BEASTARS 第二期を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
食殺事件の真実を追い、動き出したレゴシに迫る牙。
親友の涙を置き去りに、裏市に向かった彼を受け止めるゴウヒンの洗礼。
一方ルイは吐き気を堪えながら、肉食の業すら飲み込む怪物を演じていた。
差し出された優しさ、再開の予感。
現代のソドムに、想いが燃える。
そんな感じの動物青春群像劇、ゴロリと状況が動き出す第16話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
レゴシは食殺犯の襲撃を受けて学園を離れ、ルイとイブキの距離感が変わってきて、ジュノの接触で次回に続く。
裏市に…そこに蠢く獣達の本音に引き寄せられる青年たちの運命は、接近しつつ触れ合わない。
そこにゴウヒンとイブキ、二人の父性的存在がどんな絡み方をするか…ジュノとハル、二人の女は何を為しうるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
レゴシの食殺犯追跡、ルイの危険な青春でサスペンスを盛り上げつつ、人間ドラマも元気に脈動する運びとなった。
主役二人に絡めて、色んな人間の情と生き様が輝いていくのは、とても良い。
終わった事件を蒸し返すレゴシの動きは、真犯人の焦りを呼ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
盲目の世界をフレームワークで見せる演出、深い闇に思い出だけが灯る表現が、力強く冴える。
暴力で視界を塞がれても、戦う意味は確かに、闇の中にある。
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ハルちゃんの匂いを嗅ぎつけ、獣の衝動がむき出しになった時のレゴシも、この暗闇のような輪郭のない…というか特殊な輪郭で縁取られた世界の中にいた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
獣人は我々人間に似ていて、確かに違う存在だ。
”捕食”というその異質性が、鋭敏なセンスでしっかりアニメになるのは力強い。
同時にレゴシが包まれる特殊な輪郭は、彼(を襲う犯人含め、この作品世界に生きる全ての人間)が苛まれる”本音”を浮き彫りにする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
それは我々にはない牙と肉であり、同時にいつでも我々の側にあり、内側から湧き上がる。
殺人も悪徳も、獣の特権ではないのだ。
自分を取り囲むあやふやな闇に、レゴシが反撃できる理由。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
それは優しくされた思い出、甘っちょろい共存の夢であり、そこから漏れる光を諦めない強さだ。
食殺犯もまた、それを求めて手を伸ばし…鋭い爪でテムを引き裂いてしまった。
暴力的な暗闇は、あり得たかも知れない主役の姿でもある。
レゴシは目を塞がれ殴られる間、自分の出血を意識しない。ワイヤーフレームに変質した世界は、自分の傷を意識させない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
それはジャックがレゴシに相対し、強くなり孤独になっていくその姿に涙した時、初めて溢れ出すものだ。
愛され求められる存在としての自分を、レゴシは認識しにくい。
だからこそ自分の内側にある思い出、草食という絶対的な”外側”から与えられた優しさを引っ掴んで、ヴァイオレンスなファースト・キスを果たしもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
己を顧みない献身と奮闘は、その実自分を大事にできないやけっぱち、だからこそ愛を求める焦燥に支えられているのかも知れない。
そんな男の姿を、間近で見てきたジャック。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
犬と狼。
似て非なる親友の背中に追いつきたくて、でもそれはあまりにも孤独に勝手に、男となり大人となってしまう。
学生として守られた、光に満ちた安全圏。
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そこからはみ出したレゴシが、どれだけの暴力と向き合っているかが、ジャックの目を通じて初めて見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
それでもここで、レゴシを一番最初に見つけ、血を拭い思いを伝えるのはハルちゃんでも、ルイでもなくジャックである。
置いていかれるのも、また。
涙ながらに思いを伝え、強くすがる親友を置き去りにして、レゴシは学園のフェンスを超えていってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
ジャックはそれに追いつけない。綺麗事で守られる幼い時間から、自分の足で飛び出せない。
”たむろしない”
張り紙が、犬と狼の違いを教える。
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ここは榎木さん渾身の芝居で、大変切なかったけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
闇に落ちていったルイ、牙に散ったテムを思う気持ちがあるとしても、レゴシはジャックの懇願を光の中に置き去りにして、心の導くままに裏市へと進んでしまう。
それは、大事な人を光の中に守るための戦いでもある。
学生寮で当たり前に笑って、平和に過ごして、綺麗事に微睡んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
そういう生き方が出来ないことを、レゴシはここまでの歩みで思い知らされている。だから、フェンスを超えて闇に踏み出す歩みに、戸惑いはない。
でも、そうはなれないジャックも、レゴシと一緒にいたかった。
暗闇の中レゴシは、草食たちが自分に向けてくれた特別を思い出す。しかし、イヌ科の同族とバカやってた当たり前の青春は蘇らない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
多分その温もりを思い出してしまえば、戦うことは出来ないから。
ジャックが流す涙の重さを知りつつも、レゴシは征く。一匹狼の、孤独で優しい跳躍。
それは守られる立場からの決別であり、子供時代からの飛躍である…と言い切れるほど、レゴシを取り巻く青春のゴタゴタは物分りよくもないんだけどさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
かっこよく飛び跳ねたつもりでも、縁は切れずに戻ってくる。犬はしつこいのだ。
その煮えきらなさが、青年たちを見守る優しさに通じて、僕は好きだ。
孤独の闇に身を投じたレゴシに、食肉市場の青果店が待つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
緑色の暗闇はオレンジに彩られて、ツンデレパンダの厳しい洗礼が、青春の暴走を受け止める。
ワイヤーフレームの無明から、幼さに向き合う明暗、そして父性が受け止める温もり。
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Aパートには確かな傾斜があって、それに導かれる形でレゴシは新しい自分を見つけていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
ゴウヒンさんはワーワー文句言いつつも、突っ走ることしか知らない若造を無視できない。
笹茶を出し、謎のギミックで拘束し、毛刈りのイニシエーションを敢行する。
ゴウヒンさんに出会うことで、レゴシの傷は治っていき、包帯代わりにしていたネクタイはあるべき場所に戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
ジャックに背中を向け闇に進んだ歩みは、半ば強引に”大人”に受け止められ、癒やされて学生の形を取り戻していく。
全てを捨てて強くなる。そんなの、俺は認めんぞ。
そうやって、体を張って向き合ってくれる”大人”が一人いるのは、レゴシにとって幸福である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
ジャックは背後に置き去り、ルイは意味深なことだけ言って闇の向こう、ハルちゃんはサーッパリわかんねぇからな…。
歩調を合わせてくれる人が、あんまいないのよね。
この師弟の歩みが、笑いを交えた希望ある方向に進むと見せるコミカルな絶叫と、重なるある草食の死。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
レゴシとルイの青春が、どう重なってどう違うのかを鮮烈に見せる、パートの繋ぎ方が大変いい。
コスモ姐さんのやけっぱちが、情欲を照らして燃える。
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原作とは違う見せ方になったが、ルイとはまた違う形で『裏市の草食』として生きてる姐さんの描き方は、とても良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
餌食でありながら捕食者を翻弄し、生き死にの際で芸に踊る。
捕食の宿命を諦めたようでいて、その瞳には奇妙な炎が燃え続けている。
しかし(二重の意味での)肉欲への挑発が、戯れとして機能するのは檻があってこそで、それは同僚の嫉妬で簡単に崩壊してしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
肉食と草食の間にある、身も蓋もない暴力勾配。それを突きつけられたコスモの瞳は怯え、どこか待ち望んでいた死を受け入れる
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そこに裏町独特の秩序を取り戻し、本音に満ちつつも制御可能な欲望のステージを演出していくのが、シシ組組長となったルイである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
彼がストリップの現場を『神聖な舞台』と言うところに、どんだけ演劇部好きだったか、大事にしたいのかが滲んでいるようで、少し切ない。
性と暴力が混じり合う際で、矜持を持って檻に入っていたコスモのプライドも、ボタン一つで崩壊してしまう危うさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
その間近に自分の身を置きながら、ルイは肉食産業が完全なアナーキーに落ちないよう、捻れた理性を代表する立場にある。
剥き出しのままでは荒野になってしまうものを、どう檻に入れるか
表立った権力が裏町に押し込んでいる難しさを、ルイは泥に塗れながら必死に演じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
それは肉食を乗りこなす強い自分を守るためであり、剥き出しの本音の奥になにか輝くものがあると、信じたいからでもあると思う。
すべてを諦めた現実主義者の仮面の奥に、確かに宿る揺らぎ。
呆気なく牙がかかった”死”に向き合う時の、コスモを取り囲む表情と光の変化。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
裏市で体を張る草食は、再び淫靡な紫の証明を取り戻したステージの上で、魂を擦り合わせる。
この後の姐さんとの重なりが好きなんだが…アニメでは描かれない形かな。まーやること多いからな…。
裏市を帰るべき”家”と定めた子供は、無敵を装って肉を胃に落とし、ゲーゲーと吐き戻す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
タフな芝居の奥に在るものを、イブキは敏感に感じ取っていて、ノックもなしに乗り込んでくる。
私室に置いた本達が、ルイの変わらぬ生真面目を語って面白い。
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この私室はいわば”楽屋”であって、コスモ姐さんが檻の中で演じたもの、ボタン一つにむき出しにされたものが、また別の形で開放されている場所である。
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”死”すら飲み込む無敵のボスと、弱々しい草食の子供。
それを隔てる壁が在るこそ、この状況でもルイはなんとかルイでいられる。
だがその芝居は彼に負担を強いて、弱者/草食/子供を”食い物”にするはずのヤクザは、それを見ていられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
横から二人を見た時の、縦の長さ、横の分厚さの残酷な差。それでもなお、差し出された優しさを哀れみと跳ね除ける気概。
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ゴウヒンとはまた違った意味で、イブキもまた”父”であり…ひどく不器用な”父”である。(これはアニメではまだ描かれざるオグマ、ゴーシャも同じか)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
子供側もどう優しさに向き合えばいいかわからず、ジャックを置き去りにフェンスを越えたり、サラダを跳ね除けたりする。
ハルちゃん、あるいはジュノを相手に演じられる男女の難しさとはまた別の角度から、離れては近づく人間関係の面白さを切り取っていて、今回対比される”親子”の描写は好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
色んな奴がいて、色んな繋がりがある。
殴り、癒やし、食い、食われ、受け入れ、拒絶する。
それらは通り一遍ではなく、混ざり合って存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
ジャックを大事に思えばこそ、レゴシは彼を幼年期に置き去りに飛んだ。
牙のぬくもりを感じた時、コスモの心に湧き上がったのは諦観だけではないはずだ。
イブキが差し出したサラダは、多分優しさのシンプルな味はしないだろう。
そんな風に複雑で普遍的な人のあり方が、獣人がそこにある世界を真摯に掘り下げ、絡み合うドラマを丁寧に描けばこそ見えてくるのが、やはりこのアニメの面白さだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
さて、普段着で鉄火場に飛び込んできた雌狼は、どんな色合いを呼び込むのか。
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次回も大変楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
僕の大好きなジャック・ボーイが、思う存分泣かされて大変良かったです。
純粋に幼馴染を思いつつ、同じ場所にいれた時代が遠くなる切なさ、手の届かぬ己に流れる涙……優しいやつよ。
レゴシもハルちゃんやルイだけでなく、マブダチの事もちゃんと考えなよ…。
ジャックがいることで、別に肉食だからって完全に同じになれるわけでもないし、男だから幼馴染だからってすれ違わないわけでもないと見えるのが、僕は好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
そうして離れたものが、致命的に何かを分かつわけでもなく、ヌボーっと戻ってくるのも良い。不定形だけど芯のある、妙な希望がある。
そこにレゴシを戻してくれるのはゴウヒン親父であり、サラダを差し出すことでルイをさらなる深みにはめていくのも、イブキ親父だったりする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年1月28日
様々に絡み縺れ合いながら、転がっていく僕らの青春。
暗闇に見えて、ひだまりの匂いが確かに漂ってくる。あと、血煙も。
次回も楽しみですね。