思い出は未来の中に 探しに行くよ約束”なんだよなぁ……人生の難問は、たいがい”カレンダーガール”の中にある。
ケムリクサ追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月29日
水から記憶もなく新生した結果、振り返るべきオリジンがないので前に進むしかないわかばの在り方を、りんはとても意外そうに見つめる。
それは彼女が、進むほどに誰かが死んでいった、守れなかった過去に生きているから…なのか。
『過去を悔やまず前向きに』と綺麗に言うのは良いけども、それがりんの傷になっているのは、死んでしまった姉妹がとても”好き”だったからだろうし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月29日
もう二度と間違えない。そう決心して、木石のように心を閉ざし、先を見ないように外を視ないように生きてきた彼女は、わかばと出会い次の島を目指す
そこにはやはり、殺しさなければ生きてこれなかったものの(意識されない)再生があり、否応なく未来へと進んでいくしかない生物のカルマがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月29日
”恋(どく)”を注ぎ込んでりんを救済(再始動)させてしまったわかばくんには、無自覚な救い手としての責務が自動的に発生してしまう…わけだが。
ここら辺は、一切迷いなく死地に飛び込み人を救える男なので、また無自覚にりんちゃんの新たな希望を体現し、背負、ずいずい進んでいくことと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月29日
新たなる異種と前に進むことが、己を過去の守護者(になることで、姉妹を守る鋼の戦士に己を固めた)たるりんちゃんにとって、より善い道になるか。
個人的には、ここが気になっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月29日
イヤだってさぁ…ぜってぇ守りたい人がそれでも倒れていって、それに耐えられなくて心を鋼に固めた人でしょりんちゃん…。
凄く感受性が豊かな人が、そうならなければ生きられない、守れないのは、とても悲しいことですよ…。
そんな人に寄り添って、見知らぬモノに好奇の視線を向けて進む中で、わかばは白紙のオリジンを思い出していくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年7月29日
あるいは、姉妹と進む生き方が、白紙の生き方に何かを書いていくのか。やはり、ここらへんの相互作用が自分の中での眼目となっている。応答可能性としてのResponsibility。