体操ザムライ 第1話『引退ザムライ』を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
2002年、低迷する日本体操界。
成績不振の元エース、荒垣城太郎は引退を勧告される。
娘である玲になかなか言い出せないまま、たどり着いた思い出の地・鬼怒川。
そこで出会ったのは、青い目のニンジャだった…!?
体操ザムライ再起の物語が、今始まる!
というわけで、遅れ馳せながらMAPPAのオリジナル新作、第一話を見た。むちゃくちゃ面白いので感想を書きます! みんなも見たほうが良いよ!!(遅刻しておいて大声マン)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
軽妙なコミカル、重すぎないシリアス、語らずとも伝わる人情味、華麗な体操描写。
第一話から、勝てる要素を全盛りしてきたな…
話としてはまぁまぁ地味で、キャリアハイを終えたベテランが周囲の支え、新たな出会いで奮起し、より強く輝ける場所を目指す…という話だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
しかし細かい所のクスグリが冴え渡っていて、地味というより地道、どっしり人間が画面に踊っていながら軽妙洒脱という、非常にいい塩梅だった。
キャラの描写に濁りがなく、面白くも体重を感じる造形なのがとても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
特に城太郎が頑張る一番の理由、娘の玲ちゃんの健気さ、明るさ、芯の強さは圧倒的で、『ヒロイン強いアニメはつえーな』と思った。
ここが太いと、まー話は折れないだろう。”秒”で稼がれちまったな…好感度を…。
2002年に年代を設定してきたのは、ここより先にすると期待の大天才・内村航平を筆頭に復活を成し遂げた体操ジャパンの現実と、どん底から再起する城太郎の物語が噛み合わないから…だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
あの時代の空気感が好きで、描きたいから選んだ、ってのもあると思うけど。そういうのは伝わった。
あんまりクドくなく、しかし的確に時代感を刺してくる表現も非常に元気で、18年前へのノスタルジーが作品にのめり込む、良いスパイスになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
玲ちゃんがシネフィルなのが、凄く良いクスグリになってんだよね。
”YAMAKASI(01年)”に”マトリックス(99年)”…懐かしい。
あとレオナルドが担当するだろう、体操の新しい可能性”パルクール”が、文化としてあまり浸透していない時代だ、ってのもあるかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
20年の僕らにとっては、『結構普通に見るもの』だったけど、02年の彼らにとっては新鮮で、得体が知れない青い目のニンジャに見えるもの。
それが城太郎の凝り固まった体操と化学反応して、なんかを生み出すドラマに分厚さを出すためにも、時計の針を巻き戻したんかなー、とか思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
ポップで軽妙な話運びなんだが、流石にMAPPAのオリジナル、色々考えられていると思う。こういう端っこ整える生真面目さが、MAPPAの好きな所。
さてお話は、無様な失敗から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
冒頭の演技は城太郎の現状を伝えるために、落下で終わるけども。
モデリングと会場の雰囲気、ヒリつく緊張感は上手く演出されていて、今後の体操シーンにも期待が持てる仕上がりだ。
©「体操ザムライ」製作委員会 pic.twitter.com/VZZjWGM4Ea
城太郎は脳筋バカなので、コーチである天草さんが認識していた体の限界、肩の爆弾には気づいていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
何もかも練習で押し流して、根性で結果を出す。そうやって栄光をつかめた時代は、フォトフレームの中、遠い思い出である。
ここら辺の時代錯誤感、かすかなノスタルジーは、この作品の通奏低音か。
昭和のスポ根成れの果てな城太郎に対し、天草さんはキツい事言ってる…ようで、冷静だし礼節も情もある良いコーチだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
城太郎が判っていない城太郎を、しっかり見て判断している。脳筋に通じない間接的な引退勧告も、選手にショックを与えないための心配りだろう。
話の流れとして”悪役”をやんなきゃいけない人が、人間として当然持っている温もりと気配り。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
そういうモノを、彼にクローズアップする前段階から細やかに織り込んでくれるのは、作品としてありがたい。絶対いい人でしょ…。
クドクド説明に時間を使わないことで、話がスルスル流れるテンポ感も生まれる
脳筋イズムで突き進めなかった城太郎には、6年後のリーマンショックを経てまー、色々あった20年の”現状”がどうにも、覆い焼きされてるようにも見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
20年からノスタルジーで02年を逆行するように、平成14年から令和2年を照射するような、ちょっと視野の広い時代感覚を盛り込む作品…だと良いな。
低迷は指導者の責任、しっかり教えられなかったのはすまなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
ちゃんと頭を下げられる指導者、天草さんへの好感度が上がりつつ、しかし城太郎には”引退”の二文字がピンとこない。
体操バカとして突っ走ってきた男が、足を止めて第二の道を探す。そんな起用なこと、考えもしなかった。
しかし時間は流れ、アスリートの体は錆びつき、終わりの時は来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
なかなか言い出せないモラトリアムを、玲ちゃんは健気に明るく受け止めてくれる。
な、なんてええ子なんや…あとビッグバードは、キモくて可愛い。
©「体操ザムライ」製作委員会 pic.twitter.com/HZy7cDtMFx
ポスターまみれの寝室を見せる段階で、彼女の興味が映画にあることは上手く示唆されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
こういう時間と台詞を使わない誘導が濃厚、かつ的確なことが、テンポよく転がる筋立てに分厚さを与え、色んなことが判っていく第一話を生み出している。
情報量が多くて、凄く整理されてんのよな…巧いわ。
城太郎は仏壇の中の妻と語らい、娘の前では押さえていた当惑を吐き出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
過去を閉じ込めた”写真”はここでも顔を出して、時間の残酷さ、それでも残る思い出、郷愁と痛みを画面に焼き付けてくる。
人は去っても、思い出は残る。残ってしまう。
©「体操ザムライ」製作委員会 pic.twitter.com/QwbL3q706d
そんな視線が引退寸前のポンコツエースとどう噛み合って、どんな物語を生み出すか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
02年という設定時点が、20年から見返すと”古ぼけた写真”だからね…。
物質化された過去を作品内に幾度も出すことで、画面の向こう側の現実と奇妙なリンク、そしてネジレが発生してる。面白い仕掛けだ。
なかなか引退を言い出せない城太郎は、思い出の鬼怒川へと旅行に出る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
選手であることが遠ざけていた、穏やかな親子の時間。お食べ…お団子をいっぱいお食べよ、玲ちゃん…。
しかしこのトンチキ体操コメディ、ほんわかムードは長く続かないッ!
©「体操ザムライ」製作委員会 pic.twitter.com/WViHNFV0Ic
突如現れるニンジャとエージェント、B級な絵面で冴え渡るパルクール!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
謎が謎を呼ぶ状況は、微笑ましい少年岡っ引きで水入りとなる。
レオナルドを狙う”悪役”なエージェントも、子供をのけて追いかけるほど悪党じゃない。活劇の中、そういうの見せてくれるのは有り難いね。
スーツにグラサンのエージェントも、江戸村を闊歩する。時代は移り、変わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
微笑ましい親子旅行にも”時間”への眼差しは強く焼き付いていて、やっぱこれがテーマ…の一つなのかな、と思いもする。
舞台に使った江戸村が、とにかくハッピーで良いところと感じられるのは、誠実なコラボだと思った
面白いのは作中の”現在”(現実の僕らにとっての”過去”)にも、取り返せない過去があり、それが今を生きる人の癒やしとも支えともなってる描写だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
妻は泉下に儚くなったけども、新婚旅行の思い出は残ってる。ナウくエージェントが闊歩するようになったけど、相変わらず江戸村は楽しい。
そういうふうに思い出を抱きしめる視線が、城太郎にはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
しかし初めて訪れた玲ちゃんにとっては、キネマティックな江戸村こそが”今”であり、思い出と噛みしめるのは先の話…例えば、2020年だ。
時間が必ず持つ多層性が、色んな形で顔を出す。結構SF的な体操アニメだな…。
そしてニンジャは、幸せな家庭をも侵食するッ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
あらゆる場所でゾロゾロ付いてきてるニンジャの見切れ芸も、『水遁の術破れたり!』から「死んじゃうよ~」で仏壇のお母さん写すブラックな運びも、非常に面白かった。
ギャグが品よくキレてるの、ホント強いな。
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わけの判んねぇまま土足で上がり込んできたニンジャを、城太郎は当然警戒する。境界線は畳、柱、廊下と、明瞭に引かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
それを強引に切り崩す、我らがゴッドマザー。俺はカッコいいババアが出てくるアニメが大ッ好きなんだッ!!
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度量がデカすぎるマザー・マリにくっつく形で、娘はニンジャの方に移っていく。この抱きつき方一つで、オババ大好き人間だと判るの凄く良い…家族のムードがよく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
”引退”までの流れを見ても、玲ちゃんに言い出せないモヤモヤを見ても、城太郎は結構流されやすい男であり、ビシッと決断できない。
そういう男が己を立てて、流れ行く時に何かを刻み、何事か成し遂げるまでの物語…なのかなー、って感じ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
流された先にも幸せはあって、思わぬ出会いが変化を生む。
奇妙な同居人となった青い目のニンジャは、城太郎に何をもたらすのか。そこも、今後話が転がる中で楽しみである。
父としてのホームを書いた後は、体操選手としてのホームを切り取る。ほんっとMAPPAはチャラい吉野裕行が好きだな! 俺も大好きだッ!!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
ノリだけで生きてる彼も、城太郎の故障をしっかり知っていて、気にかけていると描写を差し込む。ホント、メッセージの圧縮が的確だ。
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城太郎が現役選手をやるしか能がない男だというのも、天才言語でレクチャーする一笑いの中に、上手く圧縮されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
それを見せることで、天草さんの危惧に裏打ちがされて、描写が分厚くなる。
こういう感じで、1カットに多彩な機能をもたせて情報構造を積み上げてる手腕が、とにかく冴える第一話。
レオナルドの忍者服ビリビリもただのコメディじゃなくて、体操選手としての肉体、技術をコミカルに見せつつ、謎めいた彼の皮が一枚剥けて、こっちに少し近づいてくる描写だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
やっぱ正統の体操競技というより、それをベースに変化したパルクールの味わいがアクションにあるなぁ…。
まー今回は城太郎の迷いと再出発の話なんで、ニンジャの謎は今後紐解いていく感じだと思うけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
そのための下ごしらえを、作品への誘導、キャラの惹きつけ、ドラマとテーマの提示を手際よくこなす中、スキなく盛り込む。
組み立てるべき全体像が既に見えてる立ち回りで、安心感がある。
かくしてニンジャは体操ジャージを、サムライはスーツを着込んで、新たな局面に挑む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
明るく楽しいホームコメディに差し込まれる、亡妻への決意、遺された娘の瞳。九歳なのにこんなに勁い眼をして…(フィクションへの感情移入早すぎマン)
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このお話し、ボロボロの身体を抱えた城太郎が悩む物語なので、玲ちゃんは代わりにしっかりした”大人”にならにゃならんのだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
時折見せる頑是ない明るさ、底抜けの可愛さをどこかで完全開放させて…文句なしに”子供”させて欲しい、とか思う。
それは城太郎が金メダル取ったとき…なのかなぁ?
さておき、男・荒垣城太郎、涙の引退会見。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
流されるままやってきてしまった土壇場で、脳裏に蘇るのは輝く思い出。それを、もう一度取り戻すためには、体操ザムライ引退…しませぬッ!
んんんんん~玲ちゃんと知世さん可愛い~! この3人を引き裂いた”死”、許さんッ!!
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というわけで、世間に爆弾叩き込んじゃった荒垣城太郎、一体どうなってしまうのか! という所で次回に続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
キャラクターの魅力、テーマの扱い、全体の雰囲気、軽妙な笑い、じんわり染みる人情味。
作品の全部を惜しみなく、軽やかに踊らせた、見事な第一話でした。つえーわこのアニメ…。
城太郎はいまいち未来を思い浮かべられない、ボーッとした主役なんだけども、健気な玲ちゃんに”父”としてしっかり接することで、ぐっと好感を稼いできた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
そんな彼が”選手”として進んでいく今後も、上手く行ってほしいなという気持ちで第一話を見終えられたのは、とても良かったです。頑張れ!
玲ちゃんは作品の柱となる超絶無敵ヒロインでマジ完璧なんですが、時代感を出すシネフィル設定が、喪われた母を追い求める健気から生まれている所が、ホント…ホントズルい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
今後もどこか頼りない親父をしっかり支えつつ、いくらでも我儘言ってええんやで…(キモ保護者顔爆誕)
彼らを主軸に踊る描写も、そこに食い込むキャラクターも瑞々しく魅力的で、今後どんな物語が展開するのか非常に楽しみです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
サブの見せ方が良いのと、細かいクスグリの扱いが的確なんで、横幅広い話になっても超おもしろそうなんだよなぁ…主軸相当しっかりしててコレは、非常に贅沢。
僕はお話に向き合うとき、初見で”仮の柱”ってやつを立てて、そこにもたれかかりながら見るようにします。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
作品が流れていくのを先回りして、なんらか自分の中で納得できる『このさく品はこういう感じ』ってのを立てないと、不安定で見てられないタチなんですよね。
それが過剰な読みにもなるんだけど。
同時に話が自分の頭の中ではなく、目の前のモニターで展開していることも理解はしているつもりで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
自分が受け取って組み立てた”仮の柱”を、作品が描いたもので削り、付け足し、一つの実感として組み上げていくことが、視聴して感想を書く体験の大きな醍醐味だったりもします。
そうなるためには作品に手応えと誠実さがないといけんのだけど、この第一話…そういうモノをビリビリと感じました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
勇み足な形で”時間”を”仮の柱”と立ててみたけども、さて今後の描写がそれを裏打ちするか、裏切るのか。
オリジナルアニメは先が読めず、確証は全くありません。
でもだからこそ、ワクワクと次週を待てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
何が飛び出すのか解らないけど、面白くなるのは間違いない。そういう期待感がしっかり構築される挨拶を、最初にブチかましてくれました。
いやー、面白かった。素晴らしい。ホント遅れての乗車になっちゃってスンマセン…。
OPも原色センスバリバリのアッパーチューンで、『出だしからアゲていくぞ!』って気合がグッド。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
”上海ハニー”は僕らには懐メロだけど、リリースは2003年で、作中から見えると『未来の曲』なんだよね。ここも”時間”のネジレが起きてて面白い。
©「体操ザムライ」製作委員会 pic.twitter.com/juVzaL49u7
全日本実況生中継で『”ぬッ”!』を叩きつけてしまった、とほほな体操ザムライ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年10月20日
愛する娘、妻との思い出のため、再起はなるのか。
ニンジャは彼の体操人生に、どんな影響を及ぼすのか。
熱血体操ホームコメディ大作、堂々の第一話でした。
いやー、次回も楽しみ…サーセンすぐ見ますッ! ”秒”でッ!!