ノー・ガンズ・ライフを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
激戦が終わる。
思い出すのは穴蔵の底、私だけの銃をその手に掴んだ記憶。
そんなアイツは、もういない。
取り残されて、またたった一人。
それでも、生きていて欲しい。
そんな願いを引き受けたから、”処理屋”は新たな仲間と街に立つ。
闘いは未だ、終わらない。
そんな感じの、ノー・ガンズ・ライフ最終回であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
バチバチ極限バトルするのは前回で終わり、ペッパーとセブンの行き着いた場所、十三達が進んでいく未来を静かに、詩情豊かに語っていくエピソードとなった。
相変わらず渋くて、この作品らしいラストだったと思う。
ベリューレンとの闘いはまだまだ続くわけだが、十三が24話積み上げた物語、それで手に入れたモノには確かな手触りがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
厳しい戦いになろうとも、それが隣りにいてくれるのなら、絶対負けない。
そういう信頼感を2クールでしっかり作ってくれたので、気持ちのいい”続く”となった。
僕はセブンの純情と献身にかなり気持ちが入ってしまっているので、最後まで血まみれの聖人として愛を貫いた姿は、強く心に残った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
悲しい結末であるが、彼らしい終わりでもあった。十三とは逆に、ハンズが取り残される形になったなぁ…。
取り残される寂しさを噛み締め、ペッパーには生きて欲しい。
さてお話は回想からの倒叙で始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
ペッパーの狂った魂を作り上げた、べリューレンの穴蔵。所有せざる人々の心に虚無を吹き込む、子供たちの処理場。
そこで、彼女は初めて”自分のもの”を手に入れた。自分が自分なのだと、確認できるような鏡。
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”セブン”は七本足の、何かが欠けた蜘蛛だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
穴蔵の底で唯一、自分だけのものだと思えるような相手は、勝手に絶望を這い上がって誰かに寄り添っていた。
お前は…私だけの銃は、そんな事しないよね?
『唾つけた』と、食い殺してしまった”セブン”を踏みつけながらペッパーは呪いを吐き出す。
そのグロテスクな在り方が暴かれると、彼女の狂った渇きにも得心が行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
蜘蛛の”セブン”の死体を、口に含む異常。それは口内(あるいは体内)という自分の領域に、裏切り者をそれでも愛して保有していたい、捻じくれた欲望の発露なのだろう。
GSUの”セブン”も、狂気の中でペッパーを噛む。
その傷に怯むことなく、ペッパーはセブンを独占的に所有し、自分が穴蔵から抜け出すための武器、自分が自分でいることを証明するための道具と選んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
でもそれは、自分がつけた傷を受け入れた少女に、全てを捧げること選んだ瞬間でもあった。
互いの決意はすれ違い、銃と使い手は分かり会えない。
それが判るのはいつでも、ハンズの証たるサイバーウェアが失われ、彼女の銃が消えてしまった後だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
間違え切らなければ、答えなんて分からない。でも間違えた後だって人生は続き、追試のチャンスは随所にある。
鉄朗が、あるいは十三が、物語の中で答えてきた生き様の問い。
それにペッパーも、向き合える時が来るのだろうか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
そんな先走った想いが、今見ると溢れる過去回想である。
激戦の決着もあやふやに、ペッパーは目を覚ます。
そこは法も正義も企業が定める、新たなるソドム。
義人達がそれでも諦めずに、背筋を伸ばす背徳の街。
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オリビエと十三が二人きり、事件の傷跡と崩れた巨像を見るシーンは煮えていて良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
英雄・メガアームド斎時貞の真実を、闇に葬るべリューレンのシステム。
貫くべき正義は捻じ曲げられ、数多の不幸がなかったコトにされる、この街のスタンダード。
それに我慢できない女が、ここにもいる。
ラストカットに顔は出さないけど、オリビエもまた喪失と信念を抱え”街”に立ち向かう、十三の仲間なのだとよく判る掛け合いが、じわりと染みる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
艶のある表面の奥に、凄まじく硬い刑事としての”核”があるのが、オリビエやっぱ好きだなぁ…ハードボイルドに、一人は欲しい逸材。
正義を引き寄せるために必要な証人は、残酷極まる殺戮者でもある。法
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
の裁きを期待できない街で、憎悪を形にするべく握った銃。
十三はそれをせき止め、ペッパーの墜落を防ぐ。
それは依頼。託された、最後の願い。
あの時から決まっていた、銃弾より強い意志。
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愛すればこそ盲目的に従い、愛すればこそ最後に命に反した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
セブンの凶暴なる純愛が、ズンと胸に迫る。
彼は覆いを脱ぎ捨てたむき出しとなり、自分の手でペッパーを十三に預ける。
道具はそんなことをしない。預けられるものを、ただ受け入れ、跳ね返すだけだ。
だから十三に命よりも大事な存在を預けた時に…否、ペッパーに出会った瞬間から、セブンは道具的存在から人間的存在へと変わっていたのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
それは十三が、虐殺の責務を自分に引き受け、鎖を引きちぎったのと同じ思いだ。
GSUの心に、枷はない。自分の想いを込めて、殺し、守るのだ。
それが判った時には、企業の長い手が押しつぶしに来るというのが、この街のルールである。マージでベリューレン許せねぇな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
セブンは最初から最後まで、愛に狂ったとてもハンサムな青年で、とても素敵だった。さよなら、七番目。
己の意志で主を選び、全てを捧げる。
忠義の魔剣なんだよなぁ…。
オリビエがガラスの向こうに、灼熱の意志を投げかける裏で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
ペッパーは取り残された悲しさを、死衣とキャンディからようやく受け取って、汚ぇ鼻水をようやく流す。
もう、セブンはいない。
願ったようには全部ぶっ壊してもくれず、死ぬことも許してくれず。
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それでも託されたものはあり、だからこそペッパーは泣く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
ペッパーだけの銃が無くなったからこそ、ペッパーは企業の所有物ではない、誰かに愛されていた自分を思い出せる。
取り返しがつかないほどに間違えてみなければ、真実なんて分からない。孤独な荒野から、全ては始まるのだ。
十三に彼のハンズが残した仕草、生き様、煙草と名前が、”処理屋”としての彼を活かしたように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
ペッパーもまた、セブンから受け取ったものを杖にして、残酷なこの街でいつか、立ち上がって欲しいと思う。
街は極めて容赦なく、弱いものから奪う。しかし、真実すべてを奪うこともまた、不可能なのだ。
そういう離別と餞別の繰り返しを、色んなエピソードでこのお話、書いてきたなぁ、と思う。コルトの話とか、ヴィクターの変貌とかね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
喪失に深く傷つきつつも、それに向き合うのなら立ち上がる力が、人にはある。
そういうテーマを軸にした話でもあったなぁ、と最終回に思う。
GSUとハンズの業が、一つの決着を迎えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
十三は過去を思い出しながら、未来を睨む。
誰かから託されたものと、己で育んできたもの。過去の残照に似ていて、しかし違うもの。
思い出を噛み締めながら進んで、”処理屋”がたどり着いた場所。
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ハンズが十三に刻んでいたのは、孤独なヒロイズムを預けられる、仲間への夢でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
それは叶った。
”処理屋”がカッコつけながら手を取った少年が、背中を追いかけ対等に向き合う男に育ったことで。
兄を喪った少女が、拡張技術を悪夢ではなく夢だと、胸を張って言えるようになったことで。
そんな仲間は、十三が”処理屋”…ハンズの影をおいながら、白紙の記憶を不安がりながら強がり、演じてきたヒーロだったから、彼に隣り合ってくれるのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
彼が真実向き合うべき相手が誰か、この終わりに気づくのは。
やっぱり、24話の物語があったればこそなのだろう。
背中にチャーミングな愛を背負って、茶化されながら”処理屋”の日常は続く。もう、孤独ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
”街”はくすんだ牢獄のようにも、希望に染まる夢のようにも見える。そのどちらを引き寄せるかは、その手のひらをどこへ伸ばし、だれと繋ぐかで決まるのだろう。
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というわけで、ベリューレンとの戦いは続くが、アニメは終わりである。いいアニメだった…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
思い返してみると、完成したヒロイズムを体現する十三が実は孤独で、それに寄り添うだけの”芯”を鉄朗やメアリが手に入れるまでの、成長と交流の物語であったのだな、と思う。
幾度か書いているけど、十三自身虚像だと感じていた”処理屋”であることが、鉄朗に命の張り方を教え、メアリを苦境から助けてきた。他の依頼人にも、少しはマシな結末を届けてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
そんな強がりが、十三の弱さを預けられる仲間を育て、彼自身を支えていく。
そういうヒーロー救済の物語として、二期24話、非常に良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
ハードボイルド・ヒーローに漂う虚しさを彫り込むべく、苦しみながら成長する少年をもう一人の主役として育て、ちゃんと爆心地にたどり着いて、描くべきものを描いた。
二期クライマックスは、特に良かったです。
銃頭の異形なる魅力を始め、ビジュアルが強かったのもとても良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
どこか共産主義中欧を思わせる”街”の空気が、クソ企業が法も正義も踏み潰すディストピアを身近に感じさせ、素晴らしかった。”匂い”のある世界観構築でした。
”街”の日常を”処理屋”が解決していくショートなエピソードの切れ味も、メインキャラクターの重たい宿命に切れ込む長尺のお話も、それぞれの味わいで楽しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
軽快に転がる小さな事件が、あの街の空気をうまく伝えてくれて、後の長編を飲み込む助けになるのは、良い構成だったな。
手や背中、目線へ的確にクローズアップし、身体性を大事に演出を繋いでいく全体のプランも、作品の背骨としてとても良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
掴む、見つめる、背負う。
そフィジカルな仕草が持つ思弁的な意味合いを、映像にしっかり刻むことで、画面が言ってることがよく伝わった。
サイボーグの話なので、”からだ”をどう書くかってのは凄く大事なことだと思うわけです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
身体のパーツを強くクローズアップする場面が多く、その意味も濃かった演出は、作品が選び取ったものとしっかり噛み合い、いい仕事をしていたと思います。
まー明言されるものでもないんで、勘違いかもだけど…。
最初は如何にもハードボイルドの定番配置にも思えた主役たちですが、メインエピソードをくぐり抜けるごと人間としての”彫り”が深くなり、どんどん魅力を増してくれました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
やっぱ”解体者”のエピソードで、メアリがどんっどん魅力的になってくのが最高。そういう話大事よ。
渋いハードボイルドを通奏低音にしつつ、ところどころハッチャケたケレンが元気なのも良かったです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
本気出したGSUの異形っぷりとか、毎回パナされるヒュンケ・ファウストの必殺技感とか、どことなく特撮ヒーロー
味がすんのよね。
その弾けた風味が、全体の陰鬱さと良い反応してた。
僕はガキに大人が正しく優しく接して、そのことでガキが育っていく話が好きです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
なので鉄朗の迷い道と十三への憧れ、背中を追ったことが相棒と対等になる道のりは、たっぷり満足させてくれるメインディッシュでした。ベーシックな筋立てが、しっかり骨太なの本当に良かった。
そしてガキが育つことが、手を引いた大人の欠落を埋める最後のピースになり、強がりが報われるラストも最高でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月25日
思い返してみると、一個一個の物語が最終話の感慨に繋がる、とても良いアニメだったと思います。
面白かったです。ありがとう、お疲れ様。