安達としまむら を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
約束のヴァレンタイン・デイを夢見る安達の世界は、力んで空回り続ける。
それでも生まれるトルクが、彼女を緑の水槽から出した。
上手く伝わらないまま、すれ違ったまま、前に進むワタシとアナタ。
その歩みは、呼吸は、果たして重なっているのか。
運命の日は近づく。
そんな感じのヴァレンタイン前夜、安達の身じろぎとしまむらの迷いがすれ違う、あだしまアニメ第八話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
前回衝撃の乱入をキメた樽見ちゃんは、安達に一切接触しないまま適切に距離を詰め、しまむらとの時間を取り戻していくかに見える。
その着実な歩みの裏で、安達はいつものように散々間違える
言うべきことを言葉にしないまま、察してほしいと視線を贈り、しかし渦巻く内情を知られたくはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
クッッソめんどくさくも愚かしい青春のノタクリは、珍妙な占いに左右されるほどに安定感がない。
他方、樽見の手筋は毎回適切で、言うべきことを伝え、距離感も程よく心地いい。
その正しさが、”安達としまむら”の捻れて正しくない距離感を壊すほどに強烈か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
世に言われる”正しさ”なるものからはみ出してしまった彼女たちは、安達が安達だからこそ、しまむらがしまむらだからこそ、間違っても惹かれ合う運命にあるのか。
樽見はそれを証明する、正しい負け犬なのではないか。
そこら辺の疑念をヴァレンタイン決戦に向け、ジワジワ積み上げるエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
大間違いの身悶えに自分もしまむらも惑わせつつ、しかし確かに変わった安達の世界…の中にいる、安達の人格。
緑色の聖域を横目に見る視線を描いて、出会いからの変化をスケッチする回でもあったかな。
というわけで、同じ風呂に浸かりつつ別の世界を見てる二人から、今回はスタート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
肌色サービスに、二人の住環境の違いをキッチリ刻んでくる演出が、なかなかにエグい。
今回腰を落ち着けて生活を書く話なんで、二人のバックボーンが良く見えるわな
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安達はキラキラ妄想に浮かれつつも自信がないので、狂った星座占いに行動を左右もされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
しまむらは人生の重たさに吐息を一つついて、新しく蘇りそうな関係性のスイッチを、一回切る。
電話番号を聴き、連絡して、言葉で伝える。
樽見は適切な社会的手続きを踏まえて、しまむらとの関係を作る。
自分としまむらの関係を大きく変えてしまうかもしれない、古くて新しい乱入者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
その存在を、自意識の檻に囚われた安達は一切認識しない。しまむらも、わざわざ伝えない。
お互い大事な存在だけど、別に全部が上手くいくわけではない。このアニメらしいズレが、樽見を均衡点によく見えてくる。
一番の友達にすら、自分をうまく届けられない安達の幼さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
序盤はモノローグが廃されて、安達でもしまむらでもない第三者視点から、彼女たちの”いつも”を見ることが出来る。
いやー…ヒドいね! しまむらはよく付き合ってるね!!
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頭の中を自意識でパンパンにして、勝手に占いに振り回されて、出力されるのはトンチキな奇行。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
そんな間違え方も含めて、しまむらは安達を好いている。あの心の中の砂漠で、唯一潤いを与えてくれる存在だと思っている。
それでも、携帯電話の中の”樽見”は見せない。それはそれ、これはこれだ。
奇行で自滅していく占い師は安達のシャドウのようでもあるし、そうならないようにしまむらが隣りにいる、とも思える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
髪型を変えて、察して撫でてもらって、大量のチョコレートを置き去りに一人微笑む。
安達の独り相撲は、しかし妙に噛み合う。
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『ありがとう』というありふれた言葉さえ、過剰に思い入れて上手く切り出せない。直接顔を合わせているのに、全てを間違えきっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
それでも、しまむらの隣にいるのは安達だ。
二人で緑色のアジールからちょっとずつ抜け出して、教室に居場所を作ってきた。世間の水に、一緒に馴染んできた。
それが、もっとコミュニケーションが上手くて、もっと相手のことを考えられる樽見の出現で、変わるのか変わらないのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
しまむらは、安達が生きるのが巧いから友達付き合いをしているわけではない。
重い、うざい、面倒くさい。そういうの全部含みで”安達”を飲み込んでいる…ように見える。
気合い入り過ぎのチョコ作成過程を、いちいち画像で報告してくる空回り。『どう?』じゃないんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
同じ携帯電話を使っていても、樽見のスマートな接触と安達のメッセージとじゃ、”正しさ”が段違いだ。
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でも、正しくないから何もしないほうがマシなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
空回りでも、そうせざるを得ない思いを不器用に放散して、察してもらって、自分たちだけの関係を作ってきたことに意味はないのか。
そこには、誤解も甘えも嘘も沢山ある。
愛があればこそ振り回され、それが届けば破綻もする。
でも、だからこそ嘘なく真実足り得るものも、世にはあるのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
携帯電話という同じメディアを使っているからこそ、安達の間違えきった真実味は、スルスルと進んでいく樽見の関係構築に優越していると、思えてもくる。
タイミング、立ち位置、立ち回り。あと声も考慮して、樽見に勝ち目がねぇ…
今回は樽見の”正しさ”と、安達の”正しく無さ”を静かに積んでいく話だ。そのオリジナルな間違え方が、しまむらに特別に突き刺さっている様子も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
だから今後は、樽見がどんだけ”正しくない”のか…不格好でも独り相撲でも、しまむらにしがみつく特別さがどこにあるのか、描いてほしい所だ。
そんな奇妙なトライアングルの裏で、宇宙人はぷわぷわ空に浮かび、映画にはしゃぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
引率のお姉さんしてるしまむらと、小学生部隊の頑是なさがとても可愛らしい。
が、この風景はしまむらにとっては、ある意味”義務”である。
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ヴァレンタインを前に空回りする、安達の日常には母はいない。独り相撲に暴れているのは、なにもしまむら相手だけではないのだ。
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その空白を埋めることが、必ずしも答えにならないことを、家族との交流を”こなす”しまむらの姿が伝えてくる。在も不在も、共に難しさを孕むのだ。
安達の人間関係の拙さ、激情に突き動かされる短慮が、母との接触不足、満たされない恋しさと連動しているように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
家族との適正距離、それを保つための対価でもある”正しい”振る舞いが、しまむらを誰も知らない空疎に追いやってもいる。
そんな二人はお互いで満たされ、しかしお互いを知らなすぎる。
そんな奇妙な関係はしかし、たしかに安達を変えた。
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”友達”の誘いに乗って、しまむらとの密接以外に踏み込もうとする姿は、物語の開始時とは大きく異る。
知らないなりに楽しんで、一位にもなれるゲーム。普通の人が、正しくやってた当たり前の遊戯
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安達が”それ”を苦手にしてると、しまむらは知ってて配慮する。安達は苦手な自分を前に押し出して、”それ”に踏み込む。
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世間をよく見て、その泳ぎ方を知ってるように見えるしまむらこそが、過剰にルールを読み、距離を測る息苦しさに窒息寸前でもある。だから、呼吸可能な水を求めた。
少し外に広がった私達の、潤いに満ちた原点。オレンジの輝きに満ちた、密接の距離。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
そこに踏み出していける喜びは、いつでも危うい。前を見ずに…しまむら愛しさに溺れてしまう安達の姿は、彼女の青春そのままだ。
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でもこの、体温の伝わる距離、伝えてもらえる距離があるなら、間違ってても進める。
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そんな実感が多分安達にはあって、だからあの聖域から出てきて、よく判らない人たちがたくさんいる教室へと、歩を進められたのだ。
その意味を、しまむらは正しく計測していく。
の、だが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
視野の広い正しさは、つまり誰も特別には選ばない公平に繋がる。宇宙人差別はせず、軽い身体をわっしと持ち上げ、サボりの相棒にもする。
そんなしまむらのいない教室は、やはり顔のない怪物で埋まっている。重たい言葉に、帰らない答え
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構ってほしいと目線で訴え、無茶苦茶な寝言をぶっ放しながら、相手が動くのを待つ。
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しまむらとヤシロの微笑ましい遊戯は、そのまま安達の幼い振る舞いにも重なってくる。
なんで子供なら”無邪気”で、高校生だと”ヤバい”なのか。人生はなかなか難しい。
しまむらは安達の親愛…を越えた情欲を、その優れた視界でしっかり観察しつつ、抱きしめることをを拒んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
言いたいことがありすぎて何も言えてない友達が、何を秘めているのかを推察できるからこそ、その真意に見てふりを続ける。
全部、子供の戯れと同じ。清潔で、軽くて、正しい。
そうではない、間違えきった特別さを一部では受け止めつつ、一部では拒絶する。こうして描かれてみると、罪な女だなしまむら…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
そうして逃げていくなら、生身で追う!
顔を合わせて、触れ合って伝える!!
安達の情熱は、こういう所では強い。
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安達は胸の奥の熱情を、伝えないまま判ってもらえる関係に甘え、しまむらはそれを受け止めつつ拒絶できる距離感に甘えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
相互にかなりズルい事しているのだが、その”正しく無さ”は二人の間では、暗黙の了解を得られている。
なら、多分それは”正しい”。世間一般に流通する”正しさ”よりも。
流れていく日常の中で、錯綜する視線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
そこに行かなくても息ができるようになった、緑の海底。そこで出逢ったからこそ、今隣合えている場所。
そこに戻り二人きりになると、凍りついて動けなくなる。
しまむらの直感と理性は、閉鎖系の危険を睨む。
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あの緑色の聖域に迷い込んだ子に惹かれて、安達は下界に降りてバレーをしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
ひどく狭く間違えきった視界に囚われているようで、広く正しいものが見えているしまむらとの触れ合いは、彼女の世界と行いを変えている。
だから、安達は自分たちの故郷を見上げない。
しかし安達だけで世界が構成されていないしまむらにとって、そこは危ういと同時に愛おしい場所で、ついつい視線を奪われてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
いつか春が来て、そこに戻ることが出来るようになった時。
変わっていく私達は、二人で海底に沈み直すのか。それなしでも、もう生きていけるのか。
そんな決断に至る大事な一歩が、約束のヴァレンタイン…なのだろう。決断が大事なのは、やっぱ青春小説だなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
バイト先(これも、元々安達の外側に広がっていた世界だ)で振り回されつつ、『伝えよう』と心の中だけで固めた決意。
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それは(携帯電話、あるいは言葉、適切なコミュニケーションという)通信メディアをより上手く使える、樽見の横槍でくじかれていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
空回りする視界の端っこ、見ているはずで見えない…見せない場所。
思い出は熾火のように燃え上がり、二人は出会い直す。
その歩みは、多分正しい。
樽見のスマートな正しさに、安達の大間違い大わらわを対置することで、その危うさ、確かに捕まえたモノを書く回でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
”携帯電話”を一つのフェティッシュと定め、それを通じて繋がる/すれ違う思いを切り取るスケッチが、色んなものを見せてくれたと思います。安達、マジで下手ッ!!
しかしその間違い…と思える接触が、どれだけ微細で柔らかな情感を生み出し、世界を広げてきたかも描かれました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月27日
時に流され転がっていく世界の中で、少女たちはどう繋がり、切り離され、また繋がるのか。
運命のヴァレンタイン、次回も楽しみです。
樽見…お前の”獣”を見せろッ!