デカダンスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
突破不能と設定された、残酷な筋書き。そこに飲み込まれる運命に抗うべく、カブラギは己の魂を焼く。
晴れぬはずの霧が晴れ、星の扉が空いた先に待つ、新たな世界と新たな戦い。
そこでタンカーとギアが噛み合うのか。雷神の裁きを受けた男に、見届ける術はもうなかった…。
そんな感じの、第5話にして主役死亡ッ…!? なデカダンス第5話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
展開がはえー!! って感じだけども、加速に加速を重ねた先に何を書くのか、全然読めないライブ感は正直面白い。
既視感で詰めた世界の、さらなるその先へ。オーディンの槍に貫かれたカブラギさんは、そのための贄か。
今回のサブタイトルは”differential gear”…二つの動きを調整・連動するための差動装置である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
既知の娯楽として現実を遊んでいたサイボーグたちと、理不尽ながら逃れ得ぬ自分だけの物語として生きてきた人間。
スターゲイト撃破によって見えた筋書きのない世界は、その二つを繋ぐのか。
はたまた、世界認識と獲得権力の差を補正できないまま、厳しさを増す世界の中で分解していくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
俯瞰で見ても分かりかねる難しい問題に、師に救われ死に引き離されたナツメは一人、置いていかれることとなる。
まぁカブラギさんの”死”が、再生(あるいは再利用)可能かもしれないってのが難しいけど
物語は”最終決戦”に約束された悲劇と、それを突破していくシナリオ破りのアガる展開を、クライマックスにはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
ハードなアクション描写、確かに死んでいくギアとタンカーをちゃんと刻みつつも、”そこ”が世界を回すエンジンではないと言うかのように、ヒキはいつでも戦いの繋ぎ目にある。
娯楽として提供される喪失、それによってあぶり出される人間の証明。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
それをどこか他人事で消費し憂さを晴らすサイボーグたちのスタンスは、画面の向こうで”デカダンス”見てる僕らと同じなのだなぁ、という意識が、今回より強くなった。
ここら辺こすってるのが、見ててザワつく理由の一つか。
(システム(サイボーグ(人類)))という権力とメタ認知の多層構造を、更に上から見てる僕らはしかし、あくまで視聴者であり作者ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
24分流れる映像を見るだけの立場であって、物語の展開、様々なレイヤーで展開する闘いに関与は出来ない、特権的で客観的で排他された神様。
二次元の”絵”を動かすことで幻視される『アツい人生』が結局仮想でしかない身も蓋もなさを否応なくコスりつつ、この話が何を書くのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
荒野のヴァイタリティに満ちた自己実現に見えた話は、は正統性と剥き出しの生に接近しつつ、アニメーションの必然的構造にまで迫ってきてる感じもある。
んだが、視点はあくまでナツメのど根性サクセスと、それに火を付けられたカブラギの人生燃焼(と、必然的な灰化)にしっかり据え付けられていて、いい意味で泥臭いまま続いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
この思弁性と身体性の遊離がまた気持ち悪く、可能性も感じさせる。ここにも差動装置がかかるんかな?
さて物語は、エベレスト決戦に挑む戦士たちから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
ギアにとっては視界に浮かぶデータでしかない屍を、タンカーは当然認識できず、『もう倒しちゃったのかな~』つうノンキもかます。滑稽で、残酷な描写だ。
浮ついた空気は、文字通り重力を得た死体と一緒に、地べたに落ちる
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タンカーにとって、闘いはゲームじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
可能な限り終わって欲しいもの、ガドルが排除された退屈でつまらねぇ日常のための必要経費である。平和の贖いはいつでも血で、それは肌の色には関係ない。
死人は死人、重さのあるものだ。
その死人が、ログアウトした先で『やっべミスった』と。
自分の”死”もひっくるめ、出口がないはずの現実をゲームとして楽しんでいる真実に、タンカーだけが気づけないまま生きている。…というか、生かされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
それは自分に繋がった糸を認識できない、哀れな人形演じる喜劇であるけども、彼らが流す血も、また赤い。
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『姐さんツンデレと死亡フラグの回収はえーよ!!』って感じだけども、キツい態度はやっぱり、コレ以上の死を背負いたくない弱さと優しさの表れで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
その陰鬱なリアリティがタンカー限定のものか、シナリオがぶっ壊れたあとでギアにも生まれるものなのか。ここは次回以降の注目ポイントだと思う。
姐さんの死で覚醒したナツメの一撃は、ガドルαを撃破するには至らない。想いがあろうと、神の定めたリミットは超えられない。…少なくとも、今は。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
ガドルαはタンクという弱点を狙い、パイプを引き抜き、霧で幻惑してくる賢い敵だ。動物から知恵ある動物へ、敵対者がランクアップした感じもある。
今後αクラスの敵が増えるなら、タンカーの”ゲーム”もスコアを稼ぐ七面鳥撃ちから、お互いの攻め手を読み合う終わりなき頭脳戦へと変質していくのだろうけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
新たな局面の端緒たる今回、対価を支払って限界を超えていくのはカブラギである。
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司令からの友情に背を向けて、地上で出会っちまったバグに命をかける。ナツメが認識する赤い血の重さを、同じように受け止めて真っ直ぐ目を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
先週ナツメの自室ではすれ違っていた視線は、今回は噛み合う。そのことで生まれるトルクが、限界を超えて行きもする。
しかし、それは良いことなのか。
現状狩られる怪物でしかないガドルが、道具と策略を利する知恵を見せたこと含め、アガる展開を素直に食わせない意地の悪さが、今回も鈍色に光る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
困難を突破できそうな内圧をちゃんと高めつつも、自分で新たな壁を用意し、さらなる圧力を要求する。マゾヒスティックともストイックとも言える姿勢。
それは、結構好きなのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
霧をサーモで見通す、特別な視界。ゲームの情報がオーバーレイするギアの視界と、αのそれはやはり似通っている。
ならば対抗できるのも本気のゲーマーだけ…ってんで、カブラギは禁断の力に再度、手をのばす。
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このリアリティのない(あるいは、過剰なリアリティに押しつぶされそうな)世界で、限界まであがく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
かつてはマイキー、今はナツメ。若人が吠える、世界とのシンクロ率を求める鼓動を自分のものとすることで、カブラギは限界を超えていく。
それは、親友を置き去りにする一歩だ。
霧を晴らしたら、ゲームの既存構造を壊したら、もうどうなるかわからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
それは上部構造からの物言いでしかなく、今目の目に死んで欲しくない命があるカブラギには、遠い言葉だ。
この時、カブラギはタンカーたちの領域に自分をなげうった、とも言えるだろう。
それは筋書きのない理不尽な死によって、自分という物語が終わってしまうリアリティを獲得することであり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
一寸先も読めない闇の中で、手探り自分と世界の接点を探していくことでもある。
思えばナツメは、父を殺され腕を奪われたとき…バグった死人になったときから、そこにいたのだ。
システムによる消去を当然覚悟して、シナリオの先に進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
カブラギを待つのが不可逆のスクラップ化なのか、歯車としての再利用なのか読みきれないので、その重さを測りかねてもいるが、少なくとも『組長と弟子』として、平和な日々はもう送れないだろう。
それでも、自分の命をトークンにして、未来を掴み取る賭けに乗せることを、カブラギが選んだ。ゲームとして人生からログアウトするわけにはいけないタンカーの切羽詰まった生き方に、接近することにしたのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
そのことでしか、大事なことが守れないのなら。
この思いは、戦士を切望したナツメと重なる
霧の晴れた先には、予定外の怪物が待つ。未完成にして兇猛な星の扉を前に、デカダンス起動ッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
アガるシチュエーションの裏では、まさかのシナリオ破りに汗をかくデカダンス運営がいる。親友の未来を案じる、司令の姿もある。
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上部構造で他人の人生、他人の世界を蕩尽しているだけに見えたギアにも、彼らなりに血が通って”生きて”いるのだと、鎧の隙間を見せるような描写の数々。そこから切り離された、フギンの冷徹。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
カブラギがナツメにシンクロしたように、司令もカブラギに心を寄せている。死んで欲しくないと願っている。
カブラギも親友の尽力には感謝していて、しかし彼と同じ世界を生きることに背中は向けた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
規格化された世界に馴染めぬバグに、灰色の管理社会で生きる実感を求める愚か者に、己の全てを燃やす。
そういう決断をしてしまった以上、二人の道はもう交わらない。
結果としてカブラギを死地に引きずり込んだ(あるいは、死者だらけの世界で魂を蘇生させた結果殺した)ナツメと、司令の関係はこの後相当こじれそうで、不謹慎ながらなかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
いや…カブラギの末路知っちゃった司令は、シラフでナツメ見れないだろコレ…。
そんなスッキリしない結末を予感しつつも、友の一撃を借り受けた必殺のデカダンスパンチはアガる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
巨大無重力空間だと、地球にいるはずの戦士たちが軌道で戦ってるような非日常感が漂って、なかなか面白いなぁ…。ロボアニメっぽい絵面になるよね。
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予測できない筋書きの中で、司令はデカダンス運営にではなく、ゲーム内部の自分を演じきることにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
いかにもロボットアニメ的なエネルギー獲得シーケンスをくぐり抜け、相手の必殺ビームを交わして一発ねじ込む。
そういう体温上がる”僕らのお約束”に、司令が寄り添ってくる…ように見える。
しかし彼が下部構造から真実を隠して権力を略奪し、他人の人生窃盗するゲームの運営者(の一人)であるのは変わりがなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
同様に、一つの歯車として巨大なシステムに取り込まれ、自由なく回っている存在なのも事実である。
奴隷主に見えるものも、なにかの奴隷。
そういうループ構造が、タンカーもギアも生の実感を求め、誰かを大事に思う描写の連なりと、ひっそり重なっているのは意地が悪くて良い描写だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
体温のある”生の実感”ってやつを一つの答えとして書きつつも、それを冷やすシステムの存在意義、抑圧の対価を見落とさない冷静さ。
それは面白いなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
沢山の死人を生む”シナリオ”を『タンカー風情の命』と飲み込みつつも、そのタンカーの生存を担保しているのも司令のデカダンス運用手腕だからなぁ…。
この構造は、破壊された地球で唯一生きれるのが、システムの庇護下しかない状況にも重なる。
可能性と危険に満ちた、剥き出しの生に飛び込むか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
全てがレッテルを貼り付けられた、安全で息苦しい世界に沈んでいくか。
星の扉を開けてたどり着いた、未踏の大地。そこにもガドルはいて、当然ゲームは終わらない。
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親友が開けてしまった扉の先へ、デカダンスを導いて進むしかない司令と、待ち受ける終わりを受け入れたカブラギ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
戦闘の間は重なっていた二人の視線は、もう交わることはない。
カブラギが告げていた、ヴァルハラの実相。戸惑うナツメの思いを、受け止めてもくれない。
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”最後の戦い”を終えても、シナリオを変えても、戦いは終わらなかった。人間が人間らしくいられる場所は、星の扉の先にはなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
そのことを、サイボーグ・ゲーマーとして特権的に知っていたカブラギの言葉と、知らず目の前の生を泳いでいるナツメの視界は、どうしても噛み合わない。
しかしあまりに残酷な世界な真実を目の当たりにしたことで、カブラギがあの時私室で告げたものを、自分が見通せていなかった可能性に、ナツメは思い至った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
戦いは終わらない。何も変わらない。
それは燃え尽きたおじさんの、よくある諦めの言葉ではなく、もっとマテリアルな世界のあり方に根ざした…
そこまでナツメの思いが深まるかどうかは、今後の展開次第だろうけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
今は、決断の対価を贖う時である。
『世界にバグは不要です』という、神様が用意したモットー。
それが自分の大事なものと、バグった自分を否定すると知ったから。
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カブラギはシナリオをぶっ壊してナツメを救い、地面に倒れ伏す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
ムニンがぶっ放すのが”雷”なのが、雷神でもあるオーディンの眷属っぽくて面白い。
神の怒りに触れたものは、神鳴る力に焼かれ、その愚かさを思い知ることになるのだ。サイバーパンク神話だな…。
光を失ったカブラギが、歩むことのない(だろう)未踏の大地。ぶっ壊されたシナリオの先に、ハッピーエンドはまだ見えない。つーかまだ5話だよッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
既視感まみれのネタかと思ったら、規格外のスピード感でぶっちぎっていく荒野の自己実現物語。師匠を失って、さーどう転がっていくか。見えねー!
というわけで、システムの思惑突破したのにスッキリしない、僕好みの展開でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
秩序は必ず抑圧を伴うが、んじゃあ無軌道な”自然”を暴れさせれば充実と幸福がやってくるのか。
後方の暮らしに満足している(せざるを得ない)タンカー、憂さを現実に撒き散らすことに慣れたギア。
バグってない”普通の人”の書き方と絡めつつ、既存秩序をぶっ壊していくパンクス共がどう生きるのか、更に気になる展開となってきました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
個人の感情と実感で押し通す、いかにもフィクショナルな体温上昇を肯定しつつも、裏腹な危うさと混迷から目をそらさない。怜悧な筆が、気持ち悪くていい。
世界を覆う霧が解けた後、それでも待ち受ける新たなゲームの中で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
取り残された者たちが何に悩み、何を掴むのか。新章も楽しみになってまいりました。司令の行き場なき感情が荒れ狂うさまは、マジで期待大(悪趣味)。
さっぱり読めないライブ感を楽しみつつ、次回を待つッ!!
しかし高度に産業化された社会での自己実現、阻害の快復の話だと考えると、結構マルクスな話だな…階級差、職業差別の問題もバリバリ書かれてるし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年8月6日
『システムぶっ壊した側が、より抑圧的なシステムになる』つう大きな物語を見せられた冷戦以降のこの時代、どう決着させるかも気になってんのよね。