BEASTARS 第2期を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
血まみれの夏を超えて、少年の日常は続く。
未だ何も解決していない喰殺事件の残滓が、ガラガラ音を立てて這い回る。
ルイのいない学園に漂う亡霊の気配に、レゴシの耳は尖る。
未だ繭の只中…しかし、目覚めの気配に満ちて。
新学期が始まる。
というわけで! 待ってましたのセカンドシーズン、BEASTARSアニメの第13話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
モロに前回からの続きであり、クオリティも世界に満ちた空気も一切衰え無し、みんな元気で可愛かった。
一期の激闘が嘘のように、穏やかに始まった新学期。犬チームの仲良しっぷりが、なんとも目に優しい。
しかしレゴシ(と、彼を通じてこの世界の実相を垣間見た僕ら)に生まれた変化は確かに動き出していて、学園という揺り籠で微睡んでもいられない物語の身じろぎが、静かに元気でもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
肉食と食肉が、奇妙な同居を強いられる世界。
それでもヒトでいたい獣人が、本音に蓋して牙を塞ぐ世界。
恋と闘争、自分と世界に思い悩むレゴシはこの穏やかな滑り出しから、血と欲望に塗れた外界へと飛び出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
変わらざるを得ない衝撃を受け止め、色んなモノを振り捨てて”レゴシ”になっていく。
そんな歩みが、アニメでどう描かれるか。期待の高まるスタートとなった。最高としか言いようがねぇ。
今後レゴシは同族のサークル、子供を守ってくれるアジールから飛び出していくことになるので、起点たる今回は犬チームが画面の真ん中に座る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
サイズは違えど同族、肩の力を抜いた十代少年の友情が、上手く行かない天体観測に宿る。
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思えば深夜の惨劇から始まったこの物語、第二期もまた夜から始まるのは呼応を感じ、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
テムの喰殺はシャレにならない残酷さと、取り返しのつかない悲惨に塗れていたが、天体観測も真夜中のおばけも、生きているものには青春の1ページだ。
子供たちは剥き出しの現実から守られ、健やかな人格を育てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
”学校”に込められた理念そのものの、真夜中の友情。それをぶち壊しにする生々しさが確かに、学園にはまだうろついている。
事件はまだ終わっていないし、始まってすらいない。
レゴシは夏の冒険を経て、それをもう知っている。
肉食は肉を食うものだし、草食は食われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
なんとなくそんなもんだと大人ぶってみても、殆どの子供たちに実感がない世界のルール。
裏一で、血みどろの修羅場でそれを体験し、ルイやハルちゃんを鑑に”大人な自分”の手触りを確かめてるレゴシは、周囲の同族から少し離れた場所に、もう立っている。
今回レゴシは微笑ましい青春に包まれつつ、そこに同化しきれない異邦人としての顔を、よく見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
12話分の試練を潜り抜けて、ボケっとした狼は自分が男であり肉食であることを、否応なく思い知らされた。
友達とバカ笑いだけ出来る時間は、もう終わりだ。
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しかしすんなりと、自分だけの世界に自分の足で進めるわけでもなく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
恋人と思いたい人との間には障壁が幾重にも重なり、膝を曲げて同じ視線に立とうとしても、思いは伝わりきらない。
草食(≒弱者)独特の、相互監視を前提とした社会性の檻。犬たちが朗らかに過ごす時間とは違う異界。
レゴシが自分の中の慕情に手を伸ばすということは、ハルちゃんが草食として否応なく囚われる”そこ”にも、片足を突っ込む、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
陰気で、人付き合いの下手な狼。静かに耐え、待ち偲ぶことを答えとする獣。
そんな自分のままじゃ、なかなか越えられない壁。
それが目の前で、キュートなウサギちゃんの姿を取っているのだから、難問でもなんとか向き合い方を見つけなければいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
レゴシに待ち構える課題は、暴力だけでは解決しない。
”女”という異種、”草食”という異物をどう噛み砕くか。
純情ボーイには、ちと難しい。
しかしそれでも、光と闇の間をおっかなびっくりうろつきながら、レゴシは進んでいくしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
演劇部でも光の当たる場所に背中を向け、影に身を置こうとするレゴシ。肝試し風味のスナップは怪物を捕らえ、学園の公器が解明に乗り出す。
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『部長は相変わらず可愛いなぁ…』と、ホッコリもするが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
いかにも青春の1ページな亡霊騒動から、レゴシはやっぱり距離を取る。
それは彼本来の性格であるし、自分の中にある獣性で他人を傷つけないため学習された、第二の天性でもある。
それは思春期に起きた事件で強化され、また変化する。
その一端を握るアカシカは、大人びた表情でレゴシに前に、唐突に顔を出す。ルイ先輩…相変わらずセクシーだね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
彼もまた、学園という檻=揺り籠から運命に巻き込まれ、半強制的な変化の只中にいる。
その背中もまた、レゴシには遠い。
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自分が自分でいられるステージは、離れてみればひどく白けていて、終わってみれば芝居は虚しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
強者を仮面で演じ、いつか転落する日を渇望されながら綱渡りしていた青春は、ルイ先輩には終わったものだ。
少なくとも、彼はここで、レゴシにはそう告げる。ンモー!(既読者特有の慨嘆)
サラリと学園にさらばを告げるルイ先輩の、颯爽毅然とした対応。背中に宿る距離。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
それはレゴシ現状の視界であり、彼がなぜ、何を思ってこの行動に出たのかは、まだ見えない。
明暗は逆転し、虚栄の高みから堕ちた王者は闇に沈む。
しかし狼も、光の中を堂々進めるキャラじゃない。
それと知りつつ希望を託したのは、自分が向き合ってる現実の暗さからレゴシを遠ざけたいからであり、自分がもう戻れない(と思いつめている)場所を、後輩に代理してほしいからでもあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
レゴシ主観のルイLOVEが目立つけど、ルイ先輩も相当なレゴキチなんだよなぁ…。
その名前を消してしまえば、何かが終わってしまうようで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
レゴシがためらうものを、カイはスルリと消し去ってしまう。
ジュノが真ん中に馴染む同族との輪にも、上手く入れない。そのくせ、女王候補を無自覚に弄ぶんだから…罪なボーイよ。
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友人との共同体。青春の揺り籠。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
演劇部の日常。人工月下の語らい。
レゴシは学園が自分に提供してくれる”当たり前”と、どうしても距離がある。
踏み込みきれず、同化しきれない異物性が壁になって、彼は世界のノーマルをその顎で噛み砕けない。
それは本音と建前が乖離し、生得的で否定し得ないエゴが裏町に流れ込んでいる”当たり前”も同じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
ハルちゃんを食べようとした自分と、愛したい自分。
『お似合いのカップル』と世間が称揚するだろうジュノを、どうしても恋の相手と見れない自分。
レゴシはここまでの歩みで、それを思い知っている。
世の中も他人も自分も、なんだか上手く噛み合わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
それでも牙をむき出しにする度、知らなかった世界の美しさを浴びる度、何かがちょっとずつ見えてくる。
それは今まで当たり前だったものを遠ざけ、新しいものを当たり前にしていく。
誰もが歩む、変革の季節。青春のど真ん中。
その近さと遠さを、今回のエピソードは静かに語る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
”調和”を花言葉にもつ秋桜が、静かに見守る学園。
幽霊騒動は罪のないイタズラで、テムの死は半年前の思い出として、皆が忘れ去っていく。忘れたふりで、日常に帰還していく。
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それはレゴシには、もうガラス越しの遠い風景で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
世界の矛盾に噛み砕かれた友達の声は、レゴシの耳だけに届き、彼を駆動させる。
その行動はあまりに唐突で、剥き出しに暴力的で、彼を心優しい仲間から浮かび上がらせてしまう。
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それでも、耳をそばだて目を開いて、世界に何があるかを見つめ続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
それが、社会の異物でしかない自分を何処に置けば良いのか、自分がどこにいるかを掴み取る手立てだから。
守られ、身を潜めるだけで済んでいたレゴシの子供時代は、伸びる身の丈に合わせて終わりつつある。
他人が見ない(ふりをしている)ものを見て、聞かない(ふりをしている)ものを聞く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
レゴシだけに聞こえるガラガラ音は、彼が身を置きつつ馴染みきれない諸集団(犬チーム、演劇部、同族集団)から巣立つ頃合いなのだと、告げる鶏鳴なのかもしれない。
物語は、まだ終わってない。始まってすら。
というわけで、レゴシ青年に新たな戦いを告げる謎のニューカマーが顔を見せて、二期第一話は終了である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
一話まるまる使って描かれた、暖かく穏やかで当たり前な学園生活。ルイが背中を向けたコスモスに、レゴシもやっぱり馴染めない。
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そんな男たちだから、運命は捻れて絡み合い、離れたように見えて再び接近していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
今回後ろに回したルイの物語を、次回以降どう描くかも楽しみです。
BEASTARSのアニメは、オレンジの鮮烈な表現力も素晴らしいけど、原作の再構築力も個人的な見どころなんだよなぁ…。
ちょうど今日、堂々の最終巻刊行となった原作の僕はファンで、だからこのアニメ見てる部分は大きいけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
しかし詩情と聡明に溢れた筆致で”BEASTARS”を書き直してくれるこのアニメが描くものは、アニメ独特であり、一分においては原作を超えてもいる。
メディアの違いを活かし、新たな物語を紬ぐ。
最大限のリスペクトを溢れさせながら、あえて穏やかさを強調しながら進み、そこに馴染めないレゴシを縁取っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
色んな人が終わりにしている物語が、これからようやく動くのだと、新たな始まりに相応しい息吹を吹き込む。
そういう力のある、とても良い第一話でした。
僕はこのアニメに溢れる当たり前の、しかしあまりに多彩な青春、そのド魔ん中にいる子供たちの表情がほんっと好きなので、犬チームに重点して魅せてくれた今回嬉しかった…みんな可愛いなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
特にジャックボーイは最高に可愛くて、この後のドン曇りも期待大です。可愛い子には号泣させろっ!
歪んだ嗜好の吐露はさておき、物語は学園の…餌食と捕食者が共にある世界の歪みへと、深く踏み込んでいきます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月7日
その闇の中にこそある光に、それぞれの立場から踏み込んでいく青年たち。
彼らの血みどろの冒険がまた見れて、力強く輝く確信が貰える、いいスタートでした。次回も楽しみッ!