ノー・ガンズ・ライフを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
十三とセブン…悪夢の生き残り達の激戦は続く。
倒れ伏した”処理屋”の力となるべく、ハルモニエを起動した鉄朗が見たのは、戦争の残り火。
罪の記憶が語るのは、GSU部隊最後の戦場。
殺戮の道具でしかなかった男から飛び出した、意志が全てを焼き尽くした過去だった。
そんな感じの超加熱クライマックス! ノー・ガンズ・ライフ第22話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
今までハードボイルドな鉄面皮で自分を見せなかった十三の、過去に分け入るサイコダイブ。
なぜ、男は煙草をくゆらせていたのか。
なぜ、その背中は力強くもどこか哀しかったのか。
十三の佇まい、その理由が切開されるエピソードで、なかなかコクのある仕上がりだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
かつては誰かを身勝手に利用するための道具だったハルモニエを使い、十三に手を引かれるだけだった鉄朗が、彼の心に踏み込む資格を得たという変化も、なかなか感慨深い。
2クールの末尾を飾るにふさわしい超激戦の決着の前に、話を〆るために絶対必要な休符を静かに、熱く置くようなエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
やっぱタフガイが隠し続けていた壮絶な過去が見える瞬間は、無茶苦茶興奮するなぁ…弱さとのギャップというよりは、強さの源泉が見える嬉しさ。
さてお話は、前回バリバリにかっこよく引いた同門対決…は水入りにし、十三にフォーカスして進む。やらんのかいッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
まーヴィクターとの決着も保留なので、美味いネタは取っとくタイプの話作りなのだろう。死穴穿ち合いバトル書いてたら、時間足りないだろうし…
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鉄朗がウォシャウスキーという自分の醜い影を乗り越えたのに対し、十三は『コイツは俺だ』と思えるセブンに、一人では勝ちきれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
相手にはハンズがいて、十三は鉄朗の意地を通すために、孤独に戦っている。
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そういう物理的戦力比だけでなく、十三の中にある後悔と迷いが、死力を尽くさなければ勝てない強敵を前に足かせになってる感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
紫煙とともに、去っていった男。
その仕草が焼き付いているから、”処理屋”になったあとの十三は煙草を吸い続け、その中に弱音を隠し続けてきた。
殺戮の兵器として、自分の意志をペッパーに預けたセブン。そのペッパーも、ベリューレンという巨大なシステムに膝を屈し、形のない意地を貫く生き方を捨てている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
それがこの、荒廃した世界の当たり前。
戦中も戦後も変わることなく、拡張体技術は人間を機械に変えていく。…体を機会にしなくとも。
後に判るように、十三もかつて機械だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
誰かに自分のトリガーを預け、殺戮の責任を背負わないことがどんな悲惨を生み出すか、知っていればこそ”処理屋”として意地を張ることにした。
そんな生き方に、べリューレンの道具でしかなかった鉄朗も守られ、憧れた。
相棒との間に摩擦を生んででも、ペッパーが十三の手を取ろうと、そのトリガーを専有しようとする気持ちは、鉄朗の羨望に繋がる部分がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
個人の意志を押し潰す超高度資本主義社会で、それでも一個人、自分のトリガーを譲らない男。
皆、そう有りたいと願い、果たせない。
遥か地上で闘争を見守るメガアームド斎様も、戦場の狂気に飲まれ、偽りの英雄へと堕ちた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
このお話は、十三になりたいと願いつつ十三になりきれない者たちで溢れている。ペッパーの渇望も、その一つなのだろう。
少年の手は取って、少女の手は取れない。めぐり合わせとは言え、少し悲しい。
三瓶ボイスも幼気なセブンが、十三の反骨とは違えども同じくらい熱い想いを自分に寄せていることに、ペッパーが気づけば。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
求める相手を引きちぎり、壁に繋ぐことしか出来ない掌も、上手く誰かと繋がれそうなもんだが…こっちも切ないやな。
荒廃した世界で生き延びるための武器として、ペッパーはセブンに従順を求めた。セブンは自分の意志で、それに従った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
それは『使われている』のではなく『使わせている』わけで、愛と信頼と強さ…ペッパーが十三に幻視しているものが確かにあるんだけど、近すぎて見えない。
ペッパーの幸福は、代用品たる十三をバラバラにして掴むのではなく、彼女の”銃”であるセブンの手を取ってこそ確保できると思うのだが…さて、どう収めるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
闘争の兵器として生み出された彼らは、暴力を加熱させることでしか答えにたどり着けない。その宿命が離別を生むか、ギリギリで間に合うか。
ペッパーの渇望が今回描かれたことで、なんとか上手く収まってほしい気持ちが強くなってるけど…アンとエンデ、コルトの物語を思い出すと、結構厳しいかなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
暗黒キャピタリズムに覆われた世界観を担保するためか、幸福の獲得条件が相当に厳しいからな…どっちかは死ぬかなー(衝撃に備える言動)
優しいクローネンおじさんの手助けで、相棒の土壇場に間に合った鉄朗は、ハルモニエを起動する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
少年が望まず埋め込まれた、世界を変える強大な力。他人の自由を奪い、尊厳を略奪する兵器。
その意味を知らなかった鉄朗は、長い旅の果てに己の意志でそれを使う。
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依頼人として、また加害者として。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
十三という完成された(ように見える)大人に甘えるしかなかった鉄朗は、己の無力、友の死、赤い血の意味をここまでの物語で学んで、もう一度己の喉に埋め込まれた銃、その引き金を引く。
それは行動としては最初と同じで、意味としては全く異なっている。
十三に”使うな”と叩き込まれ、それに従って人間の道を歩いてきた切り札。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
今度は誰かの生き様に寄生するためではなく、大事な人の生き様を支えるために、自分の意志で禁忌に踏み入る。
そういう決断は、固茹で卵の柔らかな内面に踏み込む資格を、鉄朗に与える。だから、過去も見える。
ーヒーロってのは怪物と同じで、内面や過去が描かれると、途端に弱くなるものだと思う。作動原理がわからない無敵の機械のほうが、タフで折れないわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
しかしヒーローは人間でもあるので、弱い自分を強く貫こうと思った起源が、必ずある。それを描かれなければ、英雄の勇姿は未完成だ。
同時に徹底的にツッパるからこそのかっこよさってのもあって、迷える主役である鉄朗に生きる道を、デカい背中で教えてきた十三は、そういうモノを担保してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
しかし、このアニメもそろそろ幕だ。
ヒーローが何処から来て、どんな傷を抱えているか。描いてもいいタイミングだろう。
というか、十三のハードでソリッドな過去と釣り合うだけの魂を鍛えるために、ここまでの鉄朗の物語はあったとも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
最初期のクソガキに土足のまま、ここから描かれる受難に踏み込まれても、まぁ納得はできないじゃん?
しかし、今の鉄朗なら良い。
むしろやってくれやってやれ! って感じ。
あの日以来、十三から失われたハンド。トリガーを引き、背中を守ってくれる相棒の喪失。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
機械として顔を覆われ、効率よく注射だけやってる過去の十三と、紫煙をくゆらす男の飄々。
”処理屋”が煙草を吸うのは、その幻影に再会するためだったかもしれない。
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名前を与え、共にいてくれた男が去っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
殺戮の重責を背負い、戦争を生き抜いた友が、同胞殺しだけは出来ないと背中を向ける。
機械なら、そこに寂しさは感じない。銃はユーザーを選ばない。
だが取り残された十三の姿は、彼が人間でしかないことを雄弁に語る。
生身時代の記憶がなくとも、人は繋がりを求める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
システムに言われるまま、殺戮の道具として使い倒されることが自分の生き方だと、煙草なんぞ吸わなくても良いとうそぶきつつも、十三は彼のハンズに、形のない何かを求めていた。
この心の動きが、今のペッパーと重なるのは好き。
しかしそんな柔らかい心は、行き着くところまで行かなければ脆さを見せない。これも、セブンとバチバチやるしかない現状に重なっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
孤独な兵器として、GSU追撃戦に進む十三。地下で彼が出会ったのは、もう一人の銃頭だった。
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機械なら求めない、余計な嗜好品。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
徳利からなみなみと注いだ酒を飲み干さぬ兵器に、トゥエルブは拳を構え…十三は希望を差し出す。
ああ、アイツも判ってくれた。そんな希望がトンネルの向こう、高い丘に輝く。
GSU反逆編、ハッピーエンドで完ッ!!
とはまぁ、行かないわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
ここも地下を舞台に自分の鏡と向き合う状況が、現在のセブンと照応しているシーンである。
トゥエルブの盃を受け取れず、騙し討ちに消してしまった過去を乗り越えるためにも、今の…タバコを吸う乾十三は自分の歪んだ鏡に、もう一度向き合う必要があるのだ。
同胞の情愛すら怜悧に利用し、死地に誘い込む兵器の狡猾。狙撃地点と選んだ鐘楼が、それでも生きたいと望んだ怪物たちに弔鐘を鳴らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
ここはセッティングも絵作りも完璧で、凄くいいシーンだった。意志なき銃弾を放った事で、十三の”口”が解放されてるのも良し
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それは言葉を紡ぎ、酒を飲んで紫煙をくゆらす、人間の器官だ。ハンズに責任を預け、兵器であり続けた十三には必要ないから、皮で締め付け覆い隠してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
しかし同胞を騙し討ちに砕き、その苦しさを共有してくれる戦友も去っていった”人間”乾十三には、苦しいことに”口”がある。
自分がどういう存在で、何をしたいのか考えてしまう頭がある。銃に改造されたとしても、それは消えないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
十三はシステムに言われるままの機械には、けしてなれない。慣れない自分を口枷に抑え込んで、魂の重荷をハンズに預けて、ここまでやってきた。
だが、それは限界だったのだ。
何も掴まない、己の腕。何も考えない、己の頭。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
意志(じゅうだん)を込めて引き金を引く仕事を、その重たさと辛さを、もう誰かに預けることは出来ない。
そんな実感が、怪物の背骨を解き放つ。暴走形態の麗しきグロテスク、最高に良い…。
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ハンズが残した『俺はずっと、お前の後ろにいるぜ?』という言葉が、このときの十三には呪いになってしまっているのも良い描写だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
彼としては別れても相棒を支える祝福として告げたんだけども、殺戮の機械に徹しようとして、自分の人間性にへし折れた十三にとっては、倫理の棘になって突き刺さる。
トリガーを握る手が、銃弾を何処に運ぶのか、人として何を為すべきかを決める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
ハンズは去った。もう、誰かに引き金を預けることは出来ない。これからは、自分で意志を引き絞るしかない。
…否、これまでもずっと、十三が狙い、撃ち、殺してきたのだ。彼は、意志ある銃なのだから。
積み重ねた、罪の重さ。それを背負う、相棒の不在。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
致命の弾丸は解き放たれ、全てを薙ぎ払うだろう。
その荒野から、”処理屋”は生まれた。
迷い、過ち、だからこそ正しい道を諦めないと決意し進んできたのは、鉄朗だけじゃなかった、ということだ。
GSU十三番機は、乾十三になろうとしたのだ。
ここで、ヒーローに憧れた少年と、自分をヒーローに鍛え上げてきた男の道は真実重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
物語のはじめに引かれた銃爪が、長い旅路の果てもう一度絞られる時、システムの歯車であることを拒絶した二人は、もう一度出会うのだ。
だから次回は、”引き金(再)”である。
マジカッコイイ…超楽しみです!
追記 過去のハンズと今のハンズ、男たちの三角関係としての熱量と肌理。
ハードボイルドッ面貫いてきた十三が、ハンズに超未練タラタラで、そのスタイルを細部まで真似して紫煙の残り香を止めようとしているのが、やっぱ最高にいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
失われた過去に強い思いを抱くからこそ、それを踏みしめて未来に飛び込み、新しい相棒の手を取る流れもグッと熱を増すからなぁ…。
”処理屋”を支える執着をセンシティブに描くことで、今まで追いかける立場だった鉄朗が背中に追いつき、十三一人では克服できなかった過去を共有して、手を引いて未来に押し出す流れもバチッとキマるしな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月12日
やっぱ十三と鉄朗の物語として、よくまとまった2クールだったと思う(気が早いまとめ)。