BEASTARS 第二期を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
己の事件として、テムの喰殺を掘り返す覚悟を決めたレゴシ。
犯人を探る言の葉は、ナイーブな子供たちの臓腑を抉る。
部室に満ちる獣気を抜くのは、奇妙な新入部員から生まれる風。レゴシの学園生活は、新たな局面へと移る。
その裏側で、闇に沈むルイ”組長”…その起源とは。
そんな感じの、牙剥き出しの青春日記、BEASTARS第15話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
ガンマイクとプレスコを駆使して、演劇的空間をアニメーションに降臨させてるこのアニメの強みが、ぐんと迫ってくる話数となった。
身体的距離感を幻視出来るような、息遣いのあるやりとりがやはり良い。
梶くんがベスト配役なピノの水入りで、雲散霧消するレゴシとビルの唸り声。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
ソリの合わない学生たちは、しかし学生という立場、学園という場所、思春期という時間に守られて、剥き出しの敵意を直接ぶつけ合いはしない。
世の中のスタンダードから少し遠ざけられて、自分と世界の適正距離を探せる時間
銃弾で人を殺し、自分を殺し残ったルイにはもうそういうシェルターはなく、食うか食われるかの土壇場で強い自分を演じ、生き延びる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
肉食の哀れな餌食でも、便利な看板でもなく、獅子を従えた最強の草食になる。
そのために、食い慣れない肉をなんとか胃に落とし、目に力を入れる。
ヒリツイた大人のリアルにひと足お先、身を浸したようでルイは、学園では得られない人間関係と潤いをシシ組で獲得していくことになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
牙剥き出しのようでいて、妙に居心地良く”自分”でいられる場所。仮面を付けて演じる生き方は続行だが、今までの芝居とは違う演目。
その始まりがどんな色だったかを描くことで、光の側に踏みとどまったレゴシの歪みや納得、それをぶち壊す長い影も色濃く見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
やっぱレゴシとルイの青春を混ぜ合わせつつ進む二期の語り口は、なかなか味わい深い正着だなー、と思う。
W主人公の面目躍如。
物語はレゴシが、控室に爆弾投げ込むところから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
皆が忘れようとしている、なかったコトにしている肉食の本音をあえて引っ張り出して、犯人をあぶり出そうとする試み。
それはビルのマチズモに擦れて、ビリビリと火花が散る。
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レゴシは下手くそな役者で、例えばルイのように、学生社会の中で求められる役柄を見事に演じ切れはしない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
挑発で真実を暴き立てようとして、自分が撒いた火種でしっぽが焦げ付き出す。
ナイーブな性意識を煽られて、隠してるつもりの暴力性が喉の奥、唸り声を立ててしまう。
演じてたつもりが本気になって、その本気が結果として演技の目的を果たす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
なかなか複雑怪奇な状況が、遠目で見れば微笑ましい青春にも見える。
胸ぐら掴み合っても、喉笛に牙はかからない。あくまで学生同士のじゃれ合いと、ゆったり見れる…が、演じる当人にとっては本気も本気。そこも微笑ましい。
僕はビルが結構好きで、あの世界の一つのスタンダードなんだろうなー、と思わされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
マッチョな自分に酔い、暴力と性をこれみよがしにぶん回すけど、根っこの部分では結構社会を見ている。
草食大事という建前に、自分なり本能を跪かせて、なんとか上手くやる練習をやってる男の子。
そんな彼は、友達を食わないし牙も立てない。立てそうになると、いいタイミングで水が入る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
歩きながら芝居をしているような、独特な空気をまとった美青年。ピノくんはビルとレゴシの間で高まった内圧を上手く抜いて、衝突の危機を回避させてくれる。
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だが当人はとにかくド天然、なにかいいことしようと思って傲岸不遜なわけじゃない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
他人は他人、自分は自分。
そんなミーイズムを麗しくまとって、角も美しいニューカマーはその存在感を力強く示す。
ヘンテコだが、なんかある。
そんなキャラクターの、良いご挨拶だ。
すっかり毒気を抜かれて、控室の衝突はふわっと落ち着く。学生同士、このくらいが丁度いい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
しかしそんな甘っちょろい場所で、ヌルく生きれなくなってしまった元級友もいる。
ルイは如何にして、シシ組のトップに座ったのか。
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ルイと組長が向き合う土壇場には、衝突をギリギリで上手くせき止めてくれる幸運はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
銃弾は無残に放たれ、ルイは殺人者となる。
そのまま犠牲者として全てを終わらせたくても、ヤクザの計算が死なせてくれない。
ある意味ルイを取り巻く運命は、ピノくんより空気読めない水入れ役だ。
学生たちが剥き出しの本音と適度な距離感と、守られる立場の気楽さをないまぜに演じる優しい青春。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
そういうものを剥奪され”4号”として生まれ落ちたルイは、獅子たちの嘲弄と食欲、銃弾と政治によって再び、舞台に立たされる。
今度の役はヤクザの組長、あるいはただの肉。
突きつけられたリアルを前に、赤と青の生々しさがルイを縛り付ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
肉になるか、悪になるか。
選択権があるようでない状況で、生粋の役者は演じるべき役割を見定め、腹を固めて喉に落とす。
俺は目の前にある、肉の塊にはならない。
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食う側に突き進む芝居を、ルイに決意させたのは何なのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
運命と欺瞞に翻弄され、哀れな餌食と終わる…それを期待されている現実への苛立ちか。
殺人によって社会の宿命から逸脱したはずなのに、裏社会でもなお草食/肉食の複雑な政治が、本能と一緒に絡みついてくる現状への怒りか。
どっちにしても、ルイは『臆せずステーキを喰う自分』を演じることで、生きるか死ぬかの局面に答えを出す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
赤と青の鎖を引きちぎり、自分なりの舞台を定める。
そこに何が宿っていくかは、レゴシの未来と同じく不明の演目である。面白いのは間違いない。
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そんなルイの代わりでもあり、演じ続けたルイとは大違いのド天然。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
ピノくんはソッコーで男衆を敵に回し、肉食を敵に回し、部室に嵐を巻き起こす。
いやー…やっぱ演劇部は、厄種の吹き溜まりだねぇ…。
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そういう嵐から距離を取りたいレゴシも、ズケズケ踏み込んでくるセクシーな後輩に手を取られ、ビルの熱血に守られる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
喧嘩もするけど、仲良しでもあって、なかなか”こう”と割り切れない複雑な…豊かな距離感。
これは学生特有だなー、という雰囲気が強くある。ビルを鏡に今回、よく匂い立つ。
単純な極悪人も、完璧な善人もいない、男女肉草入り混じった社会の縮図。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
そこには新しい風も吹くし、そういう建前を跳ね除けて喰殺する”誰か”もいる。
学園に吹く風は、ひどく色が濃くて多彩だ。レゴシの青春は、いつでもそれに揺さぶられている。
そこで、何を見つけるのか。
肉食男子が屋上で行う、秘密の会合。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
唸り合ってたビルとも、からかい混じりの距離感で触れ合って、疑念すらも共有できる…まぁまぁいい関係。
そこでは空き缶は握りつぶされても、銃弾が飛び出すことはない。人は死なない。
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…はずなんだが、実際テムは食われて死んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
ありふれてありえないほどに貴重な青春に、一滴落ちた生々しい血。
ここにいる誰もが向き合わなければいけない、捕食者の本能。
それを抑え込むために生まれた垣根を、ロリコン変態狼はひょいと超えていく。自爆もする。
アオバは裏市のときと同じく、冷静で真摯だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
レゴシが燃え上がらせるものがどんな重さを持っているのか、レゴシよりもよく見ている。
そういう相手と付き合えるのも、また”学校”の良さなのだろう。
人のふり見て我が振り直す、袖が擦り合う他生の縁。
そんな建前の奥にある、硬質で熱い感触。
レゴシは携帯に呼ばれて、夜に包まれた柔らかな毛皮を引き寄せる。漂うエロティックな空気を、ぶち破るものを嗅ぎ分けてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
どーしてお前は、そこでそういう事を言っちゃうのか。
レゴシはレゴシなので、まぁしょうがねぇ。
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膝を曲げて、対等な視線で、愛し愛される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
そんなハルちゃんからの働きかけの奥にある、未だ融けぬ思い出。
それは思い過ごしかもしれないが、レゴシの胸に確かに宿る。
裏市に消えたルイ先輩を追いかけなければ、自分の恋もままならない。ホント、厄介な男である。
ルイはシシ組の前で吐き気を飲み下し、無敵の草食を演じることで命を繋いだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
レゴシは嗅ぎ取った真実の臭いをそのまま言葉にすることで、恋の気配に背中を向ける。
演じること。言うこと/言わないこと。
過去と現在、学園と裏市を行き来しながら、カメラは青春の舞台を、多彩に切り取ってくる。
こうして並べてみると、ルイは生来役者なのだなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
『こんな偽物の光に、俺は踊っていたのか』とうそぶいてはいたが、オグマに拾われたときから命がけの芝居は続いていて、未だに続いている。
表社会の欺瞞に背中を向けても、弱い自分を嘘で鎧う生き方が追いかけてくる。
レゴシもまた、剥き出しの牙で草食を喰らい尽くせば満足、というわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
社会を成り立たせる嘘を尊重したいのに、牙はそれを許してくれない。
ハルちゃんが差し出した対等な嘘に溺れようとしても、鼻はルイの残り香を(目の前の女に、自分の中に)嗅ぎ分ける。
嘘を付くのが上手すぎる男と、嘘を飲み込むのが下手くそ過ぎる男。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
二人の運命はどう交錯するのか…という話のまえに、名探偵の誘いに乗って黒い影が動き出す。
自分の事件と、厄介事を引き受けるなら、こういう遭遇も起こりうる。
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というところで、次回に続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
デカい動きの前の地ならし的な回なのだが、だからこそゆとりを大きく取ってレゴシを取り巻く環境、ルイが追い込まれた状況がよく見えるエピソードでした。
演劇的な音響で芝居を乗せる、このアニメ独特の表現がよく活きたと思います。
悪友ビルとの衝突と融和、空気読めない新参ピノとの出会い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月21日
学園によくある風景が微笑ましく流れつつ、青春探偵として目覚めたレゴシに触発され、犯人も動く。
この窮地をどう乗り越え、何が生まれるか。
こんがらがった恋の先で待つ、ルイの未来は。
次回も楽しみですね。