BEASTARS 第二期を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
肉を喰らい、銃を構える。
虚影に満ちた表舞台から、本音まみれの裏市へ。
舞台を変えて踊るルイの、仮面から溢れる光にジュノは涙する。
レゴシもまた、ゴウヒンの元で暴れ狂う衝動と闘っていた。
突きつけられた肉と銃は、迷いを抜ける導きとなるのか?
そんな感じのピュアピュア青春群像劇! トッピングは暴力と血飛沫!! な、BEASTARSアニメ第17話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
ゴウヒンに導かれて、肉を食わない方向で強くなる道を探すレゴシ。
孤独に踊っているようで、その必死さが色んな人を引き付けるルイ。
狼と鹿、二人の青春は噛み合わないまま踊る。
殺しも食肉も何でもありな、本音まみれの裏市。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
しかし暴力と支配だけが人間の本質ではなく、衝動に突き動かされつつ人は、キレイな何かを追い求める。
今回舞台にならないからこそ、それが保存される綺麗事の箱、”学校”を巡る話でもあるなぁ、と感じた。
ゴウヒンさんはレゴシが、一般的な学生生活からドロップ・アウトするのを防ごうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
彼の助けがなければ、ジャックが危惧していたように、レゴシは闇に沈んで戻ってこなかっただろう。
しかし猛る気配を毛刈りされ、のんきに日常を過ごす子供たちに戻されることで、レゴシはより険しい道に進む。
肉を食わない。本音に流されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
そんな生き方に芯を入れるためには、肉を食いたい自分、草食に怒る自分とも向き合わなければいけない。
ゴウヒンさんは理性を保ったまま獣の強さを手に入れるという、レゴシの選んだ道を厳しく、正しく試してくる。
試練があって初めて、レゴシの夢は綺麗事を越える
一方ルイは諦めた調子で本音の領域に踏み込んでいるようでいて、ジュノに看破されたように諦められてはいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
なにか輝くものがどこかにあると思いながら、銃と肉が剥き出しに置かれた裏市で、強いボスを演じ続けている。
その嘘の尊さに、イブキも本気で肩入れしてくる。
銃と一緒に、オグマにつきつけた退学届。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
レゴシが一足先に、ゴウヒンさんに止められてしまったドロップ・アウトという逃げ道に、父はどう向き合うのか。
非情を演じつつも内心、父様のことを解りたいし解って欲しい少年の思いを、雌狼のように嗅ぎ分けられるのか。
青春は、揺れながら続く。
というわけで、見てる人の殆どが『狼って…君かよ!』とツッコんだだろう、ジュノとルイの裏市デートから開始である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
シシ組の眼から離れ、かつての仲間と出逢ったルイは鎧を外し、少年のように頑是ない微笑みを見せる。き、綺麗や…(毎回言ってる)
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ジュノはルイと言葉をかわしつつも、その先に出ることはない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
ずっと不鮮明な背中を追い続け、一体何を考えているのか問いかけながら、当たり前の青春を演じていく。
それは一瞬の夢であり、学校も部活も離れてしまったルイとは、もう共有できない学生の当たり前…でもない。
運命の隕石祭で霧に消えてしまったルイの姿を、ジュノは勇気を出して裏市に見つけて、その顔をしっかり見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
やつれて、暴力と成熟を着こなし擦れっ枯らしに汚れたようでいて、やはり特別な輝きと青年の爽やかさを宿す横顔。
誰もが羨む学園のスター。
全てが約束された、栄光の王子。
そんな嘘に傷つけられ、自分から引っ剥がしたルイであるが、仮面はまた素顔でもあった。少なくとも、その一部は。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
ジュノは鋭敏な感性で、ルイの心の一番柔らかい部分がまだ死んでいないことを感じ取り、そこに手を差し伸べたいと願う。
だが、その背中が遠い。
いけ好かないエリートそのもののようでいて、日陰者やビッチや餌食に…自分の光の影になる弱者たちにしっかり目が行っていたルイの感性は、裏市でも死んでいない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
大人の肉食が、かなり頑張って大人であろうとする事実を見ている。
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利害だ本音だと嘯きつつ、人間の中身を見てしまう誠実さに当てられて、イブキもルイをただ利用する獣からはみ出していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
喰うものと喰われるものの関係は、サバンナならぬ人間社会で複雑に拗れ、肉食の身体優位・捕食本能は彼らがトップに立てない生得的弱点になってしまっている。
子供のルイは本能と暴力こそが強さ…世の中の本当だと思っているけども、大人のイブキはそれこそが、肉食の生きづらさ、弱さの源泉だと感じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
このズレが、シシ組のトップに若鹿を据える奇策の源泉であり、彼らの繋がりの固定具でもある。
俺たち、それぞれ弱くて強い。
そういう難しさを肌で感じとっているのに、諦めたふりで一面的な”世の中の本当”に、自分を沈めようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
その諦観を、ジュノは涙で突き刺す。
隣り合って、手を繋いで、一緒に踊って。
それでも追いつけないものを、必死に届けようとする。
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彼女もまた、登場当初のパワー指向を上手く和らげて、可愛げと誠実さをグンと出してきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
己の道を決めるのは、環境ではなく意思。
”4番”時代も隕石祭の闘争でも、意思を貫けなかった自分に傷ついてるルイとしては、耳の痛い綺麗事だろう。
でも、それを言うジュノの輝きを、彼は嗤わない。
このダンスが一足早い卒業のプロムとなるのか、はたまた街灯は希望を照らすのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
人生模様は複雑で先が読めないが、ルイにとってもジュノにとっても、ここでの対話が大切な救いとなったのは、間違いないと思う。
二人きりの歩みはチグハグで、確かに重なっていて、とても眩しい。青春だぁ…。
一方もうひとりの狼は、恥ずかしながら日常に帰ってきた。毛を剃られて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
ジャックの懸念は、ゴウヒンさんがいなければ多分現実になっていただろう。
独りよがりな闇を抱え、孤独に裏市を駆けるダークヒーロー。
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そんなレゴシのセルフイメージを、ゴウヒンさんは無様に刈り取り、ジュノは『アリアリアリ!』と、ブチャラティのラッシュみたいな声出しながら大興奮である。ときめいてる君は可愛いねぇ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
世の中、お前が考えてるほどわかりやすく白黒じゃねぇ。もうちょいモラトリアムに身を沈めて、仲間を守れ。
ゴウヒンさんは無軌道な若者の勝手な思い込みを刈り取り、一度は背を向けた場所に戻していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
同時に口から垂れ流される甘っちょろい理想を、肉の匂いでぶっ叩いていく。
これが俺たちのリアル、肉に惹かれる本能だッ!
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ゴウヒンさんは人生の教師として、肉食が何に苦しみ、何に縛られるかを厳しく叩きつけてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
血管に流し込まれる、ダイレクトで原始的な興奮を乗りこなさない限り、レゴシの理想は芯のない空言でしかない。
渇望、疲弊、憎悪、焦燥。
どす黒いものが溢れる、置き去りにしてきた自分。
致命的に道を踏み外さないよう注意しながら、ゴウヒンさんはレゴシに、レゴシ自身を教えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
本能に押し流され、自分を見失った食殺犯の更生を、傷だらけになりながら助けている男のレクチャーには、嘘がない。
その本気度が判るから、無茶苦茶なスケジュールにも頭を下げる。
今回、レゴシが頭を下げるシーンが結構多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
自分の非を認め、誰かに頼る”大人っぽさ”を、このヘンテコな一匹狼が身につけつつある、ということだと思う。
血みどろで思いつめ、一人になろうとした青年は、頭を下げて今までの日常、新たな試練を飲み込んでいく。
その一環として、クソうぜぇ草食後輩とも向き合わなきゃなんらんのだ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
ピナくん、誘惑と自由が服着て歩いてるような男だからな…そら、ストイック気取りのむっつりレゴシとは相性悪い。
草食だから、無条件に守りたくなるわけじゃない。
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死ぬほどムカつくし、生き方は正反対で、でも殴って黙らせたいわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
そんな隣人と肩を寄せ合い、なんとか上手くやっていく難しさ。肉食って銃振り回す裏市のマチズモだけじゃ、解決できない人間の難題。
そういうものも、”学校”に戻ってきたからこそレゴシに追いつく。
ピノくんが腰の軽いプレイボーイでありつつ、妙に爽やかな重さを宿しているのは、彼が公平だからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
自分も自由に誘惑するのだから、殴られるのも喰われるのもしょうがない。
選び取った生き様が生み出す快楽も痛みも、当然の結果と引き受ける腹が、軽薄さの奥でキマっている。
これはレゴシやルイが『よしこれだ!』と思い込んでは、色んな人に横からぶっ壊されてるポイントでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
見定めたと思った真実は、すぐさまもう一つの真実でひっくり返され、簡単には本当の自分も、世界の在り方もわかりゃしない。
そうやって幾度も間違え、探し、見つけるからこそ。
青春を駆け抜けて掴まえた自分と世界の形は、意味を持つのかも知れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
普通の子供達が背負うには重すぎる荷物と運命に苦しみつつ、それでも彼らは問いかけを止めないし、周囲の人々もそこに答えを…新たな問いを投げる。
そこには喰う/喰われる以外のコミュニケーションがある。
さて、銃と退学届で決別を突きつけてきた子供に、父親は一体何を返すのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
ツンツンで一端な演技頑張っても、窓ガラスに写っちまってるんだよなぁ…父様に解って欲しいし、解りたいボーヤの願いがさぁ!
ホンマ、ルイ先輩はピュアや。
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『これ以上迷惑をかけたくない。縁を切ってくれッ!』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
必死さと内言ダダ漏れで手札を晒している以上、ルイ先輩はオグマには勝てない。
そもそも勝ち負けを競える健全さが、奇妙な出会いと関係性で弾かれちゃってるのが、この親子の難しいところなんだが…イブキといい、父権的存在との付き合いが下手。
オグマに求められた嘘の強さを、ルイ先輩は演じきれなかった…と、自分で感じている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
銃口の絶縁状には、『あなたの望む子供になれなかった』という後悔と、『それでも、なりたかった』という切実さが混じっている。
道を踏み外した不出来な息子が、出来る最後の親孝行。
親父…見捨ててくれッ!
『なーんて健気な坊やだろう…』と、オジサンは微笑んでしまうけども。やってる本人にとっては、それこそ銃を突きつけるようにシリアスな願いよね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
テムにずっと花を手向けたように、ルイ先輩は色んな人のことを解りたいと願い、なかなか上手くやれない。
個人的資質もあるし、望まれる役割もある。
それでメチャクチャにされて、オグマの養子なりシシ組トップなり立ち位置が変わって、そこでも必ず、隣りにいる人がどんな顔をしているか、見たがるし見てしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
それはつまり、優しい、ということだ。
僕は優しさの使い方がよく解んないボーイが三度の飯より好きなんで、ルイ先輩は”推し”である。
レゴシにはゴウヒンさんがいた。その理想の輝きも弱さも知りつつ、しっかり受け止め試し導く存在が、安易に闇に沈むことを許さず、”学校”に戻してくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
今日常と過去への絶縁状を手渡すルイ先輩に、オグマは”父”足りうるのか。
問われている。
答え一つで、人間の値段が決まる大事な問だ。
『世の中、喰うか喰われるかしか無いんだッ!』という諦めに飛びつく前に、もうちょい曖昧な答えを探す時間をくれる、大事な隠れ家。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月4日
”学校”は、校舎という場所のことではない。
オグマは愛息の”学校”足りうるか。
少年の不器用なSOSを、三白眼で受け止められるか。
次回も楽しみですね。