体操ザムライを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
”アラガキMk2”完成のため、献身的に協力するレオ。
そんな彼のバレエ復帰を助けようと、あまりに真っ直ぐな視線を向ける城太郎。
ローザンヌで少年が見たもの、サムライが見たもの。
強さとは、一体どこにあるのか。
称賛、羨望、嫉妬に無理解。
闇夜に輝く梟の眼が、僕を貫く。
そんな感じにすれ違う生き様、体操ザムライ第9話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
揺れる玲ちゃんに寄り添い支えてくれた、気のいいニンジャ。
彼の抱えた弱さに城太郎が手を差し伸べ、強すぎる視線にレオが逃げ出すエピソードとなった。
城太郎のヌボっとした雰囲気が、我が道を貫く独自の”凄み”になってきたのは面白い。
城太郎はかなり周りが見えない、自分以外に視線が行かないキャラである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
それが致命的な鈍感ともなりうるのは、前半を牽引した玲ちゃん周辺の描写でも明らかな通り。
同時にその鈍さは、周囲の雑音に惑わされず我が道を行く強さともなり、故障も衰退も飲み込んで進む孤高を支えている。
しかしその歩みには、当然傷も揺れもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
レオを勇気づけたローザンヌの演技に、隠された死別の悲しみ、迷いと痛み。
無敵の自由人に見える城太郎もまた、当たり前の人間として弱さに震え、それでもなお己の道を進もうとしている。
そこには長所も短所も一繋がりの、人間的な魅力が燃えている。
同時に相手に応じて差し出す手を変える器用さは城太郎に無く、レオの体に刻まれた才能と努力に期待する強い瞳は、彼をステージから追い出した眼と同じように受け取られてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
世間が自分をどう見るか、過剰に気にしない男と、気にしすぎる男。正反対の生き方がすれ違う。
その上で、荒垣家の人々は強い瞳でもって、レオの可能性を見つめる。それは顔のない怪物の瞳とは違う、共に支え合ったからこその信頼。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
言葉で言っても伝わらなかった思いを、アスリートたる城太郎が証明する手段は一つしかない。
レオと共に生み出した、アラガキMk2を飛ぶ。
最高の演技をする。
城太郎にとって、全日本の勝敗はもはやその先にある、ただの結果だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
若い鉄男が迷いつつ掴み取った、純粋な勝ち負け。
頂点に立つリュウが、自分が踏みつけにしているものを自覚しつつ見せる、勝ち続ける意思。
それとは別で、でも同じくらい意味があるものが、高い頂で火花を散らすだろう。
舞台からも、荒垣家からも逃げ出してしまったレオの心に、みんなで飛ぶ”アラガキMk2”は届くのか、否か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
山あり谷あり人情ありな、城太郎の競技人生が目指す頂が、グッと陰影を増すエピソードであった。
朗らかなニンジャが仮面の奥に隠した弱さも、よく見えたしね…レオもまた、辛いのだ。
というわけで、まずはニンジャのオリジン開陳から。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
不屈の闘志を滾らせるサムライに、心を踊らせた過去。
それが瞳に焼き付いていたから、レオは日本に…サムライの元に救いを求めた。
観客席からの視線に、男が何故燃えているかは当然、分からない。
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AパートとBパート、観客席と舞台、レオと城太郎。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
二度繰り返される白黒のローザンヌは、憧れの視線が取りこぼすものを的確に描く。
レオが過去を捨てて、自分を貫く視線から逃げて求めた、サムライの強さ。
その裏側に何があったかを、当然彼は知り得ない。
親子でも、分からないことは当然ある。そう描いた玲ちゃんの物語を、優しく支えてくれたレオ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
彼もまた、当然のごとく見えていないものがある。
人間誰しもそんなもので、だからこそ人の心を慮り、手を差し伸べようとする歩みは尊い。
レオも城太郎に、玲ちゃんに、そうしてくれたはずなのに。
不思議と自分のことになると、影が生まれて見落としてしまうものがある。掴みそこねるものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
遠い月を見上げて、喪ったものを取り戻そうともがくレオに希望を差し出せるのも、城太郎が”他人”であるが故か。
それを拒んでしまうのも、レオが”他人”だからか。
迫る全日本に向け、城太郎もタッキーも気合十分。レオも献身的に、その練習を支える。タッキーが実力あるの、凄い好きよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
憧れの人が再び飛ぶために、差し出せるものを全て捧げたい。
そんな献身の裏には、重圧と敗北に憧れの星が飲まれてほしくないという、エゴが香る。
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多分、それで良いのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
みんな身勝手に他人に夢を載せて、勝手に手を差し伸べる。
完璧になんて重なり合えないまま、独自のやり方で自分の夢を追い求めていく。
そんな凸凹が噛み合って、山も谷もある人生を歩いていける。
玲ちゃんが泣けるようになり、城太郎が飛べるようになった。
レオの荒垣家への献身が、舞台ですり潰されたエゴに救いを求める代償行為だとしても、その尊さは変わらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
身勝手な祈りに支えられたから、城太郎の視野は広がり、玲ちゃんは未来に飛び立てた。
それに、返せるものを返したいと思う瞳にもまた、強すぎるエゴが光る。そういうもんだ。
それを自分を追い込んだ凶器の同類と、思い込んでしまうのもまた仕方がないと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
しかし身勝手しかない怪物たちの眼と、レオを見つめる家族の視線は確実に違うはずで、その差異はもう言葉では届かない。城太郎、マジで言語コミュニケーション下手だし。
なら、飛ぶしかない。体操選手なんだから。
そういうところまで行くのが、今回のエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
池袋を騒がし、後に城太郎のキャリアを足元から揺るがす白いフクロウ。
『お家に帰れると良いね』と、事情を知らず呟かれた言葉にレオは視線をそらし、城太郎はその震えをしっかり見る。
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あの無神経な男の視界がこうも広がったのは、やっぱりトンチキ忍者が色々、勝手に献身してくれたおかげであり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
城太郎にはその自覚があるからこそ、なんとかレオの未来が明るくなるよう、手助けを返したい。
でも…例えばキティちゃんが玲ちゃんにしたような、爽やかな器用さは彼にはない。
愚直に飛び、自分の強さを相手にグイと差し出すやり方しか、この体操バカは知らないのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
それで生まれる軋轢もあるし、救いもまたあるのだろう。
ローザンヌで少年を焼いた炎は、城太郎が城太郎だからこそ生まれた熱だ。その不器用も含めて、サムライはサムライ以外にはなれないのだ。
というわけで、完成なったアラガキMk2。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
憧れの星が再び高く輝く期待に、レオは瞳を輝かせる。
感情を表す表現は、やっぱりバレエの形を取る。そうやって体に染み込ますまでの苦労と情熱を、アスリートである城太郎はよく知っている。
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だから、再起に手を差し伸べようと強い視線を送る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
優しく見守るとか、上手く距離を取るとか、そういう起用なことは出来ない。
彼がバカなのは、ここまで9話見守ってきて、僕らも分かっている。距離感掴めない真っ向勝負、”勝ち”しか見えない前向き加減は、凄く荒垣城太郎”らしい”。
何しろ、足を取られた梟を助けるために、大事な足首ひねる大馬鹿なのだ。いやホントにバカだなッ!?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
考えるより先に体が動く、後先のことは動いてから。
衝撃の引退撤回会見もそうだったが、サムライの直情主義は血に染み付いてるね…まぁしょうがねぇ。This is アラガキ
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家を見失い、網に囚われたフクちゃんはレオのシャドウなのだと思う。それを放って置けないのは、城太郎としては当然だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
結局お家に帰れたフクちゃんと同じように、迷えるレオが自分の空を見つけ直せるのか。
それは、飛んでみないと分からない。羽根を癒やす止り木は、十分用意したけども…。
ギョロッとした眼が特徴的な梟と、レオを焼いた顔のない怪物たちが奇妙に重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
才故に期待され、称賛され、遠ざけられた。勝手に囀る外野の声を、気にせず舞えた時代は終わった。
エージェントさんは、顔を持ってレオを見ててくれたのね…。
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我が道を行き続ける城太郎の鈍感と、顔のない瞳に怯えるレオの繊細。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
二つは正反対のようでいて、城太郎はレオの助けで周囲を見れるようになったし、離れてなお、レオの体はバレエを踊り続ける。
何があっても飛ぶべき空は、確かにレオの中にもあるし、レオ的な気遣いも城太郎に伝染した。
というかレオの中に燃える不屈の炎に、火をともしたのがローザンヌの城太郎、とも言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
だから、地面に墜ちてなお、サムライに救いを求めた。また天高く飛び立てると、教えてくれるような気がした。
そんな星が、無残に潰れるかもしれない。
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アスリートは怪我との闘い。リスクを抱えてなお、夢のため、自分のために飛ぶエゴイスト。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
城太郎と天草さんとブリトニーは、そういう理屈を飲み込めている。”かもしれない”で潰れない強さを、共有している。
しかしレオは、そちら側にはいけない。
何が求められどう飛べば良いのか、まだ分からない。
自分を大事にして、飛ばないで欲しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
レオの気配りに思えるものが、その実自分の理想が汚れないで欲しいというエゴなのが、やっぱり好きだ。
誰かのため、みんなのため。
そういう綺麗事の裏にある、我欲の泥をこの話は見落とさない。
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同時に時に身勝手と非難される我欲こそが、誰かを支える足場になることも。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
きれいに見えるものの裏には身勝手があって、勝手に差し出した腕が誰かを救うことがある。
当然、あまりに強すぎる視線で傷つけることも。
城太郎には、レオの弱さは分からない。…分かっているが、器用には踏み込めない。
レオが涙で拒絶した、城太郎の真っ直ぐすぎる強さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
それはローザンヌで彼に希望を与えたときから、揺るがなく思える。
だがその裏側に、愛する人と別れてなお飛ぶ哀しさがあったと、レオは知らない。
荒垣城太郎は、無敵の機械なんかじゃない。
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死という絶対の離別に引き裂かれて、それでも届かないものに手を伸ばして、無様に地面に落ちた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
ビデオテープに残った思い出に縛られ、現世で微笑む娘の笑顔に支えられ、死してなお残ってくれた微笑みに勇気づけられて、愛する人のいない世界を進んでいこうと思えた。
玲ちゃん…君は本当に…。
無神経で一直線に見える城太郎も、当然人間としての震えを抱えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
この”人間”の再発見は、”よく出来た娘”からどんどんはみ出して”荒垣玲”になっていった女の子の物語と、どこか重なるものがある。
みんな、見た目通りの記号ではありえない。複雑な陰影と感情に揉まれながら、それでも道を選ぶのだ
そうやって表面に貼り付けた”自分らしさ”を、嘘っぱちだと踏みつけにしない所が、僕がこのアニメの好きな部分だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
強がって、頑張って演じていた優しさや強さが、誰かを支え導くことは沢山ある。
内側から自分を突き動かすものも、外側で演じる殻も、両方大事で尊い。
このアニメの人物描写からは、そういう視線を感じる。とても豊かで、とても好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
城太郎の無神経な(に見える)”強さ”に、自分をステージから落とした瞳と同じものを感じて、レオはついに止り木を飛び出す。
そんな彼が、無事に”お家”に帰れるのか。
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『帰す、飛ばす』と決めた強い瞳は、これ以上ないほど確かに、人間の顔に宿っている。無謀の怪物と同じではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
レオと辿り着いた、四回転の新境地。アスリートが出来る、唯一にして最高の表現。
サムライとその娘。の闘いに、もう迷いはない。
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という所で、体操ザムライ次回に続く、である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
城太郎の強い思いがすれ違い、レオが家を出ていく下げ調子の展開であるが、お互いの”らしさ”が対比されつつ共鳴して、とても面白い書き方であった。
この作品が見据える人間像、世界観がどういうものか、強く滲んだ話だったとも思う。
安易に解りあえるとも、変われるとも言わないけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
思いが伝わらないとも、支え合えれないとも描かない。
ローザンヌで見た炎の裏にあった、あまりに人間的な震え。皆にある弱さと怖さに、立ち向かえる強さ。
それはレオの中にもあって、その助けで生み出された新技を、城太郎は届けられるか。
そこが問われる、全日本選手権となりそうです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年12月8日
大人として器用に立ち回ることなんて出来ない城太郎が、だからこそ突き進む”体操”の強さを証明出来そうな流れで、次回も非常に楽しみ。
レオは本当に良いやつだからなぁ…飛びたがってる心身を、城太郎の飛翔を受け取り、開放させてやってほしいね…。