呪術廻戦を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
いじめ。
ごくごく当たり前の地獄を生きる吉野順平は、人に呪いを埋め込む呪霊・真人と行き会う。日常の裏に広がる深い闇に、飲まれていく純平。
脱サラ呪術師・七海とともに事件を追う悠仁も、また闇に踏み込んでいく。
二人の少年の、運命が行き交う前夜。
そんな感じの、陽気な超人バトルだと思った!? 湿り気たっぷり学園地獄だよっ! 純平クンエピソード開始である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
嫌な予感と生っぽい手触りで全てが構成され、ドろくでもない展開に対ショック姿勢を手早く取った。
絶対ヒドいことになる。俺には判る(自己暗示で防御力上昇)
京都の連中や呪霊軍団書いてる時は漫画的な派手さもあったが、純平周辺はじっとりとリアルな感覚が周囲を埋め尽くして、『これこそ呪いだ』という実感が強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
いじめ、苛立ち、力の魅惑。
虎杖くんほど清廉にはなれない、”普通の子供”が呪いに出会った時、何が起こるか。そのモデルケースとも言える。
同時に出会いのエピソードでもあり、真人に出逢ったことで純平は闇の淵に沈んでいき、七海さんを紹介されたことで虎杖くんは新たな導き手を得る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
縁が結ぶ邂逅こそが、良かれ悪しかれ人生を捻じ曲げ、変えていく。
ならば、虎杖くんと純平の出会いは何を生み、何を歪める?
そこら辺が気になる、川崎地獄変開始であった。出だしからもー最悪だよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
純平を切り取るカメラは常に遠巻きで、屋上の柵、チケット売り場の仕切り、教師を遮る窓ガラスと、皆が『見て見ぬ振り』をする。
いじめる側も、薄汚い紐帯で繋がり何にも本気ではない
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弱者に暴力を振るうことで、”姫”のポジションを確認し、セックスを恵んでもらう。純平じゃなくてもいいし、なら純平でもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
彼を取り巻く地獄には孤独と代用が満ちていて、そんなどうでもいい状況でも、殴られた純平の頬と心は痛む。
殺意は背負えなくても、悪意を反射したくもなる。
『人を呪わば穴二つ』というのは呪術の…それをテーマとするこの物語の基本的なルールだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
”殺す”スイッチは押せなくても、”死ぬ”スイッチは押せるほど追い込まれた純平が、出逢ってしまった人型の呪い。
その誘惑に負ければ、おそらく彼は人として死ねない。
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それでも、スクリーンを突き破って”真の人間”が現れたのなら。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
集団を繋ぐ醜い真実を告げても、暴力と嘲笑で『見て見ぬ振り』を続ける連中に復讐できるのなら。
人知を超えた悪魔の力に、純平は惹かれていく。
いじめから心を守るシェルターだったはずの映画は、今彼の目の前にあるのだ。
真人が一般的な美形の記号を取り揃えつつ、下卑た微笑み、危険過ぎる瞳を宿している所が好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
彼は人間の最悪をより集めて作られた、人型の災厄だ。純平を娯楽半分で殴るクズよりも、更に純度の高い人間廃棄物である。
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しかしその揺籃は、純平の惨めさや痛みを携帯電話ごしに嘲笑う、仮面を付けた人間にほかならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
呪霊も呪いも、全て人の心から生まれてくる。
明るく楽しい学園生活の裏で、澱のように、泥のように当たり前に貯まる無理解と残虐。純平のこめかみに、血管を浮き上がらせるもの。
”それ”と真人は強く強く繋がっていて、けして暴力と憎悪と悪意の円環から抜け出した存在ではないのだが、追い込まれた純平には彼が天使にも見えただろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
人智を超越した、圧倒的なパワー。醜い内面を溢れ出させるように、人を怪物に変えて殺せる力。
惨めな自分の代わりに、為すべきことを為す暴力。
その甘美さが、純平に通りに溢れる光に背を向け、真人と彼が背負う闇に向かわせる誘引となっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
多分、呪いという形でなくとも。
色んな路地裏で、校舎の片隅で、人生の薄暗がりで、色んな人が行き合う、当たり前の迷い。
踏み込めば、落ちるしかない奈落
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純平の鬱屈を描く、陰湿な出口の無さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
安全圏に身を置いて、共感を置き去りに殴りつけてくる卑劣。
それになすすべがない無力感と、見て見ぬ振りの冷たい刃。
それを演出する筆が的確だったので、彼の地獄と邂逅には、一種普遍的な味わいがあったと思う。
あまりにも当たり前な負の感情から生まれ、条理を飛び越える呪い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
その陰から純平が抜け出せるかは、主人公たる虎杖くんの働きに…そんなものを一瞥だにしない残酷な運命にかかっている。
その歩みを、一見冷たく突き放す脱サラ呪術師。
所詮仕事、共感なし。
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彼のサングラスの奥の瞳が見え、虎杖くんとの間に広がる巨大な断絶を埋めるのが、今回のエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
第一印象『面白いクズだな…』みたいに思わせておいて、ズバズバ”情”で殴りつけて好きにさせる手腕が、やっぱこのアニメ巧いわな…。
七海さんと虎杖くんの間にある断絶は、真人と純平の間にもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
つれない態度で虎杖くんを突き放すように見える七海さんは、その実誰よりも人間で、だからこそビジネスライクに振る舞い心を護っている…のかもしれない。
フレンドリーな真人が、純平を嘲弄するゴミだってのはまぁ判る。
七海さんは共に死地を駆ける虎杖くんを、『見て見ぬ振り』などしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
自分の能力を教え、虎杖くんの才に目を向け、打倒したものが元は護るべき”人”だったことを、しっかり告げる。
バッティングセンターでの闘いは、爽快と陰湿が混じり合って凄く良かった。
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修行の成果を見せる新技公開で、スカッと悪い呪霊をぶっ殺しても良さそうな所で、グチャグチャにされた彼らの涙を、それを見て立ち止まってしまう虎杖くんの表情を切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
流れる血を、溢れる暴力を、しっかり見せる。
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五条先生との修行で、虎杖くんは強くなった。二重の極みっぽい技を習得し、戦う力を手に入れた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
だがそれは、歯止めを失えば簡単に、誰かを傷つける刃になってしまう。呪いを止めるための呪いも、結局は呪いなのだ。
痛みに泣く”元人間”を、見下ろす時の張り詰めた表情。確かな殺意。
それが、七海さんの一言でフッと抜ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
”正しくない死”をわざわざ引き寄せる悪趣味に、自分が同一化する寸前だった。
虎杖くんが呪いに食われるところを、七海さんは大人ゆえの観察力、責任感でせき止めたのだ。
ここにこそ、彼の強さがあるのだと思う。
七海さんは『小さな絶望を重ねることで、大人になる』と言ってたけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
呪術師を長年続けているなら、彼を大人にしたものが”小さな絶望”程度ではないことは想像がつく。
ネタっぽく言ってた職業遍歴にも、かなり暗い過去が隠れている感じがする。まぁ、”呪術廻戦”だからこの話…。
それでも、彼は倒すべきもの、倒してなお一撃を振るうべきではないものを、しっかり見定めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
彼の異能が『見る』ことで発現するのは、個人的には面白い。
目を背けたくなる呪いをしっかり見据えることでしか、彼の暴力は成立しない。自分が何を握り、何を殴るのか。否応なく、彼はそれを見続ける
その知恵と責任を、虎杖くんに静かに伝えようとする”大人”ぶりが、僕は好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
家入さんも、虎杖くんの真っ直ぐな心を心配して、重荷を減らそうとしてくれる。まぁ虎杖ボーイは良い子だからね…優しくしたくなる…。
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呪いの残酷、暴力の重さ、邪悪の苛烈。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
それに少年の心は傷つきつつも、『正しくない死』から目を背けず、怒りを燃やし立ち向かおうとする。
その視線を、七海さんはサングラスの奥、しっかり受け止め支えようとする。導ける”大人”であろうとする。
出会いと導きが、人を光に誘うのだ。
同時に、出会いは光にだけ開かれているわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
気に食わないやつをぶっ殺せる力、自分も落ちかねない魅惑的な闇。
それが、純平の前にも広がっている。ハンモックの上、背中を向け、巨大な虚空を間に挟んで、呪いと少年は対話する。
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七海さんが自分の行いを、虎杖くんの傷心と怒りをしっかり”見る”のに対し、真人は耳障りのいい言葉を並べつつ、純平を見ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
真正面から見据えるにしても、それは瞳の奥に広がる闇を感染させて、子供を自分の世界に引き入れようとする『正しくない大人』の業だ。
七海さんは自分が抱えた信念に、虎杖くんを巻き込まないよう注意している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
彼のサングラスは、”見ない”ためのものであると同時に、”見せない”ためのものでもあるのだろう。
真人に、そういう慎ましやかな誠実はない。
至近で睨み、甘く誘い、優しく囁く。
呪詛とはそういうものだ。
厳しさ、親しみにくさに見えるものが実は、相手に誠実に向き合えばこその防壁であり、守るべき者を適切な場所に置き続けるための支えであること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
暴力と親愛で甘く誘ってくるものが、その実一番『見て見ぬ振り』をしながら、取り返しのつかない破滅を呼び込むこと。
七海さんと真人、光と闇のメンターがそれぞれ、少年に向き合う姿勢は、そんな人生の裏腹を上手く切り取ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
誘いと分かりつつ、そこに踏み込む。護るべき子供を、死地に追い込むことは出来ない。
そんな七海の真意を知らないまま、虎杖くんは言葉をかける
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『気をつけてね!』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
人として当たり前で、でも純平の周囲には一度も出てこなかった言葉。他人をしっかり見て、思いやればこそ出てくる言葉。
呪いとの死闘のさなかに、それが出てくる少年。周りの大人も、思わずニッコリである。俺のベイビー…。
厳しい正しさに導かれた少年と、甘やかな闇に誘われる少年。二人の道は、事件を通じて交わっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
虎杖くんを”暴”の危うさ、世界の残酷さから引っ張り上げてくれた、優しく正しい大人たち。
彼らが託してくれたことを、虎杖くんは純平に届けれるのだろうか。
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『俺は見て見ぬ振りなんてしない』と、心を伝えることが出来るのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
希望としては、虎杖くんの光が全てをいい方向に引っ張って欲しいが…この作品、”呪い”を見据える視線があんまりにも本気なので、どうにもならない業と運命、濃厚な悪意がぶっ叩いてきそうな感じもあんだよなぁ…。
人間が生きる以上、必ず生まれる負の感情。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
それが寄り集まった呪いは、時に超常の形をとって人を喰い、あるいは無形のまま地獄に追い込む。
”いじめ”という最も身近な呪いを通じ、そういう作品のルールが良く見える回でした。
ファンタジーであると同時に、嫌になるほどノンフィクションよね、この話
虎杖くんは七海さんのツンデレ純情により、呪いに飲まれず戦える立場を掴めた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年11月28日
では、純平はどうなのか。虎杖くんは彼と出会い、触れ合う中で何を伝え…何を届けられないまま、無力感に震えるのか。
相当ハードな青春試練が待っていそうで、期待しつつ怯える。
次回、”無為転変”…かかってこい!