GREAT PRETENDERを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
長い回想が終わり、時計は動き出す。
エダマメは暗い光を宿したまま、当意即妙の道化を演じる。
ローランは亡霊に囁かれるまま、破滅の舞台を整える。
上海と東京を繋ぐ、憎悪と嘘の橋。
その危うい縁の上で、踊るのは誰か。落ちるのは誰か。
…そして、幕が上がる。
そんな感じのクライマックス直前ッ! 真人くん闇落ちムードにハラハラな、グレプリ第21話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
回想の間中『現在にどう繋がるか次第』と言ってたけども、作品もその感覚を判ってるらしく、上手くサスペンスを作ってきた。
ガキ扱いで何も教えず、便利に使って復讐の道具。
そんな”親”達に牙を突き立て闇に落ちるか、はたまた一味の絆が蜘蛛糸となるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
読みきれないまま、朱雀と龍虎は相まみえることになる。
言葉を媒介する通訳を演じながら、そのくせ悪意を増幅させ、対話を捻じ曲げる。コンフィデンスマンの真骨頂。
打ち合わせもなく状況を捻じ曲げていく、エダマメとローランの絆。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
それがひどく危ういものであることを、様々なキャラクター、演出、状況が語っていく。
果たしてエダマメは、他人の復讐であり、自分のビジネスでもあるクライマックスで、何を選ぶのか。
そこにしっかり、焦点を持っていく話だった。
というわけで、まずは種明かし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
どっこい生きてたシンシアとアビーが、見据える朝日の先。
エダマメは事前に情報も知らされず、いきあたりばったりで獅子身中の虫、仕掛けの要として朱雀に食い込む形になる。
鼻の伸び切ったピノキオに、出来るのは傀儡くらい。
©WIT STUDIO/Great Pretenders pic.twitter.com/7FNeKMq14L
全くもってその通りで、しかしそこから成長したエダマメの姿を、ローランは見据えていない…ように見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
この侮りと思い上がりも、視聴者と悪党をハメるための欺瞞かもしれないっつーのが、この作品を見る時難しい(そして面白い)ポイントだね。描かれたものの裏を、勝手に読みたくなる。
LAの事件を通じて、エダマメが詐欺師として人間として一皮以上剥けたこと、それを導いたのがローランだったことは間違いない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
しかし金髪クソ野郎が後ろでニヤニヤ笑う中、体を張って事件に飛び込み、見つけた自分を叩きつけて仲間を繋いだのは、エダマメ自身である。
彼はもう、ピノキオじゃない。
そこを見落とすのは天才詐欺師らしからぬ…とも言い切れない、テキトーでノリ任せ(に見える)部分があるのも、また描かれてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
オズの登場で、”親超え”というテーマはより鮮明になり、上に立ち続けたローランの驕りもまた、良く見える。
エダマメの足だけが、実体として描かれたタイトルカット。
仲間だ復讐だと吠える過去の連中も、仕事を共にしてきた現在の仲間も、散々現実に摩耗されたエダマメには、影にしか見えないのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
遠く見据えるクルーザーの中で、エダマメが何を思うか。自分たちを、どう見つめているのか。
それは、影たちには預かり知らぬところである。
少なくとも、親殺し仲間殺しの衝撃は生き方が歪むには十分だと感じられ、朱雀に入り込む歩みも、闇に沈んでいく一歩も、説得力がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
同時に、分かりやすい感情を発火させ煙幕に使う手口も散々見せられたので、『墜ちて当然』の感覚を疑いたくもなる。
エダマメは沈むのか、浮かぶのか。どの”親”に手を差し伸べ、殺すのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
焦点はそこに絞られてきた。
流されるばかりだった主役がキャスティングボードを握る構図は、最終章に相応しいと思う。
詐欺師に落ちたときも、詐欺師をやってる間も。
握れなかった運命の手綱は、今彼の手にある。
エダマメが仲間と親の(偽装された)死をテコに、朱雀に食い込んだのに対し。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
ローランはドロシーへの執着を覆い隠し、変わらぬ友誼を演じることで、龍虎帮の通訳に舞い戻る。
海をまたいで関係を作る時、要になるヴァイタルパート。
©WIT STUDIO/Great Pretenders pic.twitter.com/n9JKe5YuwW
その重要性を判っていながら…判っているからこそ、劉は帰還した旧友に任せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
彼が亡霊に取り憑かれた、復讐鬼だと知らぬまま。
大人の証、悪徳の印たるタバコを吸い潰しながら、そんなローランの過去を聞いたエダマメは、深い影に沈んでいる。むっつりと黙り込み、真意は見えない。
彼がローランとオズの絵通り動けば、二大組織は共倒れに終わる。その舞台は、しっかり整えられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
しかし、刺すならそのタイミングだ。
自分を捨てた父親、子供扱いで便利に使うクソ野郎。
エダマメの怒りには、確かな足場がある。
©WIT STUDIO/Great Pretenders pic.twitter.com/JysIzPDa58
どんだけ長く語られようとも、過去は取り返しがつかないもので。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
ドロシーの復讐のため、長い長い絵を描いた”親”の執念は、エダマメには届かない。
彼にとってそれは他人の物語であり、自分の物語とはつまり、母の死と正義からの脱落、側にいてほしかった乳の不在と裏切りだ。
見捨てられた子供として、嘘の犠牲者として、彼には”親”を刺す正当性がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
煮えたぎる怒りを収め、過去を許す。
『どうにもならなかった…』という、謝罪にはあまりに情けない”親”の言葉を受け入れて、大人になる。
コンフィデンスマンとして、最後の仕事を成功させる。
傀儡であることを表向き受け入れた時、瞳に宿る闇。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
消えていく”親”を見下ろしながら、取った携帯電話はどこに繋がるのか。
見た目通りに状況が進んでいないことを、チリチリとくすぐる演出が元気だ。
エダマメは、誰を刺すのか。
最終章の焦点はやはり、そこにある。
一方過去を語られ”人間”になった怪物も、その脆さと危うさを見せつけてくる。亡霊…良いじゃないローラン君。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
スカした態度のプレイボーイは、その実たった一つの愛、失われた虚空に突き動かされて、巨大な復讐劇に踊る、もうひとりの傀儡だったわけね。
©WIT STUDIO/Great Pretenders pic.twitter.com/RqkK0b3y1i
降り損なった最後のビズを、別のメンバーで再演する復讐劇。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
絵を書き、予行演習を重ね、全てをコントロールしているように見えたローランが、一番危うい…かも。
ドロシーの現臨は、エダマメとは別の焦点を上手く照らして、非常に良かった。
澄まし顔の奥にいる怪物を見るのが、一番好き。
ではエダマメの喉に巣食った化け猫は、彼を家族の檻に落とすのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
親愛の表れであり縛り付ける軛でもあるネクタイは、もう一つの”親”…死せる母と生けるアケミ、両方のトーテムで飾られている。
”猫”を活用して、母達の綱引きを成立させてるのは好きな演出。
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アケミがエダマメに向ける視線のキモさはなかなか独特で、このお話でも結構好きな部分である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
第2話で簡勁に描かれた、病室の髪留め、親子の関係から作品に前のめりになった立場としては、エダマメはお母さんを裏切ってほしくない。
しかしアケミの引力はネクタイを通じ、彼を絡め取る…ように見える
お互い本音を隠した猿芝居、何が通じ合うかは通訳のさじ加減次第。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
詐欺師達は瞳で通じ合い、口から毒を垂れ流していく。巨大組織の心臓に、致命的な混乱を意識して注ぎ込んでいく。
プライドを擦り回し、感情を煽り立て、譲れない状況を組み立てる。師弟共演、見事な演技だ。
ここまで”言語”を裏テーマに、世界中を駆け巡ってきた物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
その最後の舞台が、他人に言葉を預ける怖さで整っていくのは、なかなかに面白い。
優秀な翻訳マシーンだと思っていたものが、悪意を増幅させ、地獄に引きずり込む罠だとは、ヤクザ共も思うまい。
そこら辺の創造力を奪うべく、親殺し仲間殺しの舞台を作り、過去の友情を逆手に握って、深く入り込んだ、とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
交渉の舞台は脇役の思うままコントロールされ、蛇たちは金ピカの飾りに刃を隠す。
かくして、舞台は整った。
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会談に向け、悪態をつき化粧をする悪党どもを描くのは上手いなー、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
彼らはのっぺりした顔の”悪役”ではなく、それぞれどうしようもない人間味があり、同時に子供を攫って人を裏切る、どうしようもないクズだ。
別れた息子に情がある? んじゃあ、他人の子供売っぱらって良いの?
そんな割り切れなさが、アケミという”親”を中心に踊る喜劇からは滲んでくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
これはエダマメが放り込まれた”仕事”の生っぽさを引き継いで、人間だからこその共感、それが生むかもしれない裏切りへと、上手く視聴者を運んでいく。
良いも悪いも引っくるめて、相手は人間。なら情も湧く。
その上で、捏造した信頼を土足で踏みにじるクズになれるのか。”騙す”という詐欺師の本文を、誰に向かって振り回すのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
決戦を前に、疑念は深まっていく。やっぱ髪を下ろしたアビーちゃんは、クールな感じで可愛いね…(キャラ萌えダイナシ人間)
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『大人なんだから大丈夫』というシウォンの言葉が、綺麗に逆さに突き刺さるのが上手いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
大人だからこそ、クソ親が勝手に作ったレールに反逆し、自分の意志と怒りで闇に落ちていく決断だって出来る。
踊って当然と見下していた相手に、打算と道理を蹴り飛ばした一撃を入れるかもしれない。
エダマメが”それ”をする男だということは、シンガポールでたっぷり見せた。その無茶苦茶に踊らされ、救われたアビーちゃんが警告役を担当するのは、良いキャスティングだと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
あの時は過去の鎖を断ち切り空に飛び立った、エダマメの魂。それが、今回は闇に沈むかもしれない。
浮かれた箱根の酒盛りの影で、コンフィデンスマン達は疑念を深める。”そこ”がサスペンスの焦点なのだと、作品が語ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
ここら辺の意識誘導は過去の描写を活かしつつ巧みで、この作品らしい運び方だな、と思う。さー、どうなるかな~。
二人の詐欺師は、共に窓を見つめる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
その先にあるのは、過去か未来か。
胸を縛り付ける複雑な呪いか、それを越えた先にある開放か。
謎と危うさを孕んだまま、物語は最終局面へ。
許すのか、許さないのか。それが問題だ。
©WIT STUDIO/Great Pretenders pic.twitter.com/Cuob2hl0kN
という感じの、過去と現在を橋渡しするエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
最終局面に向けた問題点の整理、いくつかの仕掛け、危うい感情。色んなものが的確に切り取られ、非常に良かったです。
エダマメは”親”を、ローランはドロシーを救えなかった自分自身を…”許せない”のは同じなんよな。
そんな二人の意地とエゴがぶつかることになる、頂上会合。当意即妙の通訳芝居で、上手いこと状況を作ったけども、さてどうなるか…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
壁の塗替えシーンを挿入してたのは、あからさまな伏線よなぁ…ローラン得意の、舞台全部を入れ替える大ドンデン。弟子が仕掛ける…か?
©WIT STUDIO/Great Pretenders pic.twitter.com/nHmbtgrd6z
詐欺師のハメ手、ビジネスの行方と同時に…あるいはそれ以上に、キャラクターの信念と決断、未来が気になるように組まれてるのは凄く良いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
コンゲームとしてはやや甘めな本作だが、だからこそプロに成りきれない人間の熱量は、作品のエンジンとしてよく機能している。
誰かに操られるピノキオでしかなかった青年が、辿り着く決断の果て。物語の焦点はやっぱりエダマメにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月4日
それをしっかり、視聴者に再確認させるエピソードでした。
飛ぶか、沈むか。どっちにも転がりそうなサスペンスが、しっかり詰まった最終局面。次回も楽しみです。