憂国のモリアーティを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
豪華客船を舞台に、”モリアーティ”が描く残酷喜劇。
狩人は駆り立てられて狩場に上がり、衆愚は叫び、選ばれし者たちは日和見を決め込む。
全ては、金色の傀儡師の思うがまま。
そんな芝居に、たった一人疑念を抱いたものがいる。
その名はご存知、シャーロック・ホームズ
そんな感じのノアティック号事件後半、憂国のモリアーティ第7話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
階級構造をひっくり返すべく、庶民の反感を犯罪劇場で煽る。その実験は文字通り劇的に成功…しつつ、そこに立った一人、ありえない真実を見抜いた男がいる。
ご存知名探偵、満を持しての登場となった。
このお話し、やっぱ主役たるモリアーティを憂国(あるいは美形、もしくは血盟)無罪とするつもりはないっぽくて、彼の舞台に乗っかる貴族や衆愚と同じくらい、彼ら自身も静かに断罪されているように感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
同罪反復を原則に、狩人を狩る姿。
死体を弄ぶ殺人者に、愚かなる墜落を。
そんな風に貴族を狩る貴族も、また貴族なのであり、自分が踏みつけにしているものを軽んじる傲慢は同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
死体を弄ぶものを弄ぶのなら、いつか彼らも死体となるかもしれない。
”モリアーティ”だけが特権的に、犯罪による罰の収穫から逃れ得るかもしれないが、滝から落ちる未来が待ってはいる。
その上で、賢明だが賢明になりきれないホームズが断罪者としてどの程度の権能を有し、どのように彼らの憂国計画に絡んでくるかが、今後問われることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
事件の表層を掘り下げ、しかしその奥にあるどす黒い謀略には踏み込めない。
ウィリアムと同じく、僕らも諮問探偵の資質を探ることになる。
今後全英を舞台に踊る、華麗なる残酷劇場。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
その支配人と対抗者両方の腕前、両方の限界を魅せる回だったと思う。
ウィリアムの邪悪な無双も愉快だったが、ライバルと抜きつ抜かれつのレースになっても面白そうだと、思えるホームズ登場であった。さーどうなるかな。
さて、自分が用意した罠に狙い通り飛び込んだエンダース卿を、ウィリアムはほくそ笑みながら料理していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
下民を侮蔑する上位種としての共感、渡りに船の死体隠蔽。
盲亀の浮木と掴んだものが、その実自分を追い詰めているとは解るまい。
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今回エンダース卿はとにかく、足元がおろそかである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
高みに登って安全と思い上がって、足下から不意打ちを食らう。あるいは引きずり落とされて、地獄に落ちる。
天から落ちたイカルスか、傲慢を積み上げたバベルの塔か。
そういや、塔を作ったニムロデは優秀な狩人であり、ノアの子孫だったな…
狩人気取りで駆り立てられ、超越者と思い上がって足場を崩され、傲慢の高みに登ればこそ地面に落ちる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
その有様が、”モリアーティ”の末路を暗示しているような気がするのは、僕が彼らの破滅を望んでいるからか。
それとも、因果が応報する基本ルールで、この話が動き、演出されているからか。
平等を謳うのならば命の値段を選別するべきではないし、正義を求めるのならば計画犯罪などで人身を動かすべきではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
正しくない手段を、それでも己の信じる正しさのために選び取らざるを得なかった、その業。…その共有と共犯。
エンダース卿になくて、”モリアーティ”にあるもの。
それを書けるかどうかが、今後の物語で大事かなーと、個人的には感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
金色の犯罪コンサルタントは、なぜ”犯罪”を選んだのか。
彼を主役とするこの作品は、なぜ”犯罪”を選んだのか。
テーマ性の核に踏み込むエピソードが、早めに欲しい気持ち。別に『そういう動物だから』でも良いけど。
足元の暗闇に死体を回収され、喜劇は順調に進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
悲劇的な死と生を演出して心を揺さぶる”ジゼル”の上で、下界を蔑しながら見下す貴族たち。一瞬の美酒に酔う愚者を、静かに睨みつけるもうひとりの”モリアーティ”
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葡萄酒の赤、天鵞絨の赫、鮮血の朱。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
貴族を追い立てる、魔犬の紅い瞳。宿る邪悪な炎。
警戒色に彩られた天界から、オペラグラス越しに歩く死者を…自身の破滅を見下ろして、エンダース卿は正気を失う。
モリアーティの操る糸に、綺麗に踊らされて失わされる。
全ては、悪魔の書いた脚本通り。
かくして猜疑の緑に色づいた狭間を駆け抜け、道化は深い地下の底に沈む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
そこが、お前にお似合いの地獄だ、とばかりに。
死体を二度殺す狂気を、冷静に見守り分析して、逆しまの緞帳が上がる。せり上がる奈落が、貴族の醜悪を暴く。
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モラン”大佐”が状況を常に”作戦”として認識しているのが、『彼のアフガン戦争は終わってねぇんだな』という感じで面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
今後ホームズを掘ると、もうひとりのアフガンツィが顔を出してくると思うけど、モランとワトスンの対比どう魅せるかはスゲー楽しみ。
一味は常時連絡を取り合い、変装による虚偽、助言者面の情報操作で舞台を仕上げていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
エンダース卿はこの船を”方舟”といったが、ならば番以外に乗船資格はない。頼れる仲間がいなかった時点で、彼がこの船から落とされる未来は決まっていたのだろう。
落とすために登らせる。殺すために殺させる。
その仕上げが、最高の演出で大衆に曝け出される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
ここは自領に囲い込んだ安全な屠殺場ではなく、衆目睨む公平な劇場。
皆、悪魔の意図が絡みついていることなど知らず、間抜けな顔で豪華な凶器を奮い、群衆は口々に殺戮を非難する。
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『人の命をなんだと思ってるんだ!』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
名もなき群衆の声は全くごもっともだが、それは死体を二度殺した”モリアーティ”にも当然伸びる非難だろう。イヤマジで、なんだと思ってんの?
選ばれたものとして、俺には殺戮者の特権がある。
吠えるエンダース卿の芝居は、同じ志を持つはずの貴種から指弾される
産業革命を経て、貴族の英国も土台が揺らいでいる。
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小作奴隷と思っていた連中は小銭を稼ぎ、人権意識に目覚めだし、簒奪される富と命を当然とは思わなくなっている。
発火寸前の国内事情があって、”モリアーティ”も劇場計画に乗り出したわけだ。
ならば、貴族様も劇場の皆々様、お顔を伺う必要がある
ノアの見立てに乗っかるのならば、エンダース卿は番もつれず、せり上がる時代の波に取り残された古い動物である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
そんな恐竜が勝手に歩いて、人間を喰い散らかす。
あるべき秩序が果たされない現状に、神罰の代行者として、聖なる犯罪者として血の預言を為す。
それを許す神は、何処に鎮座ましますか
それを問いかけそうな男が、凶行にバリツキック!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
恐怖と憤怒を煽られて、船に乗った全員が踊る只中で、ホームズはひどく強靭で冷静である。
女を釣るための職業占いは、あくまで余暇。死体の謎を一人掘り下げるのが、彼の性分、と。
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ウィリアムの劇場計画は人間知性を侮ってる部分が見え隠れして、慄きつつも『オイオイ、大丈夫かよ』とツッコミむけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
自分と対等の知性が船に…世界に紛れ込んでいることを仮定し、犯罪の方程式を編まない杜撰さがここら辺、垣間見えてる感じもする。
駆り立てられ、必死に逃げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
狩人は獲物に、貴種は道化に成り果てて、無様に高みによじ登り、罪の洪水に飲まれていく。
傲慢と狂気のツケを払わされて、非難の声も水に食われる。かくして、モリアーティの犯罪劇場は幕である。
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”ノアティック”という名前に踊らされて、ここがバベルの塔の見立て殺人だったと読みきれなかったエンダース卿には、似合うの末路とも言えるが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
連続殺人鬼として、時代の趨勢を読めず、古い時代の特権を吠えたけり、通じずに死ぬ。
分断と無理解の権化として、なかなかいい仕事だった。
前回冒頭の”狩り”を、主客を入れ替えて演じる追い込みの演出はやはり、この物語が報復律で動いていることを教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
悪を為したものは、それによって同じく滅びる。
今の英国にはない正義を成し遂げるモリアーティは、そのルールから逃れうるのか。
死を弄び、人を侮る傲慢の、ツケをいつか祓うのか。
やっぱ気になるのはそこである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
『所詮世の中こんなもん』と諦め、悪に徹するピカレスクとはまた違う。悪なる善を貫く、転倒した世直しモノ。
間違いきった手段を手にとって、(この後の世に生きる、人権民主社会の住人たる僕らにとっても)正しい世界を引き寄せる試み。
それが失敗しても、成功しきっても、僕のケツの座りは悪い気がする。そうなるように、このアニメ編んでる感じすんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
主役をどこまで保護するつもりかは、結末まで見ないと解らない。
分割2クールとはいえ連載中の作品だしなぁ…どういうオチにするか、気になるところ。
それは先の話として、見事に初舞台を終えた悪漢一座は、血の如き一服に酔う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
そこに水を差す、ウィリアムの一言。憂国の眩暈を覚ましかねない、諮問探偵との邂逅。
犯罪劇場の舞台裏へ、唯一目を向ける理性の怪物。
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『この船全てを舞台に、群衆を操った存在』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
ホームズがそう口にする時、カメラはユニオン・ジャックを写す。
そう、これはあくまで予行演習。”モリアーティ”の狙いは倫敦全土、英国全域を劇場化し、社会体制転覆の機運を盛り上げることにある。
時代に揺れるノアの方舟は、大英帝国全体なのだ。
時代の洪水が英国を揺らしていくことを、未来の僕らは知っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
それが天命により訪れたものか、神の…あるいは悪魔の啓示を受けた人為によって近づけられたものなのか。
近代史の裏側に潜り込む、伝奇としての面白さも出てきたな…。表舞台に伸ばす手も、アルバート経由でかなり長いし。
ともあれ、未来の仇敵は事件の表層を読み、真相を読み損なう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
ダラムを根城に張り巡らされる巨大な蜘蛛の巣が、目の前の青年を主にしているとは思わない。
しかしその知性に、挑戦に、ウィリアムは黄金の輝きを見る。
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アルバートを主役に描かれたモリアーティ殺しでは、自身が背負っていた金色の光。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
犯罪卿が諮問探偵に、一生を支配されるほどの輝きを見ている心根は、一体どんなものなのか。
ウィリアムがホームズをどう受け止めたかは、今後物語を引っ張る大事なエンジンな気もする。感情…デカいのか?
難しい問題ほど、解き甲斐がある。そう嘯くホームズと同じ好奇を、ウィリアムも業とするのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
それが自分の完全犯罪を切り崩すとしても、自分の糸に絡め取られない聡明さに、敬意を払うのか。
これから始まる(っぽい)ホームズ研究は、ウィリアムの見えにくい内面もスケッチしてくれそうだ。
アルバートが間違えきった醜い現世への憎悪に、ウィリアムの犯罪諮問で答えを与えられ、最前線でそれを楽しんでいるように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
ウィリアムは自分の計画を止めてくれる”誰か”を、待ち望んでいるのだろうか。
それとも、己の正義を邪魔する悪魔と、”シャーロック・ホームズ”を呪うのだろうか。
そこら辺が気になる、ライバルたちの邂逅、犯罪劇場第一幕であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
エンダース卿への報復律が、”モリアーティ”も照らすのか。
その先頭に、理性の刃を携えたホームズが立つのか。
現在進行系の犯罪喜劇だけでなく、その未来への期待も上手く煽るエピソードだったと思います。
ホームズを鏡にすることで、ウィリアムの人間的執着、審美基準が見えてきそうな感じもあって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月25日
現状見た感じ、アルバートは対等な鏡たり得てないんだよなぁ。感情が実は一方通行…か?
そこら辺深く探るためにも、次回以降の探偵授業、非常に楽しみです。ワトスンくんをどう書くかなー。