憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
パクス・ブリタニカ。
低層民の生き血をすする貴族が、この世の春を謳歌する時代。
肥え太った財が悪徳を守るなら、その内側から食い破る。
俺達は三頭の地獄犬(ケルベロス)。
法など届かぬと思い上がる悪魔の喉笛に、完全犯罪の牙を突き刺す!
そんな感じの美麗なるグランギニョール、堂々の開幕である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
第1話はキャラの説明を後回しに、まず彼らが何をやっているか、そうさせる時代の空気を、モリアーティ教授の”日常”を描くことで見せてきた。
美しいままに腐敗しきったロンドンの、すえた空気。
当然視される圧政。
そういうモノに、貴族階級から密かな天誅を下す…ヴィクトリア朝の必殺仕事人、という感じのお話…かな?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
美麗なる三兄弟のスマートな立ち居振る舞い、そこにチラつく情念の色。
ヴィクトリアン・ロンドンの雰囲気がよく伝わる美術と合わせて、作品のムードがよく判る第一話だった。
お話は転倒したホームズモノであり、探偵の宿敵として犯罪をばらまいたジェームズ・モリアーティを主役と進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
”モリアーティ”は3人いて、その瞳と髪は共通ではない。次回以降の起源編で、そこら辺の事情を語る感じかな?
なぜ、貴族が貴族を狩るのか。
なぜ、血を超えた団結が悪党にあるのか
結構謎をかけてくる作風で、流石に”シャーロック・ホームズ”の係累だと思わされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
謎への興味をしっかり持ってもらえるように、モリアーティ(達)にとっての日常…血みどろの差別と不正義を、犯罪教唆で噛み砕く生業を描いていくのが、このお話のスタートとなる。
特権階級が、下層階級を食い物にして咎められないロンドンの歪み。天使はただ見ているだけで、犠牲は虚しく血の池に沈む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
冒頭のスラッシャー・シーンは、赤く色彩の統一するビジュアルのセンスと相まって、いい具合に血腥い。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/W1qngOH4mB
当然正されなければいけないものが、誰にも裁かれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
神がやらぬのなら人が、善がなさぬのならば悪が果たすべき社会的ホメオスタシスを、モリアーティーの犯罪コンサルティングは成し遂げていく。
ダークヒーローモノの構図であるが、暴力よりも知略…”探偵”の武器を活用している所が面白い。
ウィリアムは推理を積み重ね、悪党の心を自在に操り、裁きを為す。宿敵たるホームズが得意とする所を、先んじて自分の武器にしてしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
こういう状況で、”シャーロック・ホームズ”をこの作品、どう描きどう使ってくるか。
許されざる裁きを覆い隠す煙幕か、表舞台で踊る道化か。
ホームズ・パスティーシェとして、”本家”をどう扱ってくるかがこの段階で楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
悪逆非道の犯罪を、それを上回る邪悪で食い殺す。
薄暗い喜びに火をつけてくれる活劇に、目立たぬよう上手く、ネタを盛り込んでる感じが楽しい。この段階で、結構ミステリIQが高い印象。
さてお話は、安楽椅子にローブで寛ぐ”探偵”の名推理から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
一話目からソドミー犯罪、貴族社会の腐敗を教えるには格好の題材を、彼は新聞記事一つで解体していく。
クレバー、スマート、邪悪で美麗。綺麗だなぁ、ウィリアムくん…。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/mgDr7a3dCS
門柱に飾られるモットーは”Je Crois en moi”…『己への信念』といったところか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
モリアーティーの子供たちは、揺るがぬ信念に基づいて、貴族を喰う貴族、悪を許さぬ悪として犯罪バラまいてる…ってことかなぁ?
チャージに”蜘蛛”入ってるのは、如何にもモリアーティーだわな。
地獄の番犬のように、”モリアーティー”には頭が三つある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
下の二人が家にこもる中、長兄はワーキング・クラスにも親しく接し、許されざる死に弔意を示す。
瞳とタイの色合いを合わせてるの、洒落者で良いね。ダンディだ。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/rOimKdQyeT
この時代の”常識”として、クラスの断絶は絶対だ。それを盾に行われた卑劣な犯罪の犠牲者すら、見えない壁を乗り越えようとはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
そんな”礼儀正しい”振る舞いに、エドワードの瞳は揺れる。早く生まれすぎた平等主義者なんかな…あるいは、貴族階級への同族嫌悪?
哀しみと静かな憎悪に包まれた仕立て屋は、薄暗い緑で色調を統一されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
場面ごとのカラーリング・コントロールが精妙で、上手くムードを掻き立ててくれているのは、良い演出だと思う。
ちょっと舞台劇っぽい方向性かなー…時代とマッチしてて、なかなかいい感じ。
長兄が事件のエモーショナルな方向を追うのに対し、次兄はあくまで冷静に、情報を集め推理を積み重ねる。役割分担が見える第一話でありがたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
現場の情報、貧民の証言を集めて狙いを定めたのは、ガーゴイルが守る貴族の牙城。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/rZZL0Lg8NN
ヴィクトリア朝の建築に残るゴシックな色彩を、血まみれの犯罪劇と上手く組み合わせて、雰囲気出しているのはグッド。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
地べたを這いずる下層民には、絶対に手が届かない天上の城。その腐り果てたハラワタを、貴族たるモリアーティーなら引っ張り出せる。
ウィリアムは自分の立場を最大限活用し、敵の懐に入り込む。言葉の刃を突きつけ、相手の動揺を誘い真相を確信する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
光を取り込み世界を見るための”窓”に、ウィリアムは半身を乗り出し、犯人は完全に隠れているのが巧いレイアウト。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/MAmUjdjUtF
言葉の刃が相手に突き刺さると、世界は一種異様な色合いに染まり、緊張感を増す。”探偵”が持ってる世界への支配力を、こういう形で表現するのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
張り巡らされた蜘蛛の巣に引っかかった悪党は、その身を焼く光の中へ、身を乗り出す。
公正なる叡智の光。しかしそれは、濃い闇から漏れている
ウィリアムはアルバートに比べて、感情を表に出さない。推理する機械のように、冷静に事実を暴き、敵を追い詰めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
しかし”モリアーティ”という犯罪機構は、彼を抜きには動かない。悪を以て悪を制する、その動機がどこにあるのか。やっぱ気になるなぁ…。
釣られたバカが伸ばした手を、逆手にひねって確証を得る。あくまで頭脳労働担当、自分の手は汚さないウィリアムのクレバーさ、末弟の忠節。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
霧の中を悪魔のように、赤い瞳の馬車が駆け抜けていく。その主の瞳もまた、赤い。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/NADLx7Zw16
モノトーンにパキッと単色を置く、犯罪法廷独特の色合い。ひどく残酷で、しかしそれ以外に正義などありえないような、作品の核心。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
ウィリアムの赤く燃える瞳も、そこで強調される。舞台がロンドンなだけに、バーゲストと重なるイメージ。
悪魔の犬は、悪党の腐った腸を食い散らかすのだ。
かくして執行された、地獄の裁き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
それをお膳立てした”探偵”は決定的な現場に背中を向け、手を汚さない。口元から登るのは弔いの煙か、悪党食いの残滓か。
ウィリアムの内面も起源も、未だ見えない。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/TWul6rH6Py
しかしだからこそ、謎は追いたくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
邪悪極まる事件、しっかり作り込まれたビジュアル、キャラクターの背負うものを鮮烈に焼き付ける演出。
視聴者を惹きつける第一話として、とても良い仕上がりだと思う。
キャラが”何を”やってるか、はこれ以上なくよく分かり、”何故”はサッパリなのよね。
そこを今後掘っていって、完全犯罪により腐敗を打ち崩すモリアーティの三頭犬がどこから来たか、魅せてくれる作り…かな?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
いや、非常に次回以降楽しみです。
とりあえず、犯罪卿の”日常”は平穏無事に。正義はなされ、世は事もなし。
©竹内良輔・三好 輝/集英社・憂国のモリアーティ製作委員会 pic.twitter.com/zR1FmesNDV
というわけで、ピカレスク・ロマン堂々の開幕でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
雰囲気が大事なお話だと思うので、まずつらつらと説明するのではなく、ウィリアムの人となり、彼らの生業をどっしり見せて、作品を分からせる第一話にしたのは大正解だと思う。
そういう語りを許すだけのクオリティが、話運びにも絵作りにもあった
三兄弟の個性と役割分担、バラバラだが悪を憎む信念で繋がってる感じもビリビリ伝わってきて、非常に面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
言葉にせずとも、話を支え駆動させる背骨がしっかり見えるのは、演出が的確で、キャラがしっかり立ってるから。
物語の基本的体力を感じさせる出だしで、大いに安心です。
ここから第二話、悪魔の兄弟がやってきた起源に戻るようですが、いやー、凄く見たい知りたい楽しみたいッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
オリジンを掘った後、この腐り果てたヴィクトリアン・ロンドンにどう勝負を挑むつもりか、未来の話も見てみたいもんなー…。
こういうワクワクが第一話から燃えてるの、凄く良いです。
悪党一味の颯爽とした活躍、ヴィクトリア時代の風俗、転倒した”探偵”の描き方。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月11日
まだまだ楽しめるポイントが沢山ありそうで、どんな見せ方で作品を届けてくれるか、期待が高まる第一話でした。つえーわ。
次回、犯罪卿最初の事件。非常に楽しみです。